馬坂峠から台倉高山



 ねくらハイカーは今から20年ほど前に福島と栃木の県境に聳える田代山(1926m)に登ったことがある。その時には県境沿いの登山道を西へ辿り、帝釈山(2060m)の山頂まで快調に進んだ。その際、時間にまだ余裕あり帝釈山をさらに南西に下る踏跡があるので、県境を南西に辿ってみた。

 しかし、帝釈山を下って次の登りにかかるあたりから倒木が多くなり、1時間くらい山尾根を進むと登山道らしき踏跡を見失ってしまい、仕方なく帝釈山に引き返した。当時は帝釈山から南西に群馬県境の黒岩山あたりまで福島・栃木県境の尾根上に古い道があるのだろうと甘い考えで山尾根を進んでみたのだが、実際はヤブと倒木がひどくて県境ルートは完全に廃道化していたようだ。
 ところで話は長くなるが、以前金田峠についてネットで調べている時に画家で詩人・エッセイストの辻まこと(1913〜75)著『画文集 山の声』という本を知った。金田峠のことはその本に収められた「白い道」に書かれているが、次の「引馬峠」という文にこの県境尾根、いわゆる帝釈山脈の尾根を歩いたことが書かれていた。辻氏は太平洋戦争前からこの近辺を旅しているので、この山域には詳しい人だ。

 行程の日時は特定されていないが、おそらく山歩きを再開した戦後間もない頃だろう。彼は木賊温泉から田代山に登り、午後遅く帝釈山に着き、県境を台倉高山へ向かう。しかし、途中のひどい倒木林の尾根で踏跡を見失い、台倉高山に着く前にビバークすることになる。ねくらハイカーが歩いたのは1980年代前半の頃だが、「引馬峠」を読むとすでに1950年代以前からこの付近は倒木で通行不能になっていたことがわかる。

 辻氏は翌日朝早くから倒木だらけの尾根を苦労して辿り、台倉高山の頂上に着く。しかし台倉高山の先に踏跡はなく、さらに困難な倒木林の尾根が続いていたという。ようやくその日の午後になって、辻氏は昔の桧枝岐村と栗山村の川俣を結ぶ引馬峠に着いた。

 推測するに、辻氏は引馬峠から川俣へ下り、昔滞在した奥鬼怒の手白沢温泉に行こうとしていたのではないかと思われる。しかし、この引馬峠も「…戦争前に川俣からここへ登ってきた頃には、はっきり路があったのだが、平五郎山へ出る路は、クマザサと倒木であとかたもない。白檜、ネズ、アオモリトドマツなど、峠をかざる巨木は依然として変わらない静かな姿だが、その足もとは荒れはてている。風下になった会津側は(中略)路も森も静かで、むかしのままであった」ということで辻氏は川俣ではなく、桧枝岐へ下ることにする。

 そして峠道を北側へ辿り、午後遅く桧枝岐の旅館に着いている。この文章は山歩きを通して自然が彼の内面にある生命の感覚を呼び起こし、さらにその感覚に磨きをかけていくということを述べているものだと思うのだが、ねくらハイカーにとってはこの文で辻氏が苦労して帝釈山の南西側の県境を辿り引馬峠まで歩いていることに興味を持った。
 そして話は変わるが、近頃この帝釈山南側の鞍部に林道が開通し、ついに平成16年(2004年)この鞍部「馬坂峠」から台倉高山へのルートの刈り払いが完了し、登山道が整備されたことをネットで知った。そこでねくらハイカーも以前敗退したこのコースを歩いてみようと10月下旬に出かけてみた。
林道通行止め  伊南川沿いを通る国道325号で桧枝岐村に入り、帝釈山登山口の案内板のある地点を左折して舟岐川沿いの林道に進む。すぐに未舗装の路面になるが、約1車線から1.5車線幅の林道は早朝なので対向車もなく順調に走れる。

 舟岐橋を渡るとトヤス沢沿いの道を進み、山腹を登って行く。林道沿いの斜面にはシラビソなどの針葉樹が多く、広葉樹のダケカンバなどはすでに黄葉も終わり散りかかっていた。

