千曲平付近から小出俣山(赤谷山)



 昨年秋、ねくらハイカーは利根郡みなかみ町にある阿能川岳に登った。そのとき、山頂へ通じる南側の尾根付近から北西方向に秀麗な山容の小出俣山(おいずまたやま)が見えた。小出俣山は群馬県が選定した「ぐんま百名山」には入っていない。

 しかし、ネットに上がっている記録などによると、山頂からの展望が素晴らしいとのこと。この山は阿能川岳と同じように登山道が切り開かれていないので、主に残雪期に登られているようだ。山行記録も数が多い。小出俣山からさらに上越国境の谷川岳方面へ縦走する方もいる。横田氏の『群馬300山』には残雪期に阿能川岳とセットで登った記録が出ていた。

 ところで、ネット上の記録には、残雪が消えた6月頃にヤブ漕ぎして登っているものもある。ということは、時間をかけてヤブ漕ぎすれば何とか山頂に立てそうだ。そこで今秋も上越国境近くのヤブ山に登ってみようと、10月下旬頃、みなかみ町方面へ出かけてみた。
 少し遅めの午前3時頃家を出る。今回も途中から関越道を利用する。水上温泉からは県道270号(相俣水上線・相俣湯原線)に進み、猿ヶ京方面へ向かう。瀬入沢沿いを走る頃には夜が明けていくらか白んできた。

 快調にカーブ道を走行し、昨年阿能川岳を登ったときに利用したポケットパークを左に見てトンネル道(仏岩トンネル)に入る。平日の早朝ということで、対向車は一台も通らない。トンネルを通り抜けて下り道を飛ばし、閑散とした富士新田の住宅地を走行して行くと、いつの間にか左手に高原千葉村の施設がある直線道に出てしまった。

 アレ、これは川古(かわふる・かわぶるい)温泉への分岐を過ぎてしまったようだ…。以前ここを走行したときは、国道17号側からきたので間違うことはなかったが、今回は水上側からきたので分岐地点を見過ごしてしまった。ねくらハイカーのボロ車はGPSを積んでいないので、これは仕方がない。
小出俣林道入口(駐車地付近)、工事看板あり  そこで途中から引き返し、新田沢に架かる橋を渡って左の川古温泉方面への分岐道に入る。そして赤谷川沿いの旧道へ進み、小出俣沢に架かる小橋を渡って行くと、左側の路肩に駐車スペースがある地点に着く。

 そこから右上の山腹に林道が延びていて、入口には一般車両通行止めの遮断機が設置されていた。多分、この山腹道が登り口の千曲平(せんげんだいら)に通じる小出俣林道だろう。

 ところで、この駐車スペースには何か工事関係の仮設のプレハブ小屋が建っていた。林道の入口に立てられた看板を見ると、「林道工事中」とある。現在、林道の改修工事をしているようだ*。小屋は工事関係者の事務所兼休憩所らしい。ということは、このあたりに工事関係者の車両が置かれる可能性が高い。ねくらハイカーは小屋から離れたところに駐車する。平日ということで、先客ハイカーの車は一台も停まっていない。旧道の奥には明かりがついた建物が見える。川古温泉だ。

[*看板には林道の改良工事と表記されていた。期間は平成21年10月14日から平成21年12月25日まで。]

小出俣林道(ゲート付近) 左カーブ付近、オーバーハング状の崖  天気は曇り。気温は6℃。ちょっと肌寒い。遮断機のゲートが林道の道幅いっぱいに設置されているので、まずはゲートを乗り越えて林道に入る。路面はいくらか湿っぽい。前夜に通り雨があったのかもしれない…。

 坂道をトボトボ歩き出して左カーブにかかると、左の山側の斜面がオーバーハング状の崖になっていた。これは先人の記録で知っていたが、上部が崩れずに庇のようになっているのが面白い。

右前方(北東)に小出俣沢対岸の山並み  そこから小出俣沢右岸を北方向へ進む。林道はかなりの高巻き道となっていて、3、40mほど崖下に沢筋が見える。

 この林道は古い時代につくられた感じがする。山側の法面に擁壁などがなく、土砂が剥き出しの状態になっている。路肩にはガードレールがなく、コンクリートの凸凹で囲っているだけ。道幅も狭い。

 落ち葉が疎らに積もった道を北へ進んで行くと、右方向の小出俣沢対岸に紅葉したピークが見えてきた。阿能川岳へ連なる南尾根のピークなのか、その支尾根上にあるピークなのか、ねくらハイカーにはわからない。

途中に大きな崩落地あり、車両通行不可[2009年10月現在]  現在工事中ということで、林道沿いの樹木には蛍光ピンクテープの目印が付いている。それから草刈りされた路肩部分には、新しい樹脂杭や木杭が多数打たれていた。

 林道沿いはかなり湿っぽい。赤土のぬかるみがあるところを進んで行くと、やがて路面が大きく抉られた崩落地となる。この崩落現場のことはネットの記録に出ていた。林道の改良工事とは、ここの崩落地を補修して通行できるようにするものらしい。車は現在ここから先には通行できない。

 斜面に付けられた踏み跡を辿って崩落地の上を越えて行くと、林道の傍らに測量機器の三脚が置いてあった。現在測量中のようだ。ということは、本格的な工事はまだ始まっていないわけだ…。

 そこから少し進むと、山側の斜面から滲み出た水が林道の上を筋状に流れているところを通る。このあたりの斜面はじめじめしていて、いかにも崩れやすい状態になっている。素人目でも林道の全面的な改修工事が必要にみえる。
右下に調整池(赤谷川第二発電所調整池)あり  そこからさらに落ち葉が積もった道を西寄りに進んで行くと、フェンスで囲われたところに着く。看板を見ると、「東京発電株式会社*赤谷川第二発電所調整池」とある。

 地形図を参照すると、この調整池から下流側にある発電所まで地下に導水管が通っている。小出俣沢以外にも赤谷川上流部の沢水が一時的にここへ溜められているらしい。

[*東京電力の子会社。主に東電の水力発電所関連の仕事や派遣業務などを請け負っている。]

雑草が生えた林道  右下に調整池の青い水面を眺めながら雑草が生えた道を進むと、傍らの樹木が茂って少々ヤブめいてくる。

 林道が通行止めになっているので、このあたりからは草刈りや柴刈りなどの手入れが一切行われていない。周囲は大体スギの植林地となっているが、カラマツや広葉樹の雑木類が混生している。

