輪廻転生。
このお話の真偽の程は、正直な所、定かでは無い。…何故ならば、これは単なる夢
の話であるからだ。
しかしながら、現世において高い霊能力を持った神野さん(仮名)が、前世での記
憶の断片として、垣間見たという夢のお話であるのだ…。
「人の死後に、その魂が別の肉体を得て生まれ変わる」
これは俗に言う「転生」と呼ばれる事象である。
…もしも自分の前世。
現在の自分が生まれてくる前の記憶を夢で見たとしたならば・・・?
あるいは、この様な想いを抱くものなのかもしれない・・・。
…今回のお話は、神野さんの語る前世の記憶…その断片のお話である。
夢の中での彼女は、20代後半くらいの男性であったと言う。
そして、軍隊に召集された彼は、宮内(仮名)と言う男性と親しくなったらしい。
二人で良く出かけては、ふざけあいながらも親交を深めて行ったのだと言う…。
…しかし、二人は別々の隊に配属される事になってしまったのだった。
そんな中、戦時中の規制もある為に、大した事は書けなかったが、二人は良く手紙
のやり取りをしていたらしい。
その内容と言えば、天気がどうだとか、寒いから身体に気をつけろだのと言った、
無難な事ばかり綴られていたらしいのだが、いつも必ず文面の最後は「また逢おう」
と言う言葉で結ばれていたと言う…。
しかし、数ヶ月後に宮内さんからのぷつりと手紙が途絶え、彼が特攻隊として戦死
した事を告げられたのであった…。
「今度は私が行く番だ…。直に逢えるよ、宮内…」
しかし、神野さんは生き残り、再び祖国の土を踏む事になったのであった…。
彼は小さな工場の工員になって働き、ネオンの灯った町を歩きながら、この復興し
た街に宮内がいれば良かったのに…と、どんなに願った事か知れなかったと言う。
「多分、この後。結婚も出来ないまま病死したのでは無いでしょうか・・・?」
…彼女は、前世の自分に対して、そんな風に感じているらしい。
そして…現代。
「ううん。独り言よ。何でもないわ」
その場は笑顔で取り繕ったのだが、神野さんの恋人である風見さん(仮名)の中
に、ふと宮内さんの前世の魂を感じたのだと言う…。
姿形や性別…そして、関係すら変わってはしまってはいたものの、あの頃にしてい
た約束…「また逢おう」と言う約束は守られて、二人の再会は、輪廻転生と言う形に
よって果たされたのであった…。
勿論、風見さんの中には、かつて自分が宮内と言う名の青年であったと言う前世の
記憶は埋もれ、もはや知る事も無いであろう…。
…神野さんは次の様に語っている。
それが、どの様な運命によって引き合わされたものなのかは解らない。
でも、私達は、あの時の様に楽しく過ごしているのだ…と。
現世で深く関わっている人物の中には、前世からのつながりがある方も多くいると
言う話があるが…今回のお話もきっと、そう言った類の、目には見えない運命の糸に
よってもたらされた出会い…いや、再会のお話であったのかもしれない…。