 やがて前方に帝釈山南面が見え出し峠も近くなってきたという地点で、進行方向に簡易式のゲートがつくられていて林道が通行止めになっている。

峠へ向かう林道 コンクリート法面崩落箇所  仕方ないので手前の広い路肩に駐車して、そこから峠の登山口まで徒歩で行くことになる。さっそく準備をして歩き出すが、林道の路面は至って良く、どうして通行止めになっているのか不思議に思った。

 少し歩いてカーブを曲がって行くと、その通行止めの原因がわかった。林道のコンクリートで吹き付けされた斜面の側壁が崩れているのだ。また、その先では剥がれた斜面の土砂がむき出しになっていて崩れやすくなっている。白地にミドリ十字の旗は見えるが、修復工事をやっている気配がない。案内板には10月上旬から11月末までの予定期間になっているが、工事が始まっていないので今年(2005年)は通行止めが続きそうだ。

林道先に朝霧 「遊山清水」の水場  しばらく林道を進んで行くと、帝釈山南面が見える峠方向から朝霧のガスが西側にあふれ出してくるように流れてくるのが見えた。こちらの福島側は天気が良くて晴れているが、栃木側は霧に覆われているようだ。今日は天気が良くなればいいが、どうだろう…。

 峠近くの林道わきに「遊山清水」という水場がつくられていた。コップも用意されているので1杯ご馳走になる。クセがなくてまろやかで旨い水だ。

馬坂峠(福島側から) 峠から栃木側、林道通行止め  水場から林道を少し東へ進むと、霧でガスった峠状の地点に着いた。ここが標高1790mの馬坂峠で、北側に帝釈山の登山口があり、南側に台倉高山の登山口がある。気温は10℃くらいで山歩きにはちょうど良いくらいだ。

 普通ならここまで車で入り、峠付近の広い道幅のスペースに駐車できるようになっている。今日は東の栗山側は完全に霧の中で馬坂沢の谷は見えない。また、栃木側の林道も通行不能らしく通行止めになっている。

馬坂峠、帝釈山登山口 馬坂峠、台倉高山登山口  峠の栗山側には営林署設置の治山工事の案内板がある。ねくらハイカーは20年ほど前におそらくこの付近を歩いたのだが、どこを歩いたのか見当もつかない。あの頃は余裕もなく深い原生林の尾根をひたすら倒木を乗り越えて辿って行ったので、こんな開けた峠状の鞍部を通った記憶がない。

 20年の間に林道ができ、山腹の倒木もきれいに整理されたようだ。この馬坂峠から帝釈山・台倉高山への登山道もその事業の一環として桧枝岐村の人たちによって整備されたものだ。この地点から台倉高山へ歩くことができるのは本当に有難いことだ。

よく歩かれた登山道 オサバグサの群落  少し休憩後、峠南側の台倉高山登山口に足を進める。ツガやシラビソが生えた斜面にはよく踏まれた登山道が見える。 そしてこの針葉樹の中の黒土の道には要所要所に桧枝岐村の赤色の杭が打たれている。

 少し登ると薄暗い感じの斜面にはオサバグサが一面に生えているのが見えた。夏にはこのあたりに可憐な花が咲き誇ることだろう。帝釈山へ登る斜面にもオサバグサが沢山見られるようなので、この馬坂峠付近はオサバグサの群生地になっているようだ。

倒木が切られ、整備された登山道  登山道は県境の通る1898m峰へは向かわずに西側の山腹を巻くようについている。以前ねくらハイカーが撤退した地点は1898m峰へ登る尾根沿いで、倒木があまりに多くて県境尾根を辿ることができなくなり、1898m峰の東斜面寄りに進んでしまい踏跡を見失ってしまったのだ。

 この登山道は福島側の西斜面を通っているので、自分が撤退した地点がどのあたりかを突き止めることはできなかった。でも、この登山道にも昔の倒木の跡がいくらか残っていて、古い倒木が相当数切られて整理されたのがわかる。

小沢を右上にトラバースして行く 斜面にゴゼンタチバナの群落  やがて尾根沿いに登り返す途中でトヤス沢上流の小沢を渡り、再び県境尾根に戻る。尾根沿いには1898mピークからの踏跡もあるようだ。少し行くと登山道わきにはゴゼンタチバナの赤い実が一面に見える。このあたりはゴゼンタチバナの群生地のような感じだ。

