さやか「おんぷちゃん…まさちゃん…」 おんぷ「さあ…あとは、さやちゃんだけよ…♪」 まさみ「さやちゃんの綺麗な心も、漆黒の闇色に染め上げちゃおうね…♪」 さやか「いっ…嫌や…嫌や〜っ!!」『さやか絶対絶命!?闇に堕ちたおんぷとまさみ!!』 冬休みも終わり、授業を再開した遠近学園中等部、昼休みの職員室… 理科担当教諭の五十公野(いずみの)の前に、さやかは立っていた。 五十公野「え〜、西郷さんの小テスト及び提出レポートなんですけどもね〜、 非っっ常にシュールな解答が多くて、こちらとしてもシュールな気分になりますね〜」 さやか「(このシュール五十公野…長話、はよ終わらせてぇな…)」 この五十公野、何かとシュールという言葉を無駄に連発し、シュール五十公野などと仇名される。 五十公野「しかしですね〜、シュールなのも良いのですが、このままですと西郷さん、 あなたの年度末の通知表にも、シュールな数字が並んでしまう可能性が高いんですね〜」 つまりは、テストやレポートの出来が悪く、成績にも影響しかねない…と言いたいのだ。 五十公野「そうなりますと西郷さん、シュールでは済まない不都合なこともありますよね〜? そこでですね〜、あなたには特別な課題をやってきてもらいたいんですね〜」 さやか「(要するに、補習課題やんか〜…)」 五十公野「西郷さん1人だけに、このような課題を出すのもシュールなことですが〜、 通知表でシュールな光景が見られるよりは、まだ良いのではないかと思いましてね〜」 さやか「は〜い…ほな、そのシュールな課題、やらせていただきます〜…」 半べそをかきながら、C組の教室に戻ってきたさやか。 さやか「ふぇ〜ん…課題ぎょうさ〜ん…シュールのアホ〜…」 この課題を、さやか1人で片付けようと思えば、かなりの時間を要するのは目に見えている。 さやか「どないしょ〜…せや!まさちゃ〜ん!」 身近で親交が深くて、なおかつ成績優秀な、まさみの手を借りれば早い。そう考えたのだが… さやか「…ほへ?」 まさみの席に、まさみがいない。教室中をグルッと見回してみても、やはり不在。 さやか「どっか行ってもうたんかな…ほな☆」 ここでさやか、まさみの机から理科のノートを、ほじくり出してしまった。 さやか「えへへっ♪これで勝ったも同じや!まさちゃんには、後で何かおごらなあかんな〜♪」 しかし…これが悪夢の序章となろうとは、この時さやかは夢にも思わなかった… まさみ「さやちゃんのお馬鹿っ!まさか、泥棒まで仕出かすとは思わなかったよ!」 用事から戻ってきたまさみは、勝手にノートを持ち出されたことを知ると、怒髪天を突いたのだ。 さやか「泥棒って…うち、そんな…」 まさみ「人の物勝手に盗ってったんだから、泥棒以外の何者でもないしょやね! それくらいの節度はあるもんだと思ってたのに…今回ばっかりは、見損なったよ!」 さやか「まさちゃん…ああ!どうせ、うちはアホや!悪かったなぁ!」 まさみ「何さそれ!反省の色も無いの!?」 実はまさみ、呼び出されて教室を離れたものの、特に急がない用事であった。 そんな他愛も無い用事で、担当の者が二転三転し、まさみはたらい回しにされていたのだ。 要は、腹の虫の居所が悪かった所で、さやかの行動が知れたものだから、タイミングが悪かった。 おまけに、このケンカが勃発した直後は、おんぷまでもが席を外していたから、さらに始末が悪い。 こちらも別の用事を済ませていた、おんぷが戻ってきた頃には…時すでに遅かった。 まさみに怒鳴られたことで、さやかの方もブチ切れてしまって、双方が一気に大炎上。 2人は売り言葉に買い言葉を投げつけ合って、もう火の勢いは増すばかり… おんぷ「ちょっと落ち着いて…さやちゃんも、まさちゃんも…」 仲裁に入ろうとするが、頭に血が上った2人には、けんもほろろ… さやか「おんぷちゃんは黙っとって!」 まさみ「今度ばっかりは、おんぷちゃんが弁護したって、絶対許さないんだから!」 おんぷ「2人とも…」 そのまま放課後となり、さやか・まさみはケンカ別れ… さやか「ほな、うちオフやし帰るわ!」 まさみ「あたし、柔道部に顔出さないとなんないから!」 さやか・まさみ「じゃ!!」 不機嫌に任せて去っていく2人の背中を見つめる以外に、おんぷには為す術も無かった… その頃…暗闇でほくそ笑む者が… マジョリーチ「これは面白い…全てを暗黒の感情で支配するには、何かと邪魔だった娘達… その3人の心が、怒りと悲しみの入り混じった、闇の感情に染まりつつある… この好機を逃す手は無い…その心の暗さを、もっと深いものにしてくれよう…」 夕刻…人気(ひとけ)の無い帰り道… おんぷ「はぁ…」 1人、下校していたおんぷだったが、背後に何者かの気配を感じ、背筋が凍り付いた。 おんぷ「何…この嫌な感じ…」 ハッとして周囲を見渡すが、誰の姿も見当たらない。 おんぷ「…?」 その瞬間、何か強い力がおんぷの体を押さえつけ自由を奪い、声を発せぬよう口までも塞がれた。 おんぷ「…!」 必死にもがくが力及ばず、身の全てを委ねる他に無かった。 見た目は霧のような、しかし泥のような感触を持った、それは闇の魔力… 塞がれた口や鼻から、そして全身の皮膚から体内に入り込んでくる。 