居合沢から碧岩、大岩、二子岩、ククリ岩周回



 西上州の山域には好奇心をそそる岩山や岩峰が沢山ある。しかし、下仁田や南牧の山間部は道路の幅が極端に狭く、登山口近くに人家があり、ハイカーが路上駐車をして地元の方に迷惑をかけてしまう場合が多かった。そこでねくらハイカーはこの地域での山歩きを少し敬遠していた。

 ところが近頃この地域でも観光に力を入れるようになり、登山口にはちゃんとした駐車場がつくられるようになった。最近、ネットで南牧村にある三段の滝入口に駐車場が完備されていることを知った。以前から碧岩や大岩などを登ってみたいと考えていたので、5月17日に南牧村方面へ出かけてみる。
三段の滝駐車場 三段の滝へのコース  下仁田町から南牧川沿いに臼田下仁田線で南牧村に入り、以前の道幅と変わらない砥沢の集落を抜け、勧能で熊倉方面へ向かう。すぐに左に熊倉川にかかる橋を渡り、トイレのある三段の滝駐車場についた。駐車場にはまだ誰も駐車していないので、先行者はいないようだ。

 さっそく準備をして、駐車場のとなりにつくられたゲートボール場のわきを通り、居合沢へ向かう。沢の入口には水道施設の建物がある。山桜の咲いた右岸の道を行く。すぐに小さな砂防ダムがあり、丸太の木橋で左岸へ渡る。沢沿いにはいくつもの木橋や桟道があり、右に左に渡って行く。朝の渓流沿いにはミソサザイが美しい節回しで鳴いていた。

三段の滝 巻き道の岩場  沢沿いには杉が植えられ、また広葉樹もすっかり繁ってしまって少し薄暗い感じがする。所々にヤマブキソウや小ぶりのラショウモンカズラがひっそり咲いていた。しばらく行くと、沢の岩場に鉄梯子のかかっているところがあった。梯子を上がってもよいが左岸の斜面に巻き道があり、難なく通過できる。

 その先に名物の「三段の滝」がある。滝は小形だが段差をなしていて、落ち着いた風情を持っている。特に中段辺りはナメっぽくて、美しい。滝の上に出るには左岸の巻き道を行く。途中にすべりやすい岩場がある。ロープが張ってあるが慎重に登る。

碧岩・大岩方面分岐点(居合沢)  滝の上に出て、細い流れの居合沢を右岸に渡ると碧岩・大岩方面分岐の道標があった。二子岩へは沢をこのまま遡行して行くらしい。さっそく左の碧岩・大岩方面へ向かうことにする。

 沢の右岸を登り、岩壁がえぐられた地点を越えて行くと笹の生えた小さな沢沿いの道になった。この小さな流れが碧岩沢らしい。道はすぐ沢に降りて行くようになる。

碧岩沢の道標(尾根道・沢道分岐)  少し行くとまた道標があり、碧岩・大岩へは左方向らしい。そこで左へ進んで行くと、沢の右岸に踏跡があるのでそれを登る。沢沿いにはそのまま遡行して行くコースもあるようだ。

 碧岩沢右岸の斜面を尾根状の地点まで登ると、ムラサキヤシオが咲いていた。アカヤシオは少し遅かったようで、花びらが登山道に散っていた。この尾根の右の沢沿いはヒノキの植林帯で薄暗いが、左斜面はミズナラやカエデなどの新緑の若葉で明るい。花を見ながら歩くのは気分がいい。

ムラサキヤシオ 碧岩分岐点  しばらく尾根を登って行くと、右側のヒノキの樹林越しに特徴的な二子岩のピークが見えた。また、左には木々の間から碧岩の姿が見えはじめる。尾根沿いにはムラサキヤシオの他にオレンジ系のヤマツツジも見られるようになってきた。

 そこから尾根を左にトラバース気味に進むと北西から南東へのびる尾根に出る。ここが碧岩への分岐らしい。左に石灰岩の大きな岩稜があり、碧岩へはこの岩稜を右(北側)に巻いて行く。

尾根から碧岩 基底部(固定ロープあり)  分岐から北西方向に尾根を進み、碧岩の基底部に近づいてルートをよく見る。登りづらそうな岩稜のルートには固定ロープが設置されていた。ネットで前もってロープがあることを知っていたが、実際に確認できたので心強い。さっそく軍手をして登りにかかる。

 基底部のロープは難なく登れたが、中段の複数本のロープの箇所では三点確保で登るのに足場がうまく合わずテコずる。足場を確保できずにどうにか腕の力で体を引き上げて登る。ねくらハイカーは岩登りはあまり得意でないので致し方ない。