 また、登山道にはカエデの枯葉が散っていて、もうこの付近では広葉樹の紅葉シーズンは終わってしまったらしい。このあたりでまた少しガスってきてしまった。登山道沿いの樹木には昔付けられたらしいテープやリボンや赤ペンキなどの目印が見えるが、今はしっかりした登山道があるので必要ないだろう。

シラビソの多い樹林帯 「鹿の休み場」  そこからシラビソ林の中の道を西寄りに進むと、いくらか開けたところに着いた。そばに新しい道標がある。見ると「鹿の休み場」と書かれている。このあたりにシカが多く生息しているのだろうか。最近設置されたものらしい。近くには朽ちた倒木があり、ベンチ代わりに座ることができる。

 この付近も倒木林がひどく、相当人の手が入って整理され歩きやすくなった感じのところだ。広葉樹の灌木類はもうほとんど落葉してしまい、ダケカンバの黄葉がちらほら残る程度で物淋しい晩秋の佇まいを見せていた。

県境尾根へ登り返す  それからほとんど見通しのない針葉樹林帯の中の道を進んで行くと、ようやくガスが取れて日差しが出てきた。黒土の登山道は相当数の人々に歩かれているようで、湿ったところではぬかるみができている。

 登山道はやはり県境の尾根沿いを通らずに西側を巻いてつけられているので、途中から再び尾根沿いに登り返して行く。尾根沿いにはいくらか倒木があった。また、登山道に散った落ち葉の日陰の部分には霜が融けずに残っている。やはり標高が2000m級の稜線なので冬の訪れが早いようだ。

「三段田代」の小湿原  やがてツガやシラビソの樹林帯を抜けると、木道が付けられた小さな湿原に出た。2033m峰の北東側の尾根にある湿原だが、草紅葉が朝日に美しく輝いている。このあたりは今までと一変してよく開けた場所なので、気持ちよく尾根歩きができるところだ。

 さらに進むと道標があり、休憩スペースの木道がある地点に着いた。「三段田代」と命名されたところだ。早朝で誰もいないので、ここで休憩する。天気もようやく晴れわたってきたようだ。気温は10℃くらいで馬坂峠とほとんど変わらない。日差しが出てきたので、気温もこれから上がるだろう。道標の掲示によればここから台倉高山まで1時間で、駐車場(馬坂峠)まで40分だそうだ。

立木に古い菱形のプレート  登山道は「三段田代」の湿原から2033m峰のピークは通らずに西側へ下り、尾根を巻いていく。針葉樹の繁る巻き道を進むと、立木に日光周辺の山域で見られる菱形のブリキのプレートが打ち付けてあった。

 赤色は剥げ落ちて黄色だけだがかなり古そうだ。ということは、この西側の巻き道に県境を通る昔の道があったことがわかる。

樹間から台倉高山方面 時間が表示された道標  そこから少し行くと、樹間から遠く南西方向に山のピークが見えた。台倉高山とその北峰(標高2060mピーク)のようだ。さらに巻き道を進むと、ヤブめいた樹木の間から県境の稜線沿いにある2028m峰の樹林帯も見えた。

 そして巻き道を進んで行くと倒木が見え、いくらか歩きづらくなる。登山道わきには道標があり、「山頂40分・駐車場1時間」と書いてある。やがて針葉樹の中の笹の少ない平坦な尾根道になった。県境尾根のようだ。尾根の東側はネマガリダケの笹ヤブだが登山道側は笹は疎らで歩きやすい。尾根の登りにはいくらかぬかるみがある。その登りから北東をふり返ると、木々の間から2033m峰の左に帝釈山の稜線が見えた。

2028m峰ピーク付近 2028m峰付近から台倉高山方面  やがて2028m峰のピーク付近に着いた。この山頂部は樹林に覆われてほとんど展望がないが、少しバテ気味なので一息入れる。

 山頂部のオオシラビソの樹林の間から南西方向をのぞいて見ると、間近に台倉高山のピークが見えた。また、手前の尾根には地図の標高2030mピークの稜線も見えた。

樹間から北峰(2060m峰)が見える  2028m峰を県境方向に下り、シャクナゲの灌木林を過ぎて少し上り気味に尾根を進む。やがて尾根道は2030mピークの西側の巻き道に向かう。