怖い…苦しい…胸の鼓動は、警鐘を鳴らすかのように高鳴り続ける。 おんぷ「(やだ…何これ…頭が…ボーっとしてくる…)」 瞳からは光が消える。次第に気が遠くなっていく。 そして、おんぷは体も意識も、全てを闇に取り込まれた… 光の届かない深い深い森に包まれた、古びた洋館がある。 その中の一室で、魔女見習い服の少女が、何本もの茨に包まれていた。 おんぷ「うぅ…ここは…?」 おぼろな意識で、おんぷは瞳を開く。すると茨の隙間から垣間見えたのは、あのマジョリーチ。 おんぷ「…!」 マジョリーチ「素晴らしい光景だ…今まで私を苦しめてきた魔女見習いが、ついに我が手に堕ちる…」 おんぷ「(え…それ…どういうこと…?)」 闇の魔力に侵され続け、心身ともにボロボロのおんぷには、既に考える力さえ残っていなかった。 言われた意味が分からないまま、ただマジョリーチを見つめるしかなかった。 マジョリーチ「お前は、虐げることで快楽を感じられる…」 おんぷの胸に、ズキッと刺激痛が走る。 マジョリーチ「昔の自分を…小悪魔などと呼ばれていた頃の自分を、よ〜く思い出せ… 大親友とか言ってた奴らを見下していた時、気分が良かっただろう…?」 おんぷ「(違う…私は…どれみちゃん達を…そんな…)」 声を出す力も無く、心に渦巻く憎悪や欲望といった闇の感情に、おんぷは苦しめられる。 マジョリーチ「さあ…心を闇で満たし、闇の魔力を受け入れよ…黒魔女となり、我に仕えるのだ…」 心を穢す最後の誘い。おんぷを取り囲む茨からは、大輪の黒薔薇がおんぷに向かって花開く。 そして、おんぷに向けて、赤黒いゼリー状をした固まりを吐き出した。 これを拒むことは、今のおんぷには不可能だった。そして、頭部から染み込んでいく… おんぷ「(あっ…あぁ…ぁぁ…ぁ…)」 頭の中が真っ白になって、それからどのくらい時間が経っただろう。 おんぷ「あれ…私は…」 意識を取り戻したおんぷは、自分が自分であることを確認する。 おんぷ「私は…おんぷ…」 そこに、マジョリーチが再びやって来た。 マジョリーチ「目覚めたようだな」 指を弾くと、おんぷを閉じ込めていた茨が魔法によって解かれた。 すると、おんぷは前に進み出て、あろう事かマジョリーチの前にひざまずいた。 おんぷ「はい…マジョリーチ様」 かつての凛とした瞳は、輝きを失っていた… マジョリーチ「お前が何者か、言ってみろ」 おんぷ「はい。私は黒魔女おんぷ、マジョリーチ様の忠実なしもべです」 かしずくおんぷに、マジョリーチは満足そうな表情をした。 マジョリーチ「うむ、そうだ。その通りだ。それで良いのだ」 おんぷ「マジョリーチ様、何なりとご命令を」 マジョリーチ「よし。まずはお前の左手を見てみろ。見覚えがあるだろう?」 おんぷの左手首には、金色に光るスペード形のアクセサリーが… マジョリーチ「お前が昔、禁断魔法から身を守るために付けていたブレスレットだ。 形はそのまま再現したが、どんな禁断魔法を使っても壊れないようにしておいた。 それと、お前自身も闇の魔力で強化されている。今までのように呪文は要らん。 指を弾くだけで、どんな魔法も使える。この力で、私の手足として働くのだ」 おんぷ「はい。この黒魔女の魔力、マジョリーチ様のために使います」 マジョリーチ「では、あと2人の魔女見習いも、我が手中に収めたい。どちらが先でも構わぬ。 お前に任せるから、お前の新たな闇の魔力を存分に発揮せよ」 おんぷ「はい。畏まりました」 翌日…おんぷが忽然と姿を消したため、急遽ロロが身代わりとなり、何とか事なきを得た。 しかしロロは以前から、女優の仕事だけは身代わりはさせないと、おんぷに言われていた。 それを考えて、ロロは仮病を使い、美保に仕事の予定をキャンセルさせるよう仕向けた。 その代わり、学校にも登校できないことになってしまい、さやか・まさみには事態が伝わらず… そして放課後の遠近学園、女子トイレ… まさみ「さやちゃんは昨日から何も言ってこないし…かと言って、こっちから口利くのもあれだし… おまけに、おんぷちゃんまで具合悪くて休んじゃうなんて…いづいなぁ…」 いづい…北海道・東北の方言で、漢字は「居辛い」と当てるように、違和感や不快感がある様を言う。 その場に「いづらい」雰囲気…標準語では表しにくい様子を、端的に表せるのが「いづい」だ。 まさみ「あ〜あ…いづい、いづい…」 洗い終わった手をハンカチで拭いていると、洗面所の合わせ鏡が、今日だけは不気味に見えた。 まさみ「…何だろう…この嫌な感じ…」 すると、その無限に続く鏡に、この場にありえない人物の姿が映っていた…おんぷだった。 まさみ「えっ!?おんぷちゃん!?」 驚いて振り返ってみると、魔女見習い服のおんぷは怪しくニヤリと笑うと、指をパチンと弾いた。 その瞬間、まさみの左手首に、おんぷの物と同じ、スペード型のブレスレッドが填められた。 まさみ「な、何…こ…れ…」 次第に意識が遠のいていき、まさみの手からハンカチが床に落ちた。 そして脳内に、おんぷの声が渦巻いていく… おんぷ「(まさちゃんは私の言いなりになる…まさちゃんは私の言いなりになる… まさちゃんは私の言いなりになる…まさちゃんは私の言いなりになる…)」 必死に頭を押さえていたまさみだったが、やがて両手がブランと力無く下がる。 