師走…師(僧侶の意味)が年末は多忙のあまり走り回るという由来の、12月の旧称である。 そして我らがTriple‐Sの3人も、それぞれ忙しさに走らされていた。 さやか「年末カウントダウン生中継は、ここの局で決まりやろ…」 おんぷ「クリスマス特番、この局は生だけど、こっちは事前収録になるわね…」 まさみ「えっと、ここは…やっぱり、新春時代劇の完成披露記者会見の日だ。 この日は収録入れられても、あたし京都行ってるから無理だよ…」『踊るまさみの大捜査線4!都大路は巨大な碁盤』 クリスマスから正月にかけて、年末年始はとにかくテレビは特別番組が目白押し。 当然、生中継だけでは間に合わないので、事前に収録しておく番組の方が多い。 それらのスケジュールを、おんぷ・さやか・まさみは、上手くこなさなければならない。 しかも1人1人の予定と3人セットの予定とを、折り合わせねばならないのも面倒だ。 まさみ「う〜ん…頭、痛くなってくるね…」 さやか「収録で『メリクリ』と『あけおめ』言いまくっとるさかい、頭ボケて日にち分からへん… なあ、もう年明けとるんちゃうの?とっくのとうに…」 おんぷ「まだ今年は終わってないわよ。2人とも、これくらいこなせないと、これから大変よ。 私くらいお仕事貰えるようになったら、今の忙しさじゃ済まないでしょ」 まさみ「ごもっともです…」 おんぷ「あ〜あ…でも紅白の予定だけは、今年も入らなかったな〜…」 さやか「おんぷちゃん…そないセリフ出るあたり、まだまだ余裕やな…」 まさみ「燕雀(えんじゃく)いずくんぞ鴻鵠(こうこく)の志を知らんや… おんぷちゃんの志は高すぎて、ちっぽけなあたしは、ついてけないかも…」 小さな人間に大きな人間の理想が分かるか、いや分かるはずがない…という意味の中国故事。 自分の志を理解してくれないような、小さい人間に対して言うのが通例だが、 まさみは謙遜し自らを低め、おんぷを尊敬し高める意味で、これを持ち出した。 さやか「まさちゃん…そういうむずい事、あんま言わんといて… 意味分からへんさかい、今度はうちがついてけへん…」 眉を八の字にして困った顔を向けてきたさやかに、まさみは呆れて頭を抱える… まさみ「さやちゃん…まさか、ここで話の腰を折られるとは思わなかった… いや、さやちゃんに分かんない言葉を使った、あたしが悪かったんだね…」 おんぷ「うふふ…2人とも、そういういつもの調子でやっていけば大丈夫よ♪」 さやか「せやな。この忙しいんも、楽しいと思えばええんやな!」 まさみ「あたしも京都での記者会見の後、夜に歌舞伎見物っていう息抜きの予定入れてるし…」 さやか「息抜きが歌舞伎て…まさちゃんらしいわ…」 おんぷ「いいんじゃない?少しは自分の好きな事して気分転換しとかないと、もたないわよ」 そこに、男子の声が割り入ってきた。 池田「それじゃ、まさちゃんのためにも頑張らなくちゃね」 不意にやって来たのは、まさみに気がある芝居小屋の御曹司・池田ゆうと。 まさみ「ゆう君…」 少し頬を赤らめながら、嬉しそうに笑うまさみ。 さやか「まさちゃんのために…頑張るやて…!?」 おんぷ「まさか…まさちゃんの見に行く歌舞伎って…」 その答えは、まさみが自ら、しかし池田に向かって口にした。 まさみ「京都公演、期待してるよ。あたしも仕事すぐ片付けて、夜の部は絶対に行くから」 池田「ありがとう。でも、あんまり期待されちゃうと、ちょっと緊張しちゃうな。何しろ…」 まさみ「『藤娘(ふじむすめ)』は大役な上に、自分の歳ではなかなか演じない役…でしょ?」 「藤娘」とは、藤の木の精が娘姿で踊る…という演目である。 歌舞伎の舞台に女性は立てない仕来たりなので、自動的に女形の男性が演じる事になる。 池田「うん…今でも信じられないよ…僕の歳で藤娘をやらせてもらえるなんて… 本家本元の歌舞伎役者がやる大歌舞伎なら、まずありえない事だし…」 まさみ「でも、素人歌舞伎とは言え、藤娘を任されるって、ゆう君が凄いって事だよね♪ あたし、ゆう君の藤娘、早く見てみたいな♪綺麗なんだろうな〜☆」 池田「まさちゃん…分かった。舞台に上がる直前まで一生懸命、稽古に励むよ」 まさみ「うん!あたしも、頑張るからね♪」 何だか忘れられている感がある、おんぷ・さやか… おんぷ「やっぱりまさちゃん、池田座の京都公演を見に行く予定だったのね」 さやか「しかも、大役貰た池田君の晴れ姿見られるさかい、まさちゃんも浮かれとる♪」 おんぷ「それにしても、お似合いよね…この2人♪」 さやか「ほんま、お熱いわ〜☆」 そこに、はんなりとした声が入ってくる。その主は、クラスメイトの京娘・松方すざく。 松方すざく「藤娘どすか…うちも歌舞伎は、荒事よりも女形歌舞伎の方が好きどす」 荒事(あらごと)とは、歌舞伎の中でも荒々しく豪快な演技・演目を指す言葉。 