沼上山から三ヶ峰



 ねくらハイカーは日光連山の錫ヶ岳から西側あたりはほとんど歩いたことがない。機会があれば歩きたいと考えていたが、残念ながら尾根沿いには登山道が開かれていない。

 このあたりの山域は以前から沢登りの人たちに登られているようだ。ネットの記録を見ても尾根コースは主に残雪期に登られているようで、無積雪期に登るにはヤブが深くてちょっと無理な感じだ。そこで今回はスキー場のある片品村の沼上山あたりの尾根なら歩けるだろうと7月中旬頃出かけてみた。
道路沿いから北東に沼上山方面  国道120号で旧利根村*の吹割ノ滝を過ぎ、サエラスキーリゾートの看板がある片品村境界の大立沢手前で右折してサエラスキー場方面へ向かう。

 尾瀬三ヶ峰高原と呼ばれる高原状の畑作地帯を抜ける道路を走って行くと、右前方になだらかな稜線の山並みが見える。スキー場のある沼上山のようだ。今日の天気は曇りだが、朝方は多少の晴れ間がある。やがて小立沢に架かる橋を渡り、その先の案内板がある地点を右折する。

(*利根村は隣接する白沢村といっしょに2005年3月に沼田市へ編入合併になりました。)

ゲレンデを通る砂利道の車道  坂道の走って行くとすぐにスキー場の広い駐車場に着く。やはりシーズンオフなので来訪者は誰もいない。今日は隣接するゴルフ場を利用するわけではないので、道路から右側に入り込んだ草地に駐車させてもらい足早にスキー場のゲレンデを歩き出す。

 誰もいない閑散としたゲレンデを進んで行くと、すぐ右側に砂利が敷かれた道路が通っているのが見えた。夏場は車が走れる道路らしい。車の乗り入れができそうだが、多分一般車の進入は禁止だろう。いつものようにダラダラ歩いて行くしかないようだ。

前方に第4クワッドリフト乗り場の建物  初心者用の緩斜面の第1ゲレンデを北東方向へ歩いて行くと、前方にリフト乗り場の建物が見えてきた。

 多分、第4クワッドリフトと呼ばれるリフトらしい。このリフトが沼上山の山頂まで通じているようだ。そこから右(南)側には第2ゲレンデの中上級者コースの急斜面が見える。

奥に第3ゲレンデ  そこを直進して道路沿いを登って行くと右側に建物があり、その先にちょっと急な斜面の第3ゲレンデのコース(初中級者コース)がつづいているのが見える。

 そのあたりの上空には南北に送電線が通っていて、左(北)側の山尾根に鉄塔が建っている。その北側の山腹にも他のゲレンデがあるらしい。

 北側のゲレンデは沼上山とは関係ないコースなので、このまま第3ゲレンデの急斜面に付けられた道を登って行く。急斜面を登りきると、第3ゲレンデのコースは林道のように右へカーブして付いていた。

第2ゲレンデ上部からのふり返り、上州武尊山方面 沼上山山頂部  第4クワッドリフトの下を通り左へ登り返していく行くと、やがて中上級者コースの第2ゲレンデと合流する。

 この第2ゲレンデ合流部から上は緩斜面になっていて歩きやすい。そこから西方をふり返ると、上州武尊山の山並みがよく見えた。また北西には、多少雲がかかっているが岩鞍スキー場の上部に西山方面の稜線も見ることができた。

 なだらかな砂利道を北東へ進んで行くと、前方にリフト降り場の建物が見えてくる。あのあたりが沼上山の山頂だろう。

沼上山頂上  ようやく第4クワッドリフト降り場に辿り着き、そこから東側が削られた山頂部に登ってみる。

 夏草の繁った沼上山の頂上(1541m)にはネットで見たことのある枯れた木株があったが、すでに標識の山名板は付いていない。一応三角点ピークなので標石を探してみたが、やはり山頂周辺は草木のヤブに覆われて標石は見つからなかった。

沼上山山頂から三ヶ峰方面  朝露に濡れた沼上山の山頂部から南東方向に見える山並みが三ヶ峰のようだ。

 天気は曇りでまだいくらか晴れ間がある。しかし予報では雨が降るらしい。このまま何とか降らなければいいなぁと願いながら、山頂部から南東方向へ下り気味につづく笹尾根を歩き出す。

