ところが、ダム上流の神流川沿いを300mも進まないうちにまたもや道路がバリケード封鎖されていた。そして今度はそのバリケードの先を見ると、法面が一部崩落して土砂が道路を塞いでいた。
ということで、バリケード手前の路肩に車を止めて、ここから出発とする。道路の崩落箇所は土砂が比較的少ないガードレール際を通る。崩れた土砂の中には新芽が吹き出たばかりの雑木類の樹木が沢山混じっていた。
そこから東へ少し進むと、「中止の滝」入口の看板地点を通る。看板を見ると、お目当ての滝はここから沢沿いを100mほど入ったところにあるらしい。傍らに立つ案内板には滝の名前の由来が書かれていた。
そこから幾分早歩きでスタスタ行くと、新本谷橋を通る。旧道は左(東)の葡萄沢方向についているが、現在はこの橋が新道となっていて神流川本谷上流部の道にショートカットしている。
そこは直進して本谷の沢沿いに下って行くと、左からの旧道が合流してくる。このあたりは本谷の沢筋が近いので、清流のせせらぎが喧しいくらいに谷間に響いていた。春の雪融け水が流入しているようで、水量も幾分多く見える。
途中、右カーブの崖際に注連縄が結ばれた石碑が見えた。ここはいつもは車で通り過ぎてしまう地点なのだが、今日は徒歩ということで、近づいてよく見ると表に「山神」と彫られていた。山ノ神を祀ったものらしい。
そこからカバノキ科の雑木類の雄花が路面に沢山落ちているところを通り抜けて行くと、中之沢林道みみずく支線が左に分岐する本谷三号橋のゲート点に着く。
林道をトボトボ歩きながら長戸沢を眺めると、右岸の斜面に段差状の道跡が水平に走っているのが見えた。軌道跡だ。このあたりは河原も広く、大雨の増水時に斜面が削られることがないので、道形がハッキリ残っている。林道が造られる以前、旅人はあの軌道跡を歩いたのだろう*。
林道をさらに上がって行くと、道路沿いに落石が多くなり、倒木が道を塞いでいた。冬場に倒れたものらしい。
そのうちに大きな砂防堰地点を通る。竣工記念碑の銘板や国交省の看板を見ると、「長戸沢ダム」と表示されている。まだスゲノ沢出合まで少し距離がありそうだ。
左下に小さな砂防堰を見て林道の急カーブを右へ左へと登る。長戸沢の水量は依然として多く、ハイカー風情が入渓するにはちょっとヤバそうに見える。
仕方ないので、コンクリート舗装の急坂を引き返して下る。前方に見える山*の下側に長戸沢本流が通っているはずだ。坂道のカーブ地点で下の沢を覗いてみたら、やはり崖状の深い谷になっていた。凡人ハイカーがこの斜面を下って沢へ降りるのは危険すぎる。
要はスゲノ沢出合の上の長戸沢上流部に出ればいいわけだ。地形図を見ると、旧駐車場からスゲノ沢沿いに延びる林道のヘアピンカーブ付近から東方向へ下れば長戸沢上流部に降りられそうだ…。
そのカーブ地点で下を覗いてみたら、スパッと切れた急傾斜の法面になっていた。下降するには長いロープを使わないと無理だ。
そこで坂道を少し西側へ戻り、ガードレールを跨いで擁壁沿いへ降りてみた。すると、ちょうど人一人分が通れるくらいの幅の踏み跡が壁際に付いていた。獣道というか、やはりここを伝わって下の沢筋へ下っている人、おそらく釣り人がいるようだ。
林道のカーブ地点から擁壁を離れ尾根状の斜面に下る。このあたりの樹木にはなぜかペンキマークが付いていた。それから木製の標杭も打たれている。土木工事の関係者が付けたものだろうか。よくわからない。
すぐにヤブめいた感じの沢沿いの平地に降りた。ここがスゲノ沢出合上の長戸沢上流らしい。サイクリストの記録では造林小屋跡は左岸にあるようなので、この沢沿いを上流に向かって進めばいいようだ。
落ち葉が溜まった左岸を上流の南方向へ進む。以前読んだネットの記録によると、この沢は1985年の日航機墜落時に本谷側から捜索した副隊長隊が入った沢らしい。
河原状の平地を少し行くと、苔むした石垣や倒壊した建物のトタン屋根部分が見えた。やはりこのあたりに森林軌道に関係する建物があったようだ。
そこから何気に右上の段丘状になったヤブの斜面に目をやると、赤茶色の小さな建物が見えた。どうも、サイクリストがいうところの造林小屋らしい。
