朝…おんぷが遠近学園に向かうため、遠近学園駅まで車に乗せてもらう。 その途中の信号待ちで、交差する道を大型のダンプカーが連なって走っていくのが見えた。 美保「この道の先、藤野原の方で宅地開発やってるせいで、工事車両で混むのよね…」 おんぷ「宅地開発…」『千変万化!さやかと狸の化け比べ!?』 駅で車を下りたおんぷが、さやか・まさみと合流して、遠近学園へ向かう通学路… まさみ「それにしても、おんぷちゃんには恐れ入ったよ。 悪夢から覚めないあたしに、さらに寝かし付ける子守唄なんて…」 さやか「ほんま、起こさなあかんのに、何でまた寝かそうとしとんねんやろって思たで…」 おんぷ「だって、まさちゃんが求めてるものが、親の愛だって思ったから… それを踏まえた上で、あの場で私が出来る事って言ったら、 あれしか思い付かなかったんだもん…ルピナスの子守唄♪」 まさみ「でも、その思い付きと歌声のお陰で、あたしは今こうして一緒にいられる… 本当に今回ばかりは、どんなに感謝しても感謝しきれないよ…」 おんぷ「そんな…」 そんな風に3人が向かっている頃、1−Cの教室では… 近衛まろん「おはよう…」 先日の騒動の発端となってしまった近衛まろん。 何だか申し訳無くて、おずおずと教室に入る。しかし… 若槻つぐみ「おはようございます。近衛さん、話は聞いてるわ。これから宜しくね」 近衛まろん「…うん、宜しくっ」 おんぷ達から事情を知らされていたクラスメイトの女子達は、彼女を明るく迎えてくれた。 東久邇なるみ「それにしても驚きですわ。あの音楽が、あなたの作だったなんて」 加藤めい「それだけ、まろんちゃんの作る曲は凄いって事だよ!」 浜口みさお「よく言うよ。めいちゃん、真っ先に寝ちゃってたくせにさ」 山県ともえ「みさちゃんだって寝てたでしょ〜!」 阿部ゆきの「そげん事(こつ)言い出したら、キリが無かとね」 西園寺ひなげし「何しろ、わたくし達全員、寝てたんですからね」 黒田せいら「あら、全員じゃないわ。ヒロインの内2人は、ちゃんと起きてたのよ」 米内みつえ「そんな噂してると…ほら、ご本人様の登場よ」 賑やかな所に、おんぷ達3人が到着。 おんぷ・さやか・まさみ「おはよ〜!!!」 一同「おはよ〜!!!」 明るい声が、さらに増す集まりを、少し離れて見ている女子が3人… 松方すざく「いつもながら、まさはん達の周りは賑やかどすなぁ」 大隈しのぶ「本当だね。春から取り巻きが1人2人と増えてって、いつの間にかこんな大所帯」 桂うたよ「あたしも取り巻きの内に入るのかしら?よく、さやちゃんと碁打ってるから」 大隈しのぶ「でも、おんぷちゃん達に噂話を持ち込む程じゃないでしょ? あの3人に困った話や、変な噂を教えると、何日かで解決しちゃうんだよね…」 松方すざく「ほんに不思議な話やなぁ…あ、ちょいと、お2人共」 大隈しのぶ・桂うたよ「え??」 松方すざく「今日もまた、始まりそうどすえ…」 すると、噂好きの東久邇なるみから、話は始まった。 東久邇なるみ「最近、藤野原の周辺で怪奇現象が起こるという話、ご存じ?」 おんぷ「怪奇現象?」 藤野原というのは、大空市北西部にある丘陵地域である。 まさみ「開発が少しずつ進んできて、住宅地が増えてきてる、あの藤野原丘陵?」 山県ともえ「そうそう!あそこで、お化けが出るの〜!」 清浦けごん「それも、一度や二度じゃなく、あちこちで色んな種類の妖怪が出るって…」 さて、この事件…一体どのような事件なのか… では、こちらをご覧いただこう。 数日前の夜中、藤野原近くの住宅地… 交番勤務の警官が、自転車でパトロール中… 警官「…ん?」 人気(ひとけ)の無い道端に蹲った女が、すすり泣いている。 警官「あの、どうかしましたか?」 職務上、無視は出来ない。警官は、何かあったのかと自転車を止めて駆け寄ると… 女「大事なものを…失くしてしまって…」 警官「落し物ですか…で、何を失くされましたか?」 すると女は、それまで顔に宛がっていた両手を取り払って、警官に顔を見せた。 女「私の顔なんです…」 警官「うっ…!」 何と女の顔は、のっぺらぼう。 警官は慌てふためいて自転車に飛び乗り、その場から一目散に走り去った… 同じく藤野原近辺の、また別の住宅街… 1人暮らしの男が、残業を終えて帰宅した。 男「ただいま〜…って、誰もいる訳ないけどな…」 言いつつ部屋の電灯のスイッチを押すと、居間に人影があるではないか。 男「!?」 見ると小さく可愛らしい、和服を着た子供。だが、ここにいる理由がない。 男が目を擦ってから再び見てみると、その子供の姿は消えていた… この手の話が、ここ数日で数十件あるとか… 寺内たけこ「3人は、どう思う?」 高橋きよね「って、やっぱり気になる…って顔してるわね」 おんぷ「そう、何か引っ掛かるのよね…事件は藤野原周辺に限ってるし…」 まさみ「事件の内容は全て、日本の古典的な妖怪の目撃…」 深刻な顔で考える2人に対して、さやかは楽しそうに笑っていた。 