仮面ライダーフリークス&恐怖!夜伽話
       終戦記念日。


 今回のお話は、霊感の無いと言う可菜子さん(仮名)が恋人である和也さん(仮名)に憑依し
た霊を説得する事により除霊したと言う、一風変わった心霊体験談である…。

…それは、数年前の八月の事であったと言う。和也さんは、出張により広島へと向かう事になっ
たのである。…しかし、幼い頃から数々の心霊体験を経験してきた和也さんは、広島の地に足を
踏み入れた時から「嫌な感じがして怖い」などと加菜子さんへメールをしてきたらしく、初日の
仕事を終えた夜からずっと「もう帰りたい」と繰り返す毎日が続いていたと言う…。

 和也さんは、広島での仕事が始まって、二日目の頃から、何故か無意識のうちに川へと引き寄
せられる様になってしまったらしく、そのまま入水自殺したい衝動に駆られながらも、寸前で我
に返ると言う日々を過ごしていたのだと言う。

…そんな和也さんの眼には、あらゆる場所で軍人や被爆者の霊の姿が映っていたらしい。

 ようやく広島での仕事の日程を終え、そんな死と隣り合わせの恐怖を伴う日々も終わりを告げ
て、和也さんは、無事に帰宅する事が出来たのだと言う。

…そう。少なくとも、その時点では、無事に帰宅出来たと思っていたらしいのだが…。

 その異変は、和也さんが、加菜子さんの自宅へ遊びに来ていた時に起きたのだと言う。

 一緒に食事をして、雑談などをしたり、加菜子さんが所属していた吹奏楽団のコンサートのビ
デオを観たりしながら、くつろいでいた時のことであったらしい。

 和也さんが、突然ばったりと倒れ込んでしまったのだと言う。

(ああ…疲れて寝ちゃったんだなぁ…)

 そんな風に彼女は思ったらしいのだが…突然、和也さんは自らの手で自分の首を締め始めたら
しいのだ。

「何してるの!やめなよ!」

 そう叫びながら、彼の手を解こうとしたのだが、もの凄い力で、なかなか外す事が出来なかっ
たと言う。…それでも必死になって、その手を解いたのだが、今度は手を口の中の奥深くに突っ
込み始めたらしいのだ。また彼女は、その手を引き抜くと、怒りのあまりに怒鳴り付けながら、
幾度か平手打ちをしたのだと言う。

「あんた!いい加減にしなさいよ!」

…その言葉に反論した和也さんの声は…いつもの彼の声では無く、女性のものであったと言う。

「何すんのよ…どうして邪魔するの!どうして死なせてくれないの!」

 呆気にとられながらも彼女は、思わず訊ねたのだと言う。

「あの……あんた誰?」

 すると和也さんは、また女性の声で叫び始めたのだと言う。

「熱いの…。痛いの…。苦しいのよっ!」

 そう叫びながら再び首を締め始めた彼に対して、加菜子さんは再び一喝したらしい。

「やめろって言ってるでしょ!」

 この時点で加菜子さんは、和也さんが広島から、この世のものでは無い者を連れて帰って来てしまったのだと理解したのだと言う。

…そして、和也さんの中にいるであろう、その女性の霊に向って話しかけたらしい。

「…あなたは、もう死んでるんだよ?」

 すると、その言葉に対して、その霊は疑問を投げかけてきたらしい。

「じゃあ、どうして、こうして話しているの…?どうして痛くて、熱くて、苦しいの…?」

「貴女は何歳?」

「十六」

…そこで加菜子さんは、その霊に対して事情を説明したのだと言う。

「まだ若い女の子じゃん。この身体はね、男の人のだし、貴女よりはるかに小父さんだよ。…多
分ね、原爆が落ちて、気がつかないうちに亡くなって、天国に行けないままだったんだね」


…すると、その女性の霊は再度、加菜子さんに訊ねてきたらしい。

「私は、どうしたらいいの…?」

 加菜子さんは答えた。

「う〜ん…私じゃ何も出来ないから、ここから出て、お寺に行ってみなよ?自由に動き回れる筈
でしょ?」


 すると霊は、彼女の言う事を理解したらしく、最後に次の様に訊ねてきたのだと言う。

「解った。行ってみる。そうしたら楽になれる…?みんなに逢える…?」

「大丈夫。ちゃんとお願いしなよね」

 すると、その少女の霊は離れて行ったらしく、間もなく和也さんは、いびきをかきはじめたと
の事であった…。

 そして、その日は奇しくも八月十五日…。

 第二次世界大戦における戦没者を追悼し、平和を祈念する日…所謂、終戦記念日であったのだ
と言う…。