1年C組の教室… 
西園寺ひなげし「もうすぐ生徒会長選挙…新聞部員としては気の抜けない時期になりましたね…」 
その呟きが、まさみの耳に聞こえてくる。 
加藤めい「ねえニュース見た?また怪盗ウィッチが出たんだって!」 
そんな話声までもが、まさみの耳に入ってくる。 
まさみ「ふうん…」 
 


『踊るまさみの事件簿3!事件は続くよどこまでも!?』
米内みつえ「あの…」 ふと、まさみに声をかけてきたのは、米内みつえだった。 まさみ「みっちゃん?」 入学から半年も経てば、皆だいぶ親しくなって、愛称が付いたクラスメイトもいる。 米内みつえも例外ではなく、下の名前から「みっちゃん」と呼ばれるようになっていた。 さやか「どないしたん?」 席が隣接しているのと、面白そうな事になら何でも首を突っ込む性格もあって、さやかが割り込む。 しかし、元々さやか・まさみ、それにおんぷにも用があったようで、構わず話が進む。 米内みつえ「いつもは私がお世話を焼いてるけど、今日は逆にお世話になりたいの…」 おんぷ「もしかして…Triple‐Sのお悩み相談?」 米内みつえ「ええ、そうなの」 これには、さやか・まさみも顔を見合わせた。 さやか「ほへ?いつもやったら、そんなん自分で占ってまうやろ…?」 まさみ「どうやら、事は重大そうだね…とにかく、聞かせてみてよ」 米内みつえ「実はね…うちの部長が生徒会選挙に出るって言い出したの…」 これを聞いた時おんぷ・まさみは、いまいち事が分からなかったが、さやかだけは理解して驚いた。 さやか「はるひ部長が!?」 あまりの大声に、さやか以外の面子は、たまらず耳を塞いだ。 おんぷ「さやちゃん、声、声…」 さやか「あ…堪忍な…」 まさみ「それで、何なの?はるひ部長って…」 するとTriple‐Sの味方の1人・若槻つぐみが割り込んできて、勝手にデータを読み上げてくれた。 若槻つぐみ「2年E組の『堤谷(つつみや)かすが』先輩。オカルト研究部の部長さんよ。       西郷さんが『はるひ部長』と言うのは、漢字を読み間違えてるから…       春の日と書いて『かすが』と読むのを、そのまま『はるひ』と読むと思ってるの」 これを聞いて、まさみは手帳の1ページに「春日」と書いてみて、それを見て笑った。 まさみ「なるほど、これを『はるひ』って読んだのか…さやちゃんらしいや」 さやか「ほへっ!?『はるひ』読むん違(ちゃ)うの?しかも何や、うち馬鹿にされとる…?」 若槻つぐみ「ちなみに堤谷先輩は、中等部で一二を争う変人として有名よ」 おんぷ「変人って、どんな風に変なの?」 さやか「2人とも知らんの?はるひ部長の有名な口癖…」 すると背後から、ある声が聞こえてきた。 ???「魔女とか魔法使いに知り合いがいたら、私の所に出頭させなさい!」 米内みつえ「部長!?」 さやか「この超ぶっ飛んだ台詞!はるひ部長や!」 しかし、こういう展開の場合、振り返るとそこにいるのは… 原こはく(かすが声)「…何よ。在り来たりの人間は、興味の対象外よ」 まさみ「やっぱり、はくちゃんか…」 おんぷ「そ、そういう声なんだ…堤谷先輩って…」 お馴染みの展開に、おんぷは苦笑いし、まさみは頭を抱えた。 若槻つぐみ「ね?常に、こんな調子の人なの…変人と噂されても、おかしくないでしょ?」 さやか「噂も何も、もう十分に変人やって…」 米内みつえ「こんなお騒がせ部長が、今度は生徒会長選挙に出るって高らかに宣言したのよ!       部長の行動は、いつも私の占いのレベルを遥かに逸脱してるの!       きっと今度も何か…いいえ、絶対に何か悪い事が起こるわ!」 なぜか急にテンションが上がってきた米内みつえ…これは対応に困る。 まさみ「あ、あの〜…」 さやか「みっちゃんも随分とハイやな…」 おんぷ「オカルト部ってみんな、こんな調子なのかしら…」 ここで思い出されるのが、堤谷かすがのキャラクター。こんなキャラが、どこかにいたような… おんぷ「漫画かアニメのキャラで堤谷先輩みたいな人、いたような気がしたんだけど…」 まさみ「…そういうの、あたしに振らないでくれる?あたしが分かる訳ないしょや…」 このネタは、あまり深入りしないでおこう… とりあえず、堤谷かすが部長という危険人物が選挙に出ようと言っているのを、止めようという事だ。 そこで、選挙という事で選挙管理委員会からも話を聞いてみる事になった。 おんぷ達3人が放課後に訪ねてみると、今野という2年生の男子委員が応対してくれた。 今野「そうか、かすがの噂を聞いてきたのか…あいつを止めるのは一筋縄じゃいかないぞ」 さやか「ほへ?あいつって…」 おんぷ「もしかして今先輩って、堤谷先輩の事よく知ってるんですか?」 何やら、この今野という選管の先輩、堤谷かすがに詳しい様子… 今野「知ってるも何も、小学1年から常に同じクラスの、幼馴染みだ…」 まさみ「随分な腐れ縁…」 さやか「それって、ある意味悲惨やな…」 だが、おんぷだけは少し反応が違って、小学校時代の同級生2人を思い出していた。 おんぷ「(何だか、どれみちゃんと小竹君みたい…)」 今野「そんな訳で、あいつがどれだけ危険かは、俺が一番よく知ってる。    あいつが選挙なんてやってみろ…ルールなんて糞くらえな選挙戦やらかすぞ…    かと言って幼馴染みの俺ですら、あいつを止める自信は、正直言って全く無い。    あの自己中の塊は、誰が何言ったって馬の耳に念仏だからな…    本当は選管としちゃあ、こんな弱音吐いてられないんだけどな…はぁ…」 まさみ「ルールなんて糞くらえ…だって…!」 