余地峠〜矢沢峠〜大上峠付近県境ハイク



 ねくらハイカーは昨年(2005年)の5月に甘楽郡南牧村の碧岩付近を歩いたが、そのとき長野県境の稜線を観察してみて、余地峠付近から大上峠あたりの県境が通る山尾根が面白そうだと感じた。ネットで調べてみると、やはりMTB愛好家や県境踏破のグループや個人の方に結構歩かれている。

 それらの記録を拝見すると、県境沿いはヤブが多く一般の方には好まれないコースらしい。ということは、ねくらハイカーにはぴったしの静かな山歩きができそうだ。そこで、今年も五月の連休が終わり南牧村の野山も静けさを取り戻した頃出かけてみた。
 相変わらず村道並みの道幅の下仁田臼田線から下仁田佐久線に入り、熊倉方面へ走る。途中、三段の滝駐車場を左に見て通ったが、平日早朝というのに車が2台駐車していた。

 さらに熊倉川沿いを走ると、リュックを背負った若い男性の単独者が歩いている。三段の滝駐車場に車を置いてこの近くの岩山にでも登る人だろうか…。この付近には面白い岩峰や岩山があるので訪れる人も多いのだろう。ねくらハイカーにとってこの付近の険しい岩山は縁遠い存在なので、単独者を羨望のまなざしで見送り、先を急ぐ。

 直進すれば象ヶ滝へ行く道を左へ曲がり、大上林道へ入る。あとは南牧村自然公園の駐車場をめざして山道を走る。道端にはヤマブキが今を盛りに咲いていた。
駐車場南側に建っている「余地峠懐古の碑」  林道のカーブをトロトロ登って行くと、ようやく南牧村自然公園のテニスコートや建物が見えてきた。公園周辺の樹林帯はちょうど芽吹いたばかりの新緑が青々として素晴らしい。

 管理棟から道路を隔てた上の駐車場に車を置かせてもらう。駐車場には自然公園所有のマイクロバスが1台駐車しているだけで一般車両は1台もなかった。さすがに連休明けの平日なので、宿泊客はいないようだ。

 この自然公園からは前方に碧岩や二子岩がよく見える。また左の方には立岩や大屋山そして毛無岩のある山尾根、そして東のはるか彼方には小沢岳も確認できる。やはり村営なので、このような見晴らしのよい絶好の地にバンガローやコテージなどの宿泊施設のある公園がつくられたのだろう。

駐車場出入口に設置された水場  このあたりの標高は1000m弱だが、動植物も豊かなようで、朝の小鳥のさえずりといっしょに付近の森からツツドリの鳴き声も聞こえてくる。

 駐車場の南側には赤御影石の「余地峠懐古の碑」が建っていて、余地峠が昔から要衝の地であったことが切々と綴られている。

 また、駐車場の出入口には上の浄水施設から引き込まれた「岩清水の湧水」の水場がつくられているので、ハイキングやツーリングなどには便利だ。

余地峠への林道分岐地点  天気は曇りだが、気温は10℃でハイキングにはちょうどいい感じだ。まずは駐車場から林道を少し戻り、左(西)に分岐するコンクリート道を登って行く。道標などはないが、この道は自然公園の林間歩道になっているようで、北西方向へ登って行けば迷うことなく余地峠へ行くらしい。

 スギの植林地を通るコンクリート道を登って行くと、相変わらず東方向に碧岩がよく見える。

余地峠へ向かう林道  林道わきの広葉樹の雑木林は芽吹いたばかりで、新緑の若葉が清々しい。5月も下旬になると、このあたりも鬱蒼とした森になってしまうだろう。

 今日はまだどうにか見通しのきく山歩きができそうだ。少し登って行くと、左斜面はヒノキの植林地になっていた。植林地には枝打実行林の標示板が立てられている。

伐採地から北東方向、遠くに立岩や大屋山 伐採地から南東方向、大岩・碧岩〜ククリ岩の稜線  林道はやがて未舗装になるが車の通行は可能だ。さらに登って行くと、右下の斜面が伐採地になっていて見晴らしがいい地点を通った。