左に伐採地あり、上部に尾根の稜線  調整池から2、3分ほど行くと、左側が開けた伐採地となり、斜面上部に尾根の稜線が見えた。十二社(じゅうにしゃ)ノ峰から南へ延びる尾根のようだ。

 ところで、雑草や笹や雑木類の灌木が生い茂る伐採地には貼り紙の看板が立っていた。それには「小出俣自然林復元試験地」とあり、財団法人日本自然協会、林野庁の関東森林管理局、そして赤谷プロジェクト地域協議会という団体名が記載されている。スギ伐採後の自然林復元の調査地ということらしい。それから付近の樹木には番号が書かれた四角い板の標識も付いていた。これは調査地の各区域を示しているようだ。

 植林地を昔の自然林に戻すという試みのようだが、部外者の凡人ハイカーにはまったくわからない。貼り紙の問い合わせ先には「赤谷森林環境保全ふれあいセンター」とある。これはネットで無雪期にヤブ漕ぎして小出俣山に登った記録を上げていた組織だ。どういう組織なのか不明だが、赤谷という文字があるので、このあたりの山域を活動拠点としているグループらしい…*。

[*後日ネットで調べると、関東森林管理局管轄の組織で、「三国山地/赤谷川・生物多様性復元計画」いわゆる「赤谷プロジェクト」というものを推進する団体ということだ。詳しくは関東森林管理局のホームページ(※リンク切れの場合あり)参照。]

北東方向の樹間に阿能川岳南尾根の山並み  そこから暫くはスギ林の中にカラマツや雑木類が茂っている樹林帯を進む。右側の樹間には少しガスがかかった山尾根が見える。阿能川岳へ通じる南側ルートの尾根らしい。晴れていれば、真っ赤に色付いた山尾根を眺めることができるのだが、今日は生憎の曇り空。天気予報では午後から晴れると出ていた。しかし、どうなるかわからない。

 林道沿いの樹木には、番号標識以外に緯度・経度・標高・林道ゲートからの距離などが表記された板も付いている。利根沼田森林管理署か「ふれあいセンター」の関係者が取り付けたものらしい。板を取り付けた方は位置を正確に計測できるGPSを携帯しているようだ…。

雑木林の樹林帯を下り気味に進む  落ち葉が積もった林道を上り気味に進み、左に作業道のような小道が分岐する峠状の地点を過ぎる。

 そこから雑木類がきれいに紅葉した道筋を下り気味に進む。右の樹間には相変わらず雲がかかった尾根筋がぼんやり見えている。

左側にカツラの大木あり[千曲平付近(?)] 前方に橋(千曲平橋)あり  そのうちに周りがいくらか開けたような平坦地となり、右下に涸れ沢状の河原が見えてきた。どうも、このあたりが小出俣沢二俣近くの「千曲平(せんげんだいら)」というところらしい。林道の左側には先人のネットの記録に出ていたカツラの大木もある。

 さらに右カーブになったところを進んで行くと、前方に白い欄干のコンクリート橋が見えた。小出俣沢左俣に架かる千曲平橋だ。

千曲平橋から北西方向  橋の上で立ち止まって左俣の上流方向を眺めてみる。ネットの記録によると、このあたりから小出俣山の西尾根が見えるということだが、遠方はガスっていて何も見えない。

 これは、今日山頂に上がったところで展望が得られるかわからない…。普段の行いの悪いヤツが登っているのだから、これはどうしょうもない。素直に天気予報が当たることを祈るのみ。

落ち葉の道を南東へ  そこからさらに右カーブを進み、落ち葉が厚めに積もった坂道を辿る。このあたりから左の斜面に取り付いてもいいのだが、人為的に開削された法面が急傾斜となっているので登れない。

 林道をそのまま南東へ進み、次の左カーブにさしかかると、左側がスギ林の平坦地となった。多分、このあたりが地形図の824m地点だろう。

林道沿いの樹木に目印あり(南尾根取り付き地点)[824m地点付近(?)]  そこで傍らの樹木を見ると、テープの目印が付いてた。やはり、ここが小出俣山南尾根*への取り付き地点らしい…。

[*この尾根は小出俣山山頂部から南側に延びていて、小出俣山への最短ルートとなっている。昭文社の山と高原地図『谷川岳』では「オゼノ尾根」という名前が付いている。しかし、日本登山大系3『谷川岳・奥利根』(白水社刊)では「大ビノ尾根」となっている。これは沢登りのグループによって呼び名が違うようだ。地元では何と呼んでいるのか不明。この尾根は小出俣沢の谷を二つに分けているので、「小出俣沢中尾根」と呼んでも差し支えないと思われるが、ここは単純に「小出俣山南尾根」としておく。]

スギ林の奥に雑木林の斜面あり  ひとまず林道で一息つく。気温は9℃くらい。日が昇って気温が少し上がってきた。

 小休後、テープ地点からスギの植林地に入り北へ進む。先人の目印を期待して入ったものの、スギ林の中には他にテープ類の目印はない。先人たちがどこを歩いているのかわからない。仕方ないので、コンパスを出して北方向へ進む。

 スギの間を適当に進んで行く、前方が雑木林の急斜面となった。このあたりが尾根の取り付きらしい…。

ブナの大木などもある雑木林の尾根筋を北へ  まずは雑木類が茂る斜面を北西寄りに登り、左からくる尾根っぽい斜面と合流する。そこからは急斜面を北へ登る。尾根沿いは笹が茂っているが、疎らなので登るのに何の支障もない。

 薄っすら紅葉した雑木林の斜面を登って行くと、樹木に古い赤布の目印があった。それから、樹木には古いペンキマークも確認できる。やはり、この尾根で間違いないようだ…。

笹と雑木類の尾根筋  尾根沿いの斜面にはブナやミズナラなどの大木もいくらか生えている。ここは伐採が入っていると思われるので、伐り残されたものらしい。暫くは腰丈から胸丈ほどの笹が疎らに生えた急斜面を登る。一時的にシャクナゲが生えたところもあるが、すぐに広葉樹の雑木類と笹が茂る穏やかな植生の斜面になる。笹地には微かな踏み跡のようなものも確認できる。やはり、ここを登る人が多いようだ。