どうやら、この言葉がまさみの闘志に火を点けたようだ。 まさみ「今野先輩…要は、無視も言い逃れも出来なくすればいいんですよ」 今野「…へ?」 まさみ「堤谷先輩の選挙戦、あたしに取り締まらせてもらえませんか?     向こうが無法な選挙戦をやるってなら、こっちは公選法を徹底遵守させます!     校則よりも、法律の方が説得力ありますからね…」 いよいよ、3年の現生徒会長の引退に伴う選挙が始まった。 後継に立候補したのは、2年の元副会長と、問題の堤谷かすが。 大抵、この手の選挙は候補者1名の信任投票であるが、 今回は堤谷かすがも出馬したせいで、一騎打ちとなってしまった。 そして選挙活動初日の朝から、何やら騒動の気配が… 堤谷かすが「生徒会長には堤谷かすが!堤谷かすが以外に票を入れたら承知しないわよ!」 登校してきた生徒に向かって、校庭でスピーカーを使って演説…と言うより命令に近いが… 一般の生徒達が面白がって集まっている横を通過するまさみと、まさみの隣でニヤつく今野。 今野「かすが、今回の選管は一味違うぞ。何しろ俺じゃなく、この子が仕切ってんだからな」 堤谷かすが「コン…」 どうやら選管の今野は、堤谷かすがには「コン」と略して呼ばれているようだ。 堤谷かすが「何よ、あんな子に鼻の下伸ばしちゃって!このロリコン!」 今野「誰がロリコンだっ!!」 まさみ「先輩、行きますよ」 今野「お、おい、何か言ってやらなくていいのか?」 すると不敵に微笑んだまさみ…無論、手を拱いている訳がなかった。 校舎に入ってから、まさみは… まさみ「ひなちゃん、はくちゃん、お願いね」 西園寺ひなげし「はい。新聞部と写真部は、わたくしが」 原こはく(ひなげし声)「放送部の方は、わたくしが」 まさみ「はくちゃん…そういう紛らわしい事しないで。ひなちゃんが2人いるかと思った…」 2階の廊下の窓から堤谷かすがを見下ろしながら、クラスメイト2人に指示を出したまさみ。 その様子を見ていた今野が、まさみに訪ねた。 今野「何をしようって言うんだ?」 まさみ「公選法140条の2第2項曰く『学校及び病院、診療所その他の療養施設の周辺においては、     静穏を保持するように努めなければならない』…明らかに違反です」 今野「…確かに。生徒会の選挙でスピーカー持ってきた奴は、あいつが初めてだろうな」 まさみ「それに、同じく公選法140条の2第1項で許されている街頭演説の時間は、     午前8時から午後8時まで…現在時刻は午前7時47分、これも違反です」 今野「かすがの奴…こういう事になると、いくらでも早起き出来るからな」 まさみ「それでさっき、新聞部・写真部・放送部にお願いしたんですよ。     証拠写真と証拠映像を、向こうに気付かれないように撮ってほしいってね」 静かに微笑むまさみに、今野の表情も明るくなった。 今野「おお!これなら、あいつも言い逃れ出来ないな!」 まさみ「でも…まだまだ、これからですよ♪」 校舎内、選挙ポスター掲示板…堤谷かすがのポスターが、縦横無尽に張り巡らされている。 まさみ「『ポスターの掲示場ごとに公職の候補者1人につきそれぞれ1枚を限り掲示するほかは、      掲示することができない』…公選法第143条の3及び4の違反!」 すぐさま、まさみは指揮を執った。 まさみ「写真部・新聞部・放送部、証拠撮って!」 各部の部員達が、一斉にカメラを向けた。 まさみ「撮り終わったね?科学部とコンピューター部、回収して指紋採取!」 すぐさま、自分達の指紋を付けないように手袋をした科学部員達が、ポスターを剥がし始めた。 それにしても、なぜ科学部が…その答えは、こんな所にあった。 まさみ「ありがとね、岸君。科学部に簡易指紋採取セットあるって教えてくれて」 岸「いやあ、こんな事でもないと使う機会がないからさ」 1年C組の男子・岸は科学部所属。その彼に、まさみが応援を要請していたのだった。 若槻つぐみ「採取した指紋とオカルト研究部員の指紋との照合は、私達に任せて」 まさみ「つぐみちゃんも、協力ありがと。堤谷先輩の指紋が出たら、すぐ教えて。     本人の指紋が出れば、下っ端部員のせいにして蜥蜴の尻尾切り…なんて事は出来ないからね」 若槻つぐみ「了解しました!」 こうして、科学部とコンピューター部が大量のポスターを回収していって… まさみ「…よし。規定通り、候補者のポスターは1人1枚♪」 どんなに違反をしていようと、立候補者には変わりない。 まさみは、ポスターをしっかり1枚だけ残しておくのだった… さらに、1年C組の教室…まさみの元に、米内みつえが駈け込んできた。 米内みつえ「た、大変な事を聞いちゃった!部長が、部長が…」 まさみ「まずは落ち着いて…で、堤谷先輩がどうしたの?」 米内みつえ「私が部室に入ろうとしたら、話し声が聞こえて…」 数分前、オカルト研究部の部室… 堤谷かすが「ばら撒きで票を買うわよ」 部員「えっ?」 堤谷かすが「各部の欲しがってる物を私達で買ってやるのよ!       そうしたら、選挙では私に票を入れるに決まってるわ!」 部員「で、でも、その資金は…」 堤谷かすが「勿論、あんた達が出すのよ」 証言終了… 米内みつえ「…なんて事を言ってたの」 これを聞いて、怒りに燃えるまさみ… まさみ「公選法199条の2曰く『公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者は、     当該選挙区内にある者に対し、いかなる名義をもってするを問わず、寄附をしてはならない』 …ここまでやられちゃ、踏ん縛る他に手立ては無いね!」 