 そこからは大岩碧岩はもちろんのこと、二子岩やククリ岩も見える。また北東方向に南牧川北岸に聳える数多の岩山や岩峰群を見渡すことができた。

余地峠(左)・象ヶ滝(右)分岐  林道をさらに登って行くと、道標のある広場のようなところに着く。地形図の1080m地点付近にある象ヶ滝分岐地点だ。

 ここから右(東)へ辿れば熊倉に下る昔の峠道のコースだ。つまり、下仁田佐久線の古道が通っているのだ。

余地峠方向、チェーンによる車両通行止め  ここからは、その下仁田佐久線の道を左(西)の余地峠方面へ向かうことになる。

 しかし、その西に入る地点で群馬森林管理署が設置したチェーンにより車両通行止めになっていた。車でやって来た人はここから余地峠へは徒歩になる。

整備された感じの余地峠への道  余地峠への道は笹が刈られ、よく整備された感じで歩きやすい。休日などにはMTB愛好者が余地峠越えをしてこの道を走っているのだろう。

 カラマツ林もまだ芽吹いたばかりで多少見通しがきく。樹間から右方向に小唐沢山や霊仙峰の山影が見える。このあたりも夏場は鬱蒼とした森になってしまう感じだ。

 右がヒノキ林、左が広葉樹の雑木林の林道を歩いて行くと、また道標のあるところを通った。そこから左へは林間歩道のコースとなっていて、自然公園に戻れるようだ。ここは林道を道なりに右方向へ進む。

旧道(左)分岐 ヤブめいた旧道(ショートカット道)  すぐにまた分岐道のある地点に着く。林道はそのまま直進しているが、左の緩い尾根筋に旧道のような山道が分岐している。試しにその道を辿ってみる。尾根沿いの道に入るとたちまちヤブのコースになってしまった。やはりほとんど歩かれていないようで、膝丈ほどの笹ヤブの道には灌木類が倒れている。

 歩きづらい道を登って行くと、すぐに先ほどの林道とT字路で合流する。ショートカットの山道はいわゆる昔の旧道らしいが、今はほとんど歩かれていないのかもしれない。

浅い切り通しのような道  そこから両側が背丈ほどの笹ヤブになった道を左(南西方向)へ進む。このあたりの道は浅く切り通し状に開かれた感じの道だ。いかにも昔の峠道のような風情がある。

 さらに進むと、沢沿いを右に曲がったあたりの斜面が崩れ、倒木林が道を塞いでいるところに来た。一瞬通行不可かと思ったが、倒木が切られて人が通行できるようになっていた。

笹ヤブが刈られている道、前方右に1300P  林道のわきには背丈ほどの深い笹ヤブが繁っているが、笹刈りが行われているので歩きやすい。

 しばらく西方向へ進んで行くと、前方の右側に山影が見える。余地峠の北側にある1300m峰のようだ。今日はこのあたりから天気がよくなってきて日差しが出てきた。

余地峠、奥が信州側  さらに林道を西へ直進して行くと、やがて広場状の地点に着いた。ここが標高1269mの余地峠だ。左(南)側に馬頭観音の石碑や道祖神のような馬頭観音像の石碑などが見える。

 右(北)側には古い案内板の枠にMHC(前橋ハイキングクラブ)設置の標識が付いていた。このグループの人たちが昨年(2005年)の秋に余地峠から矢沢峠経由で大上峠まで県境を歩いたようだ。

 それから南側には、東信森林管理署が設置した新しい「日影山国有林」の案内板が立っていた。ということは、長野県側ではこのあたりの山を日影山と呼ぶのかもしれない。

馬頭観音の石碑・石像群 「日影山国有林」の案内板  余地峠から西方向にはなだらかな峠道の踏跡がつづいている。余地峠越えの道は、昔は十石峠道と同じように、信州と上州を結ぶ重要な道だった。この峠を越えて佐久米が南牧へ運ばれたそうだ。

 また、戦国時代には武田信玄が軍用道路として使用したらしい。まぁ、諸説あるだろうが、古来より余地峠を越えて多くの物資が流れたことは間違いない。

峠から南東へ登る 北西方向に、1331P(左)と三角点ピーク1337P(中央)  峠からは県境が通る山尾根を南東へ登る。ようやく芽吹きの始まった雑木林の尾根沿いは明るく歩きやすい。ハッキリした踏跡はないが尾根筋を自由に登れるので快適だ。県境は南東の尾根沿いを通っているようだが、少し南寄りの信州側のヒノキの植林地沿いを歩いてみる。

