南天山〜帳付山〜六助周遊コース



 11月も下旬になると、山の紅葉も終わり落葉して見通しも多少良くなる頃だ。少しヤブめいたところを歩いてみようと出かけた。場所はねくらハイカーには居心地のよい西上州にした。今回は北側から南天山(1483m)に登り、そこから西へ滝谷山(1659m)、そして上武県境を北上してブドー沢の頭(1658m)そして帳付山(1619m)にたどり、そのまま県境を東へ歩くことにした。周遊コースにするため、登り口は大滝村中津川上流の広河原沢からにする。打田^一 著「西上州・妙義」(昭文社エアリアマップ)の地図に載っているので、多少歩かれているコースだ。

 以前、天丸山(1506m)や大山(1540m)を登ったときに県境尾根から広河原沢を通る林道がよく見えたので、多少の駐車スペースがあるだろうと出かけた。群馬の住人なので、秩父経由で行くと少し遠回りになる。そこで神流川沿いに旧中里村の神ヶ原まで行き、そこから国道299号に入り志賀坂トンネルで埼玉側に抜ける。そこからすぐに右折して金山志賀坂林道で鉱山のある小倉沢を通り、雁掛トンネルの先を広河原沢に沿ってつくられた林道上野大滝線に入る。林道は貫通しているが、まだ全面開通していないようだ。以前、群馬側でこの林道を歩いたときは工事中で、岩がゴツゴツとむき出した荒々しい道だったように思う。でも、いまでは舗装工事が進んでいるらしい。林道入口の看板には舗装工事で通行止めと書かれていた。今回の目的地は林道の途中までなので、林道を行けるところまで行くことにした。

 荒れているが何とか走れる林道を、エアリアマップの解説どおり4つ小トンネルを抜けて、右から小滝が流れ落ちるところの先を左へカーブして行くと、山吹沢の橋が架かるあたりの左に南天山に取り付く尾根らしきものがあった。急峻で登れるのだろうかと一瞬不安に感じた。しかし、後でわかったことだが、その尾根は南天山の西のピークからのびる尾根だった。
東に両神山、赤岩岳  山吹沢の橋手前右の旧道のスペースに駐車して、歩き出したのが午前6時半すぎだった。山吹沢の橋を渡ると、都合よく左に沢へ下りる道がある。多分、治山工事か河川工事用の道だと思う。すぐに沢を渡り尾根の突き当り部分に取り付くと、よく歩かれた踏跡が見つかった。やはり地図に紹介されているので、結構歩かれているようだ。

 しばらく尾根を左に巻いたりしながら高度を稼いでいくと、治山工事か何かをやっているところを通る。林道と沢がよく見えるが、対岸の山肌を見ると伐採が行われていてロープが張られているので伐採のための補助工事なのかもしれない。途中右に巻いたりしながら急峻な尾根を登っていくと、東に両神山から赤岩岳が見えてくる。

県境稜線、中央に帳付山  やがて北西には、上武県境の山並も見えてくる。広河原沢沿いの山腹に上野大滝線の林道が貫いているのも見える。側壁のコンクリートが新しく、県境の山肌を縫うように走っている。朝日で上武国境の山々は輝いて見える。その中で見覚えのある山は、やはり帳付山だ。中腹から上が濃緑色の針葉樹で覆われていて特徴的だ。

南天山西の肩のピーク  急な尾根道をようやく登りきったところが南天山から西に位置する肩のピークだ。何の表示もないが、山用の石柱が設置されている。そこから南側に下りると南天山からの登山道がついていた。南天山は一般には南の鎌倉沢口から登られているので、林業作業用の道がこのような遊歩道に整備されているようだ。さて、そこからは東に南天山の鋭鋒が朝日をバックにして聳えている。西には帳付から連なる稜線が見える。

大ナゲシ〜赤岩岳〜両神山  その肩のピークの分岐点にデポして、南天山に向かう。5分も歩かないうちに鎌倉沢からの分岐点についた。あたりには黒く焦げた木株があり、以前に起こったという山火事の痕跡をとどめている。そこから岩尾根を少し登れば南天山(1483m)頂上だ。

