四人の水子。
一枚の写真があった。
ガラス越しに写された、その一枚の写真は、啓介さん(仮名)の奥様である、なごみさん(仮
名)から、鑑定を依頼されて送られてきたものであった。
不自然な点は確かに多々あった。
ビロードの様に写り込んだ緑色の何か。
透けて見える柵の様なもの。
そして、啓介さんの頭上に視える黒い少女…。
…しかしながら、現実的なものを全て排除して、最終的に残ったもののみを、私は心霊写真だと
思う事にしている。
緑色のビロードの様なものは毛布だと判明した。
柵が透けて見えるのは、撮影状況…。
上記の理由から、この写真がガラス越しに撮影されてものである事を確認したのであった…。
だが、しかし。
啓介さんの頭上にある黒い影だけは、その限りでは無かった。
撮影環境でも無ければ、何者かが写り込んでしまったものでも無い…。
真っ黒な頭部に…白く光る眼…。
それは紛れも無く霊…それも邪悪なものに視えたのだ。
しかしながら、悪戯に怖がらせるのも私の趣味では無かった。
「これだけは、説明がつかないね…」
それだけ伝えて、私はこの一件から身を引くことにした。
何故なら、私程度の施せる小手先のテクニックでは、どうにもならないものだと感じていたからであった…。
…後日、啓介さんと、なごみさん夫妻は、その写真を、とある霊能者に鑑定して貰うことにした
のだと言う。
その結果、とても質の悪い霊だと指摘されたらしい。
(言っちゃったのか…)
…正直、私はそう思った。
啓介さんの写真を視て、金銭的に切羽詰まっている事や、例の黒い影についての詳細は、黙っ
ていたのだが…こうなるともう、話すしかなかった。
「その霊能者に祓ってもらいなさい」
…と。
後日、その霊能者によって、写真の鑑定が行われたらしい。
何でも、後ろに憑いていた黒い影の少女の霊は、啓介さんの母親が堕胎した「四人の水子の集
合体」だと言う事であった。
「…どうして、お前だけが無事に産まれて、可愛がられているんだ!」
そんな想いが、憎悪に変わり、その霊体は作り上げられていたのであろうと思う。
今では、お祓いも無事に済んでいるとのことではあるが、あの黒い少女の影は、今も私の頭の中にしっかりと刻みつけられて、離れることは無いのである…。