熊倉方面 碧岩頂上山名板  中段の難所を越え、ようやく碧岩の山頂部に出た。山頂部にはまだアカヤシオが咲いていていた。五月に入って少し冷え込んだのでまだ散らずに残っていたようだ。

 山頂部を少し西寄りに行くと山名板のある碧岩頂上(1125m)についた。そこからは下の方に熊倉の集落がよく見える。北には特徴的な立岩と荒船方面の山々が見える。残念ながらその遠くに控える浅間山は霞の中に消えている。

ククリ岩・二子岩方面 大上峠・広小屋山方面、奥に茂来山  西には長野県境の山々が見える。特に広小屋山から大上峠の稜線の向こうに茂来山から四方原山への山並みも確認できた。南方には二子岩とククリ岩のピークも見える。北東は木立でよく見えないが、遠くに特徴的な鹿岳と四ツ又山の山影が確認できる。

 しばし春の西上州ののどかな景色を眺め、一息入れる。今日はまだ他を回るつもりなので、名残惜しいが下山することにする。再び緊張する岩稜の下りにかかる。やはり中段の岩場では足場のホールドがうまく合わなかったが、固定ロープのおかげで安全に下降できた。

大岩への尾根道 碧岩方面・大岩方面分岐  碧岩の基底部から再び尾根を南東に向かい、先ほどの尾根コースの分岐点に戻った。ここからは大岩へ向かうので、尾根をこのまま南東へ辿る。すぐにT字路で北東へのびる尾根にぶつかる。

 そこには標識があり、左(北東)が「大岩」で右(南西)が「三段の滝・熊倉」とある。ということは、この南西からのコースがメインルートらしい。つまり、碧岩沢の沢沿いのコースがここにつながるようだ。そこで分岐を左へ進み、大岩へ向かう。

砥沢方面分岐  新緑の明るい尾根を少し行くと、また道標のあるT字路のような地点についた。左(北東)方向が「大岩」で、右(南東)方向が「砥沢」と表示されている。

 つまり、ここから右の南東方向へ尾根を辿れば砥沢の集落へ向かう林道に出合うらしい。ここは迷わず左へ向かう。

西に碧岩 東に大岩  それから少しヤブめいた岩尾根を左に巻いて登り返すと、見晴らしのよい岩場に出た。そこからは大岩が見えるが、先ほど登った碧岩を眺めるのに絶好のポイントだ。

 ここからは厳しそうな岩稜を東に辿り大岩の岩峰に向かうのだが、眺めがいいのでここで一休みしようかと考える。しかし一息つく間もなく、下の方で熊よけの鐘が聞こえてきた。誰か登ってきたようだ。ここで後続者に追いつかれてはマズイと思い、すぐに大岩方向へ歩き出す。

立岩・荒船方面 大岩頂上  厳しそうな岩稜のコースだが、左に右に岩場を巻いて行けるので難なく大岩頂上(1133m)に辿りついた。そこから登路をふり返ると、先ほどの鐘のハイカーが下の見晴らしのよい岩場で休んでいた。男性の単独者のようだ。

 大岩山頂部の東側は灌木で見晴らしがないが、北の立岩・荒船方面はよく見える。西には碧岩が長野県境の稜線のバックを従えて優美な姿を見せている。南に聳えるククリ岩も落ち着いた姿で佇んでいる。

大岩下の岩場から碧岩方面  さて、先ほどのハイカーも大岩へ向かってくるようなので、ねくらハイカーも次の目的地へ向かうことにする。眺めのよい岩尾根を少し西に下り、岩場の途中で男性のハイカーをやりすごす。どうもこの人は先に大岩に登り、その後で碧岩へ向かうらしい。こちらは再び岩尾根を下り、眺めのよい岩場で碧岩と大岩を見納め、尾根を南西に向かう。

 先ほどの砥沢分岐を右に行き、次の碧岩分岐で直進し「三段の滝・熊沢」方面へ向かう。このコースはつぎの小ピークにかかる手前で右側(北方向)へ下って行く。つまり、碧岩沢へ降りて行くようだ。

南西へ向かう尾根 樹間からククリ岩・二子岩方面  ここからは二子岩・ククリ岩をめざすのだが、一般的には居合沢の沢沿いを遡行して行くらしい。ここでねくらハイカーは思案する。…碧岩沢を下り、一旦居合沢に降りて再び沢を登り返すにはロスが大きい。先ほど大岩からククリ岩を眺めたとき、しっかりした尾根もあるように見えた…。ということで、碧岩沢に下るのはやめ、尾根を直進して行くことにする。