赤い隈取(くまどり)の化粧や派手な衣装が特徴で、歌舞伎と言えば荒事を連想する人は多い。 まさみ「すざくさん…やっぱり、京都は和事(わごと)発祥の地だからね」 荒事の対義語が和事。女性的で柔らかい仕草を特徴とする歌舞伎を総称した言葉だ。 元禄の時代、和事は京都や大阪、荒事は江戸で、それぞれ発展した歴史を持つ。 松方すざく「池田はん、京都での舞台、お気張りやす」 池田「松方さん、ありがとう」 松方すざく「まさはんも新春時代劇、楽しみにさせてもらいますえ♪」 まさみ「うん、ありがと!さ〜てと、これで気が抜けなくなったぞ」 桂うたよ「あら?あなた達も京都に行くの?」 ここで話に入ってきたのは、囲碁棋士の祖父を持つ、桂うたよ。 まさみ「あなた達『も』って?」 桂うたよ「お爺ちゃんのタイトル戦も今度、京都で行われるのよ」 おんぷ「囲碁のタイトル戦ですって!?」 さやか「お爺ちゃん、そない強いん?でもって、何のタイトル?」 桂うたよ「本因坊(ほんいんぼう)よ。予選の結果、お爺ちゃんが挑戦権を得たの!」 さやか「ちょ…本因坊て…!」 棋聖・名人・十段・王座・天元・碁聖、そして本因坊。日本囲碁7大タイトルと称される栄冠だ。 まさみ「囲碁の名手の称号の中でも、歴史が最も古い、名誉あるものだって聞いた事あるよ」 おんぷ「今の本因坊の人に勝てば、うたよちゃんのお爺ちゃんが本因坊になるって訳ね」 池田「確か、7番勝負の内4回勝てばいいんだったね。見込みは?」 桂うたよ「馬鹿にしないで!お爺ちゃんが勝つに決まってるでしょ☆」 松方すざく「おやまあ、これは随分と京都が賑やかになりまんなぁ」 しかし、その京都で何やら不穏な気配が… テレビ「…事故のニュースです。昨夜、京都市中京区の交差点で、乗用車同士が衝突し… 事故があったのは、堺町通と二条通の交差点で… 中京区では、交差点での衝突事故が今週に入って3件目となり…」 そして同時に、桂うたよの祖父のタイトル戦も幕を開けていた。 テレビ「…次は、京都市内で行われている、囲碁の本因坊タイトル戦のニュースです。 昨日の第3戦では、挑戦者の桂九段が、先に2勝している久世本因坊を抑えて勝利し…」 そして、朝のC組の教室… 桂うたよ「初戦と第2戦は惜しかったけど、これで分からなくなってきたわ。 1勝2敗…ここから、お爺ちゃんが調子を上げていけば…」 さやか「あと4戦も残っとるし、まだまだ勝負は分からへんな!」 明るい様子の者がいる一方で、疑問を抱く者も。 まさみ「…ただの偶然なんだろうか?」 おんぷ「偶然って、何が?」 腕を組んで考えていたまさみに、おんぷが尋ねてみた。 まさみ「京都で連続してる交通事故と、囲碁のタイトル戦…日にちが重なるんだ…」 桂うたよ「ちょっと、そんなの関係ある訳ないでしょ!縁起でもない…」 まさみ「いや、うたよちゃんには悪いんだけどさ…だって、どっちも京都だし…」 さやか「まさちゃん、変な事気にするさかいな〜」 しかし日を重ねるごとに、囲碁の対局は白熱し、それに比例するかのように事故も重なり… まさみ「…絶対おかしいっ!」 休み時間、C組の教室で、まさみが机をバシッ!と強く叩いた。 さやか「ほへっ!まさちゃん、びっくりさせんといて…」 まさみ「あっ、こりゃまた失礼…」 おんぷ「昨日で事故は6件目、タイトル戦も6戦目だったわね」 桂うたよ「だから、それとこれとが、どう関係あるのよ?」 まさみ「まだ直接関係あるとは断言できないけど、あまりにも日にちが重なりすぎるし…」 そこに松方すざくが、まるで怪談のような雰囲気を醸し出す… 松方すざく「京都は千年の都…昔から、華やかさの裏に闇が潜んではります…」 まさみ「すざくさん…京都出身としては今回の件、どう思う?」 松方すざく「妖(あやかし)に引き寄せられはったかのように、車と車が出会い頭… うちも腑に落ちへんのは、まさはんと一緒どす」 おんぷ「そう言えば、事故に遭った車を運転してた人はみんな、 急にブレーキが効かなくなったとか、そんな事を言ってるみたいね…」 桂うたよ「そんなお化けみたいな話だったら、やっぱり囲碁は無関係…」 しかし、桂うたよが言い終わる前に、まさみが否定した。 まさみ「…そうかな?」 さやか「ほへ?」 桂うたよ「どういう意味よ?」 まさみ「あたしは、少なくとも囲碁と京都を結び付けるものがあるのには気付いてるよ。 すざくさん、京都は今でも坊条制が残ってるよね?」 松方すざく「そうどす。京の都は昔から、縦横きっちり碁盤の目になってはります」 これを聞いて、おんぷが頷いた。 おんぷ「なるほど…そういう事ね」 さやか「おんぷちゃん、何か分かったん?」 桂うたよ「分かってないのは、さやちゃんだけよ。今『碁盤の目』って言ったでしょ」 さやか「あっ…そういう事やったんか!」 まさみ「その通り。あたしの故郷・札幌の市街地も、碁盤の目になってるもんでね。 