家を出るのが遅れて、国道405号で秋山郷に入る頃には夜が明けて朝日が眩しいくらいに降り注いでいた。
それから2、3分秋山郷の観光宣伝をしてから、「では、お気をつけてー」と声をかけてもらい駐車地点をあとにする。気温は11℃ほど。いくらか秋めた感じで気持ちいい。
雄川閣の建物を左に見て坂道を下りさらに吊橋を渡る。橋の手前には上流の渋沢ダム放流時の注意書きの看板が設置されていた。
登山道といっても上の調圧水槽へ行くための巡視路なので、かなり整備されている。まずは九十九折のジグザグ道で高度を稼ぐ。
しかしよく見ると、大きさが小鹿ほどのニホンカモシカだった。そこで息を潜めてパチリと一枚。カモシカは急に人と鉢合わせをして状況が理解できないのか、もしくは人を威嚇しているつもりなのか、登山道の折り返し付近でじっとこちらを窺っている。
気を取り直して登山道を上がって行くと、右側に上の調圧水槽から発電所に通じている導水管(水圧鉄管)が見えた。直径2m以上もある太い管だ。
そこからさらに朝日が当たる道筋を登って行くと、今度は左側(南東)の樹間に山尾根が見えた。方向からすると、佐武流山あたりだろう。今日は雲ひとつ出ていないので、山の稜線がきれいに見える。
まずは東側の手すり付きの階段を上り、巡視路の矢印に従って建物の中に進む。
建物を抜けた西側のコンクリート面で一息つく。東方向に大岩山やナラズ山あたりの山影が確認できる。
調圧水槽の建物からちょっと上がったところの道標地点が雑魚川の取水口へ行く巡視路の分岐だ。水平に走る巡視路の踏跡はヤブに覆われているので、現在は廃道らしい。
登山道は刈り払いされて良好な状態なのだが、登る人が少し体力が衰えて良好な状態ではないので、傾斜がきつくなるとたちまちペースが落ちる。先が長いということで、ブナ林の木陰で呼吸を整えながらトロトロ行く。
休憩後、尾根筋をやや南西寄りの方向に登る。このあたりから登山道沿いにはシャクナゲなどの灌木類も見えるようになった。登山道は笹刈りが万全に行われているので至って歩きやすい。登る人の体力次第でいくらでもペースを上げることができる道だ。
尾根のコブ状地点を過ぎると、いくらか傾斜も緩んで一時的に平坦な尾根道となる。そのあたりから前方右方向の樹間になだらかな山並みが見えはじめた。地図で確認すると、1780m峰らしい*。
そのうちに傾斜が増すと、ヘタレハイカーは再び立ち止まり、小休タイムとなる。気温は22℃になっていた。
シジミ沢側に面した尾根沿いを登って行くと、やがて左前方に少し尖ったピークが見えてきた。1780m峰[1770m峰]の左側にあるので、多分三角点ピークの笠法師山だろう。
そのうちに尾根筋から少し左に巻き、ネマガリダケが茂った斜面をジグザグに登る。そして再び尾根沿いを進む。このあたりは枯れた笹がフワフワして少し歩きづらかった。
このあたりから樹木はブナやダケカンバなどの広葉樹に混じってコメツガやシラビソなどの針葉樹も見えるようになった。
さらに左前方に笠法師の三角峰*を眺めながら笹地の斜面を登って行くと、なだらかな平坦地となる。何か曰く有りげなところで、傍らの立木に茶色のブリキ板の標識が付いていた。しかし文字は消えている。
山頂付近からは樹林越しに笠法師方面がいくらか見えるが、クリアーな展望はない。そこから両側にネマガリダケが密生した登山道を南へ進んで行くと、展望のあるところに出る。
そこからは、笠法師山の右後方に大きな山並みが見えた。烏帽子岳だ。
そこから登山道を南東へちょっと下ると、笹が大規模に刈り払われた平坦地の鞍部となる。登山道が通る真ん中には大きな焚き火跡が見えた。
広場から笹の葉が多めに残る登山道を南へ進む。このあたりは2m以上のネマガリダケが密生していた。笹陰になった斜面は湿っている感じで、岩には苔が生えている。
笠法師の山頂部を眺めながら尾根沿いを南へ進む。笹刈り道は相変わらずシジミ沢側の斜面を通っている。
笠法師山北面の山腹を南から東へ方向を変えて進んで行くと、左側の立木に標識が4、5枚付いていた。そこから細い踏み跡が左下に分岐している。
このあたりは日陰になっていて、かなりじめじめしていた。笹刈りされた斜面にはシダ類が多く生えている。
