お祖母さんが亡くなった時
今回のお話は正直な所、心霊体験では無い。
…しかし、虫の知らせとも言うべき出来事であり、また一時の奇跡とも言える体験談である。
玲子さん(仮名)の祖母は、数年前にリウマチから来る合併症により突然、危篤状態に陥って
しまった。…そして、救急車により病院に運ばれた玲子さんの祖母は、すぐにICU…集中治療
室へと入ったのである。
…そして、今回のお話は、もって半月位であろうと医師から余命の宣告を受けてから、一ヶ月以
上も経過した頃のお話である。
その時期は玲子さんも仕事が忙しかったらしく、なかなか祖母のお見舞いにも行けずにいたの
だが、ある日、急に「お祖母さんの所に行かなきゃ」と急かされる様な気分になった彼女は、仕
事を早退すると、すぐに病院へと足を運んだのだと言う…。
病院に到着した彼女の見た祖母は、ずっと意識の無い状態であったらしく、人工呼吸器や、様
々な管や機械につながれた様な姿であったらしい。
彼女は意識も無いままの祖母に話しかけたのだと言う…。
「お祖母さん、ウチだよ…判る?ずっと来られなくてごめんね…」
…すると、意識の無い筈の祖母の目が少しだけ開いたかと思うと…涙を流していたのであった。
そんな祖母の姿を見て、彼女は泣きそうになったのだが、込み上げてくる涙を堪えながらも、
努めて明るく話しかけ続けていたのだと言う…。
それから、かれこれ二時間ばかり、お祖母さんの側にいた彼女は、一時の間だけ、お祖母さん
の側を離れる事にしたのであった。
「お祖母さん、買い物に行くから…また来るね」
そう告げると、彼女は病院を後にしたのだと言う…。
…しかし、それから僅か、一時間後の事であった。
彼女の携帯電話に、お祖母さんが亡くなったとの知らせが入ったのだと言う。
慌てて病院へと戻り、看護師に話を訊いてみた所…。
彼女が病院を立ち去ってから、直ぐにお祖母さんは心肺停止状態に陥ったらしく、蘇生処置
を行ったらしいのだが、その甲斐も無く、三十分後に息を引き取ったとの事であったのだ…。
「何処にでもありそうな話だけど…もし、あの時に病院に行かなければ、最後に顔を見る事は出
来なかったでしょう…」
そんな風に玲子さんは語っていたのだが…。
普段は行けなかったのに、仕事を早退してまで病院へ駆けつけた彼女…。
意識の無い筈のお祖母さんの目が開き、其処から零れた涙…。
彼女が立ち去った直後に、冥途へと旅立ってしまった事…。
このお話には、不思議な偶然…いや、偶然という事柄が存在しないと言うのであれば、彼女を
引寄せた不思議な力が其処には存在していたのかもしれない…。