それもあって、ひらめいた…事故現場を、本当の碁盤に置き換えられるかなって」 桂うたよ「まさか…そんな事が…」 まさみ「検証してみる価値は、あると思うよ」 松方すざく「ほな、うちが簡単に京都の地図を描きますさかい、 事故のあった所を確認してみたら、何や分かるかもしれまへん…」 そう言って、松方すざくはノートを開くと、縦横に直線を何本も引き始めた。 そして、通りの名前を書き込もうという所で、何やら歌を口ずさみ出した。 松方すざく「まるたけえびすにおしおいけ♪あねさんろっかくたこにしき♪ しあやぶったかまつまんごじょう…♪」 さやか「ほへ?」 桂うたよ「この歌、どこかで…」 おんぷ「確か、この前の社会の授業で…」 まさみ「通りの名前を覚える歌だよ♪」 先日、社会の授業で京都の説明の際、担当の麻生の説明にも出ていた、通りの名前を覚える歌だ。 松方すざく「てらごこふやとみやなぎさかい♪たかあいひがしくるまやちょう♪ からすりょうがえむろころも♪しんまちかまんざにしおがわ♪ あぶらさめがいほりかわへ…♪」 この歌は、通りの名前の頭文字が並んでいるのである。 これを覚えていれば、通りの順番がすぐに分かるのだという。 松方すざく「今まで事故のあったんが、中京区と下京区どすやろ? この辺、現代になって斜めの道が多くなってきはった京都の中でも、 ます目が昔通りに、真っ直ぐのまま残っとる所どす。 北は御所で途切れる通りが出ますさかい、丸太町通まで… 南は、河原町通が斜めになってきますさかい、五条通でやめときますわ。 その河原町通が四条から斜めになるせいで、東は寺町通からになりますなぁ。 西は、二条城があって途切れますさかい、堀川通から…」 こうして、できた地図が以下のような形になる… 醒油 西 両 車東間 柳富麸御 堀ヶ小小洞釜新衣室替烏屋洞之高堺馬小屋幸寺 川井路川院座町棚町町丸町院町倉町場路町町町 通通通通通通通通通通通通通通通通通通通通通 丸太町通┼─┼┼┼┼┼┼┼┬┼┬┬┬┬┬┬┬┬┬┼ 竹屋町通┼─┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼ 夷川通┼─┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼ 二条通┼─┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼ 押小路通┼─┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼ 御池通┼┬┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼ 姉小路通┼┴┼┼┼┼┼┼┼┼┼┴┼┴┼┼┼┼┼┼┼ 三条通┼─┼┼┼┴┼┼┼┴┼─┼─┼┼┼┼┼┼┼ 六角通┼┬┼┼┼─┼┴┼─┼─┼─┼┼┼┼┼┼┼ 蛸薬師通┼┴┼┼┼─┼─┼─┼─┼─┼┼┼┼┼┼┼ 錦小路通┼┬┼┴┼┬┼─┼─┼─┼─┼┼┼┼┼┼┼ 四条通┼┼┼─┼┴┼─┼─┼─┼─┼┼┼┼┼┼┼ 綾小路通┼┼┼─┼─┼─┼─┼┬┼─┼┼┼┼┼┼┼ 仏光寺通┼┼┼┬┼─┼─┼─┼┼┼─┼┴┼┼┼┼┼ 高辻通┼┼┼┼┼┬┼─┼┬┼┼┼┬┼┬┼┼┼┼┼ 松原通┼┼┼┼┼┼┼┬┼┼┼┼┼┴┼┼┼┼┼┼┼ 万寿寺通┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┬┼┼┼┼┼┼┼ 五条通┼┴┼┼┼┼┼┴┼┼┼┼┼┼┼┴┴┼┴┴┴ 天 若 諏 不 使 宮 訪 明 突 通 町 門 抜 通 通 通 京都の通りの名前は、難読のものが多く、「町」の字の読みも「まち」「ちょう」が入り混じる。 そのため、ここに挙げた通りの読みを全て記しておく事にする。 寺町 (てらまち) 丸太町(まるたまち) 不明門 (あけず) 御幸町(ごこまち) 竹屋町(たけやまち) 諏訪町 (すわんちょう) 麸屋町(ふやちょう) 夷川 (えびすがわ) 若宮 (わかみや) 富小路(とみのこうじ) 二条 (にじょう) 天使突抜(てんしつきぬけ) 柳馬場(やなぎのばんば) 押小路(おしこうじ) 堺町 (さかいまち) 御池 (おいけ) 高倉 (たかくら) 姉小路(あねやこうじ) 間之町(あいのまち) 三条 (さんじょう) 東洞院(ひがしのとういん) 六角 (ろっかく) 車屋町(くるまやちょう) 蛸薬師(たこやくし) 烏丸 (からすま) 錦小路(にしきこうじ) 両替町(りょうがえちょう) 四条 (しじょう) 室町 (むろまち) 綾小路(あやのこうじ) 衣棚 (ころものたな) 仏光寺(ぶっこうじ) 新町 (しんまち) 高辻 (たかつじ) 釜座 (かまんざ) 松原 (まつばら) 西洞院(にしのとういん) 万寿寺(まんじゅじ) 小川 (おがわ) 五条 (ごじょう) 油小路(あぶらのこうじ) 醒ヶ井(さめがい) 堀川 (ほりかわ) さて、この地図を見て… さやか「ほへ〜…ほんまに碁盤みたいや〜」 桂うたよ「だけど、碁盤は縦横19路よ。