おんぷ「でもこれって、賄賂とも見れるんじゃない?それなら、贈賄罪にもなるわよね?」 しかしここは、まさみが的確に教えてくれた。 まさみ「いいや、賄賂ってのは、公職にある者に対して、職務行為に手心を加えさせるために贈る物…     今回は逆に公職になろうとする者が贈るんだから、公選法違反で引っ括る!」 そして、1人話題に取り残されているさやか… さやか「なあなあ、ぞーわいざい…って何?」 おんぷ「賄賂を贈る事よ」 語彙が拙いさやかに、おんぷが説明している間に、まさみは教室を飛び出していた。 おんぷ「ま、まさちゃん…」 さやか「速っ…」 即座に次の手を考え出したまさみは、それを実行に移すため、選管の事務室に飛び込んだ。 まさみ「今野先輩!今すぐオカルト研究部以外の全部長に通達出して下さい!」 今野「どっ、どういう事だ?」 まさみ「オカルト研究部から備品寄付の申し入れがあったら、すぐ選管に伝えるようにって!     堤谷先輩が、どこかの部に寄付をして票を買うって情報が入ったんです!」 これには、今野も頭を抱えた。 今野「あの馬鹿…そこまで落ちたか…」 まさみ「それと、向こうに気付かれたくありません…なるべく、隠密裏に事を運んで下さい。     気付かれて品物の受け渡しを中止されたら、有耶無耶になっちゃいますから…」 翌日、1年C組… 加藤めい「まさちゃ〜ん!男バスの下松部長から伝言〜!」 まさみ「だんばす…?」 真面目なまさみには通じない言葉だったため、さやかが訳す。 さやか「男子バスケ部を略して、男バス言うとるんや」 おんぷ「でも、どうして女子バスケ部のめいちゃんが、男子バスケ部の伝言を?」 加藤めい「何でも、内密にって事で、男バスの部長から女バスの部長、んでもって私に…」 まさみ「前置きは分かった。で、肝心の伝言ってのは?」 加藤めい「オカルト部が男バスに、試合用タイマーを寄付するって!      受け渡しは今日の放課後4時、旧校舎の大ホールだって!」 これを聞いて、まさみの口元に僅かに笑みが… まさみ「なるほど…男子バスケ部の部長に感謝しなきゃね…     不審な行動とって向こうにバレないように、直接伝えには来なかったんだ…」 さやか「ほな、まさちゃん…」 おんぷ「どうやって堤谷先輩を捕まえる?」 まさみ「ふふ…その辺も、抜かりはございません!」 そして放課後、本来は立入禁止で人気(ひとけ)の無い旧校舎… 大ホールで対峙する、堤谷かすがと男子バスケ部長の下松… 堤谷かすがの後ろには、オカルト研究部の男子部員達。 それとバスケットボールの試合で、残り時間とポイントを掲示する電光タイマーが。 下松「悪ぃな。うちのタイマー1つ、何か接触不良で駄目になっちまってさ…」 堤谷かすが「なら、これ使いなさいよ。その代わり、今度の選挙…」 下松「…何だよ」 堤谷かすが「分かってるでしょ?私に票を入れるのよ…」 その言葉を聞いた途端、下松がニヤリと笑った。 下松「てめぇで言ったんだから、間違いねぇな」 堤谷かすが「えっ!?」 すると、次の瞬間… まさみ「動くなっ!!!」 ホールの左右両の扉がガラッと開き、そこからドカドカと生徒達が乗り込んできた。 その先頭を切るまさみが、堤谷かすがの罪状を高らかに読み上げた。 まさみ「堤谷かすが!公選法違反の現行犯だ!年貢の納め時だよ!」 堤谷かすが「なっ、何なのよ!?」 今野「おらぁ!さっさと全員とっ捕まえろ!」 選管の委員達が、オカルト研究部の部員達を取り押さえていく。 だが、その手を逃れ、窓から逃げ出そうとした者が数名… 部員「やべっ、逃げろ!」 しかし… 百済ゆみ「逃げようったって、そうはいかないんだから!」 浜屋となみ「一歩でも動いたら、矢の雨が降るわよ!」 何と、外で待ち構えていたのは弓道部。鋭く光る鏃は、威嚇には十分すぎるほどだ。 部員「げっ…」 怖気付いた所を、選管の委員によって確保… そして主犯の堤谷かすがはと言うと、下松がしっかり抑え込んでいた。 堤谷かすが「ちょっと、あんたも同じ穴の狢でしょ?」 下松「悪ぃな。俺、端っからタイマー貰う気、無かったから。勿論、票を入れるつもりもな」 まさみ「下松先輩は、囮捜査をしてくれたんだよ。堤谷先輩は、それにまんまと引っ掛かった訳」 堤谷かすが「何よそれ!汚いわよ!」 下松に屈められた堤谷かすがが叫ぶが、今野がサラッと一言。 今野「物で票を買おうとした奴には、言われたくないけどな」 堤谷かすが「くっ…」 言い返す言葉も無く、舌打ちする堤谷かすが…もはや言い逃れは不可能だった。 さやか「まさちゃん、大手柄やな〜」 まさみ「そんな事ないって…みんなが協力してくれたからだよ」 さやか「それしても、はるひ部長…何でここまでやらかしてもうたねんな…」 そんな、さやかの呟きに答えたのは…おんぷだった。 おんぷ「それは多分…構ってほしかったから…」 さやか・まさみ「えっ??」 おんぷ「堤谷先輩…この性格だから仲のいい友達が、あまりいないって聞いてる…     世話を焼いてくれるのは、せいぜい幼馴染の今野先輩くらい…     きっと今回の騒動も…誰かに止めてほしかったんじゃ…そうですよね?」 おんぷの問いかけに、堤谷かすがは無言で顔を背ける… そこに、まさみが歩み寄ってしゃがみ込み、堤谷かすがを見つめる… まさみ「そう…だったんですか…」 堤谷かすが「そう言えば…選管仕切ってたの、あんただったわよね…名前は…?」 