 運動不足のねくらハイカーは、すぐに息が上がってしまう。5分も歩かないうちに小休止となる。尾根の途中から蛍光ピンクテープと青テープ2本セットの目印が見えるようになった。新しい感じなので、今年登った人が付けたのかもしれない。

 それから、立木や灌木の枝には番号と「B」とか「D」とかアルファベットの記号が書かれた小さな樹脂タグがいくつも付いていた。色別になっているので、何かの調査をした跡かもしれない。よそ者の凡人ハイカーには何の印なのかさっぱりわからない。

 また、尾根沿いにはイノシシが地面を掘り起こした跡もある。そして、それほど新しくはないが、ブナの幹には黒いヤツの爪痕もしっかりと残っている。

疎らに生えた笹 紅葉の雑木類  途中で何度も立ち止まりながら登る。傾斜が緩くなると一時的に笹が背丈以上になるが、それほど密生していないので、別段登りの邪魔にならない。標高はそろそろ1000mを越えてきたようだ。

 このあたりは広葉樹の紅葉が真っ盛りで、カエデ類がひと際鮮やかに映えていた。まさに秋山の風情満点だ。

北東方向に阿能川岳〜三岩山の稜線  古い倒木などを乗り越えて登って行くと、右方向に小出俣沢右俣(大穴沢・大木穴沢)の対岸にある山の稜線がぼんやり見えてくる。少しガスが取れたので、遠方の見通しがよくなってきた。このまま晴れ上がればいいのだが、まだどうなるかわからない。今日は風がほとんどなく、先ほどから日差しが出てきた。気温は18℃に上がっている。関東地方は10月下旬になっても暖かい日がつづく。

 さらに尾根筋を登りつづけると、右の北東の樹間に山の稜線がハッキリ見えてきた。先人の記録で見覚えのある山並みだ。阿能川岳から三岩山あたりの稜線らしい。やはり、阿能川岳は西側から眺めても地味な姿をしている。

比較的歩きやすいヤブ尾根  そうこうするうちにまた傾斜が急になってくる。足腰が衰えたねくらハイカーは笹や樹木の枝を掴みながら登る。途中、クロベ(ネズコ)が2本生えたところを過ぎる。それから少し尖った岩のあるところを通る。

 尾根沿いは多少ヤブめいてくる。リョウブなどの雑木が茂ったところは枝を掻き分けながら進む。笹は密生していないので比較的登りやすい。しかしながら傾斜はきつい。体力が衰えた者は休み休み登るしかない。

北西の樹間に小出俣山南西側の山尾根  暫し自分のノロノロペースで登って行くと、左前方(北西)の樹間に小出俣山から南西へ延びる山尾根も見えてきた。

 この小出俣山南尾根は、登るごとに小出俣山を中心に小出俣沢の谷を馬蹄形に取り囲む左右両側の山尾根が見えるようになる。しかし、高度が上がるごとに、今まで見事な彩りを見せた紅葉の樹林帯は枯葉が多い灰色の樹林帯に変わる。ねくらハイカーは左右の山尾根にキョロキョロ目をやりながらゆっくり登る。

 そのうちにいくらか笹と灌木類が密生してきた。尾根沿いには古い赤テープが気休め程度に付いている。

 急傾斜の尾根筋を登りつづけると、後方(南東)から柔らかい日が当たり出した。天気が回復してきたようだ。風がないので、気温はすでに20℃近くある。この時節としては暖かい。
クロベとシャクナゲが多い尾根筋  やがてネマガリダケと雑木のヤブを掻き分けながら登るようになる。すでにバテ気味のヘタレハイカーは、途中、長めの休憩をとる。

 さらにヤブ尾根を登りつづけると、クロベが纏まって生えたところを過ぎる。

左(西)の樹間に1481P(松ホド山)〜1621Pの稜線
 それから広葉樹の灌木類にシャクナゲが混じる尾根筋を登るようになる。このあたりからは、左(西)の樹間に小出俣山から南西へ連なるゴツゴツした稜線が見えた。

前方に岩稜[1410m付近(?)]  さらに登りつづけると、前方が岩稜となった。ここではクロベが巨大な盆栽のように根や幹を岩の上へ乗り上げて生えている。クロベが岩の上へ伸びようとする生命力は何とも力強く頼もしい。

 無雪期ということで、岩稜は無理をすれば直登できる感じだが、ここは右の斜面に巻く。先人の記録によると、このあたりが標高1410m付近ということだ。

右(東)側の斜面に巻く  笹や灌木の枝を掴みながらヤブの斜面をトラバース気味に登る。それから、適当なところで上に向かって樹木を掴んで登ってみる。

 すると、岩稜上部のクロベとシャクナゲが密生したところに出た。しかし、そこから痩せた岩稜が北へつづいていた。これは巻くのが足らなかったようだ…。

 仕方ないので、シャクナゲの枝を掴みながら岩尾根を北へ辿る。10mほど進むと再び笹と灌木が茂る斜面となった。

岩稜から上の尾根筋、後方(北側)は笹ヤブの急斜面 ネマガリダケの笹ヤブ  そこからは雑木類の灌木とネマガリダケの密ヤブ帯となる。傾斜もかなりきついのでペースがガクンと落ちる。

 ねくらハイカーは途中何度も立ち止まって休む。普段運動をしていない者がいきなり急傾斜のヤブ尾根を登るのはちょっと無理があるようだ。倒木があるところで再び長めの休憩タイムとなる。

見通しの利かないヤブの斜面  上空を見ると、また雲がかかってきた。笹と灌木のヤブの中ではほとんど見通しが利かない。

 一時的に雲の影に入っているので、気温は18℃以下になった。ヤブ漕ぎには曇っていた方がいい。暫くは背丈ほどの笹と灌木の斜面をダラダラ登る。

小ピーク(1600m付近)から北西方向、小出俣山山頂部〜北西稜  密ヤブ帯を我慢して北へ登って行くと、やがて展望のある小ピーク地点*に出る。そこからようやく前方(北西)に小出俣山の山頂部が見えた。ちょっとガスっているがいい姿をしている。

[*あとで推測すると、地形図の等高線で大体1600m付近のなだらかなコブ地点。]

小ピークから東方向、阿能川岳〜三岩山 小ピークから北東方向、川棚頭・俎ー・谷川岳方面  それから、北東方向にはガスがかかった川棚ノ頭や俎ー(まないたぐら)あたりが望める。谷川岳は完全に雲に隠れていた。