植林地の尾根沿い  膝丈ほどの笹ヤブの尾根沿いにはわずかにミズナラやブナなどの雑木が生えているが、右斜面も左斜面もカラマツの植林帯になっている。

 ほとんど見通しのきかない植林地の尾根沿いを南東方向へ進んで行く。まだこのあたりでは深い笹ヤブになっていないので問題なく歩くことができた。

 樹木の枝には所々に残雪期に付けられたと思われる赤テープの目印が見える。それから尾根沿いの笹地には、所々に黒色の樹脂製の杭が打たれていた。

ショウキラン  笹ヤブの尾根筋には踏跡はないが、所々にシカやイノシシが歩いたような獣道が付いている。歩きやすそうなその獣道の跡を辿って行くと、ダケカンバなどの広葉樹も生えたカラマツ林主体の広尾根を登るようになる。

 途中、殺風景な植林地の笹ヤブの中にランのような花が咲いているのが見えた。写真を撮り後で図鑑等で調べたところ、日陰の笹地などに生える無葉の多年草のショウキランだった。

 また、このあたりのカラマツの樹木には所々に樹皮が剥がされ白木状態になっているものがあった。冬場このあたりに生息しているシカが樹皮を剥いで白木の表層部を舐めるように食べているらしい。

 植林地の笹の斜面を登りきると、やがてなだらかな尾根コースになってきた。この尾根付近から笹が深くなり胸丈から背丈ほどになる。進むには笹を漕いで行くしかない。

 クマ除けの鈴を鳴らして進んで行くと、周りからシカの警戒する鳴き声が聞こえてくる。なおも笹を掻き分け掻き分け進んで行くと、前方の笹ヤブから子ジカが飛び出して逃げて行った。やはりこの付近にシカが多数生息しているようだ。北斜面の笹が薄くなったところにはシカ道のトレースが確認できる。
深い笹地の尾根筋から右方向に山尾根  そこからまた胸丈ほどの笹ヤブを南東方向へ進んで行く。多少見通しのある尾根筋に出ると、右方向に山尾根が見えてくる。地形図でいうと1575m地点や1733m地点がある枝尾根だろう。やがてこの尾根コースもあの枝尾根と合流するはずだ。行程はまだまだ先が長い感じだ。果たして今日はどこまで登れるだろうか…。

 笹ヤブの尾根沿いには昔の伐採作業で使われたワイヤー類が見える。多分このあたりのカラマツが植林される前の伐採に使われたものだろう。それからこの深い笹ヤブの尾根沿いには倒木が多い。進むのに笹の中に隠れた倒木を乗り越えて行かねばならないので、これまたひと苦労だ。緩やかに上ったり下ったりする尾根沿いには背丈を超えるほどの笹がびっしり繁っているので、進むのにかなり時間がかかった。

 このあたりから尾根沿いの樹木はコメツガなどが多くなってくる。また、広葉樹のダケカンバなども依然として多い。

倒木の多い笹ヤブの広尾根  深い笹ヤブの尾根沿いを過ぎると、今度はコメツガやアスナロの針葉樹が繁る薄暗い広尾根の登りになる。笹は膝丈ほどで歩きやすいが倒木が多い。このあたりの斜面には腐生植物のギンリョウソウなどが沢山生えていた。

 針葉樹の原生林っぽい広尾根を登って行くと、先ほど下から見えた枝尾根の合流部あたりの地点に登りついた。地形図の等高線でいうと1850m圏の尾根筋だ。このあたりも倒木が多く不明瞭で、尾根が分岐しているのかハッキリわからない感じだ。帰りは迷いそうなところなので、一応目印の赤テープを付けてみる。

シカ道の踏跡が付いた尾根筋  そこから尾根筋をまた南東方向へ進んで行く。笹は膝丈ほどで問題ないが、このあたりから尾根の傾斜が少しきつくなってきた。

 笹尾根には登山道のようなしっかりとしたシカ道の踏跡が付いている。尾根沿いの針樹木にはツガやコメツガの他にシラビソなども疎らに生えているようだ。

 尾根の左側が多少開けてくると北側の山並みがチラホラ見えるが、やはり樹木が繁っていて遠くを見通すことはできない。

三ヶ峰頂上  やがて尾根筋の傾斜は緩くなってきた。ようやく三ヶ峰の山頂部に近づいてきたのかもしれない。

 右下に倒木跡の水たまりなどがある笹尾根を進んで行くと、踏跡は尾根から右下の方に下って付いている。しかし、ここはそのまま左の尾根沿いを南南東方向へ進んでみる。少し行くと、右側に2、3mほど高い山尾根が通っているのが見える。そちらの尾根筋に山頂地点があるのかもしれないと思って、右上に登り返す。