小屋を覗き込むと、古い電線のコードや碍子があるだけで他には何もない。壁際には「オイル点検忘れずに」と書かれた板が掲げてある。それから、「三菱メイキエンジン」という看板もある。どうも、ここに発電用のエンジンが置かれていたようだ。
そこから左岸の斜面を進むと、建物のコンクリートの基礎部分やタイル張りの浴槽があり、近くには缶やビン類が散乱していた。それから河原には何かの木製の残骸やドラム缶類が廃棄されていた。その中をよく見ると、和式トイレの便器も無造作に放置されていた。これは、まさに昔ここで日常の生活が営まれていたことを示す痕跡だ*。
さらに落ち葉が溜まった段差状の斜面を歩いて奥へ進む。沢の両側は切り立ったような急斜面となっている。
毒草のハシリドコロが疎らに生えた日陰の斜面を登って行くと、やや尾根っぽい感じになってきた。さらに登ると、日が当たりだし尾根状の斜面となった。
アセビやヒノキの倒木が多い斜面をやや南東寄りに登る。傾斜はきつい。途中、尾根のコブ状地点でひと休み。アセビの木陰で休んでいると、沢からさわやかな風が吹き上がってきた。気温は15℃。快適そのもの。
そのうちに尾根筋は少しヤブめいてきた。樹木の細い枝を掻き分けて登って行くと、左(北)から上がってくる尾根に突き当たる。
樹木が密生したヤブ尾根を登って行くと、やがて崖状の急斜面に突き当たる。結構樹木が生えているが、岩登りの苦手なねくらハイカーが直登するにはちょっと厳しい感じだ。
さらに岩場の隙間に生えたシャクナゲに潜り込んで垂直に登る。途中、樹木が少ないところに出たので一息つく。
小休後、さらにシャクナゲのヤブを潜りながら岩稜をからめて右から回り込むように登って行くと、細いリッジ状の岩場に出る。
はて、ここはまだ1543m峰の山頂ではなさそうだ*。南方向にはヤブ尾根がつづいていて、その先に樹林に覆われた山頂部が見える。多分標高点ピークだろう。
さらにその先で獣道のような岩溝を登って行くと、今度は残雪の斜面となった。やはり4月ということで、雪は完全に融けていなかった。
1543mの南側は崖状の斜面になっていた。岩や樹木を伝わりながら「よっこらしょ」と掛け声をかけて南へ下ると、木造りの祠のような残骸のある地点に出る。
そこから尾根筋を15mほど南に進むと、文字の消えた黄色い看板*が立っていて、近くに「山 三六」の標石が埋設されていた。それから傍らの樹木には前橋営林局の境界見出標の赤プレートも付いていた。
そこからはいくらかヤブめいた感じの尾根筋を南へ進む。この尾根の樹木はツガやコメツガなどの針葉樹が主体で、他の雑木類も混生している。特にシャクナゲが多いので、何か奥秩父っぽい感じがする。結構大木もある。伐採されなかったのかもしれない。
緩い傾斜を登って行くと、途中に大岩のような岩稜に突き当たる。そこは笹ヤブに付けられた踏跡を辿って右の斜面に巻く。別段迷うところではないのだが、テープの目印を付ける。予定よりも遅れているので、帰りは同じルートを下るかもしれない。
日陰のヤブ尾根をやや南東寄りにゆっくり登りつめて行くと、北東から南西へつづく明瞭な尾根筋に出る。ようやく埼玉との県境に辿り着いたようだ。
すると、MTB愛好家の記録に出ていた倒木が見えた。やはりここが標高点のある1730m峰*の山頂だ。周りをよく見ると、樹木にピンクテープの目印も付いていた。上武国境の尾根ということで、歩く人も多いのだろう。傍らには「山 三四七」のコンクリート杭も打たれている。
そこからさらにもう1本朽ちた太い倒木を越えて進むと、南側の岩場に出る。そこは展望地となっていて、西の舟窪・高天原・大蛇倉の山並み、南東の奥秩父の稜線、南方の1796m峰と三国山が見えた。それから、もちろん御巣鷹の尾根も見えた。
眺めがいいので少し休む。この岩場付近には「山 三四八」のコンクリート杭が打たれていた。日差しがモロに当たるので気温は24℃を超える。少し暑いくらいだ。
そこから崖状の斜面を下る。左の埼玉側に明瞭なルートがある。岩場を下ると、笹と雑木林の明るい鞍部に降りる。