 東隣にある阿能川岳は何とか見える。西には十二社ノ峰につづく山尾根も見えているが、いくらか靄がかかった感じでぼんやりしている。

小ピークから南方向、赤谷湖方面、右に十二社ノ峰  南方には赤谷川の谷の先に赤谷湖が微かに見えた。

 先ほど一時的に青空が出てきたのだが、また雲が覆ってきた。このままだと山頂に上がっても好展望は期待できない。何とか晴れるのを祈るのみ。

笹と雑木の密ヤブ帯  小休後、北側へ少し下って笹と雑木類の密ヤブ帯を登る。笹や灌木を掻き分けたり笹を掴んだりしながら登るのだが、これが中々上へ登れない。ペースが極端に落ちる。残雪期なら一歩一歩着実に雪面を捉えて行くのだろうが、無雪期はそうは行かない。

 笹だけなら掻き分ければ何とか登れる。しかし、灌木の枝ヤブに入り込むと立ち往生する場合が多い。そのときは、灌木の上を乗り越えて行くしか方法がない。

 このあたりの笹はいくらか濡れていた。朝露ではないようなので、夜中に霧雨か小雨が降ったのかもしれない…。

 途中、見通しのない笹ヤブの中に腰を下ろして休む。体力が衰えたヘタレハイカーはすでにバテバテだ。なるべく糖分を多く摂るようにする。

 このあたりの広葉樹の雑木類にはダケカンバなどもあるが、ブナなどの矮小化したものが多い。やはり、この山域は冬場は風雪が厳しいところとなるようだ。
山頂部の尾根筋を北西へ、左上奥がピーク地点  そこからまたヤブを漕ぎながら登る。フラットな斜面を北西から西へ方向を変えて登って行くと、そのうちに尾根状の地点に出る。最初は山頂かと思ったが、まだ山頂ではなかった。南側からくる小さな枝尾根の上らしい。

 右上にピーク地点があるようなので、そこから再び尾根状の斜面を北西方向に進む。

 この尾根筋からは前方(北西)に山頂らしきピークが間近に見える。それから多少展望があり、北に上越国境の山々、北東にガスがかかった谷川岳方面、そして南西には十二社ノ峰付近の山尾根を眺めることができる。

山頂東側付近から北東方向、川棚頭・俎ー・谷川岳方面、中左奥に茂倉岳 山頂東側付近から北方向、東俣頭・万太郎山・大障子頭方面  灌木の枝や笹を掻き分けながらゆっくり進む。尾根沿いを時間をかけて登って行くと、やがて東西に延びる山稜*に出る。そこからは好展望が広がっていた。東の谷川岳から西の平標山へ連なる上越国境尾根が一望の下に見渡せる。新潟側は雲が取れて晴れ渡った秋空になっていた。

[*小出俣山北東稜につづく尾根筋で、阿能川岳や谷川岳方面への縦走ルートになっている。]

小出俣山山頂(三角点付近)  山稜のさらに西側に最高地点があるようなので、膝丈ほどの笹地を10mほど進んで小ぢんまりとしたピーク地点に立つ。

 そこには山頂を示す標識類はないが、背の低いヤマザクラの枝に赤いビニール製のリボンテープが付いていた。そして、それには「フジオカ T.K」とマジックで書かれていた。これは7月に上信国境の小高山で見たものと同じヤツだ。日付は「2009.4.19(日)9:52」とあった。ということは、今年の春の残雪期にフジオカ某氏がこの小出俣山に登っているわけだ。午前10時前に登頂しているということは、かなり早朝に登り出したのだろう。それにしてもこのフジオカ T.Kなる人物またはグループは群馬周辺の山を中心に歩いているのかもしれない…。ねくらハイカーはいろいろ勝手に想像する。

小出俣山の三等三角点標石 山頂から西方向、1621P〜1720P方面  小出俣山は三角点ピークなので、是非とも標石を見物したい。周囲は笹が茂っているので、石柱の頭は出ていない。そこでいつものように標石を探そうとリボンテープ付近をちょっと歩いたら、左足の踵にコツンと岩の感触があった。そこで笹を脚で払うと、足元に三等三角点の標石が現れた。

 今回は探す手間もなく、いとも簡単に見つかった。やはり、この最高地点が標高1749mの小出俣山(赤谷山)山頂だ。

北側に東俣ノ頭・万太郎山[ズーム画像]  山頂地点からは、先ほどと同じく北側の上越国境の山々や小出俣山から西へつづく山稜がよく見える。東側の阿能川岳はちょうど山頂部のヤブ尾根に隠れて見えない。それから、南東方向には吾妻耶山の特徴的な山影が確認できる。群馬側はまだどんよりとした雲がかかっている。ここからの展望は上越国境の山々を眺めるだけで十分だ。雪を頂いた上越の山も美しいが、この時季の上越国境尾根の山肌も渋い感じでいい味を出している。

 ねくらハイカーは北側の万太郎山方面をじっと眺める。谷川岳から平標山の間にある山で、ねくらハイカーが一番好きなのは万太郎山だ。この山は登ってもいいし、遠くから眺めてもいい。何か崇高で優美な雰囲気を持っている。

 この山頂は先ほどから雲の影に入っているので、気温は18℃ほど。晴れている割にはそれほど上がらない。暫し遠方の山々を眺めながら休息する。

山頂から西へ、左に1720P、後方は大源太〜平標・仙倉  さて、帰りは往路を戻ってもいいのだが、ちょっと面白味がない。ここから山稜を西へ辿り、十二社ノ峰の方へ下れば変化のある山歩きができそうだ。長丁場になりそうだが、時刻はまだ正午前。何とかなるだろう…。そのように気安く考え、山頂から西へ辿る。

 笹が密生した尾根筋を下る。正面には遠く上越国境の仙ノ倉・平標から大源太の稜線を眺めながら行く。左前方にはこれから向かう等高線で1720mの峰が控えている。

左下(南)に小出俣沢左俣の谷 小ピークから東方向ふり返り、小出俣山山頂部  膝丈から腰丈ほどの笹と雑木類の灌木が生えたヤブ尾根を下り、いくらか登り返すと、肩状の小ピーク地点に着く。

