霊媒体質。
今回のお話は、ひとみさん(仮名)が、その特殊な霊媒体質により、様々な霊に身体を貸してしまうと言った、所謂【憑依現象】と呼ばれる体験をしたと言う、非常に興味深いお話である。
…実は今回のお話を聞かされる前に、私自身が彼女の写真を視た所、彼女の持つ虹彩が非常に特
殊な色をしている事を指摘し、また、その顔つきから過去の男性遍歴の事や、霊の影響を受けや
すく、時に操られる様な事もあるのでは無いか…と言う様な話を伝えた事から、過去に彼女が体
験したお話を聴かせて頂ける事になったのである…。
それは、彼女にとって忘れる事の出来ない一日…。
平成16年1月16日の事であったと言う。
…その日は、何の連絡も無いままに、ご主人は帰宅してこなかったのだと言う。
しかし、それ以前から、ご主人とは仮面夫婦と化しており、俗に言うセックスレスで、会話ら
しい会話も、ほとんどしなくなっていたらしい。
そんな背景もあってか、彼女は、ご主人からの連絡が全く無かった事にも、どうせまた他の女の部屋にでも泊まってるんだろうとしか考えておらず、特に心配もしていなかったのだと言う。
…そして日付が変わり、最初の異変が起こったのは17日の事だった。
それは、深夜の午前一時…突然、一本の歯に激痛が走ったかと思うと、異常な吐き気を覚えた
らしく、また、ストーブの前に座っているにも関わらず、寒くて寒くて仕方がない様な状態にな
ったのだと言う。そして、その状態は朝方まで続いたのであった…。
…そんな中、警察から彼女の自宅へ、一本の電話が入ったのであった。
車に目張りをして、練炭自殺をした男性がいたとの事で、所持していた免許証から、それが彼
女のご主人である事が確認されたのだと言うのだ…。
彼女は、その遺体の確認の為に、警察署へと赴いた。…そして、その死亡推定時刻は、彼女の
身に異変が起きた時間と一致する…午前一時から三時頃であったと言う事であった。
それは彼女が、ご主人の遺体を一目見た瞬間の事であった。
背中に激しい衝撃が走ったかと思うと、彼女の意志とは関係ない言葉が口から出てきたのだと
言う…。
「あ〜あ。一人は嫌だ…。寂しい。…誰か、連れて行きたい。一人は寂しい。あ〜あ…」
それは紛れもなく、彼女の自殺したご主人の言葉であると彼女は感じたらしい。自殺したご主
人の霊が、彼女の身体の中に入り、彼女の意志とは関係の無い言葉を発していたのであった。
…そして彼女は、下半身に力が入らない状態のまま病院へと連れて行かれた。
体温は33℃。…血圧は測定不能。
しかし、そんな彼女の異変は留まる事が無く、相変わらず呟き続けていたのだと言う。
「あ〜あ。一人は寂しい…。あ〜あ。誰か、連れて行きたいなぁ…」
その間は、寒いとか、熱いなどという身体の感覚は失われ、空腹すら覚えなかったらしく、そ
して相も変わらず、彼女の口から出てくる言葉は…自殺したご主人の愚痴ばかりであったしい。
「あ〜あ。車内は寒かった…。一人は寂しい…」
…そして、そんな状態のまま、ご主人の遺体を火葬する日を迎えた。
すると彼女の中にいる、ご主人の霊が、彼女の身体を借りたまま暴れ出したらしいのである。
「嫌だぁぁ〜!怖い〜!一人は寂しい。嫌だ〜!嫌だ〜!怖い!怖い〜!」
彼女はまるで狂ったかの様に、火葬場で暴れ出していたらしいのだが、そんな中でも意識だけ
はあったらしく、次に彼女の眼に映った光景は、天へと昇る金色の光であったらしい…。
そして、彼女の中から、ご主人の霊は抜けていったのだと言う…。
…だが、それで全てが終わった訳では無かったらしいのだ。
