おんぷ「音楽は、まるで魔法…」 まさみ「人の心を彩る魔法…」 さやか「互いの絆を深める魔法…」 おんぷ・さやか・まさみ「そんな私達の合奏は、言わばマジカルステージ…」『部活動見学、響け3人のハーモニー♪』 入学してしばらく経った頃、遠近学園に春恒例の行事がやってきた。部活動の勧誘である。 放課後になってすぐのC組の教室で、3人は教科書類をしまいながら話に花が咲く。 おんぷ「今日は、これから部活動見学ね…二人は部活やるの?」 楽しげなさやかは、既に浮かれ調子である。 さやか「勿論やで!いや〜、うち、何部に入ろっかな〜?」 まさみ「あたしは、ある程度は目星をつけてあるけどね」 さやか「うちは、入りたいのが多すぎて困るほどや〜」 おんぷ「ふうん…やっぱり2人共、部活やるのね…」 ここで、おんぷだけが仲間外れになってしまったようで、少し淋しげな顔付きになる。 さやか「ほえ?おんぷちゃんは部活やらへんの…?」 そして、さやかはハッとして口を塞いだ。 禁句を言ってしまったかもしれない…と気付いたのだ。 さやか「あっ!おんぷちゃん、お仕事あるから部活なんかやっとる暇ないんやな…」 おんぷ「うん…確かにお仕事も忙しいし…それに、これといった趣味もある訳じゃない… だから、特に部活をやろうっていう風には考えてなかったの…」 だが、おんぷの言動と反する持ち物に、まさみが気付いて指摘する。 まさみ「じゃ、その鞄は何?普通の物が入ってるとは思えないけどな」 おんぷの手には、黒くて小柄な四角い鞄。さやかには、思い当たる節があるようだ。 さやか「おんぷちゃん…これ、楽器が入っとるんとちゃう?」 おんぷ「あら、よく知ってるわね」 さやか「へへっ…うちもお父ちゃんのお下がりのクラリネット持っとるんやけど、 それもな、こういう専用のケースに入れとるんやで」 まさみ「なるほどね、楽器か…クラリネットは木管楽器だよね… おんぷちゃんのに入りそうな木管楽器というと…」 その答えは、おんぷ自らがケースを開いて示してくれた。 おんぷ「本当はね、吹奏楽部だけは覗いてみたかったんだ♪」 中から出てきたのは、おんぷの得意な楽器・フルートであった。 さやか「フルートやんか〜!それも結構ええやつ!」 まさみ「おやおや…さやちゃんが縦笛なら、おんぷちゃんは横笛ときたか…」 確かに、さやかの持っているというクラリネットは縦笛で、おんぷのフルートは横笛である。 おんぷ「私、小学校の時は音楽クラブに入ってたの。 尤も、部員は私と大親友のみんなしか、いないようなものだったけど」 さやか「何や、それ〜…おんぷちゃんの人気でも、部員集まらんかったん?」 まさみ「集める必要が無かったんじゃない? おんぷちゃんが、前の学校の大親友って言う時は…」 そう言いつつ、まさみはブレザーのポケットから少しだけタップを覗かせる。 まさみ「この大親友でしょ?」 おんぷ「ええ♪」 ここまで言って、ようやくさやかも理解出来たようだ。 さやか「そっか〜!他に誰もおらへんでも十分やったんやな」 まさみ「ナイショの仲か…あたし達じゃ、まだまだ及びそうにないや」 おんぷ「あら、そんな事ないわよ。私にとっては、さやちゃんも、まさちゃんも…大親友よ♪」 嬉しそうに言いながら、おんぷはさやか・まさみをギュッと抱き寄せた。 さやか・まさみ「おんぷちゃん…」 そして3人は、互いに微笑み合った。 おんぷ「さて…じゃ、どこの部から覗こっか?」 その時、まさみが教室後ろの戸棚から取り出した大きな持ち物に、さやかが目を付けた。 さやか「うわ、まさちゃんもでっかい荷物やな…って、剣道の道具やんか!」 まさみ「ご名答。いかにも、これは剣道の防具一式。そして、こっちは使い慣らした竹刀だよ」 そう言って、まさみは細長い布製の袋を、おんぷ・さやかに渡す。 おんぷ「開けて見ていいの?」 まさみ「勿論。見たって減るもんじゃないからね」 袋の中から竹刀を出してみて、さやかは感激する。 さやか「お〜…流石、時代劇俳優目指してるだけあって、強そうな竹刀やな〜…」 おんぷ「さやちゃん、強そうな竹刀って何…?」 少々呆れながらも、どこか楽しげなおんぷ。 まさみ「これで分かったしょ?あたしが目を付けてたのは剣道部。 ま、入るかどうかは、そこの強さによるけどね」 おんぷ「まさちゃん、お爺ちゃんに鍛えられてるんだもんね。 弱い部じゃ入っても退屈しちゃうわね」 まさみ「剣道部には悪いけど、そういう事になっちゃうね」 さやか「ほな、話題になったっちゅう事で、まず剣道部から覗こか!」 という訳で、剣道場へ足を踏み入れた3人。 部員が竹刀の打ち合いを実演しているのを見ていると… おそらく先輩であろう、1人だけ制服姿の女子が、3人に声を掛けてきた。 一ノ瀬「剣道部へようこそですぅ。私、マネージャーやってる3年の一ノ瀬ですぅ」 少し語尾が伸び気味の先輩に、一応3人も挨拶する。 おんぷ・さやか・まさみ「あっ、どうも…」 一ノ瀬「あっ…あなた、経験者ですかぁ?」 どうやら、まさみの防具が目に留(と)まったようだ。 