 そこから東をふり返ると、小出俣山がどっしりと聳えていた。左下には小出俣沢左俣上流部の谷筋が見える。この谷を遡行する方もいるらしい…。

ヤブ尾根を西へ、1621P(左奥)〜1720P(中右)方面  一息ついて西へ下る。尾根沿いは笹地に灌木が密生している。なるべく灌木の枝を避けながら進む。

 ところで、このあたりから笹ヤブの中に蔓類が混じってきた。枯れた蔓が脚や体に絡むと前進できなくなる。鉈で払えば一発で抜け出せるのだが、軽量軽装備のねくらハイカーはそのようなものは持っていない。

 仕方ないので、絡んだ蔓を手で折って切りながら行く。これは尾根を進むのに時間がかかる。

笹地に灌木が生えた尾根沿いの斜面  このあたりの尾根沿いは、左(南)側がガレていて急傾斜で小出俣沢左俣の谷へ切れ落ちてる。右(北)側はなだらかな傾斜地だが、笹と灌木の密ヤブ帯になっている。できるだけヤブの少ない尾根の境界に沿って進む。

 途中、中間付近の鞍部で休憩。この笹尾根には動物や人が歩いたような跡はまったく付いていない。尾根沿いには高木が生えていないので、展望は良好だ。

 上空はすっきり晴れ渡ってきた。北側の上越の山々はもちろん、遠く群馬側の山々も見えるようになった。先ほどまでガスっていた谷川岳付近もようやく雲が取れた。天気予報が当たったらしい。

1720P東斜面の登り、上部に笹とシャクナゲの密ヤブ帯あり  眺めはいいのだが、次の1720m峰への登りがちときつい。笹の中には矮小化したシャクナゲが混生していて、かなりの密ヤブになっている。笹を掴んで登っても、シャクナゲの枝に体が引っ掛かって登れない。分速2mほどの超スローペースで進む。

 しかして、途中、シャクナゲの密ヤブに嵌まり込んで動けなくなる。どうにもならないので、一応左と右にトラバースしてみたが、どちらも密ヤブ帯で登れない。

 仕方ないので、シャクナゲの枝に足をかけてヤブを乗り越える。何度もヤブの中で立ち往生しながら亀の歩みで登る。

1720P東斜面から小出俣山方面  途中の笹ヤブで一息つき、東方向をふり返ると、幾分尖った感じの小出俣山を見ることができた。小出俣山は西側から見ても結構いい姿をしている。

 それから、北の万太郎山は、相変わらず秀逸なる姿を四方に示して己が矜持を保っているかのように見えた。

1720P山頂付近、北側に万太郎山(右後方) 1720P山頂付近から北東に谷川岳方面  そこから胸丈ほどの笹を掴みながら密ヤブ帯を何とか登り、1720m峰の山頂部に出る。

 この笹地になった山頂からも好展望が広がっていた。東の小出俣山はもちろん、北東の谷川岳へかけての眺望も素晴らしい。

1720P山頂付近から北方向、東俣頭・万太郎〜大障子頭〜茂倉(右奥) 1720P山頂付近から北西方向、平標・仙倉・ヱ大黒方面  それから北の万太郎・東俣ノ頭から大障子ノ頭あたりの稜線も秋の日差しに映えている。

 そして、北西の平標山・仙ノ倉山からエビス大黒ノ頭あたりの縦皺の山肌も見事だ。

 さて、このピークは昭文社の地図では「三尾根山*」という山名が付いている。一方、日本登山大系では「オゼノ田」という山名が付いていて、ここから南東へ派生する微かな枝尾根を「オゼノ尾根」としている。一般には昭文社の山名で呼ばれているようだが、よそ者のハイカー風情には何と呼んでいいのかわからない。ここは地形図の等高線から「1720m峰」と呼んだ方がいいのかもしれない…**。

[*地形的に三つの尾根が交わっているピークということで命名されたのかもしれないが、山名の由来は不明。]
[**ネットの記録によると、地元の方々が2006年6月に小出俣山付近の登って「オゼノ田」と呼ばれる場所を探査したそうだ。古い地図には小出俣山付近に「オゼノ田」という地名が記載されているとのこと。しかしながら、名前の由来となった尾瀬の湿原地のような場所は発見できなかったらしい。地形図を見ると、このあたりの尾根沿いは急峻で周囲に崖マークがいくつも記載されている。この周辺に湿原があるような場所は想定できない。湿地があるような場所は比較的なだらかな沢の源流部付近なので、尾根上のピーク地点に湿原や湿地と関係がある名前が付けられるはずがない。これは何かの錯誤または勘違いがあるようだ。]
1720Pから南方向、右に1621P、左奥に十二社ノ峰  ところで、小出俣山からこの1720m峰まで30分くらいで来られると想定していたのだが、実際は1時間以上かかってしまった。この調子で行くと、このあとの行程がちょっと厳しいかもしれない…。

 小休後、午後の日差しを浴びながら南西方向にヤブ尾根を辿る。

右側のヤブの斜面を下る  急斜面の尾根筋を下る。左側が崖状になっているところは灌木が茂る右斜面をトラバース気味に進む。このあたりは岩稜っぽいヤセ尾根となっていた。しかし、笹やシャクナゲ、雑木類の灌木が密生しているので歩くことはできる。

 ねくらハイカーは事前にネットで残雪期にここを歩いた方の記録を拝見していたのだが、積雪があればこのあたりは左(東)側にも巻けるらしい。しかし、無雪期は東側の小出俣沢左俣に面した斜面は急峻でガレ場もあり多少危険にみえる。尾根筋を進むか、西側の赤谷川に面した斜面に巻いて行くしかルートはないようだ。そして、そのどちらも笹とシャクナゲの密ヤブ帯になっている。

シャクナゲと笹が密生する尾根沿い  途中、何回もシャクナゲのヤブに嵌まり込み中々ペースが上がらない。

 尾根沿いからは右方向に西日が当たったエビス大黒ノ頭や仙ノ倉山がよく見える。気休めにその上越国境の稜線を眺めながらダラダラ行く。

途中に岩峰あり、後方は1621P  そのうちに前方に小さな岩峰*が見えてきた。暫しその岩峰に向かって密ヤブになっているヤセ尾根を笹や灌木の枝を掴みながら進む。

 ネットの記録によると、この岩峰は残雪期は右か左に巻くらしい。しかし、無雪期に巻くとなると一旦20m以上急斜面を下らないといけない。そこで近づいてよく見ると、岩峰の斜面にはシャクナゲや雑木類がびっしり密生していた。これなら登れそうだ…。