 この南西に向かう尾根は広葉樹主体なので明るく、それほどヤブっぽくない。所々にムラサキヤシオが咲いていてきれいだ。途中から上の方に二子岩の姿がちらほら見える。

二子岩北尾根出合(大岩方面分岐点) 鞍部から二子岩西峰  しばらく尾根を南西方向に進み、落ち葉の急斜面を上がって行くと南北にのびる尾根に出た。少し広い尾根で踏跡もあるようだ。一休みして、ここからはこの尾根を南方向に登ることにする。少し登ると、右上の木立の間に二子岩の西の峰らしき山影が見えた。さらに登って行くとモミの木ある開けた地点に出た。ここにはミツバツツジが咲いていた。右に先ほどの二子岩西峰がハッキリ見える。

 この辺りから尾根の登りが急になる。踏跡は尾根上を二子岩東峰には向かわず、途中で急斜面を右(南西)へトラバースして行く。枯葉が溜まった細い踏跡を慎重に辿って行くとヤブの二子岩東峰と西峰の中間の鞍部についた。ここで、二子岩が東峰は普通のヤブ山であり、岩なのは西峰であることがわかった。

二子岩西峰頂上  さっそく固定ロープなどが設置されていない西峰の登りにかかる。鞍部から直接東側が登れそうだが、岩登りが得意でないねくらハイカーには難しい。よく見ると、岩峰南側が岩溝のようになっているのでそちらへ移動する。厳しそうだが、灌木があるので何とか登れそうだ。恐る恐る岩と灌木をホールドしながら上がって行く。

 ようやく頂上部に出たが、以前ヤブが伐採された跡があるくらいで山名板もない。やはり、訪れる人も少ないのだろう。そこから北を見ると、先ほど見えていなかった浅間山が遠くに見えた。南東には樹間からククリ岩の山並みが見える。展望が期待できないのですぐに下山にかかる。

西峰からククリ岩方面  岩と灌木を伝わって途中まで降りたが、下るのにヤバそうな岩場になった。登るのには何とか登れるが、下降にはロープの補助が必要なところだ。

 ザックから捨て綱として携帯しているナイロン製のロープを取り出し、ダブルにして立木に引っ掛けて使うことにする。普段あまり使ったことがないので、ロープに結び目が出来てしまい、セットするのに手間取ってしまった。まぁ、懸垂下降の練習のつもりで3m位の岩場をロープで補助して下降する。そのため、西峰を降りるのに少し時間がかかってしまった。

二子岩東峰から碧岩・大岩方面 ククリ岩へのヤブ尾根  鞍部からヤブの斜面を少し登って、二子岩東峰の頂上に立つ。山頂には灌木が生えそれほど眺めがないが、北東に碧岩と大岩が確認できる。ちょうどコメツガの木がいい日陰をつくっているので休憩する。

 さて、ククリ岩へ向かうため下りにかかる。そのまま南東に下ると急斜面になってしまったので、少し西寄りに進む。たちまちスズタケのヤブになってしまった。道はないが、ヤブの中に微かな踏跡らしきトレースがある。ククリ岩へはほとんど歩かれていないようだ。笹は背丈を超えるほどで、密生している。途中のガレた岩尾根を右(西)側のヤブから巻いて行く。ひとつのピークを越えて行くと、コケと腐葉土のような斜面になったが笹ヤブより歩きやすい。

ククリ岩頂上の三角点 ククリ岩から南西方面  そして再び笹ヤブの尾根を登って行くと、三角点のあるククリ岩頂上(1355m)についた。ククリ岩は、岩とはいっても東西に稜線をもつ笹と灌木の繁るヤブ山だ。「栗木立」という別名があるのだが、別段目立つほどのクリの木もない。

 山頂の西端から南西方向を眺めるとあまり特徴のない県境の山並みがみえる。はるか南に御座山のピークが確認できる程度だ。一般には下の鞍部あたりからここに登られるようだが、やはり灌木のヤブ尾根だ。帰りは西に下らずに今来た往路を戻ることにする。

碧岩・大岩 二子岩西峰(左)・東峰(右)  ククリ岩から二子岩へ下って行くと、ヤブの尾根にはイノシシが木の根を掘り起こした跡がいくつも見られた。相当数生息しているようだ。また、登るときには気づかなかったが尾根にはアカヤシオの花が咲いていた。

 次のピークを下る辺りのコケと草地の斜面から二子岩がよく見えた。若干西峰の方が高いようだ。また東峰の右には碧岩と大岩もよく見えた。そこから笹ヤブの岩尾根をすぎ、二子岩東峰の登りにかかる。南東寄りは急斜面なので左の南西寄りからヤブを登り返し、山頂に出る。そして先ほどのコメツガの木陰で一息入れる。