 少し登って峠方向をふり返ると、北西に1331m地点ピークが見え、その右には三角点ピークの1337m峰が見えた。山の西側には採石場も見える。

県境の西側を通る作業林道 信州側にある林道のような道  そのふり返りの地点から信州側の斜面に目をやると、すぐ下に作業林道のような道が通っているのが見えた。面白そうなので、ちょっと西側へ下って林道に降りる。林道は県境尾根の西側の山腹沿いを通っているようだ。

 林道をこのまま辿っても面白そうだが、今日は一応上信国境を歩く予定なので、再び尾根筋へ戻ることにする。左斜面に歩きやすい取り付きがあるので、そこからカラマツ林の斜面を東へ登り返す。

登りついた県境尾根地点(1360m付近)  ようやく傾斜がなだらかな県境の尾根地点に登りつく。そこにはカラマツの木に昔の長野営林局の境界見出標の赤プレートが付いていた。地図の等高線でいうと1360m付近の尾根地点だ。

 周りはカラマツ林主体だが広葉樹の雑木類とアカマツやコメツガも混生している。尾根筋には県境の境界を示す小さな標石が埋設されていた。

 そこからは尾根沿いを南方向に進んで行く。左後方には樹林越しに特徴的な荒船山の姿も確認できる。また左方向には碧岩や大岩も見える。

遠く北東方向に荒船山〜黒滝山方面への稜線 1400Pへ向かう県境尾根  ミヤコザサの歩きやすい尾根道を県境沿いのピークをめざして進む。尾根の右の長野側は笹とカラマツ林のなだらかな斜面、左の群馬側は笹と雑木林の急斜面になっていて誠に対照的だ。

 展望があるのは群馬側で、芽吹いたばかりの雑木林越しに荒船山から毛無岩の岩峰群まで見渡せる。また左下には先ほど歩いてきた林道沿いのヒノキ林やカラマツ林の樹林帯がよく見えた。

横見山(1400P)付近  笹尾根を進んで行くと、やがてピーク地点に着く。地図の等高線でいうと1400mほどのピークで、横田昭二 著『私が登った群馬300山』上巻の「34 のこぎり岩」の略図では「横見山」と表記された地点だ。

 また、先ほど余地峠にあった東信森林管理署の案内板から考えると、このピークのことを長野側では「日影山」と呼ぶのかもしれない。

 天気はすっかり晴れ上がり、気温も15℃くらいになっている。また、東からのそよ風も吹き出して実に気持ちがいい。今年は連休明けから天候不順になってしまったが、今日は久しぶりに五月晴れになりそうだ。

北東方向の荒船山方面 山頂部南東側から1410P方面  1400m峰のピーク付近から尾根状の山頂部を南東へ進む。長野側は相変わらずのカラマツ林だが、群馬側の雑木林の斜面にはコブシかタムシバの白い花が見える。そして左方向には荒船山から黒滝山方面への稜線を望むことができる。

 小ピークを越えて進んで行くと、前方に次の1410m地点のピークが見えた。この調子だと思ったよりお手軽に県境が歩けそうだ…。そんな風に楽観して尾根の肩から南方に下って行くと、急に深い笹ヤブになってしまった。

笹ヤブの鞍部付近から前方に1410P  そこで、県境以外にもルートがあるか探してみる。すると、そこから西方向に獣道のような踏跡が見える。巻き道かもしれないと思って少し西へ進んでみる。しかし踏跡は笹ヤブを巻くものではなく、そのまま山腹を西へ向かっていた。どうも、県境の西側を通っている作業林道に通じているようだ。

 仕方ないので、ちょっと戻ってカラマツの生えた笹ヤブの斜面を南へ下る。まったく踏跡のない深いスズタケのヤブを下って行く。

 鞍部からは深い笹ヤブ帯を東側にトラバースして県境沿いを進む。県境付近の方がいくらか歩きやすい感じだ。やはり1400m峰の下りからそのまま県境沿いを直進した方がよかったようだ。そこからさらに前方の1410m峰をめざしてヤブを漕いで行く。

1410P登りから左下に自然公園が見える  登るにつれて笹も浅くなり、尾根沿いには踏跡も見えるようになった。人が歩いた道ではなく、シカが歩いた獣道のようなトレースだ。さらに登って行くと、尾根沿いには獣道のような踏跡が2本付いている。