[*のちに推測したところ、地形図の等高線で大体1620m付近にあるピーク。]

岩峰のピーク地点、南側に1621P  そこで笹や枝を掴みながら直登してみる。えっちらおっちら時間をかけて登り、何とかヤブが茂ったピーク地点に出る。そこで一息つき、すぐに南側へ下る。

 ここも灌木の枝や笹を掴みながら慎重に下る。見た目は難しそうな急斜面だが、灌木が茂っているので何の問題もなく下降できた。そこからまた密ヤブの尾根を南西寄りに進む。

鞍部への下り斜面から1621P  次の1621m峰を眺めながら鞍部に下る。鞍部からまた超スローペースで登る。笹とシャクナゲの密ヤブ帯には蔓が混じっているので、進むのに時間がかかる。

 ヘタレハイカーは途中で休憩タイムとなる。このペースで行くと十二社ノ峰まで何時間かかるかわからない。この先どうなっているのか気がかりだ。

 このあたりのヤブ尾根は高木が生えていないので、無雪期といえども展望はある。左(南東)には遠く、山頂部を平たく削ったような姿の吾妻耶山が見える。

1621P北側ピーク付近、後方に南側ピーク 1621P北側付近から北東方向ふり返り、1720P(左奥)〜小出俣山  そこからまたヤブ尾根を登りつづけると、1621m峰北側のピークに辿り着く。1621m峰の山頂は、ネットに記録通り南北二つのコブに分かれていた。地形図をよく見ると、南側のピークに標高点があるようだが、バテバテのヘタレハイカーはこの北側で一息つき、遠方の山並みに目をやる。

 後方(北東)をふり返ると、小出俣山から今まで歩いてきた尾根筋の峰々が西日に照らされ煌いていた。

1621P北側付近から北西方向、平標・仙倉・ヱ大黒〜毛渡乗越  また、北の万太郎山もまだ見えている。こちらは東俣ノ頭などの支稜のピークを従えて依然として威厳を保っている。それから、北西方向には毛渡乗越からエビス大黒や仙ノ倉にかけての荒々しい痩せた山肌が際立っていた。こちらは重厚鉄壁な風貌を見せ付けている。谷川連峰の山々は何度見ても飽きさせない。

 気温は西日が当たり18℃。北西寄りの微風がやんわり吹いているが暖かい。遠方を眺めながら水筒の水をゴクリとやる。秋山歩きにしては水の消費が多い。

1621P南側ピークの下りから1481P(松ホド山)・十二社ノ峰方面、手前に岩稜・小岩峰あり  そこから山頂部を南へ辿る。ネットの記録によると、残雪期にこのあたりで大キジの残留物を見たそうだ。無雪期は尖った枝ヤブが茂っているので、とても用が足せるような場所にはみえない。

 小ぢんまりとした山頂だが、かなりの密ヤブ帯となっている。なるべくペースを上げようと試みるが、途中の蔓に絡まり立ち往生。蔓を切りながらトロトロ進む。結局、南側のピークへ行くのに2分以上もかかった。これはこの先どうなることやら…。

 1621m峰から尾根沿いをさらに南へ辿る。

尾根沿いに岩稜あり  このあたりも歩きづらいシャクナゲの密ヤブがつづく。

 地形図には出ていないが、この尾根沿いには岩稜の小ピークが二つほどあった。そこはヤブを掴んで慎重に乗り越えて行く。

前方に岩峰あり[赤ー(?)]  そのうちに前方にちょっと目立つ岩峰が見えてきた。昭文社の地図では、「赤ー」という名前が付いた岩稜付近にあるピークだ*。何か西上州の天丸山を超ミニサイズにしたような感じに見える。

[*ネットの記録では「赤ー」を1621m峰としているものもあるが、実際「赤ー」がどこなのかは不明。この記録では、昭文社の地図から判断して、1621m峰と1481m峰(松ホド山)の中間付近にある岩峰または岩稜とする。]

前方に尖った岩峰あり[赤ー(?)付近]  ヤブ尾根を進み岩場を下って手前の鞍部から岩峰を眺めると、尖ったリッジ状の岩壁がそそり立っていた。

 これは、ねくらハイカーには登れない。ここは右(西)側の山腹を巻くことができる。そこで西面の岩壁の基部に沿ってヤブを漕いで行く。

岩壁の基部を巻く  すると、途中に何やら上へ延びる踏み跡があった。ねくらハイカーは岩峰のトラバースルートかもしれないと考え、その細い踏み跡を辿ってシャクナゲや灌木の枝を潜りながらほぼ垂直に近い斜面を5mほど登ってみる。

 しかし、踏み跡はさらに上へつづいているだけで水平には延びていなかった。多分、踏み跡は岩峰の上に出るためのものらしい…。

 これはマズイ。岩登りが苦手なねくらハイカーは、岩峰の天辺に上がる気は毛頭ない。すぐさま踏み跡のルートを下る。屁っ放り腰の体勢で灌木の枝を掴みながら岩壁の斜面をヨタヨタ下り、どうにか元の地点に戻る。

 そして、そこからまた岩壁沿いを南側へ進もうとした。その瞬間、右足を踏み外してドタンと斜面を滑り落ちてしまった。しかし幸いにも、灌木の枝を掴んでいたので2mくらいで止まった。この西側の斜面もかなりの傾斜になっているので、一瞬ヤバかったが、怪我もなく事なきを得る。

岩峰南側の斜面にテープの目印あり、後方は1481P(松ホド山)  そこから慎重に岩峰西側を巻き、南側の尾根沿いに下る。

 ところで、このあたり樹木の枝にオレンジ色のテープの目印が付いてた。これは先人の記録に出ていた目印らしい。テープは斜面から3mほど上に付いている。おそらく、テープを付けた方は残雪期にここを歩いたのだろう…。

 そして、小出俣山からこの岩峰付近まで下ってきて、ここでようやく人が歩いたような踏み跡と目印を見たことになる。やはり、少ないながらも小出俣山・十二社ノ峰間を歩く人がいるようだ。

尾根沿いから南東方向、阿能川岳南尾根と吾妻耶山(右端)
 そこからまたうるさいヤブを漕ぎながら尾根筋を進む。このあたりからは、左前方に吾妻耶山がよく見える。それから、昨年歩いた阿能川岳南尾根もバッチリ見渡すことができた。