これじゃ21路×18路で、碁盤にならないじゃない」 おんぷ「それに、途切れてる通りも結構あるのね…」 まさみ「途切れた後に、名前が変わる通りまであるのか…」 それぞれ地図に見入っていた所に、松方すざくが声を入れる。 松方すざく「まさはん、事故の場所、言うてみとくれやす。うちが書き入れますさかいに」 まさみ「ああ、そうだったね。えっと…」 制服のポケットから生徒手帳を取り出し、まさみはメモを読み上げる。 まさみ「1件目は中京区、衣棚通と六角通の交差点。 2件目も中京区、麸屋町通と丸太町通の交差点。 3件目も中京区、堺町通と二条通の交差点」 松方すざく「衣棚六角…麸屋町丸太町…堺町二条…」 列挙する声を拾いながら、松方すざくは地図の通りの交点に丸印を付けていく。 まさみ「4件目は下京区、室町通と五条通の交差点。 5件目も下京区、若宮通と万寿寺通の交差点。 そして6件目は中京区、衣棚通と押小路通の交差点」 松方すざく「室町五条…若宮万寿寺…衣棚押小路…」 ここで、松方すざくの確認の仕方に、疑問を持ったおんぷ。 おんぷ「ねえ、すざくさん…1つ、聞いてもいい?」 松方すざく「何どす?」 おんぷ「どうして『通』を付けないで、2つの通りをくっ付けて言うの?」 松方すざく「どないして言われましても…京都の交差点は、そない言い方をしますねん。 大抵、南北の通りを先にして、後から東西の通りをくっ付けて言います。 たまに『四条烏丸』みたいに、逆に言わしゃる通りも、ありますけどなぁ」 こうして6つの事故発生箇所を記していくと…それを見て、桂うたよが声を上げた。 桂うたよ「えっ…ちょっと待って…」 さやか「どないしたん?」 桂うたよ「ここが1日目、ここが2日目で、ここが3日目…」 驚愕した様子の桂うたよを、他の誰もが不思議に思った。 おんぷ「何か…気付いたのね?」 桂うたよ「さっき、碁盤にならないって言ったのは、撤回するわ。 ここから、縦の通りを左から2本取って、下に通りを1本足すと…」 松方すざく「縦の通りで、左から2本…ほな、堀川通と醒ヶ井通を取ります。 それと下に1本…五条通の南どすさかい、とりあえず六条通を足しときますな」 地図に訂正が加えられ、以下のようになった。 油 西 両 車東間 柳富麸御 小小洞釜新衣室替烏屋洞之高堺馬小屋幸寺 路川院座町棚町町丸町院町倉町場路町町町 通通通通通通通通通通通通通通通通通通通 丸太町通┼┼┼┼┼┼┼┬┼┬┬┬┬┬┬┬┬┬┼ 竹屋町通┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼ 夷川通┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼ 二条通┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼ 押小路通┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼ 御池通┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼ 姉小路通┼┼┼┼┼┼┼┼┼┴┼┴┼┼┼┼┼┼┼ 三条通┼┼┼┴┼┼┼┴┼─┼─┼┼┼┼┼┼┼ 六角通┼┼┼─┼┴┼─┼─┼─┼┼┼┼┼┼┼ 蛸薬師通┼┼┼─┼─┼─┼─┼─┼┼┼┼┼┼┼ 錦小路通┼┴┼┬┼─┼─┼─┼─┼┼┼┼┼┼┼ 四条通┼─┼┴┼─┼─┼─┼─┼┼┼┼┼┼┼ 綾小路通┼─┼─┼─┼─┼┬┼─┼┼┼┼┼┼┼ 仏光寺通┼┬┼─┼─┼─┼┼┼─┼┴┼┼┼┼┼ 高辻通┼┼┼┬┼─┼┬┼┼┼┬┼┬┼┼┼┼┼ 松原通┼┼┼┼┼┬┼┼┼┼┼┴┼┼┼┼┼┼┼ 万寿寺通┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┬┼┼┼┼┼┼┼ 五条通┼┼┼┼┼┴┼┼┼┼┼┼┼┴┴┼┴┴┴ 六条通┼┼┼┼┼─┼┼┼┼┼┼┴──┼─── 天 若 諏 不 使 宮 訪 明 突 通 町 門 抜 通 通 通 桂うたよ「これで19路×19路…途切れてるのを無視すれば、碁盤になったわ」 さやか「おおっ…」 桂うたよ「まさちゃん、この碁盤の上で、改めて事故現場を1日目から順に指してみて」 まさみ「分かった。まず1日目、衣棚六角…」 桂うたよ「6の九。1局目、久世本因坊の勝ちが決まった一手」 まさみ「2日目、麸屋町丸太町…」 桂うたよ「17の一。2局目、同じく久世本因坊の一手、これでお爺ちゃんが苦しくなった」 まさみ「3日目、堺町二条…」 桂うたよ「14の四。