まさみ「1年C組、酒井まさみです」 堤谷かすが「そっか…あの、まさちゃんか…」 すると、それまで俯いていた堤谷かすがが顔を上げた。 堤谷かすが「あんたが真剣にやり合ってくれたから、何か楽しかったわ…       さあ!生徒総会で吊るし上げるなり、職員会議に突き出すなり、好きにしなさい!」 その吹っ切れた笑顔を見て、まさみも何だか責める気にはなれなくなった。 まさみ「どうやら、情状酌量の余地はありそうですね…     堤谷先輩…自分で立候補を取り下げるなら、あたしはこれ以上何もしませんよ」 口元に小さく笑みを浮かべたまさみに、おんぷ・さやかの顔も明るくなる。 さやか「まさちゃん…」 おんぷ「そう来なくっちゃ♪」 その横で、今野はオカルト研究部の部員達に向かって… 今野「ったく…おい、お前ら」 部員「はっ、はい…」 今野「今度あいつが暇を持て余したら、黙って従ってるだけじゃなく、俺に一報入れとけ」 部員「…はいっ!」 下松「それと、このタイマー…どうせ、お前らの金で買わされたんだろ?    このままじゃ可哀そうだし、うちの部費で買ってくれるように、うちの顧問に言っとくよ。    一段落した後でいいから、これの領収書うちの部に回してくれな」 部員「あ…ありがとうございます!」 さらに、今回の依頼人・米内みつえが、まさみの手を握る。 米内みつえ「まさちゃん、本当にありがとう!これで、うちの部も良くなるわ!」 まさみ「そんな…大した事してないって…」 すると、堤谷かすがも首を入れてきた。 堤谷かすが「ふうん…あんただったのね…この子を引っ張り出してきたのは…」 米内みつえ「は…はい…」 もしかして怒られるのか…と、米内みつえは思ったが… 堤谷かすが「…よくやったわ。この子が出てきたお陰で、結構楽しかったわ」 米内みつえ「部長…!」 堤谷かすが「まさちゃん…あんた、たまにはうちの部にも顔出しなさい。       他の奴らより、よっぽど使えるわ…そうだ♪」 突然、手をポンと叩いた堤谷かすが…何か思い付いたようだ。 まさみ「何ですか?」 堤谷かすが「今、有名になってる怪盗ウィッチ…あれ、あんたが捕まえてきなさい!       オカルト研究部としては、前々から気になってたのよね〜☆」 まさみ「…は?」 そんな訳で、堤谷かすが選挙違反事件の次は、怪盗を追う事になってしまった。 まさみ「怪盗ウィッチ、か…」 下校途中の道で、3人は思索を巡らせる。 おんぷ「最近、美術品を立て続けに盗んでるって話よね」 さやか「あ…これ見てみぃ」 言われて、おんぷ・まさみが振り返ると、電器屋の店先にテレビが並んでいる。 情報番組で語っているのは…まさみの祖父・元刑事で犯罪研究家の洞爺だ。 テレビ番組内では… 司会「でも酒井先生、怪盗ウィッチは前回、現場に突如現れ、宝石を奪って消えたんですよ?    やはり、魔法を使ったとしか思えないんですが…」 洞爺「ははは…その程度で魔法とは…落ち着いて考えれば、簡単なトリックですよ。    まずは、警備のため多数配置された警官に変装して紛れ込む。    犯行時刻になったら、煙玉を焚いている内に変装を解いて現れる。    そして宝石を手に取り、再び煙玉を焚き、元の警官の姿に戻る…    後は、慌てふためく警官に紛れて逃走する…とまあ、こんな感じですかな」 司会「おおっ…流石、酒井先生…!」 再び、テレビを見ていた3人の視点へ… さやか「ほへ〜っ…まさちゃんのお爺ちゃん、やるな〜。怪盗ウィッチの面目丸潰れや〜」 まさみ「お爺ちゃんは、これであたし達の食い扶持、稼いでんだからね」 しかし、現場の監視カメラで撮られた怪盗の犯行シーンが再生されるたび、おんぷに疑問が生じる。 おんぷ「でも…やっぱり私には、魔女が魔法使ったようにしか見えないわ…     ずっとこの目で間近に見てきたんだもの…まさちゃんのお爺ちゃんには悪いけど…」 まさみ「気にしなくていいよ。ただ屁理屈を捏ねるのが上手いだけだから」 さやか「まさちゃんまで、お爺ちゃんにその言い草は…」 まさみ「だって、あたしにも魔法に見えるもん」 さやか「まあ、うちも人の事は言えへんけどな」 おんぷ・まさみ「おいおい…」 結局は3人共、これは魔法だと確信していたのである。 さやか「せやかて、うちらから見たら、どう見たって魔法やん…     それにネーミングセンス無さすぎやろ…怪盗『ウィッチ』って、名前があからさますぎるやん 」 そして、テレビからはこんな情報までもが… 司会「予告状によると怪盗ウィッチの次の狙いは、陶芸家・深川北竜氏作の『赤富士』との事です。    これは、映画監督・藤原明氏の映画の題材となった事で、一躍有名になった茶碗で…」 まさみ「藤原明…」 さやか「どっかで聞いた事あんで…」 首を傾げる2人だったが、おんぷがサラリと答えを言ってしまう。 おんぷ「はづきちゃんのパパ…」 さやか・まさみ「ああっっ!!」 そして2日後の晩、とあるホテルの大宴会場…「映画『赤富士』公開記念パーティー」と銘打ってある 。 おんぷ「ごめんね。飛び入りで来ちゃって」 はづき「ううん、おんぷちゃん達なら大歓迎よ」 おんぷ・さやか・まさみは、はづきの口利きで会場に入っていたのだ。 さやか「怪盗ウィッチは、このパーティーの真っ最中に、あの茶碗持ってくっちゅうんやな?」 ステージ上には、まるで燃えているかのような赤色をした、見事な茶碗が鎮座していた。 