 左側の県境沿いを辿って行くと、ちょうど真下に自然公園の赤い屋根が見える。よく見ると、駐車場にあるマイクロバスも確認できた。

 また地図で見ると、今自分が県境のどのあたりにいるのか特定できる。やがてピーク付近の尾根に出ると、左方向に碧岩からククリ岩にかけての稜線も見えてきた。

1410P山頂付近 南東方向にククリ岩(ズーム画像)  そこからさらに登ると1410m峰の山頂に着く。

 山頂部は樹木に囲まれてクリアな展望はないが、芽吹き前の樹林越しに北東に荒船山方面、南東にククリ岩の山並み、南方に広小屋山が見える。少し休憩して傾斜の急な斜面を南に下る。

南面のモミの樹林帯 モミ林の下りから広小屋山方面  1410m峰の南面はハリモミの生えた尾根になっていた。間伐跡のあるモミの樹林帯は笹ヤブになっていないので、歩くのに誠に具合がいい。ところが調子に乗ってモミ林を下って行くと、県境尾根のルートを外れて南側の支尾根に下ってしまった。

 ここは県境が通る南東方向へ下るべきところを、歩きやすい南方へ下ってしまったようだ。ルートミスに気づいた地点から左の谷筋へ下り、そこから県境の尾根へ登り返す。尾根沿いはやはり笹ヤブなので、モミの生えた西寄りの斜面を進む。

矢沢峠、旧佐久町設置の標識  ようやく鞍部付近に来たので、再び東側の笹ヤブの県境沿いへ進む。鞍部の笹地には立て札形の標識が見える。標識には「矢沢峠」と表記されていた。ここが標高1320m*の矢沢峠だ。この標識は旧佐久町(佐久穂町)が立てたもので、矢沢峠道をこの県境まで整備したらしい。

 ここから長野側は針葉樹のなだらかな森になっていて、矢沢沿いの旧道らしき踏跡が通じている。それに対して群馬側は深い笹ヤブに覆われていて、旧道を辿ることはできない。

(*旧佐久町の設置した標識には1330mと表記されているが、地形図の等高線から判断すると1320mくらいだ。)

矢沢峠から東方向のククリ岩方面 南方に広小屋山東尾根の肩  矢沢峠からの展望は長野側にはないが、群馬側は東方向に二子岩やククリ岩の山並みが見える。

 このあたりは長野側からMTB愛好家などのツーリングで訪れる人が多いらしく、峠付近には空き缶や空きビン類が目立ち恰好の休憩地になっているようだ。南側の一画には缶ビン類が散乱していて、まるで酒宴でも行われた感じになっていた。

峠南側から北方をふり返る、1410P方面  峠からは広小屋山をめざして南方へ向かう。県境の尾根筋は笹が深いので西側を巻く。再び笹が浅くなったあたりで県境付近に戻って行くと、焚き火の跡があった。山歩きの人かツーリングの人がこのあたりで暖をとったのだろう。

 そこから少し登り北方をふり返ると、樹林越しに1410m峰が見渡せた。そして南方には広小屋山の東尾根の肩へつづく笹ヤブの斜面が見える。

県境の笹ヤブを西側から巻く  県境の通る尾根沿いを登って行くと、笹ヤブは膝丈から胸丈ほどになってきた。西側の斜面を見ると、笹が疎らで浅めだ。そこで再び県境を外れて長野県側の斜面を歩くことにする。

 深い笹地を避け、西側に巻いて芽吹きが始まったばかりの清々しい雑木林の樹林帯を登る。南東から吹いてくる微風がいかにも心地よい。

 多少石などが露出した西側のザレ地のようなところを歩き、再び笹が薄くなった県境沿いの尾根筋へ登り返して行く。

登りついた笹尾根(肩北側、1440m付近)  傾斜が急になった笹尾根を登って行くと、やがて緩斜面の尾根になる。地図の等高線でいうと1440m付近のところだ。そこからちょっと深めの笹尾根を進んで行くと、こんもりとした丘のようなピークがある。多分、標高1450m付近の広小屋山の東尾根の肩のようだ。

 そのピーク手前には右へ向かう踏跡が見える。広小屋山の山頂へつづくルートだろう。一応ヤブを漕いで東の肩のピーク地点に出る。そこからは、南西方向に広小屋山山頂への尾根沿いの踏跡がつづいているのが見えた。

 ちょっと一息入れて南方の県境沿いを偵察してみる。しかし、広小屋山南面は深い笹の斜面になっていてどこに県境が通っているのか皆目見当がつかない。

広小屋山山頂へつづく尾根筋  ここからは南西方向に尾根沿いを進む。ちょっと驚いたことには、この尾根筋には刈り払いされた跡があり、雑木類が伐られ薪状にまとめられている。