その場所は…他の霊が多数、存在しても可笑しくは無い【火葬場】である。…すぐに彼女の元
へ、違う女性の霊が近寄ってきたらしく、次の様に彼女に告げたのであった…。
「糖尿病で失明しました…。入院したまま逝きました。…目を貸して下さい」
またしても背中に衝撃を受け、彼女の中に、その女性は入ってきた。
そして、その女性の霊は、しばらくすると彼女に対して、例を述べたのだと言う…。
「冬景色…。雪…。ありがとう…」
身体を通じて、周囲の景色や感覚を感じたかっただけらしく、その女性の霊はすぐに抜けたら
しい。
…だが、しかし。またしても彼女の中に一体の霊が入ってきたのである。…それは、凄まじい程
の殺意を抱いた男性の霊であったと言う。
「犯人を殺す!俺の人生を奪った犯人を許せない!殺す!」
彼女は、入れ替わり立ち替わり、霊に身体を貸し続けていた事により、自分の身体の制御が利
かなくなったらしく、そのまま気絶してしまったらしい…。
…そして、次に目を覚ましたのは病室であったと言う。
しかし、その激しい殺意を抱いた男性の霊は抜けておらず、その場に居合わせた医師にまで殺
意を向けて、首を絞めだしたと言うのだ。
「…犯人を教えろ!お前が犯人かッ!」
その様子を見ていた彼女の母親は流石に恐ろしくなったらしく、お寺に相談をすると、お祓い
を依頼したのだと言う…。
そして、お寺へと連れていかれた彼女は、お祓いをする事になったらしいのだが、その状況は
凄まじいものであったと言う…。
涙や鼻水を垂れ流し、喚き散らしながら荒れ狂い、のたうちまわっていたらしいのだ。
「お経を止めろ!止めろ!犯人を殺すんだ!お経を止めろ!」
…そんな風に喚き散らしながら、その僧侶の首を絞めにいったらしく、すぐにお寺の見習いに押
さえつけられたらしい。
苦しさを感じながら、のたうちまわり、狂った様に言葉にならない声を発すると、ようやく、
その男性の霊は抜け、再び彼女は気絶してしまったのだと言う…。
…そんな出来事が起こってから数週間の時が流れた。
(霊が身体に入った…?霊は実際にいるのか…?)
彼女は、自分の身に起きた出来事に疑問を感じていたのだと言う。
そして、彼女は地元でも有名な、ある霊能者の元を訪ねたのであった…。
その年配の女性は何も言わずに、彼女の額に手を当てて、何かと話を始めたのだと言う…。
「そう…。うん…うん…。救急車にも乗ったんだね…。うん…うん…」
そして、その霊能者の方は、ひとみさんに対して次の様に告げたらしい。
「…貴女は非常に憑かれやすい。今、身体を借りたい為に、五人の霊が並んでいる。もう二度と
身体を貸しては駄目!貴女の心臓がもたないから。もう身体を貸しては駄目!」
そんな忠告を彼女にすると、その五体の霊の浄霊とお清めを彼女に施したのだと言う…。
…そして最後に、御守りを彼女に渡しながら、その霊能者の方に告げられたらしい。
「貴女は非常に珍しいタイプだ。四国八十八カ所は貴女を待っている。貴女は人生で必ず八十八
カ所から呼ばれる人物です。…貴女は非常に珍しい能力を持っている」
…今回のお話は、彼女が霊媒体質であったが故に起こった現象だと思われる。
霊媒とは、霊やその他の実体の無い存在からの言葉を受け取る事が出来たり、または交信する
事で、その身体を通して会話をさせたり、書かせたりする事が出来る者の事である。
…しかしながら、彼女は、その制御が出来る程の能力を持ち得なかったが為に、その身体を支配
されてしまい、所謂、取り憑かれたと呼ばれる様な状況に陥ってしまったのでは無いであろうか
…?
今回のお話は、本当に恐ろしいひとつの体験談であった。