茶碗と言っても、食器棚にあるような茶碗ではない。茶の湯の道具であり、陶芸作品である茶碗だ。 まさみ「どうせなら、金庫とかに厳重保管した方が確実なのに…」 そこに、さやか・まさみには聞き慣れない声が… ?「それだと、パーティーが盛り上がらないからね」 はづき「パパ!」 おんぷ「お久しぶりです」 声の主は、はづきの父・明。無論、おんぷは既に存じていた。 明「おんぷちゃんも元気そうだね。それと、さやちゃんと、まさちゃんだね?   テレビとかにもよく出てるし、何よりも毎日のように、はづきから話を聞かされてるよ」 はづき「もう、パパ…」 さやか「どうも…」 まさみ「ありがとうございます…」 照れるはづきの横で、さやか・まさみは礼をした。 明「あの茶碗はね、私が映画のテーマに困っていた時に出会った、   新人陶芸家の深川さんの作品なんだ…あれが無いと、今回の映画は出来なかった…」 はづき「だから、このパーティーには、どうしてもあのお茶碗を出したいって」 おんぷ「そうですか…」 まさみ「でも盗まれちゃったら、元も子も…」 すると今度は、特にまさみが聞き慣れた声も割り込んできた。 洞爺「それは、儂らの手で食い止めてやるわい」 まさみ「お爺ちゃん!?」 現れたのは洞爺。聞かされていなかったため、まさみもこれには吃驚。 まさみ「お爺ちゃんまで、どうしてここに?」 洞爺「いや何、盗人の事が気になったまでの事じゃ…    まあ心配せんでも、前回の失敗を踏まえて、今度は全警官の身体検査を徹底させておる。    勿論パーティーの参加者にも、空港並みのチェックをかけておるしな…」 ここで、さやかが一言ぼやく。 さやか「魔法使われたら、どうにもならへんと思うけどな…」 洞爺「ん?魔法?」 慌てて、はづき・おんぷ・まさみが、さやかの軽い口を抑え込む。 まさみ「い、いや、何でもないよ…」 はづき・おんぷ「あ、あはは…」 必死に誤魔化す3人…その一瞬、洞爺の目が鋭く光ったように、まさみは感じた。 まさみ「(何…この背筋が凍りつくような、寒い視線は…)」 だが一転して、洞爺は談笑する。 洞爺「それにしても、まさかおんぷちゃんが藤原監督の娘さんと、お友達だったとはのぉ…」 おんぷ「てへっ♪」 洞爺「おお、そうじゃった。藤原監督、ちょっとお話が…来てもらえますかな?」 明「ええ、いいですよ。はづき、おんぷちゃん達のお相手を頼むよ」 はづき「分かったわ、パパ」 4人だけになった所で、例の怪盗について、はづきに話す。 はづき「やっぱり、魔女かもしれないのね…」 さやか「やっぱりって…はづきちゃんも気付いとったんか」 おんぷ「当然よ。私達、おジャ魔女だもん」 まさみ「だけど、なして魔女が人間界の美術品なんか…」 おんぷ「それなんだけど…」 すると、何やら会場の一画で揉めているような一団が… 美術商「若先生…私の聞いた所、あの『赤富士』に7500万吹っ掛けた奴がおるそうですな…     私なら、その倍の1億5千万出せる…どうかね?」 教授「なりませんぞ!こんな得体の知れない輩に『赤富士』を渡しては!    前から言ってるでしょう!我が大学の研究室で保存させてもらうと!」 館長「分かっておりませんな…美術品というのは、皆さんに見て楽しんでもらうための物…    研究室なんかにしまい込んでは、それこそ『赤富士』のためにはなりませんよ。    深川先生、是非とも私共の美術館へ『赤富士』をご寄贈なさって下さい!」 深川「み、皆さん、まずは落ち着いて下さい…」 さやか「何やねんな、あれ…」 すると、他の3人から口々に面々の名が出てくる。 おんぷ「買い取りに1億5千万円も提示してるのは、有名美術品ディーラーの貝原さん…」 はづき「大学で保存するって言ってるのは、美空芸大の園部教授ね…」 まさみ「寄贈してくれって頼んでるのは、大空近代美術館の三田村館長か…」 さやか「ほな、迫られて困っとるんは、あの茶碗作った深川はんやな?」 若手の芸術家と、その作品を何としても手に入れようとする者達… さやか「何や、見てて嫌になってくるわ…」 おんぷ「これよ…怪盗ウィッチが『赤富士』を狙う理由は…」 はづき・さやか・まさみ「…え???」 おんぷ「はづきちゃんは知ってるでしょうけど、2人には言ってなかったわね。     魔女界では、思いの籠った物ほど価値があるのよ」 はづき「そう言えば…ぽっぷちゃんのお友達の、みさき君のシャツが魔法玉20個って言われた事が…     あれは、みさき君のお兄さんへの思いが籠っていたから、高値が付いたのよね」 小学3年のはづきが、どれみ・あいこと共に、MAHO堂で店番を始めて間もない頃の話だ。 さやか「ほな、あの『赤富士』には、どないな思いが籠っとるっちゅうねん?」 まさみ「それは多分、さやちゃんがさっき、見てて嫌になるって言ってた事だよ…」 さやか「ほへ?」 自分で言って自分で分かっていないさやかのために、まさみが渋い顔で説明した。 まさみ「自分の富のため、威信のため、名誉のために、あの茶碗を手に入れようとする欲望…     それに振り回される作者の思いや一般の羨望を含めれば、かなりの思いが交錯してくる…」 はづき「酷い…」 さやか「悪い意味で、思いが詰まっとるやん…」 おんぷ「そんな物でも魔女界なら、人間界での価値の何倍にもなるわ」 まさみ「怪盗ウィッチの目的は十中八九、魔女界での転売による儲け…」 これには、さやかは勿論の事、大人しいはづきでさえも怒りを滲ませた。 さやか「何やそれ!