笠法師北面の道を南東へ進むようになると、また日が当たり出す。左方向には依然として佐武流山方面が見える。
山腹の道は途中から斜面を折り返してジグザグに登るようになる。笠法師の南尾根に上がると、右(北)側の立木に茶色のブリキ標識と白の貼り紙標識が付いていた。
このあたりは両側が背丈くらいの笹ヤブになっていた。尾根筋を少し行くと、展望のあるところに着く。景色がよさそうなので、右側の岩場に上がり南方の烏帽子岳方面を眺める。
岩場の展望地からは北東の苗場、東の赤倉・ナラズ・佐武流、南東の白砂・八十三・堂岩・八間、南の三引・三壁・大高などの山々を一望の的に見渡すことができた。
小休後、ヤセ尾根の岩場を下る。見た目は厳しい感じの岩場だが、固定ロープが付いているので安心して下れる。細い登山道はヤセ尾根の西側を搦んで通っている。
尾根道はそのうちに傾斜が緩くなり、針葉樹が多い樹林帯に入る。木陰になった道を進むと、右(西)側の林の中に広場のようなところが見えた。手前の木々の間に折り畳まれたブルーシートが置かれ、その奥に広場のようなスペースがある。
ねくらハイカーは日帰り予定ということで、見物もほどほどに登山道に戻る。
再び亀の歩みで笹地を進む。古い倒木を潜りながら登って行くと、一時的に樹林帯の日陰の斜面になる。このあたりも結構湿っていて、刈られた笹はまだ青々していた。
さらに登って行くと、登山道沿いに見えるシラビソやオオシラビソの針葉樹が矮小化してきた。シラビソ類に混じってハイマツの群落もチラホラ見えるようになる。標高もすでに2000mを越えているようだ。
そのうちに傾斜も緩くなり、少し西寄りの方向へ歩いて行くと標石が埋設されたところに着く。烏帽子岳の山頂(2230m)だ。
北西の赤倉山から南東の白砂山へつづく信越国境の稜線、それから南方の上信国境の峰々、さらに南西の草津白根や横手の山々も見える。
さて、時刻はすでに12時半をまわっているということで、時間的にはここで戻った方がベターなのだが、以前岩菅山に登ったときは裏岩菅の北東側までしか歩いていないので、できれば裏岩菅まで行きたい。
低く刈られた笹原の道を西寄りに進んで行くと、前方にゆったりとした姿の裏岩菅山が見えた。裏岩菅の左側に見えるピークが岩菅山らしい。
尾根道からは左下に魚野川上流の谷あいがよく見えた。その後方に聳える大高山やダン沢ノ頭あたりの国境線を眺めると、鈴木牧之の『秋山記行』に出ていた秋田の猟人が歩いたという草津へ抜ける道(沢ルート)のことが思い浮かぶ*。
ところで、戦前に出版された上信越付近の山のガイドブックを参照すると、その秋田の猟師が辿ったらしい沢登りのルートが出ている。
いつまでも興味は尽きないが、今日は時間的に厳しいので、西へ急ぐ。小ピークを越え、前方に昭文社の地図で中岳*と表記された2236mピークの尖峰を見ながら尾根道を進む。
どうにか中岳(2236m峰)の山頂に出ると、笹刈りされた道筋に標石が打たれていた。側面に「山」とあり、その反対側に「公共」も文字が彫られている。図根点相当の標石ということで、この2236m標高点が図根点となっているようだ。
そこから岩の多いヤセ尾根っぽい感じの尾根筋を西へ辿る。登山道沿いには蛍光ピンクテープも付いている。一旦岩場を巻いて下り、再び尾根道を進む。
そこから岩の多い斜面を下る。ルートはしっかりしているので簡単に下れる。それからまた低木の針葉樹の林を通る。このあたりは湿っていてぬかるみが多い。
裏岩菅の山頂部を見ながら平坦地を進んで行くと、右(西)側に小さな湿原があった。湿原はすでに薄っすら色付いている。山の秋は早い。
そのあたりから緩やかな登り道となる。途中、傍らの樹木に壊れた樹脂製の標識が付いていた。それには「岩菅−切明」とあり、「一の瀬旅館組合」の文字も見える。標識は昔、岩菅・切明間が盛んに歩かれた時代のものらしい。こういう標識を見ると、気分はすでに奥志賀の山にいるという感じになる。
そのうちに傾斜が緩やかになり右(西)に焼額山が見えるようになると、板状の岩がゴロゴロしたところに出る。
苗場から佐武流・白砂・堂岩・八間・三壁・大高・小高・ダン沢頭等が見渡せる。それから横手・草津白根方面も見える。横手山の右後方に見える山影がねくらハイカーにはイマイチ不明。四阿山だろうか…?