まさみ「ええ、一応…あっ、あたし酒井まさみです…」 遅れて名乗った所、今度は防具を身に付けた男子が寄ってきた。 垂れには『萬』という1文字だけが書かれている。 一ノ瀬「こちら、うちの主将ですぅ」 ここで、漢字には自信の無いさやかが、申し訳無さそうに尋ねる。 さやか「あの〜…名前、何て読むんでっしゃろか?」 萬「一万の『万』ってあるだろ?それの旧字体なんだ。これで『よろず』って読むんだよ。 確かに、普段あまり使わない字だからね」 さやか「あっ、言われてみれば一万円札に書いたったような…」 そして萬は、まさみの方に顔を向ける。 萬「自分の防具を持ってきたって事は… さては、うちの部の実力を測ってから、入るかどうかを決めようって所かな?」 おんぷ「あら、まさちゃんの思惑、見抜かれてるわね」 まさみ「そちら様には悪いんですが…」 一ノ瀬「いいえぇ、構いませんよぉ。自分の実力に合うかどうかは、重要な事ですからぁ」 萬「おい、手の空いてる奴!この子と立ち合ってみてくれ!」 まさみの着替えも終わり、相手をしてくれる2年の先輩も準備は万端だ。 周りの部員も見物に集まる。女子部員などは特に嬉しそうだ。 女子部員「結構、強そうな子じゃない…」 女子部員「今年の大会、面白くなるかもね…」 そして、相手の部員(こちらは男子)が礼をする。 部員「じゃ、お願いします」 まさみ「はいっ!宜しくお願いします!」 大きな声で礼をした後、すぐにまさみの竹刀が空を切った。 部員「えっ…?」 相手の竹刀を振り払って、まさみの竹刀は部員の胴に当たっていた。 まさみ「胴!」 これには、観戦していた一同、驚く他に無い。 おんぷ「強いじゃない♪」 さやか「速攻やんか…」 萬「おいおい、一本負けかよ…」 一ノ瀬「凄いですぅ…」 まさみ「次の相手は、どの先輩ですか?」 これには剣道部員全員が騒ぎ出し、中には怒りを顕にした者も。 部員「こいつ、かなりの使い手だぜ!」 部員「怯むんじゃねぇ!敵討ちだ!」 部員「それに新入生に負けたんじゃ、剣道部の恥だ!」 さらに女子部員も、面白半分に勝負しようとする。 女子部員「生きのいい後輩じゃない!」 女子部員「跳ねっ返り娘、上等よ!」 そして我先にと、まさみに挑もうとする。 まさみ「さて、久々の乱取りか…掛かって来いっ!」 そう言うまさみの口元には、笑みが浮かべられていた。 ちなみに乱取りとは、大勢で入り混じって打ち合う、剣道の練習法である。 部員「ワアァ〜!!」 雄叫びを上げて、部員達が襲い掛かってくる。 しかしまさみは、その間を縫うように討ち取っていく。 まさみ「小手っ!」 部員「痛っ!」 打たれた手首を抑えながら、部員が床に転げる。 まさみ「面っ!」 部員「だっ…」 強打を受けた部員の手から、竹刀が落っこちた。 まさみ「突きっ!」 部員「がっ…」 まさみの得意技は、捻りを加えた竹刀での、相手の咽への突き。 強烈な打突を喰らった部員は、その場に膝を付いて、そのまま倒れ込んでしまった。 部員「おい!こいつ気絶してるぞ!」 部員「なっ、何て奴だ…」 どうやら防具があっても、それ以上にダメージが強すぎたようだ。 まさみ「おっと、あたしがやりすぎたかな?それとも、向こうの鍛え方が甘いのかな?」 ケロッとしているまさみに一同、唖然としている。 一ノ瀬「咽突き…あそこまで上手なのは初めて見ましたですぅ…」 萬「嘘だろ…咽突きは危険だからって、試合によっては禁じ技だぞ…」 咽を突くという事は、本物の真剣ならば一撃で相手の息の根を止めるという事。 ポイント制を重視したスポーツ化した剣道では、時に禁じ技である。 だが実践的剣術としては、これくらいでないと役には立たない。 さやか「うち、何だか怖なってきたわ…」 おんぷ「元刑事のお爺ちゃんから教わってれば、あれくらいにはなるわよ」 しかし、おんぷだけは冷静だった。そして、おんぷはまた感服してもいた。 おんぷ「(流石ね…時代劇俳優を目指してるって言うだけの事はあるじゃない…でも…)」 気付けば萬以外の部員は、まさみの手にかかって全滅していた… おんぷ「これは…いくら何でも、やりすぎね…」 さやか「ほ、ほえぇ…」 いつもの特徴的な驚き声も、咽に詰まって少し伸びなくなっていた。 一ノ瀬「…素晴らしいですぅ!」 しかしながら一ノ瀬だけは1人、瞳を輝かせていたのであった… 剣道部をコテンパンにしておきながら、次の見学へと向かう3人。 さやか「ほな次は、どこ見よか?」 ウキウキとして楽しげなさやかを先頭に、おんぷ・まさみがその後に続く。 おんぷ「さやちゃん、行きたい所があるんでしょ?」 まさみ「気まぐれに歩いてる訳じゃなさそうだもんね」 2人に見抜かれていた事に気付き、さやかは頭を掻いた。 さやか「あっ、バレとった?ほんまはな、この先でやっとる部活、覗こうと思ってたん」 おんぷ「この先は大ホールね…確かチアリーディング部のはず…」 まさみ「なるほどね…」 さやか「お〜、やっとるやっとる!」 大ホールに足を踏み入れると、チアリーディング部が元気に飛び跳ねていた。 