笹ヤブに付いた微かな踏跡を辿って次の等高線で1700mの岩場に上がる。山岳サイクリストの記録によると、ここは「日向の休場」と呼ばれている地点で、昔狩猟に来た猟師達がここで休憩したそうだ。なるほど、岩場の展望地となっていて遠方の眺めがいい。次の1796m峰が間近に見えた。
小休後南へ進むと、今度は急傾斜の登りとなる。そこはシャクナゲのヤブになっていて倒木が多く残雪も深い。ねくらハイカーはたちまちペンキマークのルートを見失ってしまった。
そこから傾斜が緩やかな尾根筋を右寄りに進む。やがて雪の少ない樹林に覆われたコンクリート杭地点*に着く。傍らには朽ちた倒木もあり、何か曰く有りげで寂しげなところだ。ここでも一息入れる。
小休後、南西方向へちょっと下って尾根を登り返すと、「山 三七八」の杭が打たれたピーク地点に着く。ここは尾根道が三方向に分岐している。おそらく三国山の山頂だろう*。
すると、主図根点の標石が埋設された展望地に出る。立木には山名板の標識も付いていた。つまり、ここが三国山(二本木ノ頭)山頂(1834m)ということだ。この地点は南側が開けているので、奥秩父方面の山並みが見える。しかし午後ということで、小川山方面はすでに霞んでいた。西には相変わらず高天原山が悠然とした姿で控えている。
そこから再び三方向の分岐ピークまで戻り、今度は長野県との県境付近を西へ下る。鞍部手前に木製の古い道標が倒れていた。ここが旧三国峠*だ。まずは傍らの立木に道標を立て掛け、峠の写真を撮る。
ここの道標は以前は三方向を示していたそうだが、今は壊れて二方向しかない。道標の文字も剥げ落ちてほとんど読み取れない。南西の谷を示して「梓山に至る」とあり、東方向の山頂を示して「十文字峠・三国山…」とある*。
この道標には小さな金属プレートも付いていた。よくわからないが、分水嶺を歩くグループが付けたものらしい。それから、傍らの立木には安中山の会のブリキの標識が付いていた。この標識はサイクリストの記録にもあるもので、「三国峠」の下に「ソラ峠を経由、ハマダイラS50.9.1…」という文字が彫られていた。
ここから上信国境の尾根を延長して歩くには時間的にちょっと無理なので、再び三方向の分岐ピークに登り返し、そこから上武国境の尾根に下って往路を戻る。
今度は樹木に付けられたペンキマークがよく見えるので、マークを目印にしながら進む。埼玉県の休猟区の看板がある1796m峰付近からは残雪の斜面を下る。
そこから「日向の休場」の岩場に登る。しかし、ここで不覚にもねくらハイカーは右足が攣ってしまった。休み場ということなので、この岩場で休憩する。
そのうちに痛みがいくらか治まったので、北側の鞍部に下る。ここを峠と想定してもよさそうだが、ここから群馬側または埼玉側の斜面に巻いていくような踏跡はまったくない。
少し残雪があるヤブの斜面を下り、途中の岩稜を左に巻いて笹ヤブになったところを下る。
標石地点からは微かな踏跡が斜め左方向に付いていた。往路ではこの踏跡を見つけて登ればよかったわけだ。実際は見つけられずにルートミスで1543m峰の北側を登ってしまった。
当てもなくダラダラ下って行くと、前方が崖状の岩壁になってきた。これは地形図で1543m峰山頂部から北西に延びる崖マークの岩尾根*らしい。
5分くらい下ると、右側の崖がなくなり、いわゆる切戸になっていた。そこでその切戸状の地点を北へ横切って行くと、その先もまた急傾斜の崩れやすそうな斜面になっていた。
か細いシカ道を追いながら、山腹を北へトラバースして行く。このあたりは相変わらず傾斜が急だが、美しい雑木林になっていた。
ということは、この支尾根から下の沢へ向かって下れば、渡渉地点に降りられるわけだ。
そこからまた左岸の造林小屋跡を過ぎ、右下の河原を北へ進む。さらに自分で付けたテープ地点から左上の林道の法面に向かってヤブの斜面を登る。
北へはどうなっているのか寄り道してみると、すぐその先のスゲノ沢出合付近の崖際で軌道は消えていた。昔はこのスゲノ沢出合地点から長戸沢本流の右岸に軌道が通じていたらしい。
途中の尾根状の斜面から左上を眺めると、自分が辿ってきた山尾根が西日に照らされて見えた。行きはルートミスで1543m峰の北側の岩場を登り、帰りは1543m峰の岩稜と長戸岩の間を抜けて下ってきたわけだ。
