林道のカーブをトロトロ登って行くと、ようやく南牧村自然公園のテニスコートや建物が見えてきた。公園周辺の樹林帯はちょうど芽吹いたばかりの新緑が青々として素晴らしい。
このあたりの標高は1000m弱だが、動植物も豊かなようで、朝の小鳥のさえずりといっしょに付近の森からツツドリの鳴き声も聞こえてくる。
天気は曇りだが、気温は10℃でハイキングにはちょうどいい感じだ。まずは駐車場から林道を少し戻り、左(西)に分岐するコンクリート道を登って行く。道標などはないが、この道は自然公園の林間歩道になっているようで、北西方向へ登って行けば迷うことなく余地峠へ行くらしい。
林道わきの広葉樹の雑木林は芽吹いたばかりで、新緑の若葉が清々しい。5月も下旬になると、このあたりも鬱蒼とした森になってしまうだろう。
林道はやがて未舗装になるが車の通行は可能だ。さらに登って行くと、右下の斜面が伐採地になっていて見晴らしがいい地点を通った。
林道をさらに登って行くと、道標のある広場のようなところに着く。地形図の1080m地点付近にある象ヶ滝分岐地点だ。
ここからは、その下仁田佐久線の道を左(西)の余地峠方面へ向かうことになる。
余地峠への道は笹が刈られ、よく整備された感じで歩きやすい。休日などにはMTB愛好者が余地峠越えをしてこの道を走っているのだろう。
すぐにまた分岐道のある地点に着く。林道はそのまま直進しているが、左の緩い尾根筋に旧道のような山道が分岐している。試しにその道を辿ってみる。尾根沿いの道に入るとたちまちヤブのコースになってしまった。やはりほとんど歩かれていないようで、膝丈ほどの笹ヤブの道には灌木類が倒れている。
そこから両側が背丈ほどの笹ヤブになった道を左(南西方向)へ進む。このあたりの道は浅く切り通し状に開かれた感じの道だ。いかにも昔の峠道のような風情がある。
林道のわきには背丈ほどの深い笹ヤブが繁っているが、笹刈りが行われているので歩きやすい。
さらに林道を西へ直進して行くと、やがて広場状の地点に着いた。ここが標高1269mの余地峠だ。左(南)側に馬頭観音の石碑や道祖神のような馬頭観音像の石碑などが見える。
余地峠から西方向にはなだらかな峠道の踏跡がつづいている。余地峠越えの道は、昔は十石峠道と同じように、信州と上州を結ぶ重要な道だった。この峠を越えて佐久米が南牧へ運ばれたそうだ。
峠からは県境が通る山尾根を南東へ登る。ようやく芽吹きの始まった雑木林の尾根沿いは明るく歩きやすい。ハッキリした踏跡はないが尾根筋を自由に登れるので快適だ。県境は南東の尾根沿いを通っているようだが、少し南寄りの信州側のヒノキの植林地沿いを歩いてみる。
そのふり返りの地点から信州側の斜面に目をやると、すぐ下に作業林道のような道が通っているのが見えた。面白そうなので、ちょっと西側へ下って林道に降りる。林道は県境尾根の西側の山腹沿いを通っているようだ。
ようやく傾斜がなだらかな県境の尾根地点に登りつく。そこにはカラマツの木に昔の長野営林局の境界見出標の赤プレートが付いていた。地図の等高線でいうと1360m付近の尾根地点だ。
ミヤコザサの歩きやすい尾根道を県境沿いのピークをめざして進む。尾根の右の長野側は笹とカラマツ林のなだらかな斜面、左の群馬側は笹と雑木林の急斜面になっていて誠に対照的だ。
笹尾根を進んで行くと、やがてピーク地点に着く。地図の等高線でいうと1400mほどのピークで、横田昭二 著『私が登った群馬300山』上巻の「34 のこぎり岩」の略図では「横見山」と表記された地点だ。
1400m峰のピーク付近から尾根状の山頂部を南東へ進む。長野側は相変わらずのカラマツ林だが、群馬側の雑木林の斜面にはコブシかタムシバの白い花が見える。そして左方向には荒船山から黒滝山方面への稜線を望むことができる。
そこで、県境以外にもルートがあるか探してみる。すると、そこから西方向に獣道のような踏跡が見える。巻き道かもしれないと思って少し西へ進んでみる。しかし踏跡は笹ヤブを巻くものではなく、そのまま山腹を西へ向かっていた。どうも、県境の西側を通っている作業林道に通じているようだ。
登るにつれて笹も浅くなり、尾根沿いには踏跡も見えるようになった。人が歩いた道ではなく、シカが歩いた獣道のようなトレースだ。さらに登って行くと、尾根沿いには獣道のような踏跡が2本付いている。