俯いたまさみの長めの前髪が垂れ、顔の上半分を隠し、ちょうど両目の辺りに暗く影を落とす。 そんな無表情のまま、まさみは無言で体だけを、おんぷの方に向けた。 おんぷ「うふふ…このブレスレットを腕にしたら、私の言うことを聞くように魔法を掛けておいたの。 さ〜てと、後は連れて帰って心を穢して…ああんっ、ゾクゾクしちゃう♪」 この上ない快感だと言わんばかりの表情で、おんぷが指を弾くと、2人の姿はその場から消えた… その数分後… さやか「あ〜っ!イライラすんなぁ…」 偶然さやかも、この女子トイレにやって来た。 さやか「…ほへ?」 誰の姿も無いのだが、何か変な感じがする… キョロキョロしていた所、さやかは床に落ちたハンカチに、ようやく気が付いた。 さやか「まさちゃんのハンカチ…?」 屈み込んで、ハンカチを手に取る。その不自然な有様に、さやかは何だか嫌な予感がした。 さやか「まさかなぁ…何や、しゃくやけど…」 取り出したのはパトレーヌコール。まさみとは話したい気分ではないが、心配になって仕方が無い。 ブツブツ言いながらも、まさみに問い合わせてみるが…なぜか繋がらない。 さやか「えぇ…」 嫌な予感は、次第に不安へと変わっていく。 さやか「おんぷちゃん…」 おんぷのパトレーヌコールにも掛けてみるが、同様に繋がらない。 わらにも縋る気持ちで、自分の携帯から、おんぷの携帯にも掛けてみるが… 電話「お掛けになった電話は、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないため…」 さやか「ちょ…待ってぇな…」 事態が飲み込めず、戸惑い始めるさやか。 おんぷとまさみの身に、何かあったのであろうことは、分かっているのだが… さやか「どないしょ…何とかせな…」 焦るさやか、ここで手元にある1枚のハンカチの存在を思い出す。 さやか「あっ、せや…今なら屋上、誰もおらへんやろ…」 何か策をひらめいたらしいさやかは、一目散に駆けだした… 校舎屋上…案の定、人っこ1人いない。 さやかは急ぎ、コロンタップを手に踊る。 シュッシュ♪ さやか「プリティ〜ウィッチ〜さやかっち〜♪」 どんな時でも、このポーズだけは忘れない。 さやか「さてと…」 意を決して、ポロンに力と願いを込める。 さやか「プレサ〜リラティ〜・ペレナ〜エルプラノ! お願い!まさちゃんのハンカチ、まさちゃんに何があったか教えてっ!」 すると、さやかの魔法によって思いを伝えられるようになったハンカチが、必死に訴えた。 ハンカチ「(お願い、さやちゃん!まさちゃんと、おんぷちゃんも助けてあげて!)」 さやか「助けてって…一体、何があったん?」 ハンカチ「(まさちゃんが、あたしで手を拭いてたら、突然おんぷちゃんが現れて… 虚を突かれたまさちゃん、おんぷちゃんに魔法を掛けられて、連れ去られちゃった…)」 さやか「はぁ!?何で、おんぷちゃんが、そないなこと…」 ハンカチ「(おんぷちゃんの方も、正気じゃなかったよ…何か魔法を掛けられてるみたいだった… でも言動に意思が感じられた…多分、操られてるんじゃなく、洗脳されてる…)」 さやか「洗脳て、ちょい待ち…そないなこと仕出かす奴、1人しか思い当たらへんで…」 マジョリーチを思い出し、さやかは歯がゆそうな顔をした。 さやか「流石に、ここまでされたら、アホなうちかて大方の予想はつくで… おんぷちゃんの頭おかしゅうして手下にして、まさちゃん誘拐させて… 今度は、まさちゃんの頭おかしゅうする気やな!くっそ〜!うちは後回しかいな! 頭が良くて、変に抵抗されると厄介なのから、順に堕としてくつもりやな〜!」 怒りに燃えるさやか、その感情をあらわにする。 さやか「もう頭きた!Triple‐Sは3人全員なめたらあかんってこと、教えたろやないかい! 一寸の虫にも五分の魂や!うちを早めに片付けんかったこと、後悔させたんで〜!」 ハンカチ「(ちょっと、さやちゃん…怒る所が違うよ…)」 まさみのハンカチに心配そうに言われると一転、さやかの怒りの表情に笑みが混じった。 さやか「分かっとる。うちが小馬鹿にされたっちゅうんは、あくまでもついでやで。 それよりも頭きとんのは、おんぷちゃんとまさちゃん、さらってった上に、 2人の頭おかしゅうして、悪いことさせようとしとるこっちゃ! うちのアホな頭おかしゅうされるんはまだええけど、2人のは許せへん!」 しかし、おんぷ・まさみの2人が敵の手に落ちてしまった今、さやかは1人だけ。 一体、どのようにして2人を助け出そうと言うのか。策があるなら聞かせてもらいたい。 さやか「…あれで、何とかできるやろか?」 あれ、とは何か…気になる限りである。 さやか「ティティ、話は全部聞いとったな?」 呼ばれて出てきた、さやかの妖精・ティティ。 ティティ「うん、大筋はな」 さやか「今日、ドラマの打ち合わせだけやさかい、うちの身代わりしてや。 何も演技はせぇへんから、うち本人やのうても大丈夫やで。 うちは今から、おんぷちゃんとまさちゃん助けにいかなあかんねん」 ティティ「頑張ってや、さやちゃん!」 さやか「ああ、もちろんや!」 