仮面ライダーフリークス&恐怖!夜伽話
           忠犬。


 今回のお話は、松本さん(仮名)が体験したと言う、一匹の犬に纏わるお話である。

 犬の大好きな松本さんは、とある犬の里親になった。…ところが、その犬が居なくなってしま
い、松本さんは探し回ったのだが、結局その日は帰って来なかったのだと言う。

…翌日になり、帰って来たかと思うと、また居なくなり散々探してみた結果、どうやら近所にあるお寺に行っている事が分かったらしい。

 そのお寺は、松本さんの自宅から徒歩で十分程度の場所にあり、近所の犬や猫が良く集まって
いる場所でもあったので、松本さんは特に気にしていなかったのだと言う…。

 しかし、ある時、その行き先がとても気になった松本さんは、犬の後をついていったらしい。

…すると、やはりお寺へと入っていく姿が見えた。更に後をついていくと、どうやら墓地の方へ
と向かっていき…とある墓の前で座っていたのだと言う。

「どうしたの?他所のお墓に入っちゃ駄目よ!帰りましょう」

…そう言って、連れて帰ろうとした際の事であった。

 花束を抱えた年配の女性が近づいて来たかと思うと、犬に声をかけたのだと言う。

「シロでしょ?…シロだね!」

 犬は嬉しそうに尻尾を振りながら、その女性に近づいていったらしい。
 松本さんの飼っている犬の、昔の名前は確かに「シロ」だったらしいのだが…。
 しかし、その年配の女性には全く面識が無かったので、その女性に訊ねてみたのであった。

「あの…この子を知っているんですか?」

…すると、その女性は微笑みながら話してくれたのだと言う。

 その女性は村田さん(仮名)という名で、元の飼い主の妹さんであったらしい。
 そして、その元の飼い主であった村田さんの姉である道子さん(仮名)が、一人暮らしをして
いた際に、捨てられていた犬を拾って「シロ」と名づけ、とても可愛がって育てていたのだと言
う。

…ところが、道子さんが重い病にかかってしまい、世話が出来なくなってしまったが為に、妹で
ある彼女を通じて、里親になってくれる人を探していたとの事であったらしい。

 そうして幾人かのつてを辿り、シロは松本さんに引き取られたのであった。

…だが、元の飼い主であった道子さん自身は、シロが無事に引き取られて行った事すら知らない
ままに亡くなってしまっていたのだと言う。

…そう。そして、シロが座っていたお墓こそ、まさしく元の飼い主である道子さんのお墓であっ
たのだ。

 松本さんは、そんないきさつを聴いて、是非、お姉さんのお墓参りをさせてもらいたいと申し
出たのだと言う。村田さんは喜んで了解し、一足先にお墓参りを済ませると、帰っていったらし
い。

…松本さんは、改めて道子さんのお墓に手を合わせると、次の様に話しかけたのだと言う。

「シロは私がきちんと面倒をみますから、安心してください…」

 お墓参りを終えるとシロは立ち上がり、帰る仕草を見せたので、松本さんも帰宅しようとした
所…。

 村田さんに良く似た年配の女性が、道子さんのお墓の後ろからお辞儀をしている姿が見えたの
で、松本さんも返したのだが、いつの間にか、その姿は消えていたのだと言う…。

…そして、シロはそれ以来、ぷっつりとお寺に行く事は無くなったらしい。

 何とも温かな、一匹の忠犬のお話である…。