 途中、右方向に会津駒ケ岳の山並みが見えた。駒ケ岳の裾野は錦秋の絨毯が敷き詰められている。さらに進むと、前方右に台倉高山北峰(2060m峰)が近づいて見えてきた。

2030m峰と2060m峰(北峰)の鞍部にある小湿原 2060m峰巻き道手前から台倉高山  2030m峰の巻き道が終わると、また木道のある小湿原に着いた。2030m峰と次の2060m峰(台倉高山北峰)の鞍部にある湿原で、名前の付いていない箱庭のような小湿原だ。

 登山道はこの2060m峰(北峰)の東側の山腹を巻いて通っている。山腹の斜面に密生しているネマガリダケはきれいに刈り払われて歩きやすくなっている。その斜面の巻き道からは台倉高山本峰が目の前に聳えていた。

山頂から西方向、燧ヶ岳が見える 山頂から北東方向、2033m峰や帝釈山が見える  巻き道を過ぎ、オオシラビソやシャクナゲが繁る尾根沿いを直登して行くと、周りがきれいに刈り払われた台倉高山(2067m)頂上に着いた。山頂ではいくらか風が吹いているが、晴れて日差しがあり気温が15℃くらいでちょうどよいハイキング日和だ。

 頂上からの展望も素晴らしく、帝釈山や会津駒ケ岳そして尾瀬・日光方面の山々が見渡せ、景色を十分に楽しむことができた。少し休んでいると、山頂の西側からシカの甲高い鳴き声が聞こえた。この山域にもシカが沢山生息しているのだろうか…。

県境尾根方面、遠くに黒岩山から日光白根山まで見える  休憩しながら南西方向の県境尾根の山並みを偵察する。一瞥すると、どうも黒岩山まで目印になるような特徴的なピークはないようだ。地形からいえば、黒岩山手前の県境に位置する孫兵衛山南峰から1981.7m峰ピークの間の緩やかな鞍部あたりに引馬峠があるようだが、どうだろう…。台倉高山から三角点のある1981.7m峰ピークまで行くのに、地図の1895m地点と1938m地点の間にある1950mピークが目安になるかと考えていたのだが、どうも現実の山並みは違うようだ…。

 今日は台倉高山から先の県境尾根を歩こうと思っていたので、さっそく手袋とコンパスを取り出しヤブ漕ぎの準備をする。予定は日帰りなので時間を区切ってできるだけ尾根を進み、途中で引き返すつもりだ。できれば1981.7m峰ピークか引馬峠まで行きたいのだが、偵察すると日帰りでは無理かもしれない…。

深いヤブの樹林帯から県境方面  休憩後、台倉高山から南西へ下る。山頂直下にはシャクナゲとネマガリダケのヤブの中に踏跡があったが、笹ヤブを下るうちに見失ってしまった。立木に古い赤テープやピンクのリボンが気休め程度に付いているが、ルートはなくヤブ漕ぎで進むしかない。

 台倉高山の下りは何とか下れたが、傾斜がなくなった途端にネマガリダケの密生地を進むのが非常に難しくなった。笹を漕いで進もうとしても容易に前へ進めない。おまけに笹ヤブの中に何本も倒木があり、それを乗り越えない限り前に進めない。

下った鞍部からのふり返り、台倉高山  下った地点は台倉高山と地図の1895m地点との鞍部(標高1880mくらい)だが、県境沿いはヤブがひどいので少し西側へ向かう。

 笹ヤブを漕いで行くと、湿原っぽいところに出た。地図では湿原のようなマークがあるが、このあたりだろうか。一息入れてそこから少し南へ進み、後ろをふり返ると台倉高山の雄姿がよく見えた。

樹間から南方に1950m峰ピーク  そこからまた歩行困難な2m以上の深いネマガリダケの密生地を進み、東西にのびる尾根状の地点に登りついた。この尾根が地図の1895m地点らしい。