 頂上からの見晴らしは最高で、両神山から赤岩、大ナゲシ、1510m峰、峠状の「六助」と呼ばれるコル、焼岩、倉門山、帳付山そして帳付から南天に連なる山並みまで見渡すことができる。また、南西から南東にかけては三国山から連なる奥秩父の2千メートル級の稜線が控えている。そしてこれから歩こうとする稜線の遥かかなたに、西上州の盟主・御座山らしきピークも確認できた。

帳付山へ連なる稜線  今日は北西の風が強いので少し寒い。休憩もそこそこに西の肩のピークに戻る事にした。西のピークの分岐点からは尾根の南側につけられた歩道を西に進む。道は地図上の1374m地点は通らずに南の枝尾根の方に巻いていく。枝尾根の地点でまたその尾根を北の稜線上に登り返していく。歩道はやはり林業用の作業道らしい。尾根道は少しヤブめいてくるが、まだ比較的歩きやすい。

樹間より県境尾根  針葉樹がまばらに生えた稜線からは、広河原沢の上を走る林道と県境の山並みがよく見える。このあたりから笹がやや多くなり、踏跡もまばらになる。方向はこのまま西の方へ尾根を進んで行けばいい訳だし、時間も充分あるので少しピッチを上げて県境をめざすことにする。

県境稜線上に天丸のピーク?  今日は北西の風が強く、稜線上に出ると寒風に吹かれて寒い。朝方は雲も少なかったが、午前10時をまわるころには灰色の雲が広がってきて、より冷たくなってきた。県境が通る滝谷山へはまだいくつもの黒々としたピークを越えて行くしかないようだ。北の県境尾根には稜線上に天丸らしきピークが頭を出しているが、よく確認できない。これから天気が悪くなりそうなので先が思いやられる。

焦げた木の根元から新芽  肩のピークから1時間半以上西へ歩いてきたが、そこら辺りの稜線上にも山火事で黒く焦げた木株が目立つ。かつて南天山北面であった山火事の爪痕なのだろうか。そうなら、南天山北面の火災は相当広範囲にわたるものだったのだろう。幸いにも、黒く焦げた木の根元から新しい木が芽吹いて育っているのが見られた。自然の偉大さには敬服するばかりだ。

石灰岩が散乱していたピーク  そうこうする間にヤブめいた稜線を進んで行くと、白く岩肌が崩れたピークにやってきた。地図を見たがどのピークなのか確認できない。1538mのピークかもしれない。標高点などは確認できないので何ともいえない。そのピークの基底部には白い石灰岩のかけらが散乱している。木があまり生えていないので、火災で岩肌が崩れたのかもしれない。東からは崩れたところが白く見えたのだろう。側面は草地になっていて、シカの糞がやたら多く見られた。どこの山へ行っても、シカは大繁殖しているらしい。木肌が食べられて枯木になっているのも結構見られた。

 そこから、草地を稜線に登り返すと笹ヤブがひどくなった。何とか漕いで行くと、ピークから少し下ったところに伐採作業の跡らしい地点についた。ブルーシートやケーブルに使われる滑車などの鉄屑が無造作に放置されていた。もう少し行くと小屋の跡らしいトタン板の残骸があった。この山域では伐採作業が盛んらしい。今日も広河原沢の山腹に伐採された跡や実際に伐採が行われているところが見える。

 15年以上前に群馬県側の天丸山に登りに来たとき、広葉樹のヤブで覆われた道を迷い迷い歩いた。奥深くて、恐ろしく寂しい山域だなぁと感じた。しかし、数年後再び来てみると乙父沢の東沢上部が伐採され、いわゆる社檀の乗越からの「馬道」がファミリーハイクコースに変わってしまった。天丸山や帳付山は西上州の秘峰ではなくなってしまったようだ。ねくらハイカーにとっては、この山域の伐採が広範囲に行われ、急激にひらかれてしまって、奥深い山の魅力が失われていくようで残念だ。
滝谷山頂上  なおも背丈ほどもある笹を掻き分け稜線を進む。倒木もあって踏跡をたどることが出来ないが尾根筋を何とか苦労して行くと、ひょっこりヤブの中のピークについた。山名板がつけられ、苔むして古そうな標石が設置されていたのでここが滝谷山(1659m)頂上だとわかった。頂上の周りはヤブで展望がきかないが、落葉した木々の間から北へ続く県境尾根のピークが見える。少し休んで北へ県境を進むことにする。