さやか「のっぺらぼうが出た思たら、家ん中に座敷童子… もしかしたら、狸はんの悪戯かもしれへんな〜…あはは☆」 おんぷ「さやちゃん…?」 まさみ「狸はん…?」 その様子を不審に思う2人。他のクラスメイトの視線も集まるが、さやかはお構いなし。 さやか「あ、みんな知らへん?四国は、化け狸の話が多い事で有名なんやで。 うち、小学校の時、ちょっとだけ香川におった事あったさかい…」 まさみ「あたしは知ってたよ。さやちゃんのいた香川の坂出の近くなら、屋島狸だね。 あと、愛媛の刑部狸、徳島の金長狸、淡路島は…」 原こはく(さやか声)「ほへ〜…まさちゃん、よう知っとんな〜」 さやか「こはくちゃん、それ、うちの台詞…」 原こはく(おんぷ声)「てへっ♪」 さやかの声を出したかと思えば、今度はおんぷの声で切り返す。これには本人、少し呆れ気味。 おんぷ「もう…とにかく、さやちゃんは、この妖怪騒動が狸の仕業だって言いたいのよね?」 そう言って、おんぷはさやかの方を見た。さやかも首を縦に振った。 さやか「せやせや。狸はんが化かしたんやったら、全部説明つくやん」 まさみ「そんな安直な…」 おんぷ「さやちゃん、それ案外当たってるかもしれないわ。 私達みたいなのがいるんだから、狸が人を化かしたって不思議じゃないわ」 さやか「おぉ〜…狸はんも魔法使って化けるんか〜」 まさみ「何か話が飛躍してない…?」 加藤めい「じゃあ、狸さんって怒ってるのかな?」 おんぷ・まさみ「どういう事??」 加藤めい「だってダンプとかが、どんがらがっしゃん☆ってなっちゃうんでしょ?」 まさみ「…誰か訳してもらえる?」 ここで、眼鏡のズレをクイッと直したは、若槻つぐみ。 若槻つぐみ「藤野原では今、宅地開発が進められてて、かなりの数の建設車両が出入りしているわ。 そんな折、道路や崖から転落する建設車両が続出してるの」 どうやら、先程の加藤めいの「どんがらがっしゃん」は、車が転落するのを言いたかったらしい。 若槻つぐみ「そして事故に遭った運転手は、揃って同じような証言をしているそうよ…」 原こはく(運転手)「走ってたら、急に目の前に壁が出てきたのよ! それを避けようとしてハンドル切ったら、路肩に落ちちゃって…」 またも声色を変えた原こはくに、なぜか喜ぶ山県ともえ。 山県ともえ「あっ、ニュースに出てた、ダンプ運転してて落っこちたおばさんだ〜!」 阿部ゆきの「こはくちゃん、わざわざ再現せんでも良か…」 若槻つぐみ「でも現場検証では、そんな車の進路を遮るような物は見つからないの。 さあ、これをどう解釈しようかしら…?」 そう言って若槻つぐみは、おんぷ達に目をやる。 まさみ「運転手の証言に、さっきまで話題になってた妖怪っていう要素を合わせると…」 さやか「ぬりかべ〜♪」 塗り壁…夜道で道を塞いでしまうという妖怪で、とある漫画により知名度は高い。 さやか「せやけど、妖怪騒動の中に、塗り壁なんておったっけ?」 若槻つぐみ「ここ数日前から出始めたようね。他の妖怪からは少し出遅れてるわ」 さやか「ふ〜ん…」 何か、さやかの言動にも引っ掛かる…おんぷ・まさみは、顔を見合わせていた… その日の夜、テレビ局の控室… スタッフ「さやちゃん、お願いしま〜す」 さやか「は〜い!ほなな〜」 …パタン。さやかのみが走り去っていき、控室のドアが静かに閉まった。 まさみ「行ったね」 おんぷ「行ったわね」 残された2人は、さやかの姿が消えた事を確かめてから、話を始めた。 おんぷ「どう思う?」 まさみ「怪しい。藤野原の件に関して、さやちゃん何か知ってると思う」 おんぷ「まさちゃんも、そう思うわよね…」 まさみ「問題は、何を隠してるかだ…あたし達にも言わないなんて…」 おんぷ「ねえ、こんな事は考えられない?きっと藤野原には、本当に化ける狸がいるのよ。 そして人間に悪戯してるのを、何かの理由で、さやちゃんが知っちゃった… 学校での話でも、さやちゃんが狸に好印象を持ってるのは間違い無いわ。 そんなさやちゃんが、魔法で狸と話したりしてたら…どうなると思う?」 まさみ「狸の味方するのは、火を見るよりも明らかだね。 もし狸が住処を壊された恨みでの犯行だったら、さやちゃんも同情するに決まってる。 さては、あたし達に文句言われるのが嫌で黙ってたな…全く…」 おんぷ「それじゃあ、塗り壁の時の、さやちゃんの様子が変わったのは?」 まさみ「あの表情、何か予想外の事が起きたって顔だったな… 聞いても答える事は無いだろうし、突き止めるには本人が動くのを待つしかないかな…」 そして深夜… 夜空を駆ける、箒に座った1人のおジャ魔女…さやかである。 さらに、その遥か後方を音も無く羽ばたく1羽の梟がいる。 