ネルソン提督率いるイギリス艦隊(27隻) 対 ヴィルヌーブ提督率いるフランス・スペイン連合艦隊(33隻)
戦闘隊形
イギリス軍は全艦隊を2つに分けて2列縦隊で戦闘に備えます。ネルソンは旗艦ビクトリー号に乗り、13隻を指揮しました。残り14隻は次席指揮官のコリンウッド(旗艦ロイヤル・ソブレン号)に任せます。 フランス・スペイン連合軍は、先頭から最後尾まで5カイリ近くもある長い縦隊で北方に向かっていました。 その中央付近でフランス軍司令官ヴィルヌーブ(旗艦ビュセンタウル号)が指揮をとり、スペイン軍指揮官のグラヴィアは艦隊の後部を率いています。 ネルソンの戦闘計画
イギリス艦隊の司令官ネルソンは戦闘に先だって各艦長に次のような戦闘計画を示していました。
敵艦隊を風下に置き、我が艦隊は順風にのって敵に接近する。
我が艦隊は迅速に航行し、敵軍に我が艦隊の行動を読まれないようにする。
敵軍の死角から敵の縦隊の中心に接近し、全力で敵艦隊の先頭にある5〜6隻の戦艦に集中攻撃を加えて敵の戦列を突破する。
可能な限り敵艦に接近して戦闘する。

戦闘経過
 午前11時35分、イギリス軍の旗艦ビクトリー号のマストに次の信号旗が掲げられます。 「イギリスは各員がその義務を尽くすことを期待する」続いて「接近戦を実施せよ」の旗が上げられるとイギリス艦隊は突撃を開始しました。12時、フランス軍のフーギュエ号が接近してくるイギリス艦隊に最初の砲撃を行って戦闘が始まります。まもなくイギリス軍コリンウッド隊はフランス軍の縦隊を突破することに成功、12時45分にはコリンウッドの旗艦ロイヤル・ソブレン号がスペイン軍の旗艦サンタ・アナ号に接近して、その片舷に並ぶ大砲を破壊してしまいました。 この頃、ネルソンのビクトリー号はフランス軍のレドウタブル号を左舷から砲撃し、イギリス軍のテレメイル号は右舷からレドウタブル号に近づいて砲撃します。他のイギリス艦もネルソンの指示どおり、それぞれ目指す敵艦に接近して猛烈な砲撃を加えました。

 激しい混戦の最中、戦場から遠く離れていたフランス艦隊の先頭隊は戦闘に参加しようとせず、午後3時頃になってようやく戦場に到着しますが、戦いはほとんど終わってしまっていました。 午後2時頃、フランス軍の旗艦ビュセンタウル号は既に降伏しており、フランス軍司令官のヴィルヌーブは捕虜となっています。今やフランス・スペイン連合艦隊はイギリス艦隊に攻撃されるがままでした。そんな中でイギリス艦隊司令官ネルソンが、接舷中のフランス艦レドウタブル号のマスト上にいた敵兵士に狙撃され、午後4時半には戦死してしまいます。イギリス艦隊はこの海戦で圧勝しますが、優秀な司令官を失ってしまったのでした。フランス・スペイン連合艦隊で戦場から逃げおおせたのは11隻のスペイン艦だけで、 22隻がイギリス軍に降伏し捕獲されました。 両軍の艦隊砲撃について
フランス・スペイン連合艦隊の砲撃は、敵艦のマストや帆を狙うものであったため、多くの弾丸が無駄になりました。対するイギリス艦隊の砲撃は水平射撃で敵艦の船体を狙ったので、木造の船体を著しく損傷させ、 砕け散った木片は砲弾以上の恐るべき殺傷効果をもたらしました。またフランス・スペイン連合艦隊の大砲は、旧式な火縄式点火を採用していたので、点火から発射までに時間がかかり、艦が横揺れしている時には照準を定めることが出来ず、発射した砲弾の多くは敵艦のマストの上を飛び越していったのでした。 イギリス艦隊の大砲は、火打ち石を使った撃発式点火を採用していたので照準を決めるとすぐに発射することが出来ました。このためイギリス艦の砲撃の命中精度はフランス艦よりもはるかに高かったのです。
ビクトリー号の死闘
 敵艦隊の隊列にほぼ直角に突撃して行ったビクトリー号は、40分近くもの間、反撃の出来ない状態で敵艦隊からの砲撃を受け続けていましたが、敵の劣悪な砲撃のおかげもあって突入に成功します。ビクトリー号は、まずフランス艦ビュセンタウル号に襲いかかって4百名近い乗組員を殺傷し、20門の大砲を砲撃不能にしてしまいました。しかし、うしろから現われたフランス艦ネプチューン号の砲撃によってビクトリー号も大きな損害を被ります。ネプチューン号には反撃することはできませんでしたが、ビクトリー号の左舷の砲はフランス艦サンティシマ・トリニダッド号の艦尾を捕らえて攻撃します。右舷の砲が、接近してきたフランス艦レドウタブル号に斉射を浴びせかけるとビクトリー号とレドウタブル号の索具はがっちりと絡み合って両艦は接舷しました。午後2時前にはイギリス艦隊司令官のネルソンがレドウタブル号のマスト上からマスケット銃で狙撃されてしまい、ビクトリー号の最上甲板は人影が少なくなります。レドウタブル号のリュカ艦長は今がチャンスとみて、敵艦へ斬り込み隊を送り込みますが、ビクトリー号の海兵隊が下甲板から現われてレドウタブル号の斬り込み隊を撃退しました。甲板上で次の斬り込み隊を編成しているレドウタブル号の右舷からイギリス艦テメレイル号が接近して砲撃を加え始めたため、レドウタブル号のリュカ艦長は負傷し、斬り込み隊の2百名が殺傷されてしまいます。漂流してきたテメレイル号はレドウタブル号と衝突して索具が絡み合い、レドウタブル号はビクトリー号とテメレイル号に挟まれて3隻ともまったく動きがとれなくなってしまいました。
 午後2時半頃になってやっとビクトリー号はレドウタブル号から離脱することが出来ました。ビクトリー号がレドウタブル号から離れるとレドウタブル号のメインマストとミズンマストが折れて、メインマストはテメレイル号の後甲板に倒れてしまいます。これでレドウタブル号のマスト上にいたフランス軍の狙撃兵は戦うことが出来なくなり、倒れたメインマストはイギリス軍の斬り込み隊にとって敵艦への架け橋となりました。レドウタブル号へ乗り込んで行ったテメレイル号の斬り込み隊は、ほどなく敵艦の制圧に成功します。レドウタブル号のフランス兵達は必死の抵抗を試みましたが、最後には降伏するしか無かったのでした。

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