おんぷ「わぁ、すご〜い」 まさみ「さやちゃんには持って来いな部だね」 おんぷ「動き回るの好きだもんね」 さやか「せやせや。うちにピッタリやろ?」 そこに、顧問であろう若い女教師がやって来た。どうやら、さやかに見覚えがあるらしい。 十河「西郷さん、お久しぶりね…ほら、私よ。実技試験の監督だった、十河(そごう)よ」 さやか「えっと…ああっ!十河先生!?チアリーディング部の顧問やったんですか?」 おんぷ「あら?さやちゃん、先生と知り合い?」 さやか「まあ、そんな所やな…うち、大阪から特別枠で受験したねん。 とりあえず、ダンスが出来たさかいな。 ほんで、そん時の試験監督だったんが、この十河先生やったねん」 おんぷ「特別枠…そう、さやちゃん、やっぱり一般入試じゃなかったのね…」 さやか「やっぱりって、どういう意味やねんな?」 まさみ「一般試験じゃ、学力不足で落ちちゃうでしょ?」 さやか「言うたな〜!」 遠近学園では、受験の際に特別枠というものを設けている。 スポーツなどの特技があり、それが秀でている者は、 学力試験よりも実技試験に合否を委ねるのだ。いわゆる一芸入試である。 そして実際、おんぷも芸能活動を認められての特別枠で入学していたのである。 まさみ「実を言うと、あたしも特別枠だよ。剣道の実技で一発合格だったけど」 おんぷ「へえ…まあ、地方から出てる子は、大体が特別枠みたいだけどね」 さやか「でな、うちのダンス見てくれたんが、この十河先生やったん」 十河「あのときのダンスは良かったわよ。当然、うちの部に入るのよね?」 さやか「う〜んと…正直言うと、新体操部とかと天秤に掛けてます…」 十河「そう…」 途端に、十河の顔がむっつりとした。おんぷ・まさみは雲行きの怪しさに身を強張らせる。 十河「(こんな稀に見る人材、他の部に引き抜かれてたまるもんですか…!)」 おんぷ・まさみ「(何か…気まずい雰囲気…)」 そして、十河は何やら思いついたらしく、手の平に拳をポンッと乗せた。 十河「それじゃ西郷さん、1回だけ踊ってかない?1回だけでいいから…ね?」 さやか「せやな…ほな、やらせてもらいます!」 答えるが早いか、さやかは制服の上着を脱ぎ捨てた。 宙に浮いたさやかの上着は、まさみの頭上に降ってきた。 まさみ「うわっと…さやちゃん!」 さやか「あ、それ預かっといてや」 まさみ「…もう!」 そうこうしている間に、さやかの踊る曲が既に準備されていた。 十河「曲のセット、OKよ。あなたの十八番、用意したから」 さやか「おおきに」 部員からポンポンを渡してもらって、さやかは楽しそうに微笑んでいる。 おんぷ「さやちゃんの得意な曲…知ってる?」 まさみ「ううん、全くもって…」 おんぷの問いに、まさみは首を横に振った。 十河「まあ、見ててちょうだい」 今まで踊っていた先輩の部員達が脇に避けたスペースに、さやかが立った。 十河「じゃ、行くわよ」 音響装置のスイッチが入り、前奏が流れ始める。 それを聞いてすぐに、さやかはニンマリと微笑んだ。 さやか「(やっぱ、この曲か…おっしゃ!)」 足を大きく振り上げながら、さやかは踊り始めた。 まさみ「おっ…結構、体柔らかいんだ…」 思わず声を上げたまさみだったが、まだ驚くのは早かった。 さやか「キラリ輝く朝露に うちもウインク返すんや♪」 いきなり歌いだしたさやかに、まさみだけでなく、おんぷも驚いた。 まさみ「歌!?」 おんぷ「十河先生、この曲、歌詞が付いてるんですか?」 十河「いえ、この曲はテンポがいい以外は、何の取り柄も無い曲よ…」 そんな十河の説明と、さやかの舞いとが平行線を辿る。 さやか「道の木漏れ日 ええ気持ち 陽気なお日さんは友達や♪」 十河「西郷さんが、この曲と初めて出会ったのは、入試の時… 初めての曲に、自由な振り付けで踊れって試験だったのよ…」 その間に、さやかはポンポンを投げ捨てていた。曲の山場で大技を繰り出すつもりだ。 さやか「滑らかな風 身にまとい 軽いステップで駆けてくで」 側転を2回繰り返した後、「軽いステップ」どころか見事なバック転を決めたさやか。 おんぷ「凄い…!」 まさみ「まるで越後獅子だ…」 越後獅子とは、獅子頭をかぶった子供が太鼓や笛に合わせて軽業をする、伝統的な曲芸である。 現在で言う新潟県、かつての越後から始まった事から、この名がある。 十河「これこそが、西郷さんが今ここにいる由縁よ…」 さやか「緑の草木 吹き抜ける風 髪なびかせて うちも踊るで♪」 十河「西郷さんは、初めての曲を一度聞いただけで歌詞を考えて、 さらに大技を幾つも盛り込んだダンスを考えたのよ…」 そして曲は終わりに向かい、さやかのツインテールも動きが次第に収まってきた。 さやか「Green Breeze 緑のそよぐ風・・・そよぐ風♪」 最後にポーズを決めたさやかに、おんぷ・まさみ共に惜しみない拍手を送った。 