マジョリーチの根城では、魔女見習い服のまさみが、大量の茨に取り付かれていた… 煌めきの欠片も無い、まさみの瞳。それを見つめて、おんぷが嬉しそうに語りかける。 おんぷ「まさちゃん、マジョリーチ様の力を受け入れれば、楽になれるわよ…」 まさみ「(い…嫌…)」 おんぷ「心配しなくても、まさちゃんなら私みたいに、立派な黒魔女になれるわ…」 まさみ「(そんな…生き恥…晒すなら…この腹…かっ捌いて…)」 精神力の強いまさみは、未だに心の中で抵抗を続けていた。しかし、おんぷには通じない。 おんぷ「ほ〜ら、もう緊張なんかしないで、力を抜いて、闇に全てを委ねて… まさちゃん、これから私の言うことをよ〜く聞いて… 私の言葉を聞いてると、と〜っても気持ちが良くなってくるの… ほ〜ら、だんだんゆ〜ったりした気分になってきたでしょ… もう私の言うことしか、聞こえなくなってきたわね…」 まさみの目は焦点を失って、いつしか全く動かなくなってしまった… おんぷ「もう絶対に、さやちゃんは来ないの…いい加減に諦めましょ… さやちゃんのことだから多分、まだ気付いてないんじゃないかしら? そう考えたら…ほ〜ら、ムカムカしてきたんじゃない?そうよ…それでいいのよ… その嫌な感情を、いっぱいに広げて…そう、暗い暗い感情で心を満たして… まさちゃんを助けに来なかった、さやちゃんを恨む気持ち… もう私を助けることも、自分が助かることもできない、悲しみと諦めの気持ち… 怒り、悔しさ、不安、恐怖、そして絶望感に打ちひしがれるの… そうすれば、まさちゃんの身も心も完全に闇に染まって、 私と同じように、マジョリーチ様に力を授けてもらえるようになるわ…」 怪しくも甘美な、おんぷの囁きが、まさみの精神を崩壊させていく… おんぷ「誘惑に負けたとか、心が折れたとか、そんなの別にいいじゃない… そんな、くだらないことにこだわってた、今までのまさちゃんが間違いなのよ… 今までの自分を全て捨て去って、まさちゃんは生まれ変わるの… 体の芯まで真っ黒に染まった黒魔女として…さあ、闇に染まりましょ… 心配しなくても大丈夫よ。すぐに慣れて気持ち良くなるんだから… 羞恥心も正義感も忘れて、快楽だけを感じられるようにしてあげるわ…」 虚ろな表情のまさみの脳裏に、おんぷの言葉が刷り込まれていく… おんぷ「今、と〜ってもリラックスしてるでしょ…この快感、もう失いたくないわよね…? 私の言うことを聞いてると、こんなにも気持ち良くなれる… でも黒魔女になれば、も〜っとも〜っと気持ち良くなれるのよ… 今まで味わったことも無いような快感で、全てを満たされたいでしょ… まさちゃんは、も〜っとも〜っと気持ち良くなりたいわよね… ほ〜ら、だんだん自分から黒魔女になりたくなってくる… 私と一緒に黒魔女になれば、今よりも気持ち良くなれるわよ… マジョリーチ様に従えば、も〜っと気持ち良くなれるの…」 何度も繰り返し徹底的に、おんぷは暗示の言葉を、まさみに囁き続けた。 おんぷの魔の手に掛かったまさみの潜在意識は、1つの欲望のみに塗り替えられようとしていた。 そう、黒魔女になりたいという欲望だけが、確実に刻み込まれていくのであった。 おんぷの暗示は繰り返す毎に深く深くなっていき、まさみの脳髄に深く深く浸透していく。 こうして、まさみは少しずつ黒魔女へ変貌する道を歩むのだった… まさみ「黒魔女…気持ちいい…黒魔女…幸せ…黒魔女…快感…黒魔女…なりたい…」 ついに壊れてしまった…まさみは自ら、こんな言葉を繰り返すようにまでなってしまった。 おんぷ「もうそろそろ、いいんじゃないかな…まさちゃん、ちょっと疲れちゃったでしょ? じゃあ目を閉じて…そのまま、ぐっすり寝ちゃいましょ… だけど、まさちゃんは夢の中でも、私に言われたことを覚えてて、ず〜っと繰り返すの… そして目覚めた時、まさちゃんは正真正銘の黒魔女に生まれ変わるの… さあ、眠りましょ…深〜く、深〜く、も〜っと深〜く…」 最早おんぷに言われるがままに、まさみは深い眠りに就いてしまった。 おんぷ「うふふ…マジョリーチ様、後はお任せしますね」 マジョリーチ「ふっ…心を闇に染めるのが、ここまで上手いとは思わなかったぞ… それにしても、これでこやつも我がしもべに成り下がるか…」 まさみの頭部を取り囲むように、茨に咲いた薔薇から赤黒いゼリー状をした固まりが現われる。 しかし、おんぷの暗示により眠り込んでしまって、まさみは逃げられるはずもなかった。 無防備で無抵抗なまさみの頭部に、ムニュムニュと染み込んでいく… おんぷ「これで完璧ね…あの真面目なまさちゃんが、黒魔女になる…ああっ、快感…♪」 恍惚とした表情を浮かべるおんぷ。マジョリーチも満足そうだ。 そして… 寂れた洋館の一室に、まさみはいた。だが、それは今までの酒井まさみではなかった。 まさみ「黒魔女まさみ、全身全霊をマジョリーチ様に捧げます」 おんぷと共にマジョリーチにひざまずいて、うやうやしく臣下の礼を取るまさみ。 その瞳は、以前のように正義に燃えるものではなく、混沌とした闇を湛えたものだった… おんぷ「さてと…あとは、さやちゃんだけね」 まさみ「ここは、新参者のあたしに腕慣らしさせてよ。どうやって堕とせばいい?」 おんぷ「あら、お楽しみは独り占めしちゃ駄目。