1481P(松ホド山)山頂部北側付近  さらに岩稜や岩峰のような小さな岩場を巻いたり直登したりしながら進み、次の「松ホド山」と呼ばれる1481m峰の山頂部北側に登りつく。山名は南東側の沢の名前から来ているらしい。

 そこでスタミナ切れのヘタレハイカーは休憩タイムとなる。気温は23℃になっていた。別に標高が下がったから上がったわけではないようだ。午後は風がなく暖かい。優しい秋の日差しの中で長めに休んでいたいところだが、日は西に傾いているのでゆっくりはできない。

 休憩後、ヤブの山頂尾根を南へ辿る。

1481P付近から北東方向、1720P〜小出俣山 1481P付近から東方向、阿能川岳〜三岩山〜天子山付近の稜線、手前に小出俣山南尾根  1481m峰の最高地点を過ぎて左側の樹間が少し開けたところから北東方向をふり返ると、小出俣山から1720m峰あたりの稜線がくっきり見えた。1720m峰は結構尖っている。よそ者の凡人ハイカーとしては、このピークを「三尾根岳」とか「オゼノ田」と呼ぶよりも「小出俣山西岳」とか、単純に「西岳」と呼んだ方がいいように思う。

 それから東方向には阿能川岳とそれに連なる南尾根が西日に照らされていた。阿能川岳は相変わらず地味だ。

途中の小ピークの下りから南東方向に十二社ノ峰[左側のコブが三角点峰]  1481m峰の山頂部を下り、ヤブを掻き分けながら尾根筋を進んで南側の小ピークを越えると、前方になだらかな山尾根が見えてくる。十二社ノ峰*だ。

 ようやく次の目的地が確認できたが、日は西に傾き、西の山際近くにある。小出俣山からすでに4時間近く経っている。これはペースを上げないとマズイ。

[*山名の由来は不明だが、この山は「十二サマ」とも呼ばれているようなので、山ノ神が祀られているのかもしれない。ちなみに、この近辺では赤谷地区に十二神社がある。]

笹ヤブの広尾根を南へ  尾根沿いはそのうちに傾斜がなくなり、膝丈から腰丈ほどのクマザサが茂る広尾根になってきた。先ほどまで十二社方面の尾根筋が見えていたのだが、このあたりから落葉していない雑木類が多くなってきて見通しが利かなくなる。

 仕方ないので、コンパスを出して尾根沿いを南方向へ進む。現在位置の確認ができるGPSを携帯していないアナログハイカーはこれしか方法がない。笹ヤブの中には雑草類の蔓が何本も通っている。途中で何度も立ち止まって蔓を外したり切ったりしながらダラダラ行く。

尾根なりに南東方向へ[左上に十二社山頂部あり] 枯木に達筆標識あり(十二社ノ峰山頂付近)  途中、クロベが生えたなだらかなピーク地点を越えヤブ尾根を南へ進んで行くと、いつの間にか尾根から外れてしまった。そこから再び尾根に沿って左(南東)方向に下り、笹ヤブの斜面をいくらか登り返して行く。すると、途中の尾根沿いに古い立ち枯れのクロベが見えた。何か曰く有りげな感じがする。

 そこで南側にまわって枯木をふり返ると、ネットの記録で見覚えのある達筆標識が付いていた。ここが十二社ノ峰(十二サマノ峰)の山頂(1399m)のようだ。

ヤブの中に三等三角点の標石あり 標識から南側にピーク地点あり[十二社ノ峰三角点]  この山は三角点ピークということで、標石があるはずだ。しかして、標識が付いた枯木の周りにそれらしきものはない。今日はもう標石探しのための時間はない。

 どうしようかと考えながら南側にあるこんもりとしたヤブのピーク地点に上がってみる。すると、その笹ヤブの中にひょっこり三等三角点の標石があった。時間がないので、すんなり見つかってよかった。標石も見物できたので、あとは南へ下るのみ。

クロベの大木が生えた尾根筋  地形図では十二社ノ峰から南方向へ主尾根がつづいているように描かれているが、三角点から南側はフラットなヤブの斜面となっていた。周囲を見回したが先人の目印などは確認できない。さて、どの方向へ下ればいいにのかわからない。

 ひとまず尾根に沿ってそのまま南東へ下ってみる。すると、すぐに南方向へ下るようになった。やはり尾根なりに下ればいいようだ…。

 しかし尾根筋を下って行くと、やがてヤセ尾根となり、クロベの高木が茂る岩尾根になった。アレ、こんなところを下るのだろうかと半信半疑になる。

 さらに樹木の枝越しに真っ赤な西日を浴びながらに下って行くと、そのうちに膝丈ほどの疎らな笹が生えた穏やかな尾根筋となってきた。やはり、この尾根でよかったようだ。先人の記録では十二社ノ峰から主尾根を南へ下れば、オーバーハング状の崖がある地点に降りるということだ。多分、この尾根筋を南へ辿れば朝見た崖地点に出られるだろう…。

 そのような甘い期待を抱きながら下って行くと、いつの間にかフラットな雑木林の斜面を下るようになった。アレ、ルートミスだ…。そこで一息つき、周りを見回すと、右と左に尾根っぽい斜面が見えた。方向からすると、どうも右の尾根のようだが、主尾根かどうかわからない。そろそろ日没だ。暗くなる前に林道まで降りないとマズイ。これは主尾根を辿って南へ下るには時間的に無理なようだ…。
主尾根を外れ南東方向へ  時間切れということで、意を決して、そこからは南東側の小出俣林道へ下ることにする。ルートミスの地点からそのまま雑木林の急斜面を南東または南方向へ下る。

 最初は斜面をジグザグに下ってみたが、ヘタレハイカーはすでに疲労困憊の状態。途中から落ち葉が積もった斜面を尻餅をついて滑り降りる。そのうちにじめじめした谷状の緩斜面になった。そこでまたよちよち歩いて下る。

 すでに腰も脚もガタガタだ。日は完全に沈み、周囲は薄暗くなってきた。何か戦に破れた落武者が夜陰に紛れて敗走している気分になってきた。

 谷沿いの斜面はそのうちに岩が多くなってくる。これはちょっとヤバイ。もし、下に岩場でもあると滑落の危険性がある。そこで、途中で左下(東)を見ると、スギの植林地があった。ここは植林地を下った方が無難だ。ということで、途中から植林地に向かって東方向へトラバース気味に下る。植林地の下には小出俣林道が通っているはずだ。