 登りついたところがその尾根の最高地点付近で、そこから南東へは斜面が下り気味になっていた。そこで尾根筋を北西側へ戻ってチラッとふり返ると、立木に山名板の標識が3枚ほど付いているのが見えた。ここが三ヶ峰の頂上(2032m)だ。

文字の消えた丸形標識とフィルムケース 笹ヤブの中に三角点の標石  標識には1993年の春に北側の香沢林道から笠ヶ岳・三ヶ峰・沼上山を周回した山ランのメンバーの方のものがあったが、すでに文字は消えていた。そのそばには銅線の針金で結ばれたフィルムケースが付いていた。これは山ランのメンバーの出席簿のようなもので、山頂で無線交信をして記念にこのケースに登頂日などを記録したメモなどを入れておくものらしい。古い紙切れが入っていたが、ねくらハイカーは無線とは縁がない凡人なので、覗くのはやめた。

 三ヶ峰も三角点ピークということなので、標識付近で標石を探してみる。足で笹地を探って行くと、尾根沿いを西へ5、6mほど戻ったあたりに三角点の標石と折れた測量棒が見つかった。

三ヶ峰東峰付近  三ヶ峰の山頂からは展望がないので、笹ヤブの広尾根をさらに南東方向へ下って行く。腰丈ほどの笹地には倒木が多く歩きづらい。

 鞍部から登り気味に広尾根を進むと、山頂部東側の尾根状のピーク付近に出た。そこには片品村と旧利根村の境界を示す古いコンクリート製の標石が打ってある。このあたりが三ヶ峰の東峰(2030m)だろう。

 そこからは東方向に遠く群馬県と栃木県の境界が通る錫ヶ岳から皇海山あたりまでの稜線のシルエットを望むことができた。

北西方向の至仏山〜荷鞍山方面 北方向の四郎岳・燕巣山方面、手前に六軒山のある尾根  東峰を少し北東へ下った伐採地の斜面から北方に四郎岳や燕巣山が確認できる。また北西には多少雲がかかっているが至仏山から荷鞍山あたりの稜線も見えた。

 そして北東には笠ヶ岳から錫ヶ岳の山並みが見える。笠ヶ岳の左には雲のかかる日光白根山も確認できた。今日は先ほどから天候が崩れてきたが、何とか笠ヶ岳から錫ヶ岳の稜線が見えたのでここまで来た価値があるようだ。

北東方向の笠ヶ岳・錫ヶ岳方面、左側に白根山  東峰の北東側の斜面で写真を撮っていると、たちまちヤブ蚊かハエのような虫が集まりだした。手で追い払っても逃げない。そのうちにねくらハイカーの顔や頭を刺し出した。たちまち虫たちの総攻撃が始まり、ねくらハイカーの顔面に向かって執拗に突撃を繰り返した。

 堪らずザックから携行用の虫除けスプレーを取り出し、頭に散布してみたが、時すでに遅く額と両耳のあたりを多数刺されてしまった。どうもこれはアブやブヨの類ではなく、ヌカカの仲間のようだ。まさに今日は曇りで湿気があり風も吹いていないので、ヌカカの活動には絶好の日和らしい。刺された後5分くらいすると、いくらか額と両耳が痒くなってきた*。今日はかゆみ止めの軟膏などは持っていないので我慢するしかない。

(*家に帰ってからも、堪らない痒みと腫れが5日ほどつづいた。山の毒虫はやはり強力なものが多い。)

笠ヶ岳〜錫ヶ岳の稜線(ズーム画像)  そこでまた東峰の山頂付近に戻る。さて、これからどうするか迷う。時刻はまだ午前9時なので時間はある。予定としてはここからさらに笠ヶ岳まで行きたいと考えていたのだが、やはり尾根沿いのヤブと今日の天候が気になる。