おんぷ「さっきのバック転、まるで体操選手ね」 まさみ「軽業師並の身のこなし…やるじゃない」 さやか「へへっ、おおきに」 十河「この曲のタイトルは『Green Breeze』…『緑のそよ風』に似つかわしい踊りと歌…」 …と言うより、西郷さんそのものが『緑のそよ風』を表しているのかしらね」 おんぷ「緑のそよ風…」 まさみ「なるほど、合点がいくよ」 おんぷ「さやちゃん…絶対、このチアリーディング部に入るべきよ」 まさみ「十河先生も、それを望んでるみたいだし… 何よりさやちゃん自身、踊ってる時なまら楽しそうだったしょ」 微笑むおんぷ・まさみ、それに十河に見つめられ、さやかは困惑していた。 さやか「せやなぁ…」 結局、結論を先送りにしたさやかは、おんぷ・まさみに別の部を見学したい旨を伝えた。 さやか「さて…気分転換に囲碁もやってこか」 おんぷ・まさみ「ええっ!?さやちゃん、囲碁も出来るの!?」 意外な事に驚く2人。だが、さやかは至ってケロッとしている。 さやか「うん。囲碁って要するに石置いて場所取る陣取りゲームやん。簡単なもんや」 それを聞きつけて誰かが、さやかにズカズカと歩み寄ってくる。 その上、表情から察するに、かなり機嫌が悪そうだ。 ???「聞き捨てなんないわね…!」 その声に、3人は聞き覚えがあった。何しろ、同じC組の生徒なのだから。 振り向くと、予想通りの人物が、鋭く眼光を光らせて腕を組んでいた。 おんぷ・まさみ「桂さん…」 さやか「うたよちゃん…どないしたん?」 彼女の名は「桂うたよ」。噂によると祖父が囲碁のプロ棋士で、それを誇りに思っているらしい。 おそらく、ここにいるのは囲碁部に入るつもりだったのだろう。 また、常に囲碁で細かい事を考えているせいか、 普段からカリカリしていて、怒ると手が付けられないそうだ。 桂うたよ「どうしたじゃないわ!それにいつ、下の名前で呼んでいいって言った?」 さやか「今日も、また随分と苛立っとんな〜…」 おんぷ「さやちゃん、質問の答えになってないわよ…」 そんな、おんぷのフォローも気にせず、桂うたよは不満をぶつけ続ける。 桂うたよ「あんたね、さっき碁が簡単だとか言ったわね?」 さやか「…言うたけど?」 桂うたよ「その言葉が、碁打ちの人達を馬鹿にしてる事が分かんないの? あたしのお爺ちゃんを始めとした碁打ちは、努力・忍耐・苦悶・絶望… 色々な困難を乗り越えて、碁を打ってるって言うのに…!」 桂うたよの顔には、鬼気迫るものがあった。さやかはたじろぎ、とりあえず詫びた。 さやか「か、堪忍…うち、そないな事、知らへんかったさかい…」 桂うたよ「知らないじゃ済まないわ!全く、あんたみたいなのに打たれる碁石が可哀想!」 さやか「うっ…」 口の達者なさやかも言い返せなくなるほど散々に打ちのめされて、 さらに瞳に涙を溜めていた。これには、クールなおんぷも怒りを顔に出す。 おんぷ「ちょっと言い過ぎじゃない?さやちゃんだって、悪気があって言った訳じゃないのよ!」 桂うたよ「じゃあ瀬川さんは、芸能活動なんてちょろい…なんて言われて、何も思わない?」 おんぷ「そ、それは…」 桂うたよ「じゃあ口出ししないで!」 おんぷまでもが、口を噤まざるを得なかった。 しかし今度は、まさみが代わって火に油を注ぐ。 まさみ「確かに、さやちゃんの言ったのが気に障ったってのは、分からなくもないよ… でも、お爺ちゃんがプロだか何だか知らないけどさ、 そういう上から見下すような言い方もないと思うけど?」 正義心の強いまさみは、権威を笠に着る行為は大嫌い。 威丈高な者には、真正面から向かっていく性分だ。 桂うたよ「プロだか何だか…ってねぇ…!!」 まさみ「桂さんの言い分じゃ、囲碁を楽しむ事なんか出来ないべさ! そんなの、おかしいしょ?そうじゃない?」 強気で真っ直ぐなまさみの目は、桂うたよを睨みつけて、 他の者を網膜に映そうとはしなかった。 さやか「囲碁を…楽しむ…せや!うちの囲碁は楽しかったら、それでええんや!」 まさみの言葉に、さやかも元気を取り戻した。 桂うたよ「言うじゃない…じゃあ、こうしない?あたしと西郷さんとで、一局手合わせ… 碁が簡単だって言うくらいなんだから、互戦(たがいせん)で文句無いわよね?」 互戦とは、ハンデの無い対局の事。 逆に実力差がある時は、置石といって初めから石が盤上に置かれる。 桂うたよ「あたしに勝ったら、今日の事は水に流したげる。 でも逆にあたしが勝ったら、あんたには二度と碁石に触らせない!」 さやかを指差して、桂うたよが叫んだ。 怒鳴り合いが続いたので、人だかりも出来てきていた。 そして、さやかは頭で考えるよりも先に、負けず嫌いな根性で答えていた。 さやか「…やったろうやないか!」 多目的室を活動場所としている囲碁部。 そこに設けられた対局スペースで、さやかと桂うたよのぶつかり合いが始まろうとしている。 さやか・桂うたよが大声で騒いでいた経緯も原因だろう。 囲碁部員・見学者の入り混じったギャラリーもまじまじと視線を注いでいる。 おんぷ「さやちゃん、大丈夫なの?」 心配そうに声をかけるおんぷに、さやかは笑って言った。 さやか「大丈夫やて。おんぷちゃん、心配せんといて」 桂うたよ「お喋りはそのくらいにして、握るわよ?」 握る…囲碁での先攻後攻の決め方である。 