私もやるわ」 まさみ「したっけ、2人でも飽きないように、ジワジワ責めないとなんないしょや。 それこそ兵糧攻めみたいに生かさず殺さず、蛇の生殺しって具合にさ…♪」 さやかの苦しむ表情を思い浮かべ、自然に不気味な笑みがこぼれる2人… マジョリーチ「ふっ…どちらのしもべも、頼もしい限りだな…」 そこに、闇を切り裂かんばかりの大声が飛び込んできた。 さやか「ええ加減にせぇ〜っ!!」 箒で突っ込んできたさやかに、おんぷ・まさみは共に冷やかな反応を見せた。 おんぷ「何だ、来ちゃったんだ。もうしばらく気付かないと思ってたのに…つまんないの」 まさみ「飛んで火に入る夏の虫…ま、手っ取り早いに越したことは無いか」 豹変した2人の表情は、さやかの目に絶望的に映った。 さやか「おんぷちゃん…まさちゃん…」 まさみ「心配しなくても、さやちゃんも仲間に入れてあげるって」 おんぷ「マジョリーチ様に力を授けてもらえば、さやちゃんも黒魔女として覚醒するの…素敵でしょ」 心から嬉しそうな笑みを見せるおんぷ・まさみ。さやかの怒りはマジョリーチに向けられた。 さやか「マジョリーチ!おんぷちゃんとまさちゃんに、そないなこと喋らせられんのも今の内や!」 そう叫ぶさやかのツインテールには、髪飾りのように花が付いていた。 ハート形の白い花びらが4枚と、葉脈の真っ直ぐな細い葉がある。 その1輪の花が、さやかのツインテールの左側根元に根と茎を絡ませていた。 まさみ「ハート型の花びらが4枚…」 おんぷ「私、前に一度見てるから間違いないわ…」 マジョリーチ「そんな馬鹿な…あの花は…あの花は…!」 おんぷ・まさみ「ウィッチー・クイーン・ハート!!」 これには驚いた。普通に考えれば、さやかが手にできるはずの無い花だ。 しかもこの花、とてつもない力を秘めているのである。 マジョリーチ「願いを何でも叶えてしまう花…」 おんぷ「願いを叶える度に白い花びらは黒く染まり、最後には種を飛ばすのよね…」 まさみ「王室で管理されてるはずの花が、なして…?」 時間を少しばかり、遡ってみる… 魔女界女王が管理する花園… 門番「止まれ!ここは立入禁止だ!」 さやか「離してぇな!うち、ここにある花に、どないしても用があんねん!」 何人もの門番達に取り押さえられながらも、さやかは花園の中へと進んでいく。 そこに、さる2人の御方が、助け船を出してくれた。 ハナ「さやかを離して!」 ゆき「離してあげなさい」 門番「女王様!先代女王様!」 鶴の一声で門番達が畏まった瞬間、さやかは脱兎のごとく駆け出した。 そしてつまづき、咲き乱れる花畑に顔から突っ込んだ。 さやか「あった…ハートの花びら…ウィッチー・クイーン・ハート…!」 目当ての物が見つかった所で、さやかは花に向かって懇願した。 さやか「お願いや!ウィッチー・クイーン・ハート、うちに力貸して! あんな、うちの大親友2人がな、悪い奴に捕まってもうたん! それだけやない、魔法で頭おかしゅうされて…悪い子にされてもうたん! うち、どないしても2人を元に戻してあげたいねん!助けたらなあかんねん! なあ、頼むで…おんぷちゃんと、まさちゃんを助けて…!」 友を助けたいという、純粋な願いの詰まった涙の滴が、さやかの瞳から花びらに落ちた。すると… シュルッ… さやか「!?」 何と、さやかの涙を受けた1輪のウィッチー・クイーン・ハートが、根を足に立ち上がったのだ。 その根と茎を器用に使って、地に垂れていたさやかのツインテールを登り始めた。 そして左の髪の根元に縛った髪留めの所で、クルクルッと根と茎を絡ませて自らを固定した。 さながら、ツインテールの根元に彩りを添えるように、花型の髪留めが付いたようだった。 さやか「そっか…うちについて来てくれるっちゅうことは、力貸してくれるんやな…!」 この光景を目の当たりにした門番達は、驚きで目を丸くした。 門番「そんな馬鹿な…ウィッチー・クイーン・ハートが、人間の子供に懐いただと…!?」 門番「女王様、あのままにしておいて宜しいのですか?あれを持ち出されては…」 ゆき「構わないでしょう?」 ハナ「うんっ☆」 門番「し、しかし…」 ゆき「仮にも、ハナ女王の命令です。もし何かあった際には、私が責任を取ります。それに…」 少し間を置いてから、再び語られるには… ゆき「ウィッチー・クイーン・ハートは願いを叶えると、だんだん花びらが黒へと変色します。 しかし、それは悪い願いを叶えた場合…もし、他人を想うのみの願いならば… あの子の…さやかちゃんの、おんぷちゃんとまさみちゃんを助けたい…という願いなら…!」 ハナ「さやか!女王様のハナちゃんがいいって言うから、そのお花、持ってって!」 さやか「ハナちゃん…!」 ハナ「おんぷとまさみを…ママ達を助けてあげて…さやかママ!」 さやか「…分かった!ほな、行ってくんで!」 愛娘の頭を優しく撫でてから、さやかはウィッチー・クイーン・ハートと共に飛び立った。 さやか「ハナちゃ〜ん!おおきにな〜!」 ゆき「頼みましたよ、さやかちゃん…さて、マジョリン」 マジョリン「はっ」 ゆき「あのお方に、この事態をお知らせして下さい。その間、ハナ女王の警護は、私が引き受けます」 マジョリン「畏まりました。