 時間的には残雪期なら笠ヶ岳往復は可能だが、もし夏道の尾根沿いに背丈ほどの笹ヤブの登りがあると、相当に時間と体力がないと無理だろう。ねくらハイカーはすでに三ヶ峰まででかなりバテ気味になっていた。まして、これから天候が崩れ雨になったらちょっときつい…。

 どうしようか思案しながらふと南方向に目をやると、樹間越しに峰山への稜線が見えた。そこで笠ヶ岳はやめて峰山へでも行ってみようかという考えが浮かんできた。まだ時間はたっぷりあるので峰山あたりまでなら何とか往復できそうだ…。

東方向の三俣山〜皇海山方面  さっそく三ヶ峰東峰の山頂部から南側の斜面へ下り気味に進む。やはり笹ヤブの中には倒木があるので歩きづらい。

 峰山へつづく尾根筋を探しながら5分くらい南側に下って行く。すると、にわかに薄暗い針葉樹の森にポツリポツリと雨粒が落ちてきた。

 小雨くらいなら大丈夫だろうとさらに下って行くと、やがて本格的な雨がザーザー降り出した。これでは山歩きは無理だ。仕方ないので、傘を差して三ヶ峰の三角点ピークまで登り返して行く。本降りの雨なので、残念だが今日はここで山歩きは中止だ。

沼上山山頂のリフト降り場  三ヶ峰山頂で雨具を着け、北西方向の尾根沿いへ下って行く。雨脚がさらに強くなってきたので、笹尾根の下りは思わずピッチが上がる。

 迷いやすい感じの標高1850m付近の枝尾根分岐も何とか通過して原生林っぽい広尾根を下る。そこからまた背丈以上の深い笹ヤブを漕ぎながら苦労して進む。往路で子ジカと遭遇した笹尾根をトロトロ雨に打たれながら進んで行くと、また目の前をシカが1頭横切って行った。このあたりの尾根沿いにはシカの群れが常駐しているようだ。

 そこからカラマツの植林地を下り、笹地の尾根沿いをピッチを上げて進む。やがて小鞍部から斜面を登り返して行くと、再び沼上山の山頂に着いた。時刻はまだ午前11時をまわったところだ。こんな帰りの早い山歩きはめずらしいが、今日は雨で途中中止ということなので致し方ない。

第2ゲレンデの急斜面から上州武尊山方面  沼上山まで来ると雨は止んでいて多少の晴れ間も見えるくらいになっていた。リフト降り場の建物付近で雨具を脱ぎ、傘を乾かしながら第2ゲレンデ上部の緩斜面をトボトボ下る。ゲレンデからは朝と同じように西方に上州武尊山や片品村鎌田あたりの集落がよく見えた。

 カーブ地点からは第3ゲレンデを経由せずに雑草が繁茂する第2ゲレンデの急斜面をそのまま西へ下り、第1ゲレンデに降りた。そこからダラダラ砂利道の車道を下る。

 駐車地点に戻ると、日差しが出るくらいに天候は回復していた。今日は中途半端な山歩きになってしまったが、何とか三ヶ峰まで行ったということでヨシとしよう。


日程2006年7月15日 (土)
天候曇りのち雨[午前中]
行程時刻ゲレンデわき駐車地点5:05→(第1ゲレンデ)→第4クワッドリフト乗り場付近5:16→(第3ゲレンデ)→第2ゲレンデ合流付近5:46→第4クワッドリフト降り場6:06→沼上山6:07〜6:13→(南東へ)→1622m地点 ?:?→枝尾根分岐(1850m付近)8:05→三ヶ峰(三角点P)8:30〜8:40→三ヶ峰東峰8:53〜8:55→東峰北東側斜面9:00〜9:06→(戻り)→東峰9:09→(南側斜面へ)→(降雨のため途中戻り)→三ヶ峰(三角点P)9:23〜9:30→(北西へ)→枝尾根分岐(1850m付近)9:50→沼上山11:06→第4クワッドリフト降り場11:08〜11:20→(第2ゲレンデ)→(第1ゲレンデ)→駐車地点12:10
備考♦この記録では「群馬山岳移動通信」・「「山頂渉猟」を追って」等のHPを参照し参考にさせていただきました。また、沼上山については横田昭二 著『私が登った群馬300山』(上毛新聞社刊)を参照しました。

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