3局目、互角だった攻防を崩した、お爺ちゃんの会心の一手」 まさみが指した場所を、桂うたよが囲碁の棋譜に置き換えて言う。 しかも、その一手一手が、本因坊戦での勝敗を決した一手であるという。 桂うたよ「まさちゃん…あたし、事故と囲碁とが関係ないでしょ、とか言ったけど… 間違ってたのは、あたしの方だったわね…法則性、もう分かったでしょ?」 まさみ「ああ…本因坊戦での勝負を決めた一手が、事故現場を指し示す…!」 松方すざく「おやまあ…」 桂うたよ「念のため、あとの3か所も確かめてみましょ。4局目は、7の十八」 まさみ「7筋は室町通、十八筋は五条通…4日目の現場も、室町五条」 桂うたよ「5局目、決め手は4の十七」 まさみ「4筋は釜座通、十七筋は万寿寺通…あれ?5日目の事故は、若宮万寿寺…?」 釜座通と若宮通で一見、噛み合わないように思われたが… おんぷ「まさちゃん、この通り、途中で切れてるわ」 松方すざく「釜座通は三条通まで、高辻通から南は若宮通になっとります」 さやか「ほな、つじつま合うとるな」 まさみ「したっけ6日目、衣棚押小路…」 桂うたよ「6の五。6局目、お爺ちゃんの強手!これで戦績は、3勝3敗にもつれ込んだわ」 全てが合致した。法則性が判明すれば、これから先、何が起こるかは予想ができる。 桂うたよ「本因坊戦は、次が最終戦よ」 さやか「そん中での勝負を決める一手を、碁盤から地図に持ってきて…」 おんぷ「その場所に当てはまる交差点で、事故が起きるのね」 松方すざく「事故起こるんが分かってはるんやったら、何とかして防がなあきまへんなぁ」 まさみ「いや、囲碁の決着がつかない事には、現場は特定できない…」 悔しそうに、まさみが眉間にしわを寄せる。ここで、疑問が1つ。 桂うたよ「それにしても…どうして囲碁と事故とがつながるの…?」 松方すざく「京の都に住んどる妖怪でも、道路におるんどすやろか…?」 これについては、おんぷ・さやか・まさみの3人は、予想がついていた。 おんぷ「交通事故…まだ亡くなった人はいないけど、もう怪我をした人が何人も…」 さやか「事故で怪我した人や、その人を心配する人…みんなが悲しゅうなる…」 まさみ「人の悲しみを糧にする、とんでもない奴…!」 おんぷ「本当、ろくな事してくれない」 さやか「ほんま、ろくでもない奴や!」 そんな3人の様子を、何の事を言っているのか、という表情で見つめる、桂うたよ・松方すざく。 さやか「そっか…この2人、まだ知らないんやったな」 まさみ「どうする?うたよちゃんの囲碁の知識と、すざくさんの京都の知識… 今回のヤマ、この2人の力が借りられると、凄く助かると思うけど…」 頼るような視線をおんぷに向けると、まさみに対しては少しふざけたような笑顔を返した。 おんぷ「それじゃ…バラしちゃおっか♪」 ガクッ…ずっこけたのは、さやかだった。 さやか「おいおい…あっさり言わんといて…」 おんぷ「てへっ♪」 こうして、桂うたよ・松方すざくに秘密を明かそう、という流れになって、放課後の校舎裏… さやか「…で、悪い奴やっつけるのに、2人にも協力してほしいねん」 秘密を打ち明けられた側は、さすがにすぐには飲み込めず… 桂うたよ「ちょっと、ちょっと待って…そんな話、信じられる訳…!」 なかば怒りかけた桂うたよを、松方すざくが静かに制した。 松方すざく「…うちは信じますえ」 桂うたよ「…えぇ!?」 まさみ「すざくさん…」 松方すざく「まさはん方、前々から不思議な感じしてはりました」 桂うたよ「それは、あたしも思ってたけど…でも、いくら何でも魔法なんて…」 松方すざく「魔法でもあらしませんと、話が追っつきまへん」 桂うたよ「だからって…」 松方すざく「うたよはん、あんさんカリカリしてまうと、冷静に物事考えられまへん。 まさはん、うたよはんのために、何や証拠になるもんでも見せてもらえまへん?」 そう言われて、まさみはおんぷにお伺いを立てる。 まさみ「…だってさ」 おんぷ「そうね…口だけで言うのもあれよね」 返しつつ、おんぷはタップを手に取る。 それを見て、さやか、続いてまさみも、同様にタップを取り出す。 こうなれば、当然やる事は決まっている。 シュッシュ♪ おんぷ「プリティ〜ウィッチ〜おんぷっち〜♪」 さやか「プリティ〜ウィッチ〜さやかっち〜♪」 まさみ「プリティ〜ウィッチ〜まさみっち〜♪」 百聞は一見にしかず。言って聞かせるより見せてやった方が話は早い。 桂うたよ「えっ…嘘…でしょ…?」 松方すざく「おやまぁ…」 ただただ驚くしかない桂うたよ。美しいものを愛でるように、優しく見つめる松方すざく。 まさみ「はい、すざくさん、これで証しになったかな?」 松方すざく「十分どす。なぁ?