では、早速」 こうして、ウィッチー・クイーン・ハートを伴ったさやかが駆け付け、現在に至る。 まさみ「これまた厄介な物を…」 おんぷ「まさちゃん、気を付けて。変に願い事されたら困るわ」 まさみ「分かってる」 そう言いながら、まさみは指を弾いた。すると突然、さやかは足元から凍り始めた。 さやか「ほへっ!?」 パキパキパキパキ… まさみ「氷漬け、一丁上がり♪」 さやかの全身は氷に閉ざされ、身動き一つできない状態になってしまった。 おんぷ「あら綺麗…てっきり石化魔法で片付けるんだと思ったけど」 まさみ「いや、マジョリーチ様をお守りするために、すぐに動けなくしなきゃなんなかったけど、 せっかく強力な魔力を頂戴したんだ…少しくらいは、遊び心だって入れたいしょや? この純真な姿をそのままにしといた方が、後で闇に染まった姿が美しく映えるってもんだ… さあマジョリーチ様、これで一切の抵抗はできません。後はご随意に…」 マジョリーチ「うむ…」 これで、さやかも万事休すかと思われた。しかし… ピキッ… おんぷ「?」 固い物体に亀裂が入る音に、おんぷが振り返る。 ピキピキッ… まさみ「!?」 さやかを捕らえたはずの氷塊を見て、まさみは驚愕した。 ピキピキピキピキ… まるで卵から雛が孵るかのように、ひび割れが広がっていく。そして… さやか「ぷは〜っ!」 粉々になった氷の欠片の中から、さやかが元気なまま外に出てきた。 まさみ「そんな馬鹿な!?マジョリーチ様に授かった魔力を持ってしても、敵わないなんて… ましてや、ロイヤルパトレーヌになってる訳でもないのに…なしてさ!?」 まさか、信じられない…といった表情を、まさみは隠しきれない。 おんぷ「ウィッチー・クイーン・ハートに願いを掛けたわね…だったら!」 今度は、おんぷが指を弾く。すると火の玉が現れ、ウィッチー・クイーン・ハートに襲いかかる。 さやか「うわっちっちっちっ…」 おんぷ「その花から燃やしてあげるわ!」 さやか「ちょ、うちの髪まで燃えてまうがな〜!」 まさみ「黒魔女になったら、自分の魔法で髪の毛くらい元に戻せるしょ」 おんぷ「むしろ、も〜っとオシャレにすることだってできるわよ」 冷酷に言い放ったが、次第に炎の勢いが弱まってきたのを見て、顔付きが変わる。 おんぷ・まさみ「…え?」 紅蓮の炎に焼かれていたはずのウィッチー・クイーン・ハートも、いつしか元通り。 おんぷ「ウィッチー・クイーン・ハートに、ウィッチー・クイーン・ハート自身を助けるように、 願いを掛けてたのね…全く、やってくれるじゃない…」 まさみ「そうか、そういう願いを掛けてたのか…小癪な…」 黒魔女2人は苦虫を噛み潰したように、歯ぎしりして悔しがる。 おんぷ・まさみ「それなら!!」 2人が同時に指を弾くと、さやかに向かって悲しみの毒虫が、大量に雪崩れ込んできた。 おんぷ・まさみ「力尽くでも、黒魔女にしてあげる!!」 怒り狂った2人の黒魔女が、フルパワーで攻撃を仕掛けてきた。それでも、さやかは動じずに… さやか「ウィッチー・クイーン・ハート…頼むで」 その瞬間、さやかの体を中心に半透明の球体が現れ、襲いくる虫達を全て防ぎきる。 おんぷ「バリア…」 まさみ「嘘…」 さやか相手に全く歯が立たず、どうしていいか分からなくなる2人に、さやかは歩み寄っていく。 おんぷ「い、嫌…」 まさみ「こ、来ないで…」 引きつった顔で拒む2人を、さやかはまとめて優しく抱きしめた。 さやか「2人とも…辛かったやろ…今、助けたるで…」 右腕におんぷを、左腕にまさみを抱きかかえたまま、さやかは最大の願いを込める… さやか「ウィッチー・クイーン・ハート…おんぷちゃんを、まさちゃんを、元に戻したってや…」 その願いを聞き届けた白い花びらから、目映いばかりの光が放たれる。 おんぷ・まさみの腕のブレスレットが、清純な魔力によって浄化され、消えていく… そして2人の頬には、いつの間にか涙の筋が走っていた… マジョリーチ「くっ…まさか、まさか…!」 発光が収束してきた。さやかに抱かれた、おんぷ・まさみは… おんぷ・まさみ「あ…」 さやか「…気ぃ付いた?」 おんぷ「さやちゃん…私…!」 まさみ「あたしは…何てことを…!」 この反応の仕方は…おんぷもまさみも明らかに我に返り、正気を取り戻している! さやか「おんぷちゃん!まさちゃん!」 感激のあまり、さやかは嬉し涙で両の瞳を満たし、さらにしっかりと2人を抱きしめた。 おんぷ「さやちゃん…ありがとう…」 まさみ「本当にありがとう…助かったよ…」 さやか「うちの方こそ、ありがとうな…2人とも、戻ってくれて…」 おんぷ・まさみ「さやちゃん…」 2人の瞳にも、水晶のごとく光を照り返す物があった… 一気に形勢をひっくり返されてしまい、ワナワナと震えるマジョリーチ。 マジョリーチ「おのれ…おのれ…せっかくの優秀なしもべ達を…」 おんぷ「悪いわね。こんな割に合わない仕事、辞めさせてもらうわ!」 まさみ「あんたなんかの下に付くなんざ、もう金輪際お断りだね!」 息巻くのも結構だが、3人組が完全に有利とは、まだ言いがたい状況だ。 まさみ「さてと…これからどうする?」 おんぷ「私達、まだロイヤルパトレーヌになってないのよね」 さやか「せやかて、マジカルステージする暇あるん?」 