まさみ(梟姿)「やっぱり、藤野原丘陵に向かってる」 魔法で梟に化けたまさみの、フサフサの羽毛の中から、同じく魔法で小さくなったおんぷが。 おんぷ「そう…で、こっちに気付いた様子は?」 まさみ(梟姿)「全然。何しろ、こっちは音を殆ど立ててないし、かなり距離も置いてるから。 本当、梟って尾行には最適だね。まず、羽ばたいても音が静か。 それに目がいいから、距離を置いても相手の動向がよく分かる。 夜目が利く上に、さらには耳もいい。それに…」 おんぷ「それに?」 尋ねると、まさみは少し機嫌の良い声で答えた。 まさみ(梟姿)「あたしが化けた、北海道に多く生息する、この島梟(シマフクロウ)は、 コタンコロカムイ…村を守る神様として、アイヌの人達に崇められてきた。 そんな訳で、あたしの好きな鳥でもあるんだよね」 おんぷ「あら、そうだったの…でも、何だか神秘的よね… まさちゃんからの話でよく聞くアイヌの人達って、動物を神様だって信じてるのよね」 まさみ(梟姿)「動物だけじゃなく、太陽や水、風、草木…北海道の大自然、全てがカムイだよ」 おんぷ「もしかして、狸の神様も…?」 まさみ(梟姿)「アパサムウンカムイ…戸口の脇の神様。つまり、家の玄関を守る神様だね」 おんぷ「まあ」 微笑むおんぷに、話しながらも前方を注視していたまさみが報告した。 まさみ(梟姿)「さてと、お喋りはこのくらいにしとこっか。さやちゃんが地面に下りるよ」 おんぷ「それじゃ、私達も」 まさみ(梟姿)「了解」 高度を落としたさやかを追って、梟も木々の合間に滑り込んだ。 それから、しばらく飛んだ所… 森の中では、何と狸が集まって、何やら喋り合っているではないか。 狸「いや〜、あの人間の驚きようって言ったら!」 狸「ざまみろってんだ」 そんな集まりの中心に、木々の合間を縫って、さやかが空から降りてきた。 さやか「…っと」 途端に、狸達のテンションが上がる。 狸「おっ、さやか姐さん!」 どうやら、ここの狸とおジャ魔女とでは、話が通じるらしい。 狸「姐さん、お晩です」 狸「今夜もご機嫌宜しゅう」 しかし、さやかは挨拶してきた狸達に向かって、怒鳴り声一喝。 さやか「ご機嫌な訳あるかいっ!!」 いきなり怒られて、狸達は驚いた。 狸「どっ、どうしたってんです?さやか姐さん…」 たじろぐ狸達に、さやかはさらに捲し立てる。 さやか「どないしたも糞もあるかいな!誰や?塗り壁に化けてダンプ落っことした奴! 驚かすんはええけど、人に怪我させたらあかんって、あれほど言うたやないか! あんたらが人間に住処壊されたり、怪我させられたりしたんは分かっとる! せやけど、あんたらも仕返しに人間傷付けたら、人の事言えへんねんで! よう考えてみぃ!狸のせいで事故起こるなんて思われたら、どないなるか! あんたら猟友会に1匹残らず駆除されて、この森みんな建機で潰されんで!」 これには狸達、シーンと静かになった… さやか「…分かってくれたんやったら、もう塗り壁に化けるんは禁止な。 今度やったら、うちがしばいたるから覚悟しときや!」 ビシッと締めた所で、1羽の梟が音も無く舞い降りてきて… まさみ(梟姿)「なるほどね、そういう事だったのか」 狸「鳥…!?」 狸「この辺じゃ見ない奴だな…」 さやか「ちょい待って…この声は…」 するとポンっと音がして、見習い服のまさみが姿を現した。 それと同時に、同じく見習い服のおんぷも登場した。 さやか「おんぷちゃん!まさちゃん!」 狸「に、人間!?」 狸「って、その格好…さやか姐さんのお仲間ですかい」 狸「ビックリさせないでおくんなさいよ」 おんぷ「あら、それはごめんなさいね。てへっ♪」 毎度お馴染みの営業スマイルも、まさみはそこそこに受け流す。 まさみ「それはそれとして…さやちゃん、あたし達に何か言う事があるんじゃないの?」 皆まで言わずとも分かるだろう…そういう顔付きだった。 さやか「…黙ってて堪忍…ほんまに、ごめんなさい…」 申し訳無い表情を、さやかは力無く俯けた。 まさみ「分かればそれでいいから、顔上げなよ」 おんぷ「そうよ、元気の無いさやちゃんなんて、さやちゃんらしくないわ」 さやか「ほな…許してくれんの…?」 まさみ「許すも許さないも、まずは話を聞かせてもらってからだね」 そんな流れから、おんぷ・まさみに狸達が事の経緯を話し始めた。 狸「私達は、代々この藤野原に住んでる狸です」 狸「昔は俺らと人間、それぞれ持ちつ持たれつで暮らしてきたんだ」 狸「おいら達の縄張りの山で、人間が茸やら山菜やら取ってく代わりに、 ちょっとくらいなら、おいら達が畑から失敬しても大目に見てくれてたんだぜ」 まさみ「なるほど、里山か…」 集落と森林とが影響し合いながら共存する生態系は、一説には縄文時代から始まるともされる。 狸「人間が薪や炭焼きに使うくらいなら、木を切っても森は大丈夫だった…けど…」 狸「大きな機械や車をいっぱい持って来て、どんどん木を切り始めたんだ!」 