 その尾根沿いをヤブを漕いで東側へ進んでみるが、何の目印もなく、展望も得られない。仕方ないので南側へ降りて少し下って行くと、樹木の間から次のピークが見えた。あれが地図上の1950m峰らしい。コンパスをあのピークにセットして、笹ヤブの針葉樹林帯を南南西方向に下って行く。

シラビソやオオシラビソの樹林帯 1950m峰への登りから、台倉高山方面  シラビソやオオシラビソの樹林帯を尾根沿いを進むように下ると、また深い笹ヤブになってしまった。

 鞍部を過ぎて次の登りにかかるあたりで笹ヤブを避けて右側(西側)から登って行くと、コケの生えた針葉樹の原生林っぽい斜面になり歩きやすくなった。1950m峰への登りから北をふり返ると、樹間から台倉高山の秀麗な姿が見えた。

1950m峰から1938m峰へ向かう県境尾根東側の低地  そこから針葉樹の繁る1950m峰のピーク状の地点を過ぎて、ヤブ尾根を南西に辿る。尾根沿いはネマガリダケが繁茂して歩きづらいので、尾根の東側をトラバース気味に進む。

 1950m峰から次の1938m地点ピークへ向かう際に、県境が通る尾根沿いは深い笹ヤブなので東側の低地になったところを進む。すでに灌木は落葉し、シダ類は枯れているのでヤブ漕ぎせずに歩くことができた。砂地が露出したところではシカの足跡が沢山付いていたので、ここにもシカが相当数生息しているのは確実だ。

県境が通る1938m峰の尾根沿い  東側の低地から県境の通る1938m地点ピークの尾根にトラバース気味に登る。尾根を少し進んで、ぬかるみのような水たまりのある尾根の最高地点を過ぎる。

 このあたりの尾根は広くて迷いやすい感じのところだ。時刻は12時を過ぎたが、まだ三角点のピーク1981.7m峰は遠い。残念だがそろそろ引き返したほうがいいかもしれない…。

樹間から南方の尾根に1981.7mピークが見える  その1938m峰の広尾根から笹ヤブを下り、尾根の東側を次の登りにかかるあたりまで進んでみる。そこから南方の尾根にピークが見えた。あれが1981.7mの三角点ピークだろう。あのピークを越えて南西へ下ったあたりに引馬峠があるようだ。

 今日はあの三角点ピークあたりまで行けたらよかったのだが、深いネマガリダケのヤブ漕ぎに思いのほか時間を費やしてしまい、遅れてしまった。天気もどんよりと曇ってきてしまったので、今日はこの地点で引き返すことにしよう…。

県境尾根東側の低地 1938m地点ピーク付近  そこで進路を180度方向転換して、先ほどの1938m峰の尾根に戻る。そして、また笹ヤブを登り、ぬかるみのような水たまりのある1938m地点ピークを越え、迷いやすい広尾根を北へ進む。

 それから笹の繁る県境尾根を避けるため、東側へトラバース気味に下る。 尾根の東側の低地を進み、再び1950m峰のある尾根に登り返す。

1950m峰ピーク付近 1950m峰下りから台倉高山方面、ガスって見えない  ヤブ尾根を進み、樹林の中の1950m峰ピーク地点を通過し、北側へ尾根を下る。

 1950m峰北側の地点から見ると、台倉高山の山腹はすっかりガスってきて見えなくなっていた。

立木に古い営林署の看板  そこからヤブの少ない西側を辿り、1950m峰と1895m峰の鞍部に降りる。往路では気づかなかったが、登りにかかる笹ヤブが深くなるあたりの立木に、古い看板が見えた。

 これは前橋営林局の山火事防止の看板だ。このような看板があるのは、やはりこの県境の尾根に昔の道が通っていた証拠だろう。

1895m峰の尾根から台倉高山  再び倒木で歩きづらいネマガリダケのヤブ尾根を登り、1895m峰の東西にのびる尾根の東端に出た。そこから前方に先ほどガスっていた台倉高山のピークが間近に見えた。気温はいくらか下がって10℃くらいだ。

 ここで尾根を少し西へ辿り、いわゆる越ノ沢へ下る踏跡か目印があるか探してみる。しかしヤブがひどく、周りを歩き回ることができずに何も見つからなかった。(もしここから越ノ沢へ下ったとしても、舟岐橋から林道上部の駐車地点まで相当登り返さなければならないので、台倉高山へ登って馬坂峠に下ったほうがよさそうだ。)