うたよはん」 桂うたよ「これが…魔法…」 もう思考回路がついてこれなくなったようで、放心状態の桂うたよ… さやか「あ〜あ…あかんわ、これ…」 おんぷ「少し落ち着かせてから、説明しましょ」 しばらくして… 桂うたよ「今でも信じられないわ…」 松方すざく「せやけど、ほんまの事どす」 桂うたよ「あたし達以外の女子、みんな知ってたなんて…どうりで相談事、持ち込むはずだわ」 松方すざく「ほんで、不思議な魔法で片付けてまう♪」 まさみ「とりあえずは、そういうご理解でいてもらいますか」 そして、話は本題に戻る。 松方すざく「ほな、今度の不思議な出来事は、どないに片付けはります?」 問われて、まさみは捻り出した作戦の指揮を出す。 まさみ「本因坊戦の最終局、この日はあたしも京都に行く事になってる。 今までの対局からして、終盤になるのは多分、新春時代劇の記者会見が終わってから、 ゆう君の歌舞伎の、夜の部が始まるまで…この間、あたしの体は空いてるよ。 そこでだ。うたよちゃんが対局を生中継で見て、この手で決まった!って思ったら、 その棋譜を、すざくさんが京都の地図に当てはめて、あたしに教えて。 さやちゃんは、収録の予定まで時間が空いてるよね?連絡役をお願いできるかな? うたよちゃん・すざくさんと一緒に対局を見て、現場が分かり次第、 パトレーヌコールで2人の声を、あたしに伝えて。 おんぷちゃんは、マジカルステージだけ手伝ってくれれば大丈夫。 そっちの仕事に穴あけさせる訳にいかないから、3分以上は時間を取らせない。 それぞれの役割分担を決めて、あとは流れを説明。 まさみ「全体の流れとしては、おんぷちゃん・さやちゃんとあたしのマジカルステージで、 ロイヤルパトレーヌになったあたしが、京都の上空で待機してる。 そこに、対局を見ながら、うたよちゃん・すざくさんが現場を予測して、 分かったら、さやちゃんのパトレーヌコールで連絡、それであたしが急行… こんな感じでいこうと思うんだけど…どうかな?」 さやか「まさちゃんが、ええっちゅうんやったら♪」 おんぷ「お任せするわ♪」 松方すざく「よろしおます」 そして、最後の桂うたよは… 桂うたよ「ふうん…面白いじゃない…それでいくと、作戦スタートのタイミングは、 お爺ちゃんの碁を、あたしがどれだけ読めるかに懸かってるのね…やってやるわ!」 まさみ「よしっ!これで決まりだね!」 翌日、決戦の舞台・京都… まさみ「もしもし、さやちゃん?」 仕事を終わらせ、マジカルステージでロイヤルパトレーヌに着替え済みのまさみが、 箒に乗って、古都の上空を滑りながら、パトレーヌコールに問いかける。 さやか「まさちゃん?そっちの準備、終わったん?」 電話の相手は、桂うたよの家で、対局のテレビ中継を見ているさやか。 まさみ「今、待機場所に向かってる。対局の方は?」 さやか「まさちゃんの読み通り、終盤に向かっとる!」 ここで、さやかの電話に桂うたよの声が割り込んでくる。 桂うたよ「でも勝負の行方は、まだ分からないわ。接戦で、どこでどう転ぶか… あたしとさやちゃんで、先を読めるだけは読んでみるけど…」 まさみ「分かった。無理しないで、最善を尽くして」 桂うたよ「ありがとう、まさちゃん…それじゃ予定通り、天元にいて」 天元…10の十、碁盤の中心点の事を、こう呼称する。 碁盤の中心にいれば、碁盤のどこが現場となっても、最短距離で急行できるというわけだ。 さらにここで、同席している松方すざくの声も入ってくる。 松方すざく「碁盤の真ん中は、車屋町通と蛸薬師通… 車屋町通が切れとる所どすさかい、この2本の通りは交差しまへん。 この車屋町通の両側は、東洞院通と烏丸通…これを目安にしとくれやす」 まさみ「烏丸蛸薬師と東洞院蛸薬師の間にいればいいって事だね…了解!」 返事しながら、まさみは待機場所へと箒を駆り立てた… それから、進んでいく対局を桂家で見守る面々… さやか「ほな…ここ打ち込んでみたら、どや?」 テレビの前に碁盤を用意して、対局の様子を実際に再現しながら、次の手を予想する。 桂うたよ「そんな手、久世本因坊には通じないわ。それより、ここを固めて…」 さやか「あかんあかん!それこそ、こっちから一気にまとめて持ってかれてまう」 碁石片手に言い合う、さやか・桂うたよを、一歩引いた所から見つめる松方すざく。 松方すざく「押してもあかん…引いてもあかん…」 さやかの主張した攻め手も、桂うたよの提案した守りの手も、どちらも決め手にならない。 桂うたよの祖父も、次の一手に悩んで長考しているようで、テレビの対局は進まない。 松方すざく「いっその事、何もせぇへんのが一番どすやろか…」 その何気ない一言に、碁盤の前の2人が表情を変えた。 さやか・桂うたよ「何もしない…!?」 2人の様子の変化に、ようやく松方すざくも気が付いた。 松方すざく「あの…どないしはりましたん?」 さやか「攻めても守ってもあかん…ほな、何もせんかったらええねん!」 