 また、尾根沿いの立木にはテープ状のビニール紐が巻かれている。紐は1ヶ所あたり3、4本の木に付けられているのだが、ねくらハイカーにはそれが一体何を示しているのかわからない。

 さらに尾根筋にはオレンジ色のプラスチック製の板が杭のように打たれている。冬場に登った人が目印に打ったものだろうか…。とにかく、柴刈りされ明瞭な目印が付いた尾根道を辿って広小屋山の山頂をめざす。

奥に御座山、手前が四方原山のある稜線(ズーム画像)  尾根沿いからは、左方向に見える稜線の向こうに、特徴的なピークが頭を出している。気になって地図で確認すると、言わずもがなこの山域の盟主、御座山の雄峰だった。

 そこからさらに緩やかな歩きやすい尾根道を進む。

広小屋山頂上  ようやく尾根のピーク地点に出ると、笹地に二等三角点の標石が見える。ここが広小屋山の頂上(1484m)だ。

 山頂付近には意外にも山名板などの標識は付いていなかった。代わりにメモ用紙の入ったビニール袋が例のビニール紐で立木に結ばれていた。好奇心に負けて中をのぞいてみると、小さく「広小屋山」と書かれ、平16.12/8の日付がついていた。

 つまり、一昨年(2004年)の12月上旬にこのテープ状のビニール紐の目印を付けた人がここを登ったわけだ。広小屋山は県境の峠近くにある三角点ピークなので、山好きの三角点マニアの人には結構登られているのかもしれない。

南東に1685P(中右)方面(ズーム画像) 南西に茂来山方面(ズーム画像)  広小屋山の山頂部もやはり立木に覆われてそれほどの展望はないが、山頂から樹間越しで南西に茂来山、南に御座山、南東に昨年栂峠付近を歩いたとき登った1685m峰、そして東にククリ岩が確認できる。

 気温は日差しがあるので22℃ほどになっていた。少し休憩して尾根沿いを北東へ戻る。

広小屋山東尾根の肩(1450P)付近  広小屋山東尾根の肩付近に戻り、南面の下降地点を観察してみる。近くにあのビニール紐の目印も見えるが、一体どこを下ればいいのかわからない。

 尾根沿いに県境の境界を示す小さな標石があるので、そこから南東方向へ下れば県境沿いを下れるかもしれない。しかし、そこは急斜面の深い笹ヤブだ…。

境界石から南東方向(ルートミスをした下降地点)  いつまで迷っていても埒が明かないので、思い切って標石地点から南東へ下ってみる。たちまち背丈以上のスズタケのヤブの中にはまり込んでしまった。踏跡のない笹ヤブを下るのもひと苦労だ。思うように歩くことができない。

 仕方ないので、適当に下りやすい方向へ20mほど下る。そこから前方に目をやると、ククリ岩の山並みが見える。ということは、東方向へ下ってしまったようだ。

 登り返すのも面倒なので、エアリアマップを出して県境の境界線が遠方のどの山の方向へ向かって付いているか確認してみる。すると、境界線はあの1685m方向に向かって付いていた。さっそく南東に見える1685m峰の方向をめざして笹の斜面を右にトラバースして行く。

踏跡のあるルート沿いから正面遠方に1685P  深い笹ヤブの斜面をどうにかこうにか進んで行くと、ひょっこり切り明けの道に出た。こんな笹ヤブの中に刈り払いされた道があったとは、思わず呆気にとられてしまった。

 その踏跡のルート沿いにはあのテープ状のビニール紐の目印も付いていた。ということは、東尾根の肩付近にあったビニール紐の目印地点から南面を下れば、この踏跡の道を難なく辿れたわけだ。

 ねくらハイカーは標石地点からまったく無駄な笹ヤブの下降をしてしまったらしい。まったくお粗末なルートファインディングだったということだ。

前方に1308P  この踏跡のルート沿いにも刈り払い作業で伐られた雑木や灌木類が薪状にまとめられていた。それからビニール紐の目印以外にも、所々にあのオレンジ色の樹脂板の杭が打たれている。

 さらに下って行くと、県境を示す小さな標石も見られるようになった。またこのあたりの斜面にはムラサキヤシオやアカヤシオの花が沢山咲いている。北面では少ししか咲いていなかったが、南面では満開の時期になったようだ。