おんぷ「開発が始まったのね…」 まさみ「高度経済成長による生活様式の変化で、里山は利用価値を失った。 石油と電気があれば、薪や木炭なんて使わないからってね… そんな人間の勝手な価値観で不要とされた里山は、宅地化で次々に潰された…」 深刻な表情のまさみの横から、さやかが口を挟む。 さやか「何や、説明せんでも知っとるやないか」 おんぷ「あら?さやちゃんは社会の授業で、こういうの習わなかった?」 まさみ「おんぷちゃん、さやちゃんは習ってても忘れてると思うよ」 さやか「…ほんまの事やから言い返せへん」 おんぷ・まさみ「おいおい…」 少し話が逸れたが、本題に戻ろう。 狸「そうして、藤野原は僕らにとって住みにくい所になってった…」 狸「花巻山に越してった仲間もいたけど…」 聞き覚えのある地名が出てきて、おんぷは反芻した。 おんぷ「花巻山…って…!」 すると案の定、さやかが顔を落とした。 さやか「せや…お母ちゃん達の溜まり場や…」 狸「あそこは飛島峠に毎晩走り屋が集まって、うるさくて堪ったもんじゃない」 以前にも話に出たが、さやかの母・静香は、飛島峠を縄張りとする走り屋だ。 狸「騒がしいだけなら、まだいいさ…轢かれた奴だって、1匹や2匹じゃないんだ…」 狸「それにのぉ、あそこには小さな沢が1本しか無いんじゃ。 たくさん飲み物がある人間と違って、儂らは自然の水が無いと生きられん… 藤野原の狸がみんな花巻山に移れば、向こうの山が駄目になり、いずれは儂らも飢える…」 狸「かと言って今のままの藤野原じゃ、どっちにしたって死んじまう!」 狸「それに俺らだって、やられっ放しじゃ悔しいんだ!」 狸「風の噂では、多摩の方の狸達は化け学を駆使して、人間に不可思議な現象を見せ、 狸に対する畏怖を引き出そうとした…という事じゃ」 さやか「あ、化け学ってのはな、この狸はん達が人間を化かす技の事でな… まあ、早い話が、うちらの魔法みたいなもんやな」 狸「で、その話は人間の間でも噂になって、かなり有名になったってさ。ねえ、さやか姐さん」 さやか「2人とも、狸が化けて人間とやり合うアニメ映画あったん、知っとるやろ?」 まさみ「そりゃ、知ってはいるけど…」 おんぷ「あれ、本当の話だったの…?」 さやか「ま、噂が噂呼んで、終いには映画にまでなってもうた…って所やろな」 狸「それに倣って、おいら達も一丁やってみようって事になってさ」 狸「妖怪騒動を始めて少しした頃に、さやか姐さんに見つかって、意気投合しちまって…」 まさみ「あたし達にバレて今に至る…って訳か」 さやか「そういう事っちゃな」 狸「さて姐さん方、そろそろ答えを聞かせてもらいやしょう!」 狸「さやか姐さんと一緒に、おいら達の手助けしてくれるのか、してくれないのか!」 狸「答えによっちゃ俺ら、おんぷ姐さんとまさみ姐さん、このまま帰せなくなっちまう…」 これには、おんぷ・まさみ共に、顔を見合せてから… まさみ「答えは…」 おんぷ「Yes♪」 その瞬間、さやかも狸達も大いに沸きたった。 さやか「よっしゃあ!おんぷちゃん、まさちゃん、おおきにな!」 おんぷ「だって、断る理由も無いじゃない」 まさみ「あたしも、自然が無くなってくのを、黙って見てるのは忍びないからね。それに…」 おんぷ・さやか「それに??」 狸「何です?まさみ姐さん」 狸「勿体ぶらねぇで、聞かせておくんなせぇ」 おんぷ・さやか、さらには狸達の注目が集まる中… まさみ「この藤野原丘陵の区画整理と宅地造成計画については、人間の中でも揉めてるんだ。 自然環境を破壊するという見方は勿論、山を削る事で崖崩れの可能性を高めてるとか、 工事車両の騒音問題や、住民の了解の無いまま工事が開始されたって意見も出てる。 市民団体からの苦情も多くて、大空市議会は紛糾してるらしいよ」 最後に出た漢語が分からず、さやかはおんぷに尋ねる。 さやか「ふんきゅー…って何?」 おんぷ「ごたごた揉める事よ」 狸「へぇ…人間の間でも、色々とあるんですねぇ…」 まさみ「だから、その人間同士の争いを上手く収めれば、もしかしたら開発計画も…」 狸「そうか!つまりは計画を、おじゃんにしちまえばいいんだ!」 まさみ「そういう事♪開発計画については、あたし達で裏を取っとくから、 狸さん達は、人に怪我をさせない程度に妖怪騒動やってなよ」 さやか「そっちの監督は、うちに任しといてや!」 おんぷ「じゃあ、明日にも私達は…」 まさみ「うん、若槻さんに情報を集めてもらおっか。それと、お爺ちゃんにも声掛けとくよ」 翌朝、酒井家… 洞爺「ほほう、妖怪騒動の原因は化け狸とな…そんな滑稽な事がのぉ…」 七恵「確かに今時、お狸様なんて言う人は殆どいませんからね」 まさみ「それでさ、藤野原の開発について調べてみようって事になってさ… お爺ちゃん、何か知ってる事とかある?」 洞爺「そうじゃなぁ…まさみ、西坂市議会議長は知っておるな?」 