登りの深い笹ヤブ 台倉高山中腹の樹間から1950m峰方面  そこで1895m峰の尾根の西端から北東方向にネマガリダケのヤブを下り出す。往路では通らなかった小さな沢と尾根を横断して、台倉高山の急峻な斜面の登りにかかる。

 倒木の多いネマガリダケの急斜面の登りに、またもや多くの時間を費やしてしまった。密な笹ヤブなので登るのに非常に手間取る。ヤブ漕ぎ付きのきつい登りに、何度も休みながら亀の歩みで登るしかない…。

 途中、中腹付近の樹間から南西方向に1950m峰の山並みが見えた。そうして、ようやく午後3時過ぎに台倉高山の山頂に戻ることができた。

山頂から帝釈山方面、手前に2028・2033m峰の山並み 2060m峰(北峰)鞍部の小湿原、奥に2030m峰  先ほどから空には雲が覆っていたので、台倉高山からの眺望はほとんど得られなかった。北東方向の帝釈山はすっかり雲に隠れていた。

 少し休憩してから、よく整備された登山道を北東に下る。やはり、刈り払いが行われて倒木のない道は歩きやすく、快調に進むことができる。

「三段田代」 登山道出口(馬坂峠)  登山道をピッチを上げて進み、途中の「三段田代」の湿原で休憩する。曇って日差しがないので、気温も7℃くらいに下がっていた。それから、県境の通る尾根の西側を巻いて下り、オサバグサの斜面を抜けて、ようやく午後4時半過ぎに馬坂峠に着いた。

 峠はすっかりガスっていた。今日は帝釈山には登らなかったので、北側の帝釈山登山口に寄って案内板を見てみる。それによると、この馬坂峠から歩けば帝釈山や田代山に短時間で行くことができるので、絶好のハイキングコースとして楽しめるようだ。

「遊山清水」から林道下り 林道から帝釈山方面  それからガスがたちこめる峠を後にする。途中の「遊山清水」で一服し、夕靄に煙る帝釈山南面を見ながら林道を下り、法面崩落の箇所を過ぎて、ようやく薄暗くなる頃駐車地点に着いた。

 気温は5℃まで下がっていた。このあたりの山域には冬の訪れも早いだろう。今日は引馬峠まで行けなかったが、途中の帝釈山脈のヤブ尾根が辿れたので「良し」としよう。また機会があれば、他の地点からこのヤブ尾根を歩いてみたいものだ。


日程2005年10月21日 (金)
天候晴れのち曇り
行程時刻林道通行止め手前の駐車地点6:35→遊山清水7:03→馬坂峠7:08〜7:15→(台倉山登山口)→小沢源流部7:31→鹿の休み場7:54→三段田代8:15〜8:20→2028m峰ピーク付近8:54〜8:57→2060m峰(北峰)鞍部の小湿原9:12〜9:17→台倉高山頂上9:25〜9:50→(南西へ)→1895m(尾根状)地点11:03〜11:10→1950m峰ピーク付近11:56→1938m峰ピーク付近12:21→1981.9m峰北側の鞍部(引き返し地点)12:30→(戻り)→1938m峰ピーク付近12:38→1950m峰ピーク付近13:00〜13:05→鞍部(山火事防止の看板)13:25〜13:28→1895m(尾根状)地点13:40〜13:50→台倉高山頂上15:02〜15:12→2060m峰鞍部の小湿原15:19→2028m峰ピーク付近15:31→三段田代16:00〜16:05→鹿の休み場16:20→小沢源流部16:35→馬坂峠16:47〜16:52→(林道下り、桧枝岐側へ)→遊山清水16:56→駐車地点17:21
備考♦今回のコースでハイキングとして楽しめるのは台倉高山までです。台倉高山から先は展望のないヤブ漕ぎハイクになるので一般の方にはお奨めできません。
♦今回は林道が一部不通で馬坂峠まで車で行けませんでしたが、林道が開通すれば馬坂峠から登れるようになり、かなり歩行時間が短縮できます。

◇ T N H C ◇

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