 それからこの南面からの見通しは良くない。左方向に樹林越しで何とか二子岩やククリ岩が見える程度だ。

1308P付近  鞍部付近に下ってくると、東側の谷が溝状に深くガレてヤセ尾根になっていた。このあたりの崩落がつづけば、この踏跡のルートも県境を外れ西側の斜面を巻くことになるだろう。

 鞍部から登り返したピークが1308m地点だが、そのまま尾根沿いを南に辿る。周りは背丈から背丈以上の笹ヤブだが、依然として刈り払いの道が通じている。笹道の途中に焚き火の跡などもあった。

1280P付近からふり返り、広小屋山方面  小鞍部に下り、少し登り返した地点が地図の等高線でいうと1280mのピークで、そこから北西をふり返るとなだらかな広小屋山の稜線が見えた。

 1280m峰からは県境を東方向に向かう。しかし、刈り払いの道は1280m峰から東に5mほど行った地点で県境とは違う南東方向への尾根沿いに付いている。県境は笹ヤブのコースだ。

 ここでどうするか少し迷う。県境を辿り大上峠へ行くには、このまま笹ヤブの尾根を東へ進めばいいわけだが、この南東へつづく刈り払いの道は一体どこへ行くのだろうか…。目印のビニール紐もこの南東方向に付いている。もしかすると、これは県境の笹ヤブを巻く道で、下って行けば斜面を巻いて大上峠の方へ通じているのかもしれない…。

1280P東側から南東方向への道、左側は県境の笹ヤブ  そんな都合のいいことを考えて、ここからは南東へ向かう刈り払いの道に下ることにした。柴刈りのされた踏跡を下って行くと、ムラサキヤシオが咲いたのどかな春山の尾根道になった。さらにカラマツや雑木林の混生した美しい樹林帯をしばらく下る。

 しかし、いつになっても東方向へのルートにはならない。あの1280m峰からずっと南東方向の長野県側に下って来てしまった。

 どうもこの道は大上峠には行かないようだ。はて、今さら1280m地点に戻って県境を歩いても仕方がない…。このままこの道がどこへ通じているかを確かめた方が面白いかもしれない…。

左方向になだらかな広尾根がつづく  そこで気持ちを切り替える。今日は大上峠への県境歩きはやめて、この尾根道を道なりに辿ることにしよう。

 右後方にいくらか遠くなった広小屋山が見える小ピークを越えると、左(南東)方向に緩やかな雑木林の広尾根がつづいている。ビニール紐の目印もそちらの尾根筋についているので、その明るく気持ちのよい雑木の生えた広尾根に下る。このあたりは左側がカラマツの植林地になっていた。

1190P付近、その先の左側が林道への下降点  広尾根の下った先を右(南)にちょっと進むと、黄色の看板のある尾根の小ピーク*を通る。その小ピークの先のあたりに左(東)方向へカラマツ林の斜面を下る踏跡が見える。

 そしてあのビニール紐の目印もその斜面沿いの立木に付いていた。これ以上尾根沿いを南方に下っても仕方ないので、そこから東側へ下ることにする。

(*後に地形図で確認したところ、等高線1190mの小ピーク)

植林地の斜面下に林道(田口十石峠線)  カラマツ林の斜面を直進気味に下って行くと、途中で灰色のユニホームを着た人がカラマツの樹皮にせっせと何かを塗布しているのが見えた。そこで、その作業者の方にこの斜面の道がどこに通じているのか尋ねてみた。

 ところが、中年の作業者は質問にはほとんど上の空で、ただ下に林道が通っているということだけで、詳しいことは教えてくれない。

 また、広小屋山からつづいている刈り払いの道のことを訊いても、要領を得た返事はなかった。どこの馬の骨とも知れない妙ちきりんなヤツにそんなことは答えられるかといった感じだ。遊山者がくだくだ仕事の邪魔をしてもいけないので、一言礼を述べて斜面を下る。

林道を北東へ  植林地の急斜面を下ると、下に林道が通っているのが見える。やはり地図などには載っていない道だ。ビニール紐の目印を付けた人もこの斜面を下ったようで、林道に降りてみると、草付の法面にはビニール紐が付いていた。

 ここからは林道を北東方向へ進む。周りは芽吹いたばかりのカラマツの樹林帯で、のどかな春山の林道歩きとなる。

 少し進むと、路肩に樹脂製の黄色い標柱が立っている。標柱には「大野沢地すべり防止区域」と表記されていた。ということは、抜井川上流の大野沢付近ということなので、この近くに大上林道が通っているのは確かだ。