ブドー沢の頭頂上  空模様は先ほどより雲が多くなり日差しが少なくなって、本当に寂しい稜線歩きになってしまったようだ。尾根道は針葉樹と広葉樹が混生していて、周りは深い笹で覆われている。進むには笹を掻き分け行くしかない。展望は樹間から何とか見えるくらいで、先ほどの滝谷山から西へ三国山にのびる県境尾根は確認できない。まぁ、地図を見ると角度から無理なのかもしれない。

 ひとつのピークをすぎて、木々の間から見える次のピークがブドー沢の頭だろう。期待を込めて笹ヤブを漕いで行くと、果たして笹ヤブの中にブドー沢の頭(1658m)の頂上があった。残念ながら山名板はついていないが、笹が刈られた真ん中に古そうな三角点が設置されていた。展望はほとんどないので、一休みして帳付に向かって下る。

乙父沢への分岐点?  木々がまばらになったところで北の稜線を見ると、稜線のヤブのピークのわきに見覚えのある針葉樹に覆われた帳付山の一部が見えた。そこから少し進んで行くと、打田著エアリアマップに載っている乙父沢西沢からの取り付き点らしき地点についた。ピンクのリボンが付けられているのでどうもその分岐点らしい。地図で見ると、ブドー沢の頭と次の1609m峰の間のコルあたりなので、多分ここだろう。

1609m峰より帳付山  そこから、再び笹ヤブを漕ぎ倒木を越えて行くと、帳付が見える少し見晴らしのきく針葉樹のピークについた。ここが地図の1609m峰のようだ。そこから北西方向に諏訪山が見える。諏訪のとなりには下ヤツウチグラのトンガリが見える。また、諏訪山からブドー沢の頭へ続く稜線もきれいに見える。ここからは帳付も間近に見えるようになったので、今日の周遊コースも中間点に来たようだ。

帳付より諏訪山方面  1609m峰の尾根を少し西方向に下り、再び県境尾根を北上するようになると歩きづらい岩稜の道になる。岩場を巻けるところは巻き、直登できるところは直登して行くと、ようやく帳付の針葉樹林が近づいてきた。右を見れば、遥かかなたに両神山から赤岩岳や大ナゲシが霞んで見える。少し時間をロスしたが、何とか岩場を通過すると、今度は帳付の広い山腹歩きになった。

 広い尾根をどうにかこうにか登りつめると、東西にのびる稜線上に出た。稜線上にはハッキリした登山道がついていたので、ここが帳付山(1619m)頂上だ。よく見ると、近くの木に山名板が付いていた。西の見晴らしのきく場所からは、帳付から北にのびる枝尾根にある岩峰、西に諏訪山、北東に天丸や大山が見える。しかし帳付からの展望はあまりよくないので、東の岩尾根の登山道に進むことにする。

P3・天丸山・大山・倉門山  帳付の東にあるピークからは、P3・天丸山・大山・倉門山がきれいに並んで見える。天気は午後になって風が止み、暖かい日差しが戻ったのでハイキング気分で歩くことができた。

 以前、天丸から帳付に登った頃は馬道のコルからの踏跡がまばらでルートが確立していなかったが、今ではルートが完全に固定して安心して歩けるようになった。それだけ多くの人が訪れる山になったのだろう。

馬道のコル  そうこうするうちに天丸の岩峰がぐっと近づいてきた。天丸も以前山火事にあって、岩がむき出して本当に岩山っぽくなってしまった。少しずつ緑が回復して、昔の黒々とした峰になってほしいものだ。

 やがて天丸の東に特徴のない倉門山のピークが近くに見えると、「馬道のコル」と呼ばれるところにつく。ここも昔の上州と武州を結ぶ道の峠だったところらしい。ここから北へたどると、天丸に連なる岩尾根を巻いて分岐点の社壇の乗越に行くことができる。以前、乙父沢東沢が伐採される前はヤブで通行が困難だったが、今ではきれいに整備されている。

天丸尾根分岐点  馬道のコルから県境の稜線をたどると、すぐに北からの天丸山直登コースの分岐点につく。天丸はまたの機会ということにして、県境を東へ進む。木々の間に大山の岩峰も見えてくる。西をふり返れば、相変わらず天丸が剛毅な姿で聳えている。

