仮面ライダーフリークス&恐怖!夜伽話
      死のうじゃないか。


 今回のお話は葦原さん(仮名)が体験したという、夢に纏わる不気味な体験談である。

 葦原さんの母方の祖父が亡くなられて一年ほど経った頃、一段落した祖母が妙な事を言い出し
たと、母親から聞いたのだという。

「夢の中に良く出てくるのよ。しかも私に頬ずりなんかしちゃって・・・生きている時は、そんな
 事なんかしなかったのにねぇ・・・」

 その話を聴いた時、芦原さんは妙な・・・そして厭な感じがしたのだという。
 何故なら、彼自身も同じ様に、頬ずりをされる夢を見ていたからなのであった・・・。

・・・しかし、葦原さんの夢に出ていたものは、彼の目から視ると、それはとても亡き祖父だとは思えなかった様なものであったと言う。


 それは骸骨に死人の黄色い肌が張り付いた様な、嫌らしい何かにしか見えず、その身体は、経
帷子めいたものをまとっていた様に視え、その頬ずりからは、冷たさと気持ち悪さしか感じられ
なかったのだと言う・・・。


・・・そして、それから数日が過ぎた、ある秋の夜。

 一人暮らしでアパートに住んでいる葦原さんは、パソコンに向かって作業をしていた。
 すると突然、【ごおおおおッッ】と言う風の様な何かが、彼の下宿している部屋の外の廊下に
吹き渡ったのだと言う。

 ひた ひた ひた ひた ひた ・・・・

 
それに続いて中型の犬か、大きな猫の様な動物めいた足跡が近づいてきて・・・彼の部屋のドア
の前に止まったのである。

 葦原さんが住んでいるアパートの部屋の階は、入り口がひとつでL字型の通路になっており、
風が吹き抜ける様な事も在り得なければ、仮に動物が入り込んでも、そのまま袋の鼠になってし
まう様な構造になっているらしく、外には野良猫が多くうろついているものの、絶対に【その通
路】に入ってくる様な事は無い筈なのだと言う。

 そして、彼の部屋の前に止まった【何ものか】は、ドア越しに、その存在感を示す様な気配を
発しており、何だか意志の様なものを感じられたらしい。

「・・・何だ!?」

 緊張しながらも、彼はドアに近づき、のぞき窓から外を見てみた。
 廊下の電球は切れてはいなかったのだが、見る限り、そこには何もいなかったらしい。

 そこで、芦原さんは、ドアの開ける範囲を狭める金具をはめたまま、僅かにドアを開けて外を
確かめてみたらしいのだが、やはり其処には何もいなかったのだと言う。

「・・・何もいない?・・・何だったんだ、あの足音は?」

 本来ならば、在り得ない事の連続だったので、もっと警戒するべきだったのだが、何故か不思
議と、その時は好奇心の方が勝っていたのだと言う。

 あれは一体、何だったのかと思いながらも、彼は眠りにつく事にしたのだが・・・酷く不気味な
夢を見たのであった。
 しかし、余りにも生々しく、目覚めた後に酷い疲労感を感じたので、それはただの夢では無か
ったのだと感じられてならないのだと言う。

・・・それは次の様な夢であった。

 葦原さんは自分の部屋で、いつも眠るベッドに横になっていたのだと言う。
 その彼の隣に【何か】がたっていたのだ。彼は一瞬にして、それがかつて自分に頬ずりをして
きた相手だと解ったらしい。

 しかも、それは既に黄色い肌の色も消え失せ、更に異様で醜悪な姿になっていたのだと言う。
 そして、その肩越しには、人の様にも思える存在が視えたらしいのだが、その姿は小さくて良
く解らなかったのだと言う。

 しかし、それを確かめる余裕すら吹き飛んでしまう様な言葉が、その醜悪なものから発せられ
たのであった・・・。

「さあ、死のうじゃないか」

 その醜悪なものは、親しさを装った厭らしい口調で、そう告げると、芦原さんに圧し掛かって
来たのである。そして、その顎を大きく開くと、鼠の様に大きな門歯を剥き出しにして、彼に噛
み付こうとしたらしいのだ。

 更に、その門歯には、異様な穴が空いており、その門歯を突き立てられたら自分はお終いだと
いう事を彼は一瞬にして理解したのだと言う。

「死のうじゃないか」

 執拗に圧し掛かってくる【それ】を必死に押し返しながら、彼は叫んだ。

「ふざけるな!誰がお前なんかに!」

 同じ言葉を繰り返しながら死地へと誘う【それ】は、腕を使わずに頭を伸ばして圧し掛かり、
彼に噛み付こうとしていたのだと言う。

「死のうじゃないか」

 
彼もまた必死に抵抗をしていた。

「近づくな!離れろ!」

 その押し問答は更に続いた。

「死のうじゃないか」

 芦原さんも抵抗をやめない。・・・やめられる筈が無い。

「離れろと言っているだろうが!!」

 必死の押し合いは、幾度と無く繰り返されたらしいのだが、ようやく彼が【それ】を振り払う
事が出来たと同時に、彼は目を覚ましたのだと言う。
 そして、その延々と続いた悪夢から解放された彼は、酷い倦怠感に襲われていたと言う・・・。

 幸いな事に、それ以降は、その【醜悪なもの】の夢を見た事は無いらしい。
 そして、祖母の事も気になった彼は、その様子を確かめたのだが、頬ずりをされる夢はもう見
なくなっていたと言う・・・。

 ただ、時折。何処からか呼びかけてくる声を耳にするらしいのだが・・・。

・・・芦原さんは最後に、こう語っていた。

 死人が出た際には、近親者や友人が相次いで死んで行く事があるそうですが、そういう何かが
絡んでいるのかもしれませんね・・・と。