まさみ「えっ…!?もしかして、大空市議会の西坂さんの事?」 洞爺「そうじゃ。藤野原の宅地化事業計画には、西坂議長とその近親者が名を連ねておってのぉ、 事業反対派からは汚職や癒着の疑いが叫ばれておるが今の所、証拠は何1つ無い…」 まさみ「それって…!」 ハッとするまさみに、洞爺はニヤリとした顔を向けた。 洞爺「叩けば埃が出るかも知れんぞ」 七恵「まあ、あなたったら自分で調べても何も出ないからって、まさみに調べさせる気ですね? まさみと、おんぷちゃん・さやちゃん、3人の不思議な力で…」 洞爺「何じゃ何じゃ、まるで儂が手を抜いておるような口振りじゃな…」 まさみ「ふふっ…」 洞爺「まさみまで…何が可笑しいんじゃっ」 顔を蛸のように赤くする洞爺。 まさみ「とにかく、西坂議長を中心とした藤野原開発事業の関係者を洗ってみろって事でしょ?」 洞爺「分かっておるじゃないか…じゃが、くれぐれも油断するでないぞ。相手は大物じゃ」 まさみ「うんっ!心して掛かるよ!」 同日放課後の遠近学園、コンピューター室内にカチカチと軽快なクリック音が… 椅子に座っているのは、若槻つぐみだ。 若槻つぐみ「酒井さんも、面白い情報を持ってきてくれたわね…」 まさみ「こりゃどうも♪」 椅子の背凭れに組んだ腕を乗せながら、背後のまさみが笑って返した。 若槻つぐみ「…ざっと、こんな所かしら?藤野原丘陵宅地開発プロジェクトのメンバー」 デスクトップの画面には、市議会議員や土木事業者の顔写真と、 肩書や経歴といった、詳細なデータが所狭しと並んでいた。 さやか「ほへ〜…こないなデータ、どっから拾ってくんねんな、ほんま…」 まさみと共に、若槻つぐみの後ろで作業を見ていた、さやかが感嘆していた。 無論、まさみがいて、さやかもいれば、やはりおんぷも。 おんぷ「あっ、この人ね。西坂市議会議長」 画面を指差して、おんぷは言った。 さやか「このおっさんは…石松建設社長?ああ、工事やっとる土建屋かいな」 若槻つぐみ「西坂・石松の両氏は、何でも高校の同期だそうよ。 そして前々から石松建設は、市の公共事業を多く請け負っているわ…」 まさみ「同期の誼で、西坂議長が手心を加えてるってか…!」 声からも分かるが、まさみの機嫌が次第に悪くなっていっている。 さらには若槻つぐみが、それを駄目押ししてしまう。 若槻つぐみ「プロジェクトの若手メンバー、笹井市議…彼、超大物がバックに付いてるわ」 クリックして出てきたデータに、おんぷ達は食い入り、そして驚愕した… おんぷ「嘘っ…」 さやか「ちょっ、待ってや…」 若槻つぐみ「金村衆院議員、元国交省副大臣…笹井市議の伯父に当たり、典型的な建設族議員… おそらく笹井市議は、西坂・石松両氏と金村議員の橋渡し役なのね…」 バンッッ!! 突如、静穏な空気を震わせた、何かを叩きつけるような打撃音。 それまでパソコンの画面に合わせて屈んでいたまさみが、背を起こして、 背後の壁に握り拳を、まるで鉄球クレーンのように振り下ろしたのだった。 まさみ「面白いじゃないのさ!市議と業者、さらには族議員まで繋がってるってのか! 狸の山を壊してんのが人間の恰好した古狸たぁ、ちゃんちゃら可笑しいや!」 大笑いするまさみだが、その目には怒りの感情が秘められていた。 そんな険悪な空気を肌にヒシヒシと感じ、おんぷ・さやか・若槻つぐみは冷や汗を流した。 まさみ「ちょっとでも疾しい所があるなら、この開発計画…ぶっ潰してやる!!」 数日後、西坂議長の事務所… 西坂「そうだ、明日は石松社長と金村先生との会合だったな。何時だった?」 秘書「大空プリンセスホテル内の料亭『砧』で、19時からですね」 西坂「そうだった、そうだった」 秘書「先生、今日はこの後、市の広報誌の取材が入ってます。そろそろ出ませんと」 西坂「おっと、すまんな。じゃ、支度しよう」 秘書と共に、西坂は部屋から去っていく。そこに、どこからともなくポンっと現れたのは… まさみ「…っと。魔法で不法侵入しちゃった。で、明日の夜に古狸が3匹集まるってね… 精々、料亭で踏ん反り返ってればいいや。目に物見せてやるんだからっ」 そしてまさみは、お邪魔したついでに、さらにとんでもない事を。 まさみ「したっけ、あとは不正の証拠品を魔法で拝借、っと…」 翌日夕方… おんぷ・さやか「嫁入り行列!?」 狸「狐の嫁入りならぬ、狸の嫁入りですかい?」 狸「まさみ姐さん、上手い事考えるねぇ」 まさみ「こいつはどうも。行き先は、大空プリンセスホテルの中の料亭『砧』だよ。 そこで飲んだくれてる古狸を一丁、化かしてやるんだよ。 その途中、街中を練り歩いて、みんなの度肝も抜いてやろうよ。 それと、これは狸の仕業なんだって、一目で分かるようにしないとね。 全員、顔には狸の面、お尻には尻尾を出す事…おんぷちゃんもだよ」 おんぷ「え〜っ…」 以前からこういうのは、あまり気が進まないおんぷ。