ナンバーディスプレイ。
今回のお話は、茂樹さん(仮名)が体験したという不思議な体験談である。
茂樹さんの母親は亡くなる二〜三日ほど前から、身体の具合が急に悪くなり、当の本人は、風
邪か何かの軽い病気だろうと思っていたらしく、病院には行かず、床に臥せっていたらしい。
…しかし、午前四時頃、母親の容体の急変に気づいた茂樹さんと父親は、すぐさま病院へと搬送
する事となり、そのまま緊急手術をする事になったのだと言う。
…その手術が終わったのは、午後三時位であったらしい。
医師の説明によると、今夜が峠であろうと…。
そして助かる確率は二〜三割程度であるだろうと、残酷な事実をつきつけられたのだと言う。
麻酔が効いた状態の母親は、危篤状態が続いているものの、容体は安定していると言うので、
父親と一旦、帰宅して、その間に大阪にいる妹の優希さん(仮名)を呼んで、あわただしくして
いるうちに、病院から連絡があったのだと言う…。
「命が危ういので早く来てください!」…と。
そして、午後十二分…母親は帰らぬ人となった。
病院で、あの世への旅支度を終えた母親を自宅へ搬送し、一息ついてから、茂樹さんは眠る事
にした…。
…それから、どれ位の時間が経った事だろうか?
突然、電話の子機が、けたたましく鳴り響いたのであった。
…しかし、その子機を見ると、ナンバーが表示されていなかったのだ。
茂樹さんのお宅では、着信時にナンバーディスプレイに加入しているので、着信時には必ず、
その電話番号が表示される様になっている。
時間的に…いや、感覚的に。
これは母親からの電話なのであろうと察しがついた茂樹さんは、出るのも恐ろしく、しばらく
放置していると、その電話は切れてしまったらしい。
時計を見ると、午前六時二十分を少しまわった頃の事であったと言う…。
そのナンバー4が表示されていない電話に、もし出ていたら…。
肉体を失った母親からの最後の言葉を聴く事が出来たのかもしれない…。