人間の思いを、食いもんにしとるようなもんやないか!」 はづき「許せないわ…!」 まさみ「その怒り、もう少し抑えといて…さて、奴さん、もう準備は出来てるみたいだね。     ここから大体700mくらいの所かな?さっきから嫌らしい魔力は感じてる」 何と、まさみは既に犯人のものらしき魔力の位置を割り出していた。 さやか「ほな、すぐにでもとっ捕まえて…」 まさみ「待って。今から行っても、言い逃れされるのが落ちだよ。     盗みが終わって油断してる所を、現行犯で取り押さえる!」 さやか「おぉ〜!せやったら久々に、あれやろか…Triple-S」 しかし、これをおんぷが訂正。 おんぷ「今日はTriple-S…だけじゃないわ。1人だけSが無いじゃない」 瀬川・西郷・酒井はイニシャルがSだが、藤原は…Fになってしまう。 まさみ「したら、どうするのさ?」 おんぷ「+α(プラス・アルファ)でいきましょ♪」 すると、どうやらはづきは前に話だけは聞いていたようで、状況を察すると顔を赤らめた。 はづき「えっ…私も、あれやるの…?」 おんぷ「当然でしょ♪」 はづき「おんぷちゃんの意地悪…」 そして、犯行時刻… 警官「やられました!たった今、目の前で一瞬にして『赤富士』が消えました!」 警官「そ、そんな馬鹿な!」 警官「探せ!とにかく探すんだ!」 魔法のように、茶碗が跡形もなく消え失せた。パニックに陥る会場。 しかし1人だけ、冷静さを失っていなかった人物が… 洞爺「(おや、まさみがおらんな…他の子らも…)」 犯行現場から少々離れたビルの屋上… 魔女「ふふふ…ちょろいもんね♪」 盗んだばかりの茶碗を、恭しく手に取って眺めていると… はづき「そのお茶碗を返して!」 まさみ「窃盗の現行犯だよ!」 さやか「お天道さんが見逃したかて、うちらが見逃さへんで〜!」 おんぷ「さあ、大人しくしてもらいましょ♪」 突如、魔女を取り囲むように、四方に現れた4人のロイヤルパトレーヌ。これには魔女も驚く。 魔女「なっ…何なのよ、あんた達!?」 すると4人は、順々に名乗り出す… おんぷ「瀬川おんぷのS♪」 さやか「西郷さやかのS☆」 まさみ「酒井まさみのS!」 はづき「藤原はづきの…F♪」 はづき・おんぷ・さやか・まさみ「4人合わせて…Triple-S+α!」 おや…最初は気が進まなかった様子の方が1名、きっちりポーズを決めている…? さやか「はづきちゃん、何だかんだ言うて、結構ノリノリやん」 おんぷ「そういう所あるわよね、はづきちゃんって」 はづき「ちょ、ちょっと、おんぷちゃんまで…」 今更照れても遅い。そんな間に魔女は、抜き足・差し足・忍び足で逃走を図る…が… まさみ「逃がす訳ないっしょ♪」 魔女「!?」 まさみ「ポクセルパトレ〜ヌ!」 先制したまさみの魔法が炸裂し、魔女の手元の茶碗は瞬間移動して、おんぷの手の中へ。 おんぷ「てへっ♪」 魔女「…あっ!」 しかし、その驚いている一瞬の内に、魔女の右腕は逆関節に極(き)められていた。 魔女「あっ、痛たた…」 まさみ「もう一丁!」 続け様に、まさみは背後から左腕も捻って、両方とも後ろ手にしてしまった。 魔女「ちょっと、やめて、放して…」 まさみ「放すもんか。指パッチンで魔法使われるのだけは、御免蒙りたいからね」 見事な魔法封じ。最初に茶碗を取り返しただけで、捕縛には魔法を一切使っていないのも凄い。 まさみ「さてと、然るべき所に突き出してこよっか♪」 魔女界… 捕らえた魔女の身柄は、元老魔女のマジョドンに引き渡した。 マジョドン「魔女界で売り払われた盗品は、儂ら問屋魔女で買い戻し、持ち主に返しておこう。       ご苦労だったな…だが、なかなかの働きだったぞ。元老魔女見習い」 強面のマジョドンが笑っていた。これには、はづき・おんぷ・さやか・まさみも笑みが零れた。 マジョドン「それにしても、人間界の物を盗んで、魔女界で魔法玉に換金していたとは…       これは魔女界の流通を預かる儂の落ち度だな。女王様に不手際をお詫びすると共に、       今後は、人間界からの品の売買を、厳しくチェックする事をお約束せねばならんな。       しかし儂は、これから急ぎ盗品の回収に当たらねばならん…」 何やら意味深な事を言うマジョドン。さやかが首を傾げていると… マジョドン「そこでだ。お前達が儂の代わりに、お詫びを申し上げてこい…ハナ女王にな」 つまりは、愛娘のハナに会っていけと言っているのだ。何とも粋な計らいである。 4人の表情は、まるで昇ったばかりの朝日のように、パアッと明るくなった。 はづき・おんぷ・さやか・まさみ「はいっっっっ!!!!」 そして、酒井家… ソソ(まさみ姿)「お帰り、まさちゃん」 茶碗が盗まれた時、魔女を捕らえに向かったまさみと入れ替わったソソが、主人の帰りを待っていた。 まさみ「ソソ、ただいま」 箒に跨っていたまさみは、ロイヤルパトレーヌの姿のまま靴だけ脱いで、窓から部屋へ入った。 ソソ(まさみ姿)「随分、遅かったね」 まさみ「ごめん、ハナちゃんと遊んできちゃった」 ソソ(まさみ姿)「それならいいや…じゃ、あたし戻るね」 そう言うと、ソソは本来の小さな妖精の姿に戻った…その時だった。 いきなり奥の襖が開いたかと思うと、まさみとソソの間を太刀筋が駆け抜けていった。 ソソ「わっ!」 まさみ「!?」 避けはしたものの、まさみは背中から畳に倒れ込んだ。そこに襲いかかる第二撃。 しかし、まさみもただでは転ばない。倒れた後ろには、鹿の角の刀掛け。 