だが結局、まさみに押し切られる。 まさみ「恥ずかしがらない、つべこべ言わない」 おんぷ「は〜い…」 狸「でも、主役のお嫁さん、一体誰が化けるのよ?」 狸「雌狸の一番べっぴんな奴だろ?」 狸「いやいや、やはり総大将は、さやか姐さんでしょう」 狸「この妖怪騒動を初っ端から仕切ってた、さやか姐さんが適任だぁ」 おんぷ「じゃ主演は、さやちゃんに譲ろうかしら」 まさみ「あたしも、付き人でいいや」 さやか「ほんま?うちで、ええの?よっしゃあ☆」 おんぷ「というより、結婚相手が狸だなんて、私ちょっと…」 まさみ「…同感」 さやか「あ、そういう事かいな…」 こうして花嫁役は、さやかが演じる事になった。 さて、役柄も決まった所で、化けるとしよう。 おんぷ「プ〜ルルンプルン・ファ〜ミファ〜ミファ〜!」 さやか「プレサ〜リラティ〜・ペレナ〜エルプラノ!」 まさみ「ポクセル〜カソペ〜・トワラ〜エクセルス!」 おんぷ・さやか・まさみ「狸の嫁入りになれ〜っ!!!」 3人は魔法で狸達と共に化けて、嫁入り行列を仕立てた。 これで準備万端。一行は藤野原の丘を降り、夜半の大空市街に繰り出した。 白無垢に身を包み、文金高島田に綿帽子を被った、花嫁のさやか。 傘持ちに化けた狸が掲げる猩々緋の唐笠の下、花嫁の手を引く、付き人のおんぷ。 袴に裃姿で、腰の大小をいつでも抜けるように指を鍔に掛けている、護衛のまさみ。 法被の男衆に化けた狸達は、籠・長持・荷車などで嫁入り道具を運んでいる。 そんな華麗な行列が、ネオンサイン煌めく道路のど真ん中を悠々と、そして堂々と行進していく。 車や信号などは、お構いなし。車は戸惑い、路肩に寄せて停車する。 そして沿道を行く人々は、物珍しい光景に只々、目を瞠り騒ぎ立てる。 観衆「何これ?お祭りか何かの行列?」 観衆「今日って、こんなイベントあったか?」 観衆「ねえ、あれ見て!全員、狸の尻尾が出てる!」 観衆「嘘〜!?じゃあこれ、狸が化けてるの?」 観衆「そう言えばこの行列、藤野原の方から来たよな?」 観衆「藤野原の方で妖怪が出るって噂、あれがこっちまで来たってか!」 観衆「あの妖怪って、みんな狸だったのかよ!?」 次第に野次馬が集まり出し、そして面白がって歩道を並んで付いてくる。 携帯のカメラで写真を撮ろうとする者も。さらには騒ぎを聞き付けて、報道陣までが。 アナウンサー「ご覧下さい!大空街道を狐の嫁入りならぬ、狸の嫁入り行列が闊歩しております! 新しい祭りか、はたまたデモ行進か、詳細は依然として分かっておりません!」 だが流石に、これを警察が放っておく訳がない。 次の十字路交差点には、行列を遮るように警官隊が陣取っていた。 警官「こちらは大空警察署です!道路の不法占拠をやめ、速やかに解散しなさい! あなた達の行為は、道交法違反となります!繰り返します!直ちに解散しなさい!」 十数台のパトカーでバリケードを張り、スピーカーで声を張り上げる警官。 沿道の観衆からは、残念そうな溜息と共に、ブーイングが警察側に飛ぶ。 狸「まさみ姐さん、お巡りが来ましたぜ」 1匹の狸が、まさみに小声で言った。 まさみ「よし、これは想定内。じゃ、段取り通りに…」 警官隊と対峙する狸達。そこに行列中程から、まさみが声を上げた。 まさみ「先様にお尋ね申す!何故、我らの行列を妨げなさるのか?ご返答いただきたい!」 警官「先ほどから言っているように、あなた達の行為が違法だからです! 集団で公道を不法に占拠し、他の車両に迷惑な行為はやめ、早急に解散しなさい!」 まさみ「なるほど…そちらの言い分、分かり申した」 しかし、まさみは再び警官隊に向かって声を張り上げる。 まさみ「しかしながら、そちら様が仰る『法』というものは、人間様に当て嵌まるものであって、 我々、狸には縁の無いものと存ずる!いかが思われるか!」 警官「なっ…」 これには狸からも、そして観衆からも、やんややんやの大歓声。 狸「そうだそうだ!」 狸「人間の法など、俺らの知った事か!」 観衆「いいぞ〜!」 観衆「もっと言ってやれ〜!」 まさみ「よって我ら、罷り通る!邪魔立て致すならば押し通る!」 警官「何を〜…構わん!確保〜!」 その瞬間、辺り一帯を煙幕が襲う。 警官「うっ、何だこれは…あっ!?」 煙が晴れた頃には、もう行列の影も形も無い。沿道の野次馬も、行列を探して周囲を見回す。 その一方で、当の行列は丁目を1つ違えた通りを、悠然と練り歩いていくのだった… その後も何度か悶着を起こしたりしつつも行列を進め、一行は大空プリンセスホテルに到着。 おんぷ「さあ、本陣に到着でございますよ」 さやか「おおきに」 その荘厳な花嫁衣装を途端に遠巻きに見ていた野次馬から、感嘆の声が上がった。 観衆「あれが花嫁か〜」 観衆「狸も、よく化けるな〜」 観衆「ん?あの花嫁の声、何となく西郷さやかに似てないか?」 