「戦術の世界史」もっと詳しく16世紀
1520年代、スペインで生まれた新兵器「マスケット銃」は、
もともと塁壁の上に固定して使う防御用の重小銃でした。野戦で使用するためには、
二股の棒で銃身を支えなければならないほど重かったのです。
16世紀後半のマスケット銃は、口径1インチ弱、銃身の長さ115から140センチで、
重いものでは9キロ近い重量があり、弾丸には50グラム以上の鉛が使われました。
マスケット銃は持ち運びが大変で、発射時の反動も大きいことから、射手には力持ちの大男が選ばれ、
特別な給料が支払われたといいます。このような重小銃は重量と反動というデメリットを考えると
完全に失敗の兵器で、17世紀初めには戦闘で使われることは無くなりました。
しかし「マスケット銃」という名称は、ピストルより大きい肩射ち銃の全てで使われ続け、
従来のアルケブス銃(重量5キロ程度で20グラム以下の弾丸を発射する小銃)も
いつのまにかマスケット銃といわれるようになります。
スペイン艦隊の司令官シドニアは8月11日の記録のなかで、
3千名もの乗組員が病気を患っていると嘆いています。主な病気はチフスのようですが、
多くの人命を奪ったのは「急死をともなう激烈な食中毒」であったとされています。
当時の船の台所は、高い湿度のため食材の腐りが早く、
上甲板から汚物の水分がカマドや台所用具にも浸透してきていました。
台所用具を洗うには「非飲料水」が使われますが、これは単に港で汲み上げられた不衛生な海水です。
「飲料水」は木の樽に入れられていますが、すぐに腐って危険な状態になりました。
そのような「飲料水」でも非常に大事に保存されていたので、
雑用に使用することなど考えられませんでした。
食物は食べる時には腐っているのが普通で、塩や胡椒をふんだんに使い、
味をごまかして食べていたようです。
劣悪な栄養状態や衛生状態は、イギリス艦隊でも変わることはなく、
戦死者数をはるかに超える病死者(ベアー号では乗員の半数が病死)を出しました。
イギリス艦隊司令官ハワードは、伝染病の大きな原因の1つは
水の腐敗であると報告しています。
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