 何とかスギの植林地に降りる。そこから東または南東方向に下る。スギ林の中は真っ暗闇。途中からヘッドランプをつける。ねくらハイカー御用達のランプは電池が消耗しているようで、それほど明るくない。気休め程度の灯りで足元を照らしながらトロトロ下る。

 暫く下ると、傾斜も多少緩くなってきた。周囲は暗黒空間。細々としたランプの灯りを頼りに転ばないように小股で進む。植林地なので、このあたりに黒いヤツはいないだろう。しかし何とも心細い。そこで途中から鈴をリンリン鳴らしながら賑やかに行く。

 スギ林の中を30分以上下ってみたが、一向に林道の気配はない。一応コンパスで確認しながら南東方向に下っているのだが、真っ暗なスギ林の中でどこを歩いているのか皆目見当が付かない。下に林道が通っているだろうと、前方に目をジロジロやりながら進んでみる。しかし、いつになっても林道は現れなかった。
林道下降地点付近(調整池西側、崩落現場近く)  それから15分くらい南寄りに下ると、下の方から沢音が聞こえてきた。多分、小出俣沢だろう。ということは、下に林道が通っているはずだ。

 そこからさらに南方向へ下る。すると突然、前方下側の地面が見えなくなった。アレ、どうしたのだろう?ランプで照らしてもそこには樹木などは生えていない。ちょっとヤバそうなので、5mほど右(西)にトラバースしてみたが、南側は同じくストンと切れ落ちている。最初、これはどうなっているのだろうと不思議に思った。しかし、よく考えると、これは林道の法面だ。この林道は山腹を荒っぽく削ってつくられているので、法面は高さが5mから10mほどの垂直に近い急斜面となっている。

 さて、どうしようかと考える。補助ロープを使って下ればいいのだが、ザックから取り出すのがちょっと面倒だ。ここは先ほど落ち葉の斜面を滑った要領で尻餅をついて下ってみる。切れ落ちた斜面の縁の部分に腰を下ろしてゆっくり前へ重心をかける。すると、あっという間に土砂がむき出しの法面を滑り落ち、落ち葉が敷かれた林道の路面に横向きでひっくり返って止まった。法面はかなり湿っていて、ザックとズボンが泥だらけになる。しかし、怪我もなく無事に降りられた。敗走気分の零落れハイカーにしては上出来だ。

 林道は真っ暗なので、どのあたりに降りたのまったくわからない。下降地点から西へ5mほど歩くと、斜面から滲み出た水が林道の路面をチョロチョロ流れていた。そこでひとまず手を洗い、西方向へ歩き出す。

 すると、10mも行かないうちに林道の崩落現場になった。ということは、降りた地点は調整池の西側付近らしい*。しかしよく考えると、あと15mほど西側の法面を滑り下っていたら、林道で止まらずにさらに30mほど崖下の小出俣沢に落ちていたわけだ。それを想像すると、急に恐怖心が出てきた。これは、普段の行いがよくないねくらハイカーにもまだ多少の運があったようだ…。

[*山行後、林道の下降地点から考えたところ、ルートをミスって主尾根を外れた地点は、地形図の1143m地点北側の東へ小さな枝尾根が派生している等高線で大体1200m付近と推定できた。]
小出俣林道入口付近の遮断機ゲート  そこからヘッドランプの灯りで足元を照らして慎重に崩落地を通過し、ノロノロ南西方向へ進み、林道入口のゲート地点に辿り着く。

 時刻は午後6時をまわっていた。今日は小出俣山から十二社ノ峰方面へ下ったが、やはり欲張り過ぎたようだ。往復コースで登れば、明るいうちに駐車地点に戻れたのだが、何とかビバークすることなく戻れたのでヨシとする。


日程2009年10月23日 (金)
天候曇りのち晴れ 無風
行程時刻駐車地点(赤谷川左岸の駐車スペース)5:58→小出俣林道入口遮断機ゲート5:58→(林道を北東または北へ)→林道の崩落現場[2009年10月現在]6:17〜6:19→(西へ)→赤谷第二発電所調整池6:22〜6:24→(北へ)→自然林復元試験地付近6:27〜6:32→千曲平橋6:53〜6:57→(南東へ)→824m地点付近6:58〜7:08→(スギ林に入り北へ)→(尾根筋を北または北西へ)→(途中、休憩7回ほど計30分弱)→1410m付近の岩場9:10→(巻き足らずタイムロス2分)→(途中、休憩10分弱)→展望地(1600m?付近のコブ)10:12〜10:18→(途中、休憩3回計15分強+ヤブでタイムロス)→(途中から西へ)→山頂部南側枝尾根地点11:22〜11:23→(北西へ)→山頂部尾根地点(北西稜分岐地点)11:28〜11:30→(西へ)→小出俣山山頂(三角点)11:30〜11:55→(西へ)→(途中、休憩2、3回計10分強+ヤブに嵌まり込みタイムロス)→1720P(三尾根岳・オゼノ田)13:03〜13:10→(南西へ)→(途中、休憩5分以上+ヤブでタイムロス)→1621P北峰13:55〜14:02→1621P南峰14:04〜14:05(南または南東へ)→(途中、赤ー?付近でタイムロス5分弱)→(途中、休憩5分+ヤブでタイムロス)→1481P(松ホド山)北側付近15:20〜15:25→(途中、小休+ヤブでタイムロス)→十二社ノ峰16:28〜16:31→(南東または南へ)→(途中から尾根筋を外れ南東の斜面に下りルートミス)→(そのまま南東または南へ)→(途中からスギ林に下り東または南東へ)→(途中、休憩5分以上)→小出俣林道(調整池西側林道崩落現場付近)17:47〜17:50→(林道を西または南西へ)→林道入口遮断機ゲート18:13→駐車地点18:13
備考♦この記録はHP「等高線の狭間から」・「山の写真集『あの山この沢』」・「Tomoの奥利根山歩き」・「あおちゅうと山歩き」・「気ままな男の山歩き」やその他のHP・ブログ等の記録を拝見し参考にさせていただきました。
♦記録中の途中の標高や位置は山行後の大体の推測によるもので、正確なものではありません。

◇ T N H C ◇

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