左手を後ろに回して、刀掛けから大刀を鞘ごと手に取ると、右手で柄を握って引き抜いた。 刀身が鞘から完全に抜け出る前に、敵の刃が縦一線に振り下ろされる。 まさみは刀身を鞘に半分残したまま、何とか相手の刀を受け止めた。 ようやく両者の動きが膠着し、相手の正体が判明する… まさみ「…お爺ちゃん!?」 斬りかかってきたのは、何と洞爺。それも、まさみの模造刀に対し、洞爺のは真剣である。 生徒会選挙・怪盗騒動の2つの事件が落着したと思ったら、今度は酒井家の中で内乱勃発か…? ソソ「な、なして、お爺ちゃんが…」 洞爺「まさみ…たった今、見せてもらったぞ。お前の怪しげなる術…    まさか、お前が妖(あやかし)の類(たぐい)とは思わなんだ…    最近、大空市近辺で起こった不可解な出来事に前後して、おんぷちゃん・さやちゃん…    そして、まさみも一緒に、何やら不穏な動きをしておる事までは分かっておった。    だが儂は、お前はあくまで2人を庇っておるだけじゃと、信じておったと言うのに…」 ソソ「嘘…それじゃ、あたしの影武者もバレてたの…?」 驚愕するソソに背を向けたまま、洞爺は答えた。 洞爺「馬鹿にするでないわ。姿形はまさみそっくりでも、一挙手一投足まで同じとはいくまいて。    生まれてから今まで、ずっと見てきた我が孫娘じゃ。細かな仕草の違いくらい見抜けて当然。    お前さんがまさみでない事は、前から薄々じゃが感付いておったよ。    今夜、茶碗が盗まれた折も、妖術で此奴を身代わりに立てて、姿を消しておったじゃろ?    犯行の前と後で、まさみの様子に違和感を感じたのでな。こうして張り込んでおったんじゃよ! 」 ソソ「流石お爺ちゃんだね…って、感心してる場合じゃないしょ!」 ようやく主人のまさみが体勢不利な状態にある事を思い出したソソは、すぐさま助け出そうとしたが… まさみ「やめなっ!!」 その大声にソソは、ビクッと竦んでしまった。 まさみ「お爺ちゃんの間合いに入ったら、あんた真っ二つに斬られるよ!」 ソソ「でも、それじゃ、まさちゃんが…」 まさみ「今は、あたしが受け止めてるから、均衡が保たれてるんだ…     このバランスが崩れたが最後、お爺ちゃんの刀が牙をむくよ…」 洞爺「我が孫娘と言えど、妖怪を野放しには出来んからのぉ…」 体勢的に有利な洞爺に押し負けているのと、祖父の手に掛かる寸前まで追い詰められているのと… 苦悶の表情を浮かべるまさみ…まさみを助けたくとも、何も出来ない自分を悔やむソソ… 諦めかけた、正にその時だった… ヒュッ…! まさみ・洞爺「!?」 肉薄していた2人の顔の間を縫うかのように、扇が横切った。 それはまるで、的に向かって扇を投擲する投扇興… その扇の投げられた先を見ると…酒井家のもう一人の住人・七恵だ。 まさみ・ソソ「お婆ちゃん!」 洞爺「七恵…!?」 七恵「何ですか!この有様は…双方共、刀を収めなさい!!」 毅然とした態度と、然程大きくない割によく通った声に、まさみ・洞爺は圧倒された。 洞爺「う…む…」 渋々ながら刀を引いて、長い刀身をスッ…と鞘に収めた洞爺。 これでようやく力が抜けたまさみは、刀を鞘にカチンと収め、それを両手にしたまま仰向けに倒れた。 まさみ「ふぅ…今度ばかりは、本当に殺されるかと思った…」 七恵「さて、一体何があったのか、落ち着いて話してもらいましょ」 そして、茶の間… ロイヤルパトレーヌの衣装から、靴を脱ぎ脱帽した状態で、正座するまさみ… 卓上には、ソソがちんまりと正座しているが、こちらも神妙な面持ちだ。 上座には腕を組み、険しい表情を見せている洞爺…そんな様子を、ただ無言で見つめる七恵… 洞爺「要は、怪しげなる術を用いる輩を退治せんがため、目には目を、蛇の道は蛇…という事で、    まさみ達も妖の技を会得し、夜な夜な飛び回っておったと…そういう事じゃな?」 まさみ「まあ、そうだね…」 怖々、洞爺と向き合うまさみ。すると、洞爺は一変して… 洞爺「何じゃ。それならそうと、早く言ってくれれば良いものを」 あまりにも拍子抜けで、まさみはガクッとなった。 まさみ「お、お爺ちゃん…」 洞爺「七恵も七恵じゃ。まさみの誕生日の時に気付いておったなら、なぜ儂に知らせん?」 七恵「あら、私はソソちゃんには気付きましたけど、まさみが何をしているかまでは…ねえ?」 お互いに顔を見合って、そして笑う七恵とソソ。 ソソ「あたし達、約束してたんですから。お婆ちゃんに正体が知れたのは、まさちゃんに内緒で…」 七恵「まさみが陰でしている事については、ソソちゃんは何も話さない…とね。    それに、ソソちゃんにも言ったんですよ。あなたがいると、話がややこしくなるからって」 洞爺「何じゃ何じゃ…儂を除(の)け物にしおって…」 年甲斐も無く、少々いじける洞爺… まさみ「ソソもソソだよ…お婆ちゃんにバレたの、上手く誤魔化してくれて…     お婆ちゃんが知ってるって分かってたら、あたしだって、もうちょっと身の振り方ってもんが…」 ソソ「ごめん…」 まさみに向けて頭を垂れるソソに、七恵も口添えしてやる。 七恵「元はと言えば、まさみに心配かけたくないって、私が言い出したんですよ。許しておあげなさいな」 まさみ「…うん、分かった」 ここまでされては、許してやらない訳にもいくまい。 洞爺「さて、まさみ…明日にでも、おんぷちゃんとさやちゃんに事の仔細を話しておくんじゃぞ。    儂らが、まさみ達の正体を知ってしまった事、下手に隠しても何にもなるまい。    