林道のカーブ地点から下に大上林道が見える  林道が左に曲がるあたりの路肩から右下を見ると、舗装道路が南北に通っている。あの舗装道が大上林道のようだ。またそこからは、この林道の出口付近に先ほど遭った作業者の車が駐車しているのが見える。

 やがてカーブ地点を左に曲がり、さらに右に下って行くと、先ほど見えた林道の出口付近に来た。林道はチェーンで通行止めになっていた。わきの看板を見ると、「林道 田口十石峠線*」となっている。すると、ここからずっと北にある田口峠付近から長野県側を林道が通っているのだろうか…。

(*「林道 田口十石峠線」は2006年現在まだ完成していないらしい。部分的に工事が行われていて、将来的には田口峠付近から十石峠にかけて広域林道が全通するということだ。)

大上林道を北へ  ここからは大上林道の舗装道路を北へ進む。平日なので交通量も少ない感じだ。ヤマザクラやヤシオツツジの花を見ながら歩く。

 ダラダラ林道を歩いて行くと、左の山側に黒塗りの山小屋風の建物が見える。近寄ってよく見ると、「大上峠公衆便所」と表示されていた。

 一般の観光地でもないところにこんな洒落たトイレがあるとは驚いた。ほとんど使われていない感じだが、これも旧佐久町が建てたものだろう。

大上峠付近(信州側から) 大上峠、東側の記念碑  そこから2、3分歩くと広場のような地点に着いた。左(西)側に地蔵尊の祠や記念樹の石碑が見え、「矢沢峠へ2k」・「熊倉へ3.5k」と表示された道標が立っていた。右(東)側に「大上峠」の銘板が付けられた記念碑が建っている。ここが標高1110mほどの大上峠だ。

 今日は予定では県境を歩いてこの峠に降りて来るはずだったが、途中から歩きやすい刈り払いの道を辿り信州側の林道へ降りてしまった。ねくらハイカーは、ここでようやく予定のコースに戻ったということだ。

林道から「のこぎり岩」方面 林道から1032P・タカノス岩・碧岩・大岩・二子岩西峰  峠からは上州側を西方向へ下って行く。道端にヤマブキが咲き誇る林道を歩いて行くと、前方右に「のこぎり岩」の特徴的な岩壁が見える。一枚岩の立派な岩山でこれも南牧村の名物のひとつだろう。

 また、そこから右方向には1032m峰やタカノス岩そして碧岩・大岩・二子岩西峰がよく見えた。まさにこのあたりは珍しい岩山や岩峰の宝庫だ。

林道の下りから広小屋山東尾根の肩付近  そこから林道をさらに北西方向に下る。

 途中から前方を見上げると、先ほど登った広小屋山の東尾根の肩あたりが見えた。あの稜線のピーク付近から南面の急斜面を下ってきたわけだ。

のこぎり岩へつづく尾根(林道南側から)  さらに広小屋山の東の山腹を通る林道を北方向へ下って行くと、のこぎり岩へつづく尾根がある地点を通った。右のガードレール付近から尾根沿いに微かなトレースが見える。ここがのこぎり岩への登り口だろうと思ってガードレールを跨ぎ、ヤブの踏跡に入る。

 尾根沿いをちょっと登って斜面の下を見ると、これまた驚いたことに、左側から作業道のような道が通っているではないか。

 ねくらハイカーは南側から大上林道を下ってきたので、尾根の北側につくられたのこぎり岩への道にまったく気づかなかった。これも一種のルートミスのようだ。

のこぎり岩へつづく尾根の鞍部  笹ヤブの斜面からその小道に降りて、尾根の鞍部に下る。そこからヒノキ林の南側の斜面を東へ辿る。しかし、この作業道のような道は岩稜の突き当り付近で終わっていた。そこからは岩稜の付け根の急斜面を左に巻いて登るようだ。

 どうもその急斜面を登る気にはなれないので、鞍部まで引き返し、そこから笹ヤブの尾根筋を忠実に直登してみる。

 微かな踏跡のある急斜面を北東方向へ登る。笹ヤブなどを掴みながら苦労して登って行くと、どうにか岩場の尾根筋に出た。

「ミホガハラ」付近  登りついた岩場がのこぎり岩西側の最高地点で「ミホガハラ」と呼ばれる山頂(1160m)だ。

 樹木や灌木に覆われているので素晴らしい眺望とはいかないが、樹間越しに大上峠や四方原山がある稜線、そして西上州の山々を見渡すことができた。アカヤシオが咲いている山頂部でちょっと休憩して、のこぎり岩の尾根を東方向へ歩いてみる。