ヤブの斜面から丸太材の擁壁沿いを歩いて上の林道に上がる。ところが、路肩のガードレールを跨いだ瞬間、左足にビリビリッと強烈な痛みが走った。今度は左足が攣ってしまった。何たる体たらく。老いぼれハイカーはここで休憩タイムとなる。| 日程 | 2008年4月22日 (火) |
| 天候 | 晴れ |
| 行程時刻 | 駐車地点(本谷林道途中)7:00→林道崩落地点7:00〜7:01→「中止の滝」入口7:03〜7:06→新本谷橋7:12〜7:14→中之沢林道中之沢支線分岐7:17〜7:22→本谷一号橋(中之沢林道大蛇倉支線分岐付近)7:23〜7:24→本谷二号橋7:31→山神石碑7:38〜7:40→本谷三号橋付近ゲート(中之沢林道みみずく支線分岐付近)7:45〜7:50→長戸沢ダム7:58〜8:02→(沢沿いを歩いてタイムロス、林道へ戻り)→スゲノ沢旧駐車場8:28→(林道を戻り)→(途中から引き返す)→スゲノ沢旧駐車場8:35〜8:36→スゲノ沢の橋8:36→(スゲノ沢右岸の林道)→右カーブ地点8:41→(坂道戻り)→(スゲノ沢右岸に下る)→(ヤブの斜面を東へ)→スゲノ沢出合上の長戸沢左岸8:52〜8:59→(沢沿いを南へ)→造林小屋跡付近9:00〜9:10→(左岸を南へ)→(沢を渡る)→渡った右岸地点9:15〜9:20→(ルート不明で右岸の斜面を東へ直登)→(支尾根を登る)→(途中休憩5分以上)→(南東へ)→主尾根地点10:03〜10:06→(南へ)→(崖状の急斜面を右上にトラバース)→(途中休憩5分)→(右へ回り込む)→コブ状の岩場(展望地)10:22〜10:28→(南へ)→1543P 10:40〜10:46→お宮跡付近[空峠]10:47〜11:04→(途中休憩10分以上)→1730P北東側(県境尾根)11:55〜12:05→(南西へ)→1730P南側の岩場(展望地)12:08〜12:23→(南へ、ルートミスあり)→1700P(展望地)[日向の休場]12:30〜12:32→(鞍部で休憩5分)→(原生林のヤブでルートミス、10分以上タイムロス)→1796P付近 ?:?→(南西へ)→松尾尾根分岐13:11〜13:18→三方向分岐ピーク[三県境ピーク]13:24〜13:29→(南へ)→三国山[図根点ピーク]13:29〜13:37→(戻り)→三方向ピーク13:37→(西へ)→旧三国峠13:39〜13:50→(戻り)→三方向ピーク13:52〜14:07→(北東へ)→松尾尾根分岐14:12〜14:15→1796P付近14:19→(北へ、途中ルートミスによるタイムロスあり)→1700P 14:40〜14:52→(北東へ)→1730P北東側15:08〜15:12→(北へ)→お宮跡手前標石地点[空峠]15:39〜15:41→(北西へ)→切戸地点15:59〜16:00→(山腹を北へトラバース)→(北西へ)→支尾根地点16:08〜16:12→(西へ)→(沢沿いへ)→渡渉地点16:25〜16:26→(左岸を北へ)→造林小屋跡付近16:28〜16:29→(北へ)→(途中から左岸を西へ)→(中段に軌道あり、北へ寄り道)→スゲノ沢出合付近上部の崖16:35〜16:37→(西へ戻り)→スゲノ沢右岸の林道地点16:42〜16:52→スゲノ沢の橋16:53→スゲノ沢旧駐車場16:53→長戸沢ダム17:15→本谷三号橋付近ゲート17:25→山神石碑17:28→(途中、休憩あり)→本谷二号橋17:45→本谷一号橋17:53→中之沢支線分岐17:54〜17:55→新本谷橋17:59〜18:06→「中止の滝」入口18:10→林道崩落点18:13→駐車地点18:13 |
| 備考 | ♦この記録はHP「西上州界隈山サイ雑記帳」・「良太郎の『自転車で街道を行く』」の記録および佐藤節 著『西上州の山と峠』(新ハイキング社刊)を拝見し参考にさせていただきました。それから、最近上武国境・上信国境を歩いた方々のネット上の記録も参考にさせていただきました。 ♦この記録は一応空峠のルートを歩いたものですが、峠の位置は特定していません。 |
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