片方が白石を幾つか取り、もう片方が奇数か偶数かを当てるために、 1個もしくは2個の黒石を盤上に転がす。 さやか「…奇数や」 そう言って、さやかは黒石を1個だけ放るのに続けて、桂うたよが指をほどく。 碁盤上にジャラジャラとばら撒かれた白石、その個数は…13個であった。 さやか「ほな、うち黒番な」 囲碁では先攻が黒、後攻が白の石を打つ事になっている。 さやか・桂うたよ「お願いします」 ここより、2人の意地のぶつかり合いが始まった。 碁笥(ごけ)から黒石を取り出して、さやかは盤上に叩きつける。 パシッ…という快い音が響き渡った。周りからオオッという声があがる。 桂うたよ「多少は心得があるのね…」 対局が進んでいき、見学者は勿論の事、囲碁部員までもが盤面に見入っている。 それほどの込み入った、見応えのある局面なのだ。 さやか「(ここら辺の白石を確実に殺すには、どこに打てばええかな…ん?)」 口元に笑みを浮かべるさやか。そして捻り出した答えは… さやか「(ここやっ!)」 碁盤に黒石がバシッと快音を立てた。 この手に、桂うたよは口元に手をやり、ハッとした表情を見せた。 桂うたよ「(ここを切っておけば、白はどう打ち回しても駄目詰まりになる… でも、なぜここが分かったの…?)」 駄目詰まりは囲碁用語。石が追い詰められてしまう状況を指す語である。 そしてどうにも、さやかがこの手を考えついたのが腑に落ちない様子。 桂うたよ「(西郷さんの棋力、読み違えてたわ… じゃなきゃ、こんな半端じゃない手、打てっこない!)」 そして対局はさらに進んでいき、盤上から排除される石まで出てくる始末。 さやか「一子(いっし)取ったぁ!」 黒番であるさやかの碁笥の蓋に、囲み取った白石がカランと投げ込まれた。 囲碁では相手の石に四方を囲まれた石は、相手に取られるのだ。 桂うたよ「上辺が死にかけてる…他を守りきるしか無さそうね…」 予想以上のさやかの棋力に、桂うたよは押されているようで、悔しそうに漏らした。 さやか「その程度で済まへんと思うけどな…?」 桂うたよ「今…何て?」 さやか「さっきも言うたやろ?囲碁は陣取りゲーム、つまり陣地を稼ぐゲームや! 稼ぐ事に関しては、昔から浪花の商人(あきんど)の右に出る奴はおらへんねん!」 不敵に笑うさやかの指から放たれた黒石が、碁盤と快音を生じた。 ビシッ…一瞬、周囲の人間には空気が凍りついたように感じられた。 もはや声を立てる者は、いなくなった…と言うより、声を立てられる筈が無かった。 桂うたよ「そんな…左辺の大石が攻められて…」 さやか「上辺と左辺、両方を凌ぐのは大変やろな…うたよちゃん」 碁盤の上で繰り広げられている陣取り合戦は、さやかが優勢のまま終盤戦に突入していった。 さやか「ほな、このまま寄せたろか!残りの地もガッポガッポ儲けさせてもらおか!」 対局が進むにつれて、結果を予想できている者がいた…おんぷ・まさみである。 おんぷ「(さやちゃん、このまま勝っちゃうわね…)」 まさみ「(意地の張り合いで、負けるようなさやちゃんじゃない…)」 おんぷ・まさみ「(勝敗は…もう目に見えてる!!)」 いつの間にか一致していた2人の予想に答えるかのように、 さやかは、桂うたよに音を上げさせた。 桂うたよ「ありません…」 自らの敗北を宣言し、愕然とする桂うたよ。 囲碁の腕に自信もあり、祖父がプロ棋士という自負もあった。 さらに、さやかへの軽蔑も相まって、この敗北は計り知れないものとなった。 おんぷ「桂さん…」 少し淋しそうな視線を向けるおんぷ、締める所は締めるといった具合のまさみ。 まさみ「約束、忘れた訳じゃないしょ?」 桂うたよ「分かってる…もう勝手にして…」 うな垂れる桂うたよに、さやかは諭すように言った。 さやか「囲碁は勝とうと負けようと、関係あらへん…やっぱ楽しまなあかんやろ…」 さらに、周りに集まっていた囲碁部員を見回して言うには… さやか「この部で、囲碁をみんなと『楽しめる』ようになったら、また相手したってもええで…」 それだけ言い残すと、さやかはおんぷ・まさみそれぞれの顔を見た。 さやか「行こか…」 おんぷ・まさみ「うん…」 囲碁部を後にして廊下を歩む、おんぷ・さやか・まさみ。 何箇所覗いても飽き足らないさやかは、未だに上機嫌である。 さやか「ほな、次はどこ行くん?」 おんぷ「さやちゃんったら…それにしても2人共、部活荒らしの天才かも」 さやか「せやな〜、まさちゃんは剣道部荒らして、うちも囲碁で… ほんまやな〜、あはは〜…あれ?」 ようやく気が付いたさやかに、まさみは呆れ顔。 まさみ「今のがあたしにとっても、さやちゃんにとっても悪口だって事、理解してないしょ?」 さやか「あ〜〜!!おんぷちゃん、よくも言うたな〜!」 おんぷ「やっと気付いたのね。でも、さやちゃんのそういう所、私は好きよ」 楽しそうに微笑むおんぷに、さやか・まさみも自然と笑顔になっていた… そして今度は、おんぷの覗きたがっていた吹奏楽部が活動している音楽室へ、と思ったが… さやか「なあなあ…」 おんぷ・まさみ「何?」 