残念ながら、先ほどまで上信国境線の上に出ていた浅間の山影は雲の中に埋没していた。
時刻はすでに2時半をまわっていた。小休後、往路を北に下る。裏岩菅山の下りからは右に烏帽子岳につづく山尾根、正面に鳥甲山方面が見える。山々はいくらか西寄りの日を浴びて薄っすら秋の気配が漂っている。
ねくらハイカーは遠方の景色を眺める余裕はなく、坦々と刈り払い道を歩む。2180m峰南面の山腹を巻き、ぬかるみの多い針葉樹の林を抜けて東に進む。
一息つく間もなく東へ下る。
そこからまた魚野川が流れる谷あいや上信国境の山々にチラリと目をやりながら、左右対照的な植相の尾根筋をトロトロ進むと、再び烏帽子岳の山頂に着く。裏岩菅から約1時間10分。
ここからは下りが多いということで、何とかなるだろう…。何事も気楽に考える。北に笠法師や大岩・苗場・鳥甲の山々を見ながら下る。
北東の尾根筋から樹林帯に入りじめじめした感じの北面を下る。このあたりは一日中直射日光が当たらないようで、朝露が乾かずに濡れていて滑りやすい斜面となっていた。
そのうちに針葉樹の樹林帯に入ると、左(西)側に幕営地がある地点を過ぎる。最低鞍部からヤセ尾根の急斜面を西側に巻きながら登る。
そこからは午前中と同じく眺めがいい。白砂山や佐武流山方面の山尾根は西日夕陽が当たって微かに赤みを帯びたように見えた。紅葉の季節も近いようだ。
笠法師の山頂部に向かって尾根道を進むと、すぐに標識地点に着く。時間があれば笠法師の三角点に寄り道するのだが、今日は時間的に無理。刈り払い道に沿って右下(東)に下る。
そこから北に曲がって進んで行くと、尾根沿いの道となる。
笹が密生した尾根沿いを進むと、「まむし沢の頭」手前の小鞍部にある幕営地広場に着く。そこから南西方向に西日に輝く烏帽子岳北面が見えた。
さらに1770m峰山頂付近から北東方向に下る。前方の樹間には、これまた西日に輝く大岩山が見えた。まさに黄金色と形容していいような須臾の煌きを放っている。
日没近くになると、大岩山や佐武流山の山肌が今度は赤く染まってきた。まだまだ切明は遠い感じだ。
そのうちにすっかり日が暮れて*、登山道を歩くにも足元が見えづらくなってきた。そこで、急斜面では笹や木の枝を掴みながら下る。ところが、湿った黒土の斜面で立てつづけに2回ほど転んでしまった。
夜の山道を薄暗い懐中電灯の灯りを頼りにして進む。ここでルートミスをするとヤバイので、気を引き締めて行く。
調圧水槽の施設から下のジグザグ道へ下る。下側に見える切明発電所や雄川閣の灯りを目標にしながら巡視路を外さないように下って行くと、間もなく通行止めの看板がある発電所前の広場に出る。ようやく登山口に降りられたということで、ここでフーッと大きく深呼吸をした。
そこから雄川閣の建物を右に見て道路に上がり、切明橋で再び中津川を渡り返して駐車地点に戻る。| 日程 | 2008年9月10日 (水) |
| 天候 | 快晴 稜線上、東または南東の風 |
| 行程時刻 | 切明橋西側駐車地点6:50→切明橋6:50〜6:53→吊橋6:55→切明発電所広場(登山口)6:55→調圧水槽西側7:20〜7:28→雑魚川巡視路(廃道)分岐7:30〜7:32→(途中、休憩3回計25分弱)→1770P付近9:40〜9:42→「まむし沢の頭」標識地点9:46〜9:53→幕営地広場9:53〜9:56→「水場」標識地点10:12〜10:15→(笠法師山北面・東面の山腹道)→笠法師山南尾根標識地点10:48〜10:56→南尾根展望地11:01〜11:06→(ヤセ尾根)→最低鞍部付近11:15→林間幕営地11:32〜11:37→(途中、休憩5分)→烏帽子岳12:40〜12:53→中岳(2236P)13:13〜13:15→(途中、休憩5分)→裏岩菅山(2341P)14:13〜14:35→(戻り)→中岳(2236P)15:20→烏帽子岳15:45〜15:53→林間幕営地16:20→最低鞍部付近16:31〜16:32→(ヤセ尾根)→展望地16:45〜16:48→笠法師山南尾根標識地点16:53→(笠法師山東面・北面の山腹道)→「水場」標識地点17:14〜17:15→(途中、休憩5分)→幕営地広場17:31〜17:32→「まむし沢の頭」標識地点17:33→1770P付近17:37→(途中、休憩15分)→雑魚川巡視路(廃道)分岐18:38→調圧水槽西側18:40〜18:45→発電所広場19:02→吊橋19:02〜19:03→切明橋19:05〜19:08→駐車地点19:09 |
| 備考 | ♦この記録は、HP「木楽工房の登山教室」・「新ハイキング・平日グループ」・「長野勤労者山の会」等の記録その他を拝見し、参考にさせていただきました。それから、藤島玄 著『越後の山旅』(富士波出版社刊)・中村謙 著『上越の山と渓谷』(朋文堂刊)等の記録も参考にしています。 |
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