しかし、まさみには勝算があった。なぜなら… まさみ「いやいや…あたしが、これからどうする?って聞いたのはね…」 そのセリフを、まさみが言い切る前に、どこからともなくスッと現れた1人の女性… まさみ「この、凄まじいまでの魔力を感じさせる人に、どう応対するかってことだよ。 魔力の感じで、悪い人じゃないのは分かるけどさ…」 この女性…見覚えのあるおんぷは、その横顔を見て驚いていた。 おんぷ「ど、どうして…ここに…」 一方、初めて出会ったさやか・まさみが首をかしげていると… ババ「そこの新米おジャ魔女共、控えるズラ。このお方は畏れ多くも、トゥルビヨン女王様ズラ」 さやか・まさみ「!!」 赤系のアラビアン風の衣装に身を包んだ、老獪そうな妖精の低い声に、2人も遅れて驚かされた。 ちなみに、老獪(ろうかい)とは…年齢を重ね、経験が豊富で、ずる賢いこと… おんぷ「ババ、一体どういうこと?」 ババ「ゆき女王様が、マジョリンを差し向けて、知らせてきたズラ。 女王様の悲しみの残りが、悪い魔力を伴い大きくなっていると…それで、来てやったズラ。 まあ、女王様がお出ましになられた以上、もう心配ないズラ。そうズラね?女王様♪」 トゥルビヨン「ババ、もう女王様じゃないわ…でも今は、そんなこと気にしてる場合じゃないわね」 そう言うと、トゥルビヨン元女王様は、静かにマジョリーチを見据えた。 トゥルビヨン「あなたは元を正せば、私の悲しみと怒りと、怨念から生まれた存在… この私の感情である以上、あるべき所に…私の心の中に、あなたを封印します」 マジョリーチ「な、何…!?」 元女王様は、まるで透明なボールを持っているような形で、胸元に両方の手の平を持ってくる。 そして、その手元は球形に光り出し、黒いもやのような物を次々と吸い込んでいく。 マジョリーチ「あっ…ああっ…ああ〜〜っ…!!」 吸いこまれていたのは、何とマジョリーチの体… …と言うよりも、邪悪な魔力も全てを含めた、存在そのものだった。 さやか「何ちゅう強い魔法や…あの手元の玉、まるでブラックホールやんか…」 まさみ「邪悪な魔力を伴った負の感情を丸ごと、あの小さな手元に収めようだなんて…」 ただただ驚かされる、さやか・まさみに、ババが得意げに言う。 ババ「トゥルビヨン女王様は、魔女界の歴代女王の中で、最強の魔力をお持ちズラ。 ほんのこれしきのこと、赤子の手をひねるよりたやすいズラ」 おんぷ「トゥルビヨン元女王様の魔力…歴代最強って話は、聞いてはいたけど…凄い…!」 そんな風に驚かされている内に、いつしかマジョリーチの姿は消えていた。 残されたのは、トゥルビヨン元女王様の手元の、どす黒い球体のみ… トゥルビヨン元女王様は、その黒い玉を、そっと自分の胸元に押し込んだ… そして玉は、まるで水に沈んでいくかのように、静かにトゥルビヨン元女王様の体の中へ… さやか「ほへ…入れてもうた…」 まさみ「自分の心の中に封印するって…」 おんぷ「こういう…こと…」 あまりにもあっけない幕切れに、おんぷ・さやか・まさみは茫然… トゥルビヨン「この黒い存在は、私の心の負の感情…私の中にあるべきものです。 心配しなくても大丈夫…今の私は、昔のように怨念に振り回されたりしません… 人間と魔女、出会いと別れ、喜びと悲しみ…ちゃんと分かっているつもりですから…」 おんぷ・さやか・まさみ「トゥルビヨン元女王様…」 その穏やかな、そして優しげな表情に、3人は安堵した… ババ「まあ、おジャ魔女にしては、女王様の負の感情を相手に、よくやった方ズラ」 トゥルビヨン「そうでしたね。あなた達3人には、何かと迷惑をかけてしまいました… この通り、私からも謝ります。そして…今まで、ありがとう…」 おんぷ「そんな…」 まさみ「勿体のうございます…」 さやか「何や、照れてまうな〜…」 トゥルビヨン元女王様からのねぎらいに、3人は頬を赤らめた… さやか「せやけど、おんぷちゃんとまさちゃんが無事で何よりや〜… うち、2人が黒魔女になってもうた時、ほんま怖かった…」 少し涙目ながらも、さやかはニッコリと微笑んだ。 まさみ「全くだね…あたしも一時は本当に、どうなる事かと思ったよ…」 ここで、まさみがさやかの目をみる。さやかも、まさみの目を見た。そして、声を揃えて… さやか・まさみ「ごめんっ!!」 2人は、揃って頭を下げた。無論、事の発端となった、ケンカの詫びだ。 さやか「うち…ノート取る前に、まさちゃんが帰ってくんの待っとったら良かったねんな…」 まさみ「あたしこそ…自分のいら立ちを、さやちゃんにぶつけちゃって…」 おんぷ「うふふ…これで、仲直りね♪」 微笑むおんぷに、さやか・まさみは満面の笑みで返す。 さやか・まさみ「うんっ!!」 さらに、さやかは大きく両腕を広げた。おんぷ・まさみを抱き込むために… さやか「お帰り…おんぷちゃん…まさちゃん…」 おんぷ・まさみ「えっ…??」 さやか「うち、ちょっとだけな、2人が黒魔女になったまま帰ってけぇへんかもって思った… せやけど、うち…おんぷちゃんとまさちゃんがおらへんかったら、うち…うち…」 言葉を詰まらせた代わりにさやかは、おんぷ・まさみを抱きしめる腕に、さらに力を込めた… おんぷ・まさみ「さやちゃん…」 2人も、さやかに負けないように、強く強く抱き返した…そして… おんぷ・まさみ「さやちゃん…ただいまっ!!」 