二子岩東峰北尾根の下り  二子岩からの下りは東峰から西峰との鞍部に降り、再びトラバース気味に東峰の急斜面を下って行く。ようやく東峰北尾根のモミの木の生えた見通しのよい地点まで来た。ここからは緩やかな新緑の尾根道だ。沢沿いから涼しい風が吹いてくるので気持ちがいい。

 気分よく快調に下って行くと、いつの間にか大岩へ向かう北東尾根の分岐を通り過ぎてしまった。分岐地点の灌木に赤テープで印をつけておいたのだが、そのテープを見過ごしてしまったようだ。

 地図を見ると、このまま下っても碧岩沢の辺りに降りられるようだ。でも、今日はまだ時間があるので分岐点まで戻って、北東尾根を忠実に辿ることにする。そこで再び尾根を登り返し、赤テープの地点まで戻る。そこから北東尾根へ向かって急斜面を下る。

沢へ降りる斜面から碧岩  しばらく行くと尾根は登り気味になる。やがて左側の木立の間から碧岩が近くに見え出すと、尾根筋は大岩からのコースが碧岩沢へ下って行く地点に合流する。そこから沢方向へ下って行くと、午前中登った碧岩沢右岸の尾根越しに碧岩の秀麗な姿が見えた。

 碧岩沢左岸の斜面は黒土ですべりやすい。慎重に斜面の道を下って行くと、わずかな流れの碧岩沢に降りた。ここで水筒の水を補給する。一息ついて沢沿いを下って行くと、道標があった。それは往路で沢から右岸の尾根沿いに向かった地点だった。

三段の滝  そこから沢沿いを少し歩き、再び居合沢右岸の道標の地点に降り立った。今日の行程の周回もこれで完了したようだ。満足気味に居合沢を下る。帰り際に右岸にある碧岩沢を確認してみる。碧岩沢は水量が少なく、小滝の流れで居合沢に注いでいた。

 それから「三段の滝」のわきを通り、午後の日差しで明るい新緑の沢沿いを下る。まだ明るいうちに駐車場に戻ることができた。駐車場には自分以外にバイクが1台駐車しているだけだった。今回は意外と簡単に周回できたので自分でも驚いた。このコースは少し休憩を多目にとってゆっくり歩いてみれば、もっと楽しめるコースだと思う。


日程2005年5月17日 (火)
天候晴れ
行程時刻三段の滝駐車場7:00→(居合沢)→三段の滝7:30〜35→(左岸)→碧岩・大岩方面分岐7:57→(碧岩沢)→右岸尾根コース・沢コース分岐8:08→(左へ、尾根コース)→碧岩分岐8:35→(左の北西方向)→碧岩基底部8:42→碧岩頂上8:53〜9:07→(下山)→碧岩分岐9:22→(南東へ直進)→碧岩方面・大岩方面・三段の滝方面分岐9:26→(左の北東方向)→大岩方面・砥沢方面分岐9:33→(左方向)→見晴らしのよい岩場9:38→(東方向)→大岩頂上9:50〜55→(下山、西方向)→見晴らしのよい岩場10:03→(南西方向)→砥沢分岐10:06→(右方向)→大岩・碧岩・三段の滝分岐10:14→(南西方向直進)→碧岩沢下降地点10:15→(南西方向の尾根へ)→(二子岩東峰北東尾根)→二子岩東峰北尾根出合(北東尾根分岐)10:40→(左の南方向)→二子岩東峰と西峰の鞍部11:06→西峰頂上11:20〜25→(下山)→鞍部11:35→東峰頂上11:40〜45→(ヤブの稜線、南東方向)→ククリ岩手前ヤブのピーク?:?→(南方向)→ククリ岩頂上12:22〜48→(下山、北方向)→ヤブのピーク?:?→二子岩東峰13:23〜29→鞍部13:30→(二子岩東峰北尾根)→(北東尾根分岐通過、戻り)→北東尾根分岐14:05→(北東尾根、下り)→碧岩沢コース合流14:18→(碧岩沢沿い、下り)→尾根コース・沢コース分岐14:38→碧岩・大岩方面分岐(居合沢出合)14:50→三段の滝15:00→駐車場15:40
備考☆この居合沢のコースのメインはやはり碧岩・大岩で、もし時間があれば二子岩まで延長可能です。二子岩から先はヤブで展望もあまり期待できません。
☆二子岩東峰北尾根の下りで、途中の大岩へ向かう北東尾根の分岐はわかりづらい。もし居合沢方面へ下るなら、北尾根をそのまま下った方が早いようです。
☆二子岩西峰の登降には、安全のためザイルまたは補助ロープなどの使用をお奨めします。

◇ T N H C ◇

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