事情が分かった以上、儂も野暮な事はせん。今まで通り、妖と戦うが良かろう」 まさみ「ありがと!お爺ちゃんが後ろ盾になってくれれば百人力だよ」 ここでまさみ、何かを感じて仏間の方向を向き、優しく笑うと… まさみ「お爺ちゃん、お婆ちゃん…ちょっと驚かせちゃうから、心してね…」 そしてスッと立ち上がり呪文を一言、静かに口にした。 まさみ「ポクセルパトレ〜ヌ…」 すると… 正爺「父さん、母さん、ご無沙汰してます」 真浪「この度は、まさみを許してくれて、本当にありがとうございました」 薄っすらと現れたは、正爺と真浪。洞爺・七恵にしてみれば息子夫婦になる。 持ち前の六感で父と母の気配を悟ったまさみが、魔法で霊に姿を与えたのだった。 洞爺「正爺…!」 七恵「真浪さん…!」 既に他界した筈の2人が目の前に現れて、驚かない訳がない。 真浪「お父様、お母様、ごめんなさい。私達夫婦は、まさみの事は全て知っていました」 正爺「夢枕に立って父さん達に伝える事も、しようと思えば出来たんですが…    1つ間違えれば傷付くのはまさみですし、余計な事をするのは手控えていました」 洞爺「そうか…済まなかったな」 七恵「ご心労をかけましたね」 正爺「いえいえ、こちらこそ…では、これからもまさみを宜しくお願いします」 真浪「まさみ、これからも頑張ってね。お母さん、いつでも見守ってるから…」 母の霊は娘の頬を優しく撫でた。実体は無いのだが、そこには肌の温もりが感じられた。 まさみ「お母さん…」 魔法の効力が無くなり、正爺・真浪夫妻の姿が次第に見えなくなっていった… 次の日、おんぷ・さやか・まさみがテレビ局の控室で… さやか「最後の事件、めっちゃハードやん…」 おんぷ「でも、まさちゃんって家族に正体バラすの上手ね。これで家族全員に知られちゃったじゃない」 まさみ「バラしたくてバラしてるんじゃないんだけどね…」 そこに、扉をノックする音が。入ってきたのは、こちらも別の番組出演のために訪れていた、洞爺だった。 洞爺「お邪魔して済まんのぉ。ちょっと話があってな」 おんぷ・さやか・まさみ「話???」 洞爺「この前、大空市の公共事業入札で、不正があったとニュースになったじゃろ?    どうやらあの件で、落札価格を人間業ではない『ある手段』で知った者がおるようじゃ…    その者が、落札価格を業者に売って儲けた…そう儂は見とるんじゃがな」 さやか「ある手段?」 どういう事ですか…と聞く前に、洞爺が話を続けてしまう。 洞爺「魔法じゃよ。本来ならどこにも流れる筈の無い情報を、魔法で手に入れる事は出来んかな?    普通の人間の犯行という線では今の所、捜査線上には何も引っかかっておらんようじゃし…」 まさみ「それ…あり得るかも」 おんぷ「調べてみましょ。まさちゃんのお爺ちゃん、ありがとうございました」 礼を言うおんぷに、洞爺は笑って言う。 洞爺「何、儂もまさみと一緒で、悪い奴が放っておけないだけじゃからな…では、頼んだぞ」 おんぷ・さやか・まさみ「はいっ!!!」 立て続けに起こった3件の事件だったが、まさみは何とか切り抜けた。 しかし、これからも当分の間は事件が続きそうである… 次回予告 さやか「アニメで超有名なキュアプリの実写版、うちらがキュアプリや〜☆」 おんぷ「今度のお仕事、凄く面白そうね。かれんちゃん・やくもちゃんとも共演だし…」 まさみ「アニメ版みたいに、最初は噛み合わなかった面々が、気の合う仲間になれればいいけど…」 おんぷ「うふふ…きっと大丈夫よ」 さやか「派手に変身して、滅茶苦茶にバトルして、ドッカ〜ンと必殺技出して…」 まさみ「あの…1人だけ協調性の欠片も無く、独走態勢なんですが…」 おんぷ「次回、おジャ魔女おんぷTriple-S(トリプル・エス)特別編!    『キュアプリ5!私達が伝説の戦士!?』さ〜てと、私も役作りしなきゃ♪」 まさみ「こっちはこっちでマイペースだし…本当に大丈夫なの?」 29話端書き 前回、遅筆だったため気合いを入れて書いたら、文章量が久々に馬鹿でかくなりましたw 22話以来ですね。あの時は、も〜っと映画版の舞台を忠実に再現しようとして… 今回は1話にするには小さくて、ずっと温めていたネタを一気に3つ繋げてしまったという代物です。 まず1件目の事件から解説を… 堤谷かすが…お分かりでしょう。あのアニメから取ってます。 名字は響きを活かして少し弄っただけ、名前は漢字の読み換えという単純な… ちなみに選管の今野の略称が「コン」…ここもツッコミ所です(笑) 2件目…藤原明さんこと、はづきパパさんを出したのは初めてですね。 以前にTriple-Sに、あいちゃんを足した事もありましたが、その時は全員Sだったから良かったんです。 今回はイニシャルFの、はづきちゃんが参入しちゃいましたから、+αって事で片付けてしまいました… そして、最も大きいヤマ(事件)は3件目ですね。動向が激しすぎます。 まさみの不審な行動に感付いていた洞爺お爺ちゃんが、遂に行動に出たっ! ソソも誰も止められないと思われた戦いに、七恵お婆ちゃんが割って入るっ! 最後には、少しの間でしたが酒井家全員勢揃いさせちゃって… これで酒井家は一段落したんで、そろそろ西郷家も掘り下げようかと画策中です(ぇ) 次回は、これも前々から温めてたネタなんですよね〜… 筆者オリキャラのさやか・まさみの2人と、本編からおんぷ・かれん・やくもの3人… はてさて、どんな戦士、どんなチームワークになるのか…さてと、プリキュア観なきゃですw