抱擁し合う3人の瞳には、光る清水…嬉し涙が光り輝くのであった… ついに黒魔女との熾烈(しれつ)な戦いに終止符を打った、おんぷ・さやか・まさみ… しかし、3人の絆と友情に、終止符が打たれることはない。永久に、永遠に… 次回予告 おんぷ「時間の流れるのは早いもの…」 さやか「あっちゅう間に、うちらも成長して…」 まさみ「あたし達は、それぞれの道を歩み始めて…」 おんぷ「でも、いつまでも…いつまでも決して変わらないことがあります!それは…」 さやか・まさみ「それは…」 おんぷ・さやか・まさみ「3人が、ず〜っと一緒であり続けること!!! 次回、おジャ魔女おんぷTriple‐S(トリプル・エス)最終回!!! 『終わらない!Triple‐Sは∞!!』…え?最終回なのに終わらない…?」 さやか「おんぷちゃんと一緒やったら…終わらへんっちゅうことか」 まさみ「終わりだって、また新たな始まりになるよね」 おんぷ「そうね…終わりなんかじゃない…!」 さやか・まさみ「これは…始まり…!」 おんぷ・さやか・まさみ「また新しい何かが…始まる!!!」 49話端書き やっと、ここまで持ってきましたよ…思えば長かった〜… 端書きとしましては、これが最後になりますね… 次回は最終話となりますので、端書きではなく後書きになります… …と言うよりも、後書きが最終話になってしまいそうな気が…(汗) この「おジャ魔女おんぷTriple-S」の第1話公開は、確か07年3月ではなかったかと… そして、この第49話を書ききったのが、10年4月… 実に3年強も、グダグダと駄文を書き続けてきたわけです… もう物好きも通り越して、この変人は何考えてるんだ、というレベルまで到達してますね(汗) おんぷ姫の美しさ(笑)と、さやか・まさみのキャラの勢いに任せて、ここまでやってきました… いよいよ次回、このグダグダな駄文にふさわしく、しょうもない終わり方をします… まあ、これだけで端書きが終わるわけもなく(笑) これまで通り、今回の話を書くのに使った無駄な知識を、適当に羅列してみますねw シュール五十公野…理科の先生、出してなかったな…ってだけですw クラス担任の幣原先生を除く教員の皆さんは、名字に漢数字を入れてましたね。 あっ…もう1人、由来が漢数字じゃない先生いました(汗)申し訳ない… 国語担当・廿楽(廿=20) 数学担当・幣原(C組の名字は歴代首相から) 理科担当・五十公野(五十=50) 社会担当・麻生(首相交代につき追加w) 英語担当・十三里(十三=13) 体育担当・十河(十=10) 音楽担当・千種(千=1000) 理事長・三条(三=3) どの先生方が、何話のどの場面に出ていたかは…お手数ですが、読み返してみて下さい(笑) 廿楽・五十公野・十三里・十河・千種…こうして見返すと、難読も多いですw それぞれ、つづら・いずみの・とみさと・そごう・ちくさ…となりますが… そう言えば十三里先生の時は、十三そのまんまで「じゅうそう」って読ませる案もあったり… 今回、思い付いたのが「五十」で、メジャーな名字「五十嵐」ってのも考えたんですが、 本編で五十嵐先輩がいたな〜…と思い出しまして、棄却しました。 どうせなら、インパクトの強い名字にしてやろうと、四文字で難読の「五十公野」になって。 ちなみに「五十公野」は、人名なら「いずみの」と読みますが、「いじみの」と読む地名もあります。 口癖のシュールは…これこそ、単なる思い付きですね。何が由来でしょう(汗) 思えば、さやか・まさみの2人は、ケンカらしいケンカの話がありませんでした。 そこに、筆者が文に書けるネタの中では、最も危険度の高いネタ…悪堕ちを混ぜてきたわけです。 以前にも、黒い性格の3人を出したことがありましたが、あれは鏡に映った鏡像… 今回は、本当に本人が黒くなってしまうという、危険度ややアップなバージョン… さすがに、これは2人止まり…さやかまで堕ちちゃうと、バッドエンドになっちゃいますので(笑) そしてアウトかセーフか、ギリギリの文章表現… 18禁とかではないと、勝手に思ってますが…大丈夫でしょうか(汗) それにしても…小悪魔おんぷ姫は、この手の悪女をやらせたら…随分と役がハマるんですけど…w そんな危険な状況を、さやか1人で、どう打開するか…その答えは、♯劇場版にありました。 ウィッチー・クイーン・ハートは、ただ願いを叶えれば黒くなるわけではありません。 「悪い」願いを叶えると黒くなる…つまりは、願いに悪い欲望が無ければ、変色しないんですよ。 そして、さやかの願いは全て、おんぷ・まさみを助けるために…☆ あとウィッチー・クイーン・ハートの茎の器用さを見込み、さやかの髪飾りになってもらいました♪ トゥルビヨン元女王様、降臨!本編でもラスボス的存在でしたので、この強さを使わない手は無いとw 筆者が悪堕ち部分に精力をつぎ込んだせいで、かなりあっさりと終わっちゃいましたが(汗) ですが、何だかんだ言っても最後は…おんぷ・さやか・まさみの、涙と笑顔に尽きます…♪