さやか「おんぷちゃんはフルート持って来とるからええけど、うちらはどないすんの?」 まさみ「音楽室にも、ある程度の楽器は置いてあるだろうし、借りればいいしょや」 さやか「それやったら物足りひんやん…」 おんぷ「そうよね…私だけ自前ってのもね…」 まさみ「だったら、どうするのさ?」 さやか「決まっとるやないか」 おんぷ「ま・ほ・う♪」 ニヤつくおんぷ・さやかに、まさみは「やられた」といった表情。 まさみ「そっか…こいつは一本取られたね」 おんぷ「そうと決まれば、早く済ませちゃいましょ」 人目を避けて校舎裏に入り込み、さやか・まさみは揃ってお着替えを開始。 シュッシュ♪ さやか「プリティ〜ウィッチ〜さやかっち!」 まさみ「プリティ〜ウィッチ〜まさみっち!」 そして、さやかの方から先にポロンを振るった。 さやか「プレサ〜リラティ〜・ペレナ〜エルプラノ!うちのクラリネット、出ろ〜!」 すると、さやかの手元には、おんぷのフルートと同様に、 ケースに入った状態でクラリネットが現れた。中身を確かめ、さやかは満足そう。 さやか「おっしゃ。間違い無く、うちのクラリネットや」 おんぷ「やっぱり、さやちゃんは魔法使うの上手ね♪」 さやか「えへへっ…おおきに」 まさみ「さやちゃんはクラリネットがあるからいいとして、あたしはどうしたらいいかな…」 おんぷ「どうしたらって…その前に、まさちゃんは得意な楽器あるの?」 まさみ「ある事はあるけど、自前のはここに出せないからね…」 さやか「どういうこっちゃねんな?」 おんぷ「ピアノみたいに大きいって事?」 まさみ「ま、そういう事にしといて…」 そう言いながら、まさみもポロンを手に取った。 まさみ「ポクセル〜カソペ〜・トワラ〜エクセルス! おんぷちゃん・さやちゃんと一緒に演奏させて!」 しかし、まさみの叫んだ後、静まり返って何も起こる気配は無い。 さやか「不発とちゃうか?」 おんぷ「ううん…これからよ…」 しばらくして、おんぷの言った通りに事は運んだ。頭上から1枚の紙が降ってきた。 それをキャッチして、3人はまじまじと目を通した。 さやか「何やねん、これ…?」 おんぷ「職員会議の資料じゃない…」 まさみ「音楽準備室においての、授業及び部活動で使用されていない余剰の楽器について…」 さやか「あ〜…堅苦しい!」 まさみ「堅苦しいって…これのどこが?」 難しい事を考えるのが苦手なさやかは、我慢しきれずに大声を上げる。 そして、まさみが即座にツッコんでいた。 おんぷ「つまり、音楽準備室で余ってる楽器についての資料ね」 まさみ「何々、コントラバスにティンパニー、シンバルにハープ…」 さやか「大きいのばっか余ってんねんな〜…」 おんぷ「そうね…あら、どうしたの?まさちゃん…」 気付くと、まさみの目は書類の一点を見つめて固まっていた。 おんぷ・さやか「まさちゃん…」 まさみ「ハープ…あるんだ…」 静かに煌めくまさみの瞳は、嬉しそうでもあり、また悲しそうでもあった… さやか「まさちゃん、ハープって…出来るん!?」 まさみ「あっ、うん…まあ、ね…」 歯切れの悪いまさみに、おんぷは尋ねてみた。 おんぷ「何か訳ありみたいね…良かったら話してみて」 すると、まさみは胸の内に秘めていた事を打ち明けてくれた。 まさみ「あたしのお母さんの話…あんまりしてないよね…」 おんぷ「まさちゃんの…お母さん…」 さやか「確か、強盗に遭(お)うて死んでもうたっちゅう…」 まさみ「うん…お母さん、女学校時代にハープやってたんだ。 嫁入りの時に、実家にあったのを持ってきたんだって。 それで、あたしも小さい時に、弾き方を習った… 尤も、主を亡くしたハープは今、お蔵入りなんだけどね…」 回想中…その昔、まさみがまだ幼く、真浪も存命であった頃… まさみ「綺麗な音…お母さん、その大きいの、何?」 真浪「ハープよ。まさみもやってみる?」 七恵「真浪さん、なるべくお爺さんのいない時にしてちょうだいね。 あの人、『まさみまで西洋かぶれになった』、とか言って騒ぐでしょうから…ほほほ…」 真浪「はい。正爺さんは眠くなるとか言いますし、理解して下さるのは、お母様だけですね… 尤も、お父様も見て見ぬふりをしてるようですけど」 まさみ「すご〜い…どれを弾いても、違う音が出る…」 真浪「そうよ。ピアノと一緒。弦の一本一本、違う音が出るのよ…」 回想終了… 黙って俯くまさみに、おんぷは残念そうに言った。 おんぷ「つまり私達と演奏するためにハープを弾くと、お母さんの事を思い出しちゃうのね…」 やっぱり、やめといた方がいいかな…」 すると、横にいたさやかが口を開いた。 それも、いつものように明るい口調ではなく、淋しげな口調で。 さやか「まさちゃん…うちのクラリネット、お父ちゃんのお下がりや言うたやろ…? うちのお父ちゃんな、仕事忙しゅうて家におらへんねん… うちかて、やっぱ淋しゅうなる…せやから、うち…淋しくなるとな、 クラリネット吹くねん…お父ちゃんの事、思い出せるから… 悲しゅうもなるけど、それと一緒に楽しかった事も思い出せるからな…」 おんぷ「さやちゃん…」 それを聞いて、まさみも大きく溜め息を吐いた。 