 そこから少し行くと、展望のきかない樹間の倉門山(1572m)につく。山名板が木に付けられている。そこから少し東へ行った岩の地点が大山への分岐点だ。今日は時間がないのでそのまま県境を進む。

岩場の向こうに1510m峰  倉門山を下ると、登山道はたちまちヤブ道になってしまった。刈り払いがやられていないようだ。そこから次のピークを少し左ぎみに行くと、再び岩場の道になってしまった。まぁ、ここまで来れば今日のコースの9割くらいは達成できたということで景色のよい岩場で休憩した。

 そこから六助の方を眺めると、その上部には無名の1510m峰の尖頭が聳えている。このピークは南天山の方から見てもよく確認できるので、地元では名前がついていると思うのだが、どうだろう…。

樹間より焼岩?  さて、ここら辺の岩場に焼岩(1496m)へ行く秘められたルートの分岐があるはずだが、どうも確認できない。仕方ないのでそのまま厳しい岩場を直登して進む。すぐに道は急な下り坂となった。坂の途中で北側を見ると、木々の間から焼岩らしき岩肌が見えた。しかし、ハッキリとは確認できなかった。

六助から埼玉方面  坂を下りきったところが「六助」で、ここも昔の峠だと思われる。以前ここから群馬側に下ったとき、林道工事中で通過できずに林道下のヤブを巻いて通ったことがある。今では立派な舗装道路が通っているようだ。

 今日は埼玉側に下ることにする。ヒノキの植林帯を山吹沢の方に下降して行くと、すぐ下にアスファルト舗装された林道が見える。拍子抜けした感じで山吹トンネルわきの林道に出た。

山吹トンネルわきの登山口  林道とトンネルは新しく、やはり一般車は通行していないようだ。ここから群馬県に行くには、道路を少し東に行って次のトンネルで群馬県側に抜けるらしい。それにしても道幅の広い林道だ。将来、県道にでも昇格するのだろうか。

 ここからは山吹沢に沿って下るのだが、今日はこのまま林道上野大滝線を広河原沢方向に下ることにする。

林道から1510m峰  山吹トンネルを抜けると、これまた立派な山吹橋を渡る。それにしても道幅が広い。大型車が余裕を持って対面通行できる幅だ。途中、西日に映える秀麗な1510m峰のピラミダルな姿が見えた。山吹沢とその対岸に聳える南天山も見事だ。また、林道から西方向に帳付山も確認できた。

 少し行くと、林道わきに伐採地からのケーブルが張られた地点があり、伐採されたばかりの丸太が積んであった。そこからすぐ下には、巨大な石灰岩の岩の洞になったところに貯木場がつくられていた。ここは林業が盛んなところだとあらためて感じた。

山吹沢と対岸の南天山  そうこうするうちに林道は未舗装になり、夕日は西に傾きだしたので、思わず足を速める。途中、広河原沢の河川工事現場を通った。ここではさまざまなところで伐採作業や工事が行われているようだ。この林道に一般車が走るようになれば、この山域の山はお手軽なハイキングコースになってしまうのかもしれない。そんな事を考えながら林道を下り、ようやく薄暗くなる午後5時前に山吹沢わきの駐車地点についた。


日程2004年11月25日(木)
天候午前…晴れ時々曇り 北西の風強し・午後…晴れ 無風
行程時刻山吹沢わき駐車地点6:30→南天山西の肩のピーク7:55→鎌倉沢口分岐8:00→南天山頂上8:05→肩のピーク8:25→石灰岩の崩れたピーク付近10:30→滝谷山11:00→ブドー沢の頭11:50→乙父沢分岐点12:10→1609m峰12:20→帳付山頂上13:20→馬道のコル14:25→天丸尾根分岐14:35→倉門山頂上14:40→県境尾根岩場のピーク15:05→六助15:40→山吹トンネルわき林道出合(六助登り口)15:55→(林道 上野大滝線)→山吹沢わき駐車地点16:45
備考※この行程時刻には休憩時間も含まれるので、正確な行程時間ではありません。あくまでも参考の時間です。

◇ T N H C ◇

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