桂うたよ「この局面…ただ様子を見るだけの一手があるわ! お爺ちゃんが攻めも守りもしないと、久世本因坊の方が逆に応手に困るの!」 さやか「その後は、向こうがどないに打ってきたかて、こっちがキッチリ返したったら…」 桂うたよ「お爺ちゃんの優勢!!」 パアッと明るくなった桂うたよの表情に、さやか・松方すざくも笑顔になる。 松方すざく「ほな、もう決め手は分かったんどすな?」 さやか「ああ…うたよちゃんのお爺ちゃんが、その手打ったら決まりや!」 桂うたよ「お願い…お爺ちゃん…あそこに打って…!」 祈る孫娘の思いが、大空市から京都へ…届くか?いや、届け… うたよ祖父「(…む?)」 京都、本因坊戦対局の場…考え込んでいた、うたよの祖父の顔付きが変わった。 うたよ祖父「(うたよ…?)」 本因坊「桂先生、どうしましたかな?」 うたよ祖父「あいや、久世先生…何やら、勝利の女神の声が聞こえましてな」 久世「勝利の女神…?」 口元に笑みを浮かべた、うたよの祖父が放った一手が、萱(かや)の碁盤を打ち鳴らした…! 再び、桂家… テレビ「白、9の十二」 これを聞いて、もう碁盤の前の2人は大興奮。 さやか「9の…!」 桂うたよ「十二!9の十二!打ったわ!お爺ちゃんが打ったわ!」 松方すざく「ほな、この手で…!」 さやか「決まりや!うたよちゃんのお爺ちゃんの勝ちで決まりや!」 桂うたよ「この後も細かい碁になるけど、手堅く確実にいけば… お爺ちゃんなら、まず間違える事はないわ!」 手を取り合って喜び踊る、さやか・桂うたよ。 松方すざく「うたよはん…おめでとうございます!」 桂うたよ「ありがとう…!」 もう目に涙を浮かべている桂うたよ。しかし、まだ事は済んではいない。 さやか「…あっ!まさちゃんに知らせんと!」 桂うたよ「そうだったわ!9の十二だから、えっと…」 松方すざく「烏丸通と四条通…四条烏丸どす!」 その瞬間、喜びのあまり放置されていた、さやかのパトレーヌコールから怒鳴り声が。 まさみ「全部聞こえてるよ!!」 さやか「あ、まさちゃん…」 まさみ「蛸薬師通から烏丸通に出た!四条通は南北どっち?」 この質問に、京都に詳しい松方すざくは即答。 松方すざく「四条通は、蛸薬師通から南に2本どす!」 まさみ「南2本か!近くて助かった!あとは、あたしに任せて!」 早口のまま、早々に電話は切れた。 松方すざく「あとは…まさはんだけが頼りどすな…」 桂うたよ「1人だけで、大丈夫なの…?」 さやか「大丈夫やって…何しろ、まさちゃんやからな!」 京都、烏丸通と四条通の交差点・四条烏丸…京都市内でも大きい交差点だ。 その真上に滞空しながら、まさみは魔力を感じ取れる肌の触覚を研ぎ澄ます。 まさみ「やっぱり、嫌な感じがする…どっちさ…どっちから、何が来るのさ…?」 さらに目を凝らして、事故を起こすであろう車両を探す。 まさみ「もしかして…あれとあれかっ!?」 見つけた2台の車は、どちらも大型観光バス。観光都市・京都なら珍しくも何ともない。 だが、その2台のバスが不自然な走り方で、四条烏丸の交差点に向かっているのだ。 まさみ「どっちも止まりそうにない…信号は…?」 車の流れを見ると、四条通の車列が停止、烏丸通の車列が流れている。 まさみ「四条通が赤、烏丸通が青だ!」 四条通の西側から向かってくるバスが、なぜか減速する気配を見せない。 烏丸通の南側からやってくるバスも、青信号とはいえ少し速度が出すぎている。 そして、ついに四条通から来たバスが、中央線を割って反対車線から赤信号の交差点に進入! これには、一般車のクラクションと急ブレーキの音が鳴り響く。 同時に烏丸通からのバスも突入してきた。2台のバスの先頭部が向かう先は、交差点の角。 信号待ちをしていた群衆が青ざめ、悲鳴を上げて逃げ惑う。その中に、1人の少年の姿が… まさみ「ゆう君!!」 池田ゆうとの姿を見つけ、まさみは腹の底から有りっ丈の声を張り上げる。 まさみ「ポクセルパトレ〜ヌ!!」 襲い来るバスから逃げようとして、つまづき倒れた池田は、思わず目を覆った。 池田「うわっ…」 しかし数秒してから、ゆっくりと目を開いてみると… 池田「…えっ!?」 銀白色の目映い光の中、2つの大きな影を、二刀流でそれぞれ受け止める人影… その背丈は、池田とそう変わらない。花のような、羽のようなシルエット… なびく髪の長さと形に、池田は見覚えがあるような気がした… 池田「まさ…ちゃん…?」 その声が届いたのか、その影の横顔が、静かに笑ったように見えた… 池田「…はっ!?」 ふと我に返った池田。尻餅をついたまま、辺りを見回す。 すると、2頭の牛が角を突き合わせたように、2台のバスが目前まで迫った状態で停止していた。 先ほど池田を守ってくれた人影の主らしき人物は、どこを見回しても見当たらない。 