のこぎり岩から大上峠方面、後方に四方原山のある稜線  ヤセ尾根の山頂部は樹木や灌木が生えているので、何とか岩稜を東へ辿ることができる。

 等高線の1120m付近あたりまで来ると、尾根筋は急な下りになっていた。ロープを補助にした方がいいような下りだ。今日は別に1104m地点まで行く必要はないので、そこから引き返すことにする。

のこぎり岩から北方向、兜岩山〜トヤ山付近の稜線  のこぎり岩を西へ戻る途中で、北方向に遠く兜岩山からトヤ山あたりまでの荒船山周辺の山々を見渡すことができた。

 ミホガハラ手前の鞍部から西側へ笹ヤブの斜面をトラバースして下る。途中からヒノキ林の斜面を南へ下り、作業道に降りる。のこぎり岩へはこのあたりの斜面を各自適当に登り降りしているようだ。

 それから作業道のような小道を辿り尾根北側につくられた登り口から林道に出て、自然公園の駐車場に向かう。途中、林道からのこぎり岩をふり返ると、南側から見るのとは山容が違ってミホガハラの尖峰が際立って高く聳えていた。

 やがて自然公園の駐車場に戻ってくると、朝と同じように付近の森からツツドリの声が聞こえてくる。今日は余地峠から大上峠まできっちり県境を歩くことはできなかったが、静かな山歩きができたということでヨシとしよう。

 帰り際の大上林道の下りで、中国の山水画にも負けないくらいのタカノス岩や碧岩付近の峨峨たる懸崖の絶景を眺める。改めて南牧村の自然の景観の素晴らしさを実感することができた。

日程2006年5月12日 (金)
天候曇りのち晴れ 南東の微風
行程時刻南牧村自然公園駐車場6:45→林道分岐6:47→(左折、北西方向へ)→余地峠・象ヶ滝分岐(1080m地点)7:10〜7:13→(左折、西方向へ)→自然公園林間歩道分岐7:23→旧道(ショートカット道)分岐7:25〜7:27→(左折、旧道歩き)→林道合流地点7:32→余地峠7:48〜7:58→(県境沿いを南東へ)→(南寄り)→(西側の作業林道へ寄り道)→(再び県境へ)→県境尾根(1360m付近)8:15〜8:18→横見山(1400P)8:31〜8:36→(下って、笹ヤブの鞍部)→1410P 9:13〜9:23→(南面の支尾根に下り、ルートミス)→(西側の県境尾根沿いへ)→矢沢峠9:48〜9:58→(西の長野側の斜面へ巻いて、再び県境へ)→東尾根の肩(1450P)10:30〜10:33→(南西へ)→広小屋山10:40〜11:05→(戻り、北東へ)→東尾根の肩手前11:12→(南面を東方向へ下降、ルートミス)→(西寄りにトラバース)→刈り払い道出合11:20→(県境沿いを下降)→鞍部11:46→1038P 11:53〜11:56→1280P 12:03〜12:05→(県境から外れ、南東へ)→(雑木林の広尾根)→1190P付近12:28→(カラマツ植林地を東へ下る)→林道田口十石峠線出合12:36→(北東へ)→大上林道出合12:42→(北へ)→大上峠12:47〜12:52→のこぎり岩への尾根取り付き(尾根南側)13:15→(北側入口からの道に合流)→鞍部13:17→(道は行き止り、鞍部付近まで戻り)→(北東へ直登)→ミホガハラ付近13:38〜13:43→(岩尾根を東へ)→1120m付近13:55〜13:58→(戻り)→(ミホガハラ手前を西へ下り、北側からの道に合流)→のこぎり岩入口(尾根北側)14:26→自然公園駐車場14:48
備考♦この記録では、白髪岩の原三角測点を発見したA氏のホームページ「Hobby-Site-」の西上州の山の記録や前橋ハイキングクラブの方々の記録およびMTB愛好家の記録等を拝見し、参考にさせていただきました。改めて感謝いたします。
♦今回歩いた県境コースは全体的に樹林に覆われているので見晴らしはよくありませんが、晩秋の落葉の頃や春の新芽の頃なら多少見通しのきく山歩きができます。

◇ T N H C ◇

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