そこからさらに登ると1410m峰の山頂に着く。
1410m峰の南面はハリモミの生えた尾根になっていた。間伐跡のあるモミの樹林帯は笹ヤブになっていないので、歩くのに誠に具合がいい。ところが調子に乗ってモミ林を下って行くと、県境尾根のルートを外れて南側の支尾根に下ってしまった。
ようやく鞍部付近に来たので、再び東側の笹ヤブの県境沿いへ進む。鞍部の笹地には立て札形の標識が見える。標識には「矢沢峠」と表記されていた。ここが標高1320m*の矢沢峠だ。この標識は旧佐久町(佐久穂町)が立てたもので、矢沢峠道をこの県境まで整備したらしい。
矢沢峠からの展望は長野側にはないが、群馬側は東方向に二子岩やククリ岩の山並みが見える。
峠からは広小屋山をめざして南方へ向かう。県境の尾根筋は笹が深いので西側を巻く。再び笹が浅くなったあたりで県境付近に戻って行くと、焚き火の跡があった。山歩きの人かツーリングの人がこのあたりで暖をとったのだろう。
県境の通る尾根沿いを登って行くと、笹ヤブは膝丈から胸丈ほどになってきた。西側の斜面を見ると、笹が疎らで浅めだ。そこで再び県境を外れて長野県側の斜面を歩くことにする。
傾斜が急になった笹尾根を登って行くと、やがて緩斜面の尾根になる。地図の等高線でいうと1440m付近のところだ。そこからちょっと深めの笹尾根を進んで行くと、こんもりとした丘のようなピークがある。多分、標高1450m付近の広小屋山の東尾根の肩のようだ。
ここからは南西方向に尾根沿いを進む。ちょっと驚いたことには、この尾根筋には刈り払いされた跡があり、雑木類が伐られ薪状にまとめられている。
尾根沿いからは、左方向に見える稜線の向こうに、特徴的なピークが頭を出している。気になって地図で確認すると、言わずもがなこの山域の盟主、御座山の雄峰だった。
ようやく尾根のピーク地点に出ると、笹地に二等三角点の標石が見える。ここが広小屋山の頂上(1484m)だ。
広小屋山の山頂部もやはり立木に覆われてそれほどの展望はないが、山頂から樹間越しで南西に茂来山、南に御座山、南東に昨年栂峠付近を歩いたとき登った1685m峰、そして東にククリ岩が確認できる。
広小屋山東尾根の肩付近に戻り、南面の下降地点を観察してみる。近くにあのビニール紐の目印も見えるが、一体どこを下ればいいのかわからない。
いつまで迷っていても埒が明かないので、思い切って標石地点から南東へ下ってみる。たちまち背丈以上のスズタケのヤブの中にはまり込んでしまった。踏跡のない笹ヤブを下るのもひと苦労だ。思うように歩くことができない。
深い笹ヤブの斜面をどうにかこうにか進んで行くと、ひょっこり切り明けの道に出た。こんな笹ヤブの中に刈り払いされた道があったとは、思わず呆気にとられてしまった。
この踏跡のルート沿いにも刈り払い作業で伐られた雑木や灌木類が薪状にまとめられていた。それからビニール紐の目印以外にも、所々にあのオレンジ色の樹脂板の杭が打たれている。
鞍部付近に下ってくると、東側の谷が溝状に深くガレてヤセ尾根になっていた。このあたりの崩落がつづけば、この踏跡のルートも県境を外れ西側の斜面を巻くことになるだろう。
小鞍部に下り、少し登り返した地点が地図の等高線でいうと1280mのピークで、そこから北西をふり返るとなだらかな広小屋山の稜線が見えた。
そんな都合のいいことを考えて、ここからは南東へ向かう刈り払いの道に下ることにした。柴刈りのされた踏跡を下って行くと、ムラサキヤシオが咲いたのどかな春山の尾根道になった。さらにカラマツや雑木林の混生した美しい樹林帯をしばらく下る。
そこで気持ちを切り替える。今日は大上峠への県境歩きはやめて、この尾根道を道なりに辿ることにしよう。
広尾根の下った先を右(南)にちょっと進むと、黄色の看板のある尾根の小ピーク*を通る。その小ピークの先のあたりに左(東)方向へカラマツ林の斜面を下る踏跡が見える。
カラマツ林の斜面を直進気味に下って行くと、途中で灰色のユニホームを着た人がカラマツの樹皮にせっせと何かを塗布しているのが見えた。そこで、その作業者の方にこの斜面の道がどこに通じているのか尋ねてみた。
植林地の急斜面を下ると、下に林道が通っているのが見える。やはり地図などには載っていない道だ。ビニール紐の目印を付けた人もこの斜面を下ったようで、林道に降りてみると、草付の法面にはビニール紐が付いていた。