てんやわんやの交差点で、池田は呆然(ぼうぜん)としていた… まさみ「全く…プロの対局用の碁盤と、道路とで二段構えに虫がいたとはね… 碁盤に強い気持ちで碁石を打ち込んだら、その棋譜を取り憑いた虫が覚える。 それに連動して道路の虫が、棋譜に対応する交差点に移動し、車を引き寄せて事故に… 手の込んだ事してくれたね…取りあえず、さっきの事故現場で道路の虫は退治。 さっき、碁盤の方も駆除してきたから…ふう。ようやく、歌舞伎見物だ♪」 後処理まで終わらせて、まさみは上機嫌で古都の空を駆け抜けていった… 池田座の京都公演、昼の部と夜の部の合間に、休憩がてら散歩していた池田。 その途中、四条烏丸の交差点で、事故に遭遇してしまった。 とりあえず怪我もなく、楽屋に戻った所…ひいきの客が来ていた。 まさみ「ゆう君♪」 池田「まさちゃん…!」 まさみ「やる事は全部、片付けてきた。夜の部、楽しませてもらうね」 池田「ありがとう。一生懸命、演じるよ」 そして、池田は気になっていた事を、まさみに問うてみる。 池田「ねえ、まさちゃん…」 まさみ「…何?」 池田「今日、四条烏丸で交通事故があったの、知ってるかな?」 まさみ「うん、あそこの交差点、さっきパトカーが何台も出張ってたから… バスのブレーキが効いてなかったとか、そんな野次馬の話は耳に挟んできた」 池田「僕、偶然あそこに居合わせたんだ…」 まさみ「えっ?大丈夫だった?」 池田「うん…この通り、体は全然…ただ…」 まさみ「ただ…なしたの?」 池田「まるで出雲阿国みたいに刀を手に舞いながら、僕に向かってくるバスを受け止めて、 僕を守ってくれた人がいたみたいなんだ…その人の笑った横顔が…」 出雲阿国(いずものおくに)とは、歌舞伎の創始者とされる女性だ。 まさか、自分を出雲阿国にたとえられるとは…これを聞いて、まさみはクスッと微笑んだ。 池田「まさちゃん…?」 まさみ「あ、ごめんね…それ、あたしだって言いたいんでしょ?」 池田「それじゃ…やっぱり…!」 瞳を輝かせる池田に、まさみは満面の笑みを返してやる。 まさみ「そう!あれが、あたしのナイショの姿♪」 池田「やっぱり、そうか…」 まさみ「あ〜あ…ついに、ゆう君に見られちゃったな…」 池田は、まさみの魔法の事に気付いてはいたが、実際に見たのは初めてだった。 まさみ「怖くなかった?人の力を超えた、魔力をまとったあたし…」 池田「ううん、とんでもない…お陰で命拾いしたし、怖いどころか綺麗だったよ… さっき出雲阿国みたいだって言ったように、まさちゃん、最高の晴れ姿だったよ」 まさみ「ゆう君…ありがとう!」 喜びに満ち溢れた瞳で、まさみは池田の手を握り締めて礼を言った。 池田「お礼を言うのは僕の方…これから舞台に立てるのは、君に助けてもらったからだよ。 さて、そろそろ化粧しないと。今度は、僕が晴れ姿をまさちゃんに見せる番だ。 この歌舞伎が、まさちゃんへ僕からの少し早めのクリスマスプレゼントだよ♪」 まさみ「それじゃ、ありがたく頂戴するかな…あっ、こっちからも何かお返ししないと…」 池田「まさちゃんからは、とても綺麗なプレゼントを、もう貰っちゃってるから… 不思議な力で僕を救ってくれた、あの美しい姿という、ナイショのプレゼント…」 まさみ「もう…ゆう君ったら…☆」 この池田座の京都公演は、大盛況の中、幕を閉じたという… 次回予告 おんぷ・さやか・まさみ「新年あけましておめでとうございます!!!」 さやか「年が明けて仕事も落ち着いて、ようやく冬休みや〜!」 おんぷ「私達3人、北海道旅行で羽を伸ばしま〜す♪」 まさみ「札幌はあたしの故郷だから、あちこち案内してあげるよ! 次回、おジャ魔女おんぷTriple‐S(トリプル・エス)北海道編その1! 『Triple-S@北の国!まさみのスキーヤーズワルツ♪』四六時中もスキーに行って♪」 さやか「まさちゃん…それ、夏の歌…しかも歌詞ちゃうし…」 おんぷ「そんなわけで新年も、プ〜ルルンパトレ〜ヌ♪」 45話端書き えっとですね、残ってた女子クラスメイト2人を、一気に絡めて消化しました。 まあ、桂うたよの囲碁と松方すざくの京都を、碁盤でつなげるのは前々から練ってたんですが。 そこに池田まで絡めたのは、単なる思い付きというか、行き当たりばったりというか… 森とさやかをヨイショしたのがありますから、やはり池田とまさみも押してあげないと…(笑) そんなわけで、まさみの出番ばっかりで、おんぷさんの出番が無かったという罠w 今回は、さやかも補助の方に回ったし…ぶっちゃけ、ずっとまさみのターン☆ しかもこの後、北海道編になってしまう関係で、ますますまさみのターン♪ 北海道編、その1って書き方をするって事は、当然その2もあるわけで。 筆者の地元なだけに、そうそうネタには困りません(笑) 札幌でTriple-Sを思いっきり弾けさせる☆これがやりたかった…(喜) という事で、次回から筆者の自己満足とも取れる駄文になりそうです…(汗)