「戦術の世界史」人物解説(14世紀)

ロバート・ザ・ブルース(1274年〜1329年)
ノルマン人の血を引くロバートはイングランド王エドワード1世に忠誠を誓い、イングランドの王廷で青年期を過ごしました。そのうちスコットランドの王位を望むようになった彼は1306年に政敵を倒すと、 ロバート1世としてスコットランド国王に即位したことを一方的に宣言します。 エドワード1世が死去するとスコットランドの支配を一層強化し、1310年にはスコットランドの司教たちの支持を得ることにも成功しました。1314年「バノックバーンの戦い」でエドワード2世率いるイングランド軍を破って、ロバートは事実上のスコットランド国王となります。 1327年、失策続きのエドワード2世は廃位に追い込まれ、イングランドは財政が破綻して軍隊の維持もままならない状態でした。相次ぐスコットランド軍の侵入に音を上げたイングランドはロバートの王位を認めざるを得なくなり、エジンバラ条約によってスコットランドに対するイングランドの支配権は全て放棄されます。
/「バノックバーンの戦い」へ戻る エドワード2世(1284年〜1327年)
1307年に即位したイングランド王エドワード2世は、お気に入りの貴族ガヴェストンと共に専制的な寵臣政治を行います。他の貴族らが改革案を提出したにもかかわらず、これを完全に無視したため、1311年に彼等から攻撃されてヨークに逃走しました。ガヴェストンが処刑されたことで騒ぎはなんとかおさまりますが、1314年「バノックバーンの戦い」でスコットランドのロバート・ブルースに敗北するとまたも貴族たちの批判を浴びます。しかし貴族たちの足並みが揃わなかったことから、エドワード2世は寵愛するディスペンサー父子と共に再び専制政治を行おうとしました。1322年、これに反対する貴族たちの軍勢がバラブリッジで国王軍と戦いますが力及ばず敗北してしまいます。こうしてエドワード2世の専制的な寵臣政治が復活しますが、これをよく思わない皇后のイザベラと皇太子エドワード(3世)は、1327年にディスペンサー父子を処刑するとエドワード2世を廃位してしまいました。
/「バノックバーンの戦い」へ戻る エドワード3世(1312年〜1377年)
父王エドワード2世が廃位されたことでイングランド王に即位したエドワード3世は、1330年に母后イザベラから政権を奪って親政を開始します。この頃、フランスのカペー王朝に男系の相続人がいなくなったことから、エドワード3世が母方の親戚関係を根拠にフランス王位継承権を主張して、フランスの新しい王であるフィリップ6世に宣戦を布告しました。 エドワード3世の軍勢は1346年7月11日にポーツマスを出航、翌日ノルマンディに上陸します。カーンを制圧して東に向かうとパリにまで迫りますが、パリ周辺に集結していたフランス軍を避けて北方に進路を変え、ブーローニュの海岸をめざしました。途中のソンム川を越えたところで追跡してきたフランス軍を迎え撃ちます。この「クレーシーの戦い」でイングランド軍はフランス軍を壊滅させ、その後の戦いも概ねイングランド側優勢で推移しますが、活躍していたエドワード3世の長子エドワード黒太子(ブラック・プリンス)が戦地で病に倒れ、帰国後に死去すると戦況は悪化しました。エドワード3世自身もフランスとの戦いに関心を示さなくなり、遂にはイングランドの内政からも手を引いてしまいます。ただの傍観者となったイングランド王は次第に支持者を失って、全くの孤独のうちに死去しました。彼の起こしたフランスとの戦争は、116年間にわたって断続的な戦闘が繰り返されることになり、後世には「百年戦争」と呼ばれるようになります。
/「クレーシーの戦い」へ戻る フィリップ6世(1293年〜1350年)
フランス王シャルル4世の死後に妊娠中であった皇后が王女を生んだため、従弟であるフィリップ6世がフランス王に即位してヴァロア王朝を開きました。この時にイングランド王エドワード3世からフランスの王位継承権を要求されてイングランドと戦争状態に入り、1346年の「クレーシーの戦い」で完敗してしまいます。国王によって編成されたイングランド軍は、国王から装備と給料をもらって戦う歩兵主体の軍隊でしたが、フランス軍は封建的な軍役奉仕に依存する、騎士中心の軍隊でした。騎士たちは戦闘の直前に召集され、しかも長くひきとめておくことは出来ません。国王直属の歩兵隊やジェノア人の傭兵隊もいましたが、誇り高い騎士たちは身分階級的な偏見から彼等と協調して戦うことを拒み、伝統的な戦法である正面からの突撃に固執したのです。このような騎士たちを中心とする軍隊は、フィリップ6世に勝利をもたらす戦力とはなりえなかったのでした。戦費調達のために塩税を課したり、質の悪い貨幣を鋳造したりしたフィリップ6世は、フランス国民から極めて悪い評判を受けることになります。

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