観衆「おっ、言われてみれば!」 観衆「そう言えば、傍の女の人の声も、瀬川おんぷちゃんに似てるかも」 観衆「なら、あっちの侍の声は、酒井まさみだろ!」 観衆「あの狸の面を取ったら案外、本物だったりして」 観衆「狸も人間も、好みは同じって事か」 そんなざわめきにも、きちんと演技で対応。 まさみ「沿道の方々が、あのような事を申しておりますが…」 さやか「構しまへん。言わしときなはれ」 おんぷ「本日は祝いの日にて、無礼講ですから」 そしてホテルのロビーに足を踏み入れると、慌てた様子の支配人が駆け寄ってきた。 その後ろには、従業員達が不安そうな顔で集まっている。 支配人「い、いらっしゃいませ。お、恐れ入りますが、お客様は一体どのようなご用向きで…?」 その頃、騒動の真っ只中であるホテルの本館から離れた、和風庭園の中にある料亭「砧」… 西坂市議長・石松建設社長・金村衆院議員が、座敷で宴を催している。 石松「何ですかな?向こうが騒がしいようですが…」 金村「うむ、少し気になるな…ちょっと様子でも見てくるか?」 西坂「まあまあ金村先生、どうせ大した事じゃありませんよ。さ、さ、もう一杯」 そこに、西坂の秘書が血相を変えて、座敷に飛び込んできた。 秘書「せっ、先生!」 西坂「何だね、騒々しい…」 秘書「ここのホテルに、狸の嫁入り行列が現れたとかで大騒ぎに…!」 石松「狸ぃ?」 金村「何だいそりゃあ?」 西坂「君ねぇ、今いい気分なんだよ。邪魔しないでくれ」 ほろ酔いの3人に、秘書は声を荒げる。 秘書「そんな事仰ってる場合じゃありません!野次馬とマスコミも押し寄せてるんですよ! 先生方3人が集まっているのを週刊誌にでも載せられたら、面倒な事になります!」 これには流石に酔いも冷めたようで、顔を見合わせた。 石松「それは、まずいですな…」 西坂「談合が知られては、金村先生の御身に…」 金村「それは君らも同じだろう…よし、今夜は早めに帰ろう」 しかし、そうは問屋が卸さない。 さやか「今日はお祝いどすさかい、町のみんなも盛り上がっていきましょか」 支配人の相手もそこそこに、狸の行列は沿道の観衆をも引き連れて、和風庭園の散策に出た。 そして料亭の、見晴らしの良い部屋の中に、お客を見つけて声を掛ける。 まさみ「おっと、これはこれは羽振りの宜しい、お大尽様方で」 このお大尽様達こそ、西坂・石松・金村の3人である。 おんぷ「今夜はおめでたい嫁入り、どうぞ祝ってやって下さいな」 西坂・石松・金村「???」 秘書「先生方!これが、さっき申し上げた狸の行列です!」 すると観衆の中の1人から、大声が出た。 観衆「あっ!市議会の西坂議長だ!」 観衆「それに、石松建設の社長じゃない?」 観衆「マジかよ!国会議員の金村だぜ!」 観衆「凄ぇ〜!本当に密談って、料亭でやってやがるんだ〜!」 西坂・石松・金村「〜〜〜!!!」 もう、こうなったら騒ぎは止まらない。 狸の嫁入り行列を追ってきたマスコミも駆け付けて、カメラのフラッシュが眩しく焚かれる。 記者「金村議員!一体これは、どういう事ですか!」 記者「西坂議長!ここの経費はどちらから出てますか?まさか公金では?」 記者「石松社長!西坂議長との癒着疑惑がありますが、それについては…」 マスコミに取り囲まれ、もう3人は帰してもらえない。 野次馬も集って、料亭の周りは上を下への大騒ぎ。 その間に、嫁入り行列は跡形も無く消え去っていたという… さらに後日… テレビ「本日発売の週刊春風に、大空市藤野原開発事業での不正を裏付ける記事が掲載され…」 石松「なっ、何という事だっ…!?」 テレビ「週刊春風に寄せられた、匿名による内部告発資料によると…」 西坂「あの資料が、なぜ…ここに現物があるのに…!?」 テレビ「先日、西坂・石松両氏と、大空市内で密談を交わしていたという金村衆院議員ですが…」 金村「もう終わりだ…もう破滅だ…!」 そして、遠近学園… 加藤めい「ねえねえ、みんな聞いた?」 山県ともえ「藤野原の開発が、見直しになるんだって!」 近衛まろん「ええ、聞いたわ。おんぷちゃん達からね」 加藤めい「な〜んだ〜…」 山県ともえ「つまんないの〜…」 拍子抜けした2人は、揃って不貞腐れる。 清浦けごん「それにしても、あの内部告発って、まさか…」 そのまさかで、おんぷが笑顔の目線を、告発の張本人に向ける。 おんぷ「そう。あれは、まさちゃんが♪」 回想… まさみ「したっけ、あとは不正の証拠品を魔法で拝借、っと…」 回想終了… さやか「ようやるよな〜、事務所に忍び込んで、料亭で密談する予定聞いたついでに、 あくどい工事の証拠書類、一切合切コピーしてきてまうんやもん…魔法使こて♪」 ニヤニヤ笑いながら最後の一言を、まさみの耳に囁いてやった。 まさみ「そのまま持ってきたら、無くなったって騒がれるからね。 