まさみ「ふう…そっか…」 そして息を整えてから、まさみは決意を、おんぷ・さやかに表明した。 まさみ「あたし…ハープ弾くよ!お母さんがそばにいてくれるような… 励ましてくれるような気がするから!」 さやか「おっしゃ!まさちゃん、元気になった!」 おんぷ「これなら、3人で楽しい演奏が出来そうね♪」 そして制服姿に戻った3人は、意気揚々と音楽室に乗り込んだ。 おんぷ・さやか・まさみ「失礼しま〜す♪」 すると、脹よかで優しそうな女教師が出迎えてくれた。 千種「いらっしゃい。私、顧問の千種(ちくさ)です。どうぞ見学してって…あら?」 やはり音楽教師、早速おんぷ・さやかの楽器ケースに目を付けた。 千種「自前の楽器とは準備がいいわね…瀬川さんはフルートをやってるって聞いた事があるわ」 おんぷ「あっ、ご存知でしたか?」 千種「で、そっちの子は?」 さやか「うちでっか?うちはクラリネットやります」 千種「そう…で、あなたは?」 まさみ「あたしは…準備室にある、ハープを引っ張り出して頂ければ」 千種「まあ珍しい、ハープ奏者だなんて… あら、どうして準備室にハープがあるのを知ってるの?」 痛い所を突かれ、3人は少し戸惑った。 おんぷ・さやか「あっ、それは…」 まさみ「と、とりあえずハープを…」 千種「それもそうね。あなたの腕を見るための準備に取り掛かりましょ。 みんな、準備室からハープ出すの手伝ってちょうだい」 吹奏楽部の部員が数人がかりで、暇を持て余していたグランドハープを引っ張り出してきた。 その間に、おんぷはフルートを、さやかはクラリネットを、それぞれ組み立て終わっていた。 まさみはハープのそばに椅子を置き、ゆっくりと腰掛けてハープの弦を撫でた。 ポロン…という優しい響きに、まさみも満足そう。 まさみ「素直な子だね…あたしの言う事、ちゃんと聞いてくれそう…」 おんぷ「まさちゃん、行けそうね」 さやか「こっちは、とっくにOKやで」 まさみ「うん、お待たせ」 千種「3人共いいみたいね。じゃあ…」 たいそう嬉しそうに、千種は教卓の中を探る。 千種「これなんて、どうかしら?ちょっと3人で演奏してみて」 3人に楽譜が手渡された。初見でどれだけ出来るか、小手調べのための割と簡単な曲のようだ。 おんぷ「ふうん…」 さやか「面白(おもろ)いやんか…」 まさみ「受けて立とうじゃない」 おんぷ「それじゃ先生…」 千種「ええ、行くわよ」 そう言って、千種は指揮棒を振り始めた。 フルートの優雅な音色が、クラリネットの爽快な音色が、ハープの幽玄な音色が重なり合う… おんぷ「(素適…どれみちゃん達と演奏してた時とは、また違った響き… これが、さやちゃん・まさちゃんの響きなのね…)」 そしてフルートの高音を、クラリネットがやや低音で追いかけてくる… さやか「(うちは、おんぷちゃんが大好きや… せやから、おんぷちゃんの音色を、うちの音色で支える感じで…)」 さらに2種類の管楽器と共に、弦楽器のハープが時に高音、時に低音を奏でる… まさみ「(時に他を立てて静かに、時に前に出て勇壮に… 出るときは出る、退(ひ)く時は退く。それが、あたしの奏で方…)」 三種の楽器は、まるで3人の異なった人柄を表すように、三様の音色を響かせ歌う… いつの間にか、3人は心の中で呪文を唱えていた… おんぷ「(プ〜ルルンプルンすずやかに…)」 さやか「(プレサ〜リラティ〜なめらかに…)」 まさみ「(ポクセル〜カソペ〜きよらかに…)」 おんぷ・さやか・まさみ「(マジカルステージ!!!ハーモニーよ、みんなの心に響いて…)」 涼やかに、滑らかに、清らかに…3人の音の調べを表す、最も率直な言葉であった。 聞き入る一同は、誰も口を開かなかった。 姿勢を変える者もおらず、息遣いさえ聞こえなかった。 そして静かに演奏は終わりを迎え、音楽室は一瞬の静寂に包まれた… だが次の瞬間、割れんばかりの拍手が3人を襲った。 3人共に、恥ずかしそうに笑い合った。 千種「素晴らしいわ!3人がそれぞれの特色を出しきった演奏、感動したわ! おそらく、仲のいいあなた達3人だからこそ出来るものだわ! 是非、うちの部へ入部してもらえないかしら? その素晴らしい腕を、もっと光らせてあげたいですもの!」 おんぷ・さやか・まさみ「先生…ありがとうございます!!!」 さらに拍手が巻き起こり、3人は互いに見つめ合った… そして入部届の提出日、1年C組の教室… おんぷ「ねえ、2人は結局、何部に入る事にしたの?」 すると、さやか・まさみ共に、バサバサと何枚もの入部届を見せてくれた。 おんぷ「2人共、掛け持ちするのね…」 遠近学園では、部活動の掛け持ちについては、生徒の自由となっている。 さやか「うちは、まず吹奏楽!それにチアリーディング部やろ? それに新体操部と、それから…どこやったかな?」 おんぷ「自分の入る部なのに、覚えてないの?」 