林道が左に曲がるあたりの路肩から右下を見ると、舗装道路が南北に通っている。あの舗装道が大上林道のようだ。またそこからは、この林道の出口付近に先ほど遭った作業者の車が駐車しているのが見える。
ここからは大上林道の舗装道路を北へ進む。平日なので交通量も少ない感じだ。ヤマザクラやヤシオツツジの花を見ながら歩く。
そこから2、3分歩くと広場のような地点に着いた。左(西)側に地蔵尊の祠や記念樹の石碑が見え、「矢沢峠へ2k」・「熊倉へ3.5k」と表示された道標が立っていた。右(東)側に「大上峠」の銘板が付けられた記念碑が建っている。ここが標高1110mほどの大上峠だ。
峠からは上州側を西方向へ下って行く。道端にヤマブキが咲き誇る林道を歩いて行くと、前方右に「のこぎり岩」の特徴的な岩壁が見える。一枚岩の立派な岩山でこれも南牧村の名物のひとつだろう。
そこから林道をさらに北西方向に下る。
さらに広小屋山の東の山腹を通る林道を北方向へ下って行くと、のこぎり岩へつづく尾根がある地点を通った。右のガードレール付近から尾根沿いに微かなトレースが見える。ここがのこぎり岩への登り口だろうと思ってガードレールを跨ぎ、ヤブの踏跡に入る。
笹ヤブの斜面からその小道に降りて、尾根の鞍部に下る。そこからヒノキ林の南側の斜面を東へ辿る。しかし、この作業道のような道は岩稜の突き当り付近で終わっていた。そこからは岩稜の付け根の急斜面を左に巻いて登るようだ。
登りついた岩場がのこぎり岩西側の最高地点で「ミホガハラ」と呼ばれる山頂(1160m)だ。
ヤセ尾根の山頂部は樹木や灌木が生えているので、何とか岩稜を東へ辿ることができる。
のこぎり岩を西へ戻る途中で、北方向に遠く兜岩山からトヤ山あたりまでの荒船山周辺の山々を見渡すことができた。| 日程 | 2006年5月12日 (金) |
| 天候 | 曇りのち晴れ 南東の微風 |
| 行程時刻 | 南牧村自然公園駐車場6:45→林道分岐6:47→(左折、北西方向へ)→余地峠・象ヶ滝分岐(1080m地点)7:10〜7:13→(左折、西方向へ)→自然公園林間歩道分岐7:23→旧道(ショートカット道)分岐7:25〜7:27→(左折、旧道歩き)→林道合流地点7:32→余地峠7:48〜7:58→(県境沿いを南東へ)→(南寄り)→(西側の作業林道へ寄り道)→(再び県境へ)→県境尾根(1360m付近)8:15〜8:18→横見山(1400P)8:31〜8:36→(下って、笹ヤブの鞍部)→1410P 9:13〜9:23→(南面の支尾根に下り、ルートミス)→(西側の県境尾根沿いへ)→矢沢峠9:48〜9:58→(西の長野側の斜面へ巻いて、再び県境へ)→東尾根の肩(1450P)10:30〜10:33→(南西へ)→広小屋山10:40〜11:05→(戻り、北東へ)→東尾根の肩手前11:12→(南面を東方向へ下降、ルートミス)→(西寄りにトラバース)→刈り払い道出合11:20→(県境沿いを下降)→鞍部11:46→1038P 11:53〜11:56→1280P 12:03〜12:05→(県境から外れ、南東へ)→(雑木林の広尾根)→1190P付近12:28→(カラマツ植林地を東へ下る)→林道田口十石峠線出合12:36→(北東へ)→大上林道出合12:42→(北へ)→大上峠12:47〜12:52→のこぎり岩への尾根取り付き(尾根南側)13:15→(北側入口からの道に合流)→鞍部13:17→(道は行き止り、鞍部付近まで戻り)→(北東へ直登)→ミホガハラ付近13:38〜13:43→(岩尾根を東へ)→1120m付近13:55〜13:58→(戻り)→(ミホガハラ手前を西へ下り、北側からの道に合流)→のこぎり岩入口(尾根北側)14:26→自然公園駐車場14:48 |
| 備考 | ♦この記録では、白髪岩の原三角測点を発見したA氏のホームページ「Hobby-Site-」の西上州の山の記録や前橋ハイキングクラブの方々の記録およびMTB愛好家の記録等を拝見し、参考にさせていただきました。改めて感謝いたします。 ♦今回歩いた県境コースは全体的に樹林に覆われているので見晴らしはよくありませんが、晩秋の落葉の頃や春の新芽の頃なら多少見通しのきく山歩きができます。 |
◇ T N H C ◇