気付かれないように事を進めたくて、チョチョイとさ」 おんぷ「まさちゃんも、少し悪い子になってきたわね♪」 これには少し気まずくなって、まさみは肩を窄めた。 まさみ「あたしの正義は、時に暴走しちゃうからね…」 さやか「ま、あんなおっさん相手やったら、暴走してくれるくらいが丁度ええん違ゃうか?」 まさみ「もう!言ってくれるんだからっ」 西園寺ひなげし「私も行列を撮影させてもらいましたけど、見事なお手並みでしたわね。 行列で人目を引き付けたのは、世論(よろん)を高める狙いだったんですね」 まさみ「その高まった世論(せろん)を、一気に不正にぶつける…面白いくらい上手くいったよ」 ここらで、さやかに疑問が生じたようで、まさみに断ってから質問。 さやか「まさちゃん、水差してまうけど…『せろん』やないやろ、『よろん』やろ」 おんぷ「あら、どっちでもいいのよね?ニュースとかでも、両方聞くわよ」 すると、またまたこの人が眼鏡のズレをクイッと直した。 若槻つぐみ「これを見てもらえる?元々は『せろん』と『よろん』は別の字を当てたのよ」 そう言って見せてくれたモバイルPCの画面には「世論」「輿論」の文字が。 若槻つぐみ「本来の『よろん』の字は右側。でも『輿』って字が難しいでしょ? この字は当用漢字の字数制限で、一般的には使われなくなってしまったの。 そこで簡単な字のため制限されなかった、世論の『世』の字が代用されたのよ。 それ以来、『せろん』も『よろん』も同じ字になってしまった…という訳ね。 尤もパソコンの普及した現在、当用漢字の字数制限なんて、あまり意味無いけど」 まさみ「意味の上での厳密な違いは、世論は民衆の意見、輿論は公的な意見。 これだって今となっては、ごっちゃにされてるけどね」 それを見つめる、大隈しのぶ・桂うたよ・松方すざくの3人… 松方すざく「今日も、やっとりますなぁ」 大隈しのぶ「え〜っと、せろんがよろんで、よろんが…」 桂うたよ「ふふっ、しーちゃんも流されてきてる」 松方すざく「京都みたいに、自然と歴史と現代文明と、上手く折り合いを付けとる町もある… この一件で藤野原も、少しはええ方に向かうと、めでたしめでたしどすなぁ」 大隈しのぶ「それを、おんぷちゃん達がやったんだとしたら…凄いよね」 桂うたよ「凄いし、不思議よね。あの3人…」 そこに、大騒ぎしながら駆け込んでくる女子が… 東久邇なるみ「皆さん、お聞きになりました?」 寺内たけこ「藤野原の話なら、もう聞いてるわよ」 東久邇なるみ「それとこれとは別の話ですわ!」 一瞬ザワッとなって、おんぷ・さやか・まさみの目の色も変わった。 おんぷ「じゃあ、何の話?」 さやか「ええから早よ聞かせてや!」 まさみ「なるべく端的に、そして確実にね」 そして、これを見つめる、遠巻きの方々… 大隈しのぶ「あ〜あ、また始まった」 桂うたよ「またしばらく、騒がしくなるわね」 松方すざく「これでまた、何かが面白おかしく動き出しますなぁ…」 秋の深まる山中で、狸達の憩う今日この頃… 次回予告 まさみ「ひょんな所で出会った、4人の男子…」 さやか「うちらの事、いきなりナンパしてきよるし…」 まさみ「いけすかない上に、強力な魔力を感じる…」 さやか「…あれ?そう言えば、おんぷちゃんは?」 おんぷ「次回、おジャ魔女おんぷTriple‐S(トリプル・エス) 『魔法合戦!さやかとまさみと美少年!?』2人とも、早く私を助けに来て〜」 さやか「おんぷちゃん…台詞めっちゃ棒読みな気がすんねんけど…」 まさみ「とりあえず、ポクセルパトレ〜ヌ…」 39話端書き 確かこれを最初にネタ帳に書いた時は、金曜○ードショーでぽんぽこやってましたねw はい、周囲の影響が諸に駄文に出てしまう筆者であります… とにかく、化け学と魔法を同類項で扱ってみたかったってだけですね… 藤野原という地名について… 大空市内の地名は、どれみさん達の名前から取ったり捩ったりしてるんですよね。 春風台緑地・武蔵妹尾・音瀬川・飛島峠・花巻山…ようやく最後に出てきたのが、この藤野原。 もうお分かりの通り、藤野原から野を取れば…皆までは言いません(汗) さて、人間の古狸(笑)の密会現場、大空プリンセスホテル内の料亭「砧」… ホテル名の元ネタは、もう有名すぎますのでね。 料亭の名前、実は「きぬた」と読んで「たぬき」と掛けてたりします。 何と、真面目堅物なまさみが、不正の証拠を掴むために、不法侵入と窃盗…!? まさみ「あたしの正義は、時に暴走しちゃうからね…」 これも、相棒シーズン6の再放送を見ながら書いてた台詞でしたw 「杉下の正義は、時に暴走するよ」っていう、小野田官房室長の台詞ですね… この時は、真犯人宅を違法令状で強制家宅捜索してましたから… 次回も、何やら凄まじい事になりそうですね。 ナンパしてくる美少年4人組…もう想像ついてしまいましたよね。 そうです、本編でもかなりの期間出続けた、あの4人組を出してしまいます…!