さやか「えへへ…全部、助っ人って事での入部なんや… どこの部の部長はんも熱烈やったし…断りきれんかったん…」 どうやら運動神経抜群のさやかは、方々の部から引っ張り凧だったようだ。 ちなみに遠近学園では、助っ人でも部員として登録が必要である。 話を一通り聞いて、おんぷは続けてまさみに尋ねる。 おんぷ「ふ〜ん…で、まさちゃんは?」 まさみ「あたしは剣道部と柔道部、弓道部と古武術同好会にも助っ人で、 あと茶道部と花道部にも来てって引っ張り込まれて…それに吹奏楽部」 さやか同様まさみも、武道の嗜みがあるお陰で、武道関係の部に勧誘されていた。 おんぷ「茶道に花道…流石、大和撫子ね」 さやか「こっちは、お婆ちゃんに教わった言うてたもんな」 さらに和風文化を一通り七重に仕込まれていたため、それについても引っ張られる羽目に。 おんぷ「でも剣道部は不甲斐ないようだから、遠慮するって言わなかった?」 まさみ「そのつもりだったんだけどさ、一ノ瀬先輩が…」 回想、数日前… 一ノ瀬「酒井さぁん!待って下さぁい!」 下校間際のまさみを、一ノ瀬が捕まえた。 まさみ「えっ?」 一ノ瀬「あなたがいれば、女子の大会は怖い物無しですぅ! 是非、是非、入部して下さいですぅ!」 熱烈な歓迎を一ノ瀬から受けて、まさみは少々困っていた。 まさみ「お気持ちは嬉しいんですが…あたしがいちゃ、迷惑じゃないですか? 皆さんと実力に差がありすぎて、練習で足を引っ張りそうで… だから、あたし…やめときます…」 まさみは申し訳無さそうだ。しかし、一ノ瀬は諦めなかった。 一ノ瀬「そんな…せめて、せめて籍だけでも入れて下さいですぅ! 大会の時だけ来てくれればいいですからぁ!」 まさみ「一ノ瀬先輩…」 回想終了…少しだけ、まさみの頬が赤らんでいた。 まさみ「…という事で、押し切られましたとさ」 おんぷ「あら、人気者じゃない♪それにしても2人共、吹奏楽部に入ったのね。 やっぱり私と一緒がいいのね♪」 さやか「えへへ〜…」 照れて少し間抜け面になっているさやかに、まさみが冷静にツッコミを入れる。 まさみ「さやちゃん、鼻の下伸びてる」 さやか「ちょい待ちぃ…それって男に言う言葉とちゃうの?」 おんぷ「まあまあ…じゃあ最後はお待ちかね、私の入部先ね…」 そう言いつつ、おんぷはゆっくりと入部届を出した。 おんぷ「じゃ〜ん♪」 その手には、吹奏楽部への入部届がしっかりと握られていた。 さやか・まさみ「わ〜…3人一緒だ〜!」 おんぷ「2人共、私が吹奏楽部に顔出せる日は、休んじゃ駄目よ」 さやか「おっしゃ!他の部の部長はんには悪いけど、吹奏楽が最優先やな!」 まさみ「まったく、さやちゃんったら…ま、あたしもだけどね」 おんぷ「さあ!今日から心機一転、頑張りましょ!」 さやか・まさみ「お〜〜!!」 3人は思いっきり拳を天に掲げた… 次回予告 おんぷ「私達の三重奏、いかがでしたか? そして今度は、見習い試験で最も難関だと言われてる3級試験…」 まさみ「9級に落ちかけたあたしにとっては、不安以外の何物でもないよ…」 さやか「うわ〜…まさちゃんが腐りかけとる…」 おんぷ「まさちゃん、お願いだから元気出して…」 さやか「ほれ見てみぃ、今週の蟹座、最高の運勢やて」 まさみ「占いなんて、当てになるかな…」 さやか「はぁ〜…超ネガティブシンキングやな… 次回、おジャ魔女おんぷTriple‐S(トリプル・エス) 『3級試験…光り輝け!まさみという星』…って、このタイトル… うち、まさか出番無し!?そんなん、あんまりや〜! とにかく、プレサ〜リラティ〜なめらかに〜」 4話端書き 今回は、さやか・まさみのネタが盛り沢山でございます。お陰で駄文の量も盛り沢山…(汗) どっちも趣味・特技が多いもんですから、必然的に入部できる箇所も多くなってくるという… こういった部活ネタも、後々ちらほら出てくるかと思われます。 まず、さやか・まさみの使用楽器が出ましたね。 MAHO堂メンバーは全員、自分の楽器がありましたから、何とか考えました。 さやかのクラリネットはともかくとして、まさみのハープは無理があったかな…? 本編で出てない物を考えていったら、こうなっちゃいました… 特に大和撫子のまさみに、どうやって洋楽器を絡ませるかが、しんどかったり… 結果として、真浪さん譲りという形に落ち着きました。 さて、さやかの持ち歌が出てきちゃいました♪ とは言っても、作詞するのが精一杯でございます。曲は付けられません…(泣) 今後、まさみのも出てくるかもですが、その辺はナイショで… とりあえず、新出クラスメイトが1名… 桂うたよ…明治から大正の桂首相、下の名前が「太郎」なもんで、頭かなり捻りました。 「たろう」の「た」と「う」を使って、何とか女子の名前にならないかとした結果です… 桂に「うた」が続くと、某落語家の方に近くなってしまいましたが…w てかクラスメイトが1人も出ないのが何だったので、囲碁部ネタ投入した始末(ぇ) ちなみに、今回の登場人物の名字ですが、 一ノ瀬・萬・十河・千種と、数字を冠するという共通点あったりします… さて、百が抜けてるぞ!?…今後のネタですねw