仮面ライダーフリークス&恐怖!夜伽話

      靄のかかった写真。


 今回のお話は、ひよりさん(仮名)が体験した憑依現象に纏わるお話である…。

 ひよりさんは、その日亡くなった愛犬の納骨に行っていたのだが、その直後に彼女の持つ、精
神病のひとつ「人格障害」が発症してしまい、幼児人格に交代してしまった彼女は、そのまま救
急車に乗り、病院へと運ばれたのであった…。

 病院で、まるで子供の様に手を叩きながら無邪気に走りまわっていた彼女だったが、じきに治
まり、点滴治療を受ける事となったらしい。…しかし、その場にいた一人の看護師より、次の様
な声をかけられたのだと言う…。

「あの…何か憑いてませんか?…何か視えているんじゃないですか?」

 ひよりさんの眼には何も映ってはいなかったのだが、しばらく、その看護師と霊に関しての話
などをしていたのだと言う。


…その後、帰宅した彼女の元に霊感が強いという友人から電話があったのだと言う。

 何でも、胸騒ぎがしたらしく彼女に電話をしてきたとの事であったのだが、電話口で病院で起
きた出来事を次々と言い当てた上に、彼女に五歳くらいの少女の霊が憑いてきているが、喜んで
いるだけで実害は無く、今晩中にも満足して離れていくだろうとの事であったらしい。

 彼女も落ち着きを取り戻し、念の為にと私の元へ携帯で撮影した写メールを私宛に送ってきた
のである。

…しかし、送られてきた写真は、普通の写真では無かったのである。
 その写真には、まるで彼女の身体を包む様に靄(もや)がかかっていたのだ。

…だからと言って、心霊写真だと断定するのは軽率である。
 例えば、レンズが傷ついていたのかもしれないし、線香を事前に焚いていたのかもしれない。

 現実的な要素を全て取り除いたうえで残ったものが真実だと言えるのでは無いだろうか…?

…だが、その写真を視ているうちに、ある決定的な出来事が起こったのである。
 写真であるにも関わらず、その靄の一部分が赤く変色をし始めたのであった。
 

 
赤い色は心霊の世界では、霊からの怒りや攻撃…また強い警戒職を現すとされている。

 流石に私も気味が悪くなり、即座に写真を消去すると共に、彼女にも写真を処分する様に奨め
たのであった…。

…その後、彼女から電話がかかって来たのだ。彼女自身は、その写真に関して、一切不審な点は
見受けられなかったらしいのだが、私は話の流れから靄の変化した部位を彼女に伝えたのだ。

「これ…携帯の自分撮り設定だから、逆に見なきゃいけないんだよね。…写真からすると、身体
の左側が赤く変色したよ」


…すると彼女は驚いた様に次の様に話し始めたのであった。

「え…左側…?今日、病院で検査をする時、全く左手が動かなくって、脈拍も取れなかったし、
点滴も出来なかったんだよ…」



 そこで私は、彼女に線香や粗塩…また日本酒の有無を訊ねると、日本酒は無いが他のものはあ
ると言っていたので、とりあえず粗塩を一掴み食べると共に、部屋の陰気を祓う術を伝えた。

 線香を九本焚き、それが燃え尽きるまで、部屋の窓を一寸ほど開けておくと言う方法である。

 その晩は、何処からか鐘の音が聴こえてきたりしていたらしく、それにも怯えていたらしいの
だが、そんな些細な事は気にしなくても良い話である。…何故なら、それは自身の霊感によるも
のではあるが所詮は外部のものであると判断したからだ。

…また、霊感の強いと言う彼女の友人が「今晩には離れていく」と言っていた事を聴いていたの
で、ひょっとしたら言う通りに、今晩中には治まるかもしれない…とも思ったからである。

 彼女は念の為に、粗塩を食べて、お香を焚き、般若心経を唱えてから眠りにつくとの事で、日
本酒が無い事が、気がかりではあったのだが、ひとまずは様子を見る事にしたのである。

…ただ、靄の赤い色だけが気にはなってはいたのだ。

 そして私も事前に、強い霊感を持ち、そう言った事柄に詳しい友人である耕司さん(仮名)に
も、アドバイスを受ける準備をして眠りについたのだった…。

…そして、その翌朝の事である。悪い方の予感が的中してしまったのだ。

 彼女の左手が勝手に動き、自分の首を絞めたい衝動に駆られ、必死にそれを抑え込んでいるの
だと言うのだ…。

 私がそのメールに気付いた時には、既に彼女は日本酒を買いに出かけていたのだが、しきりに
自分の首を絞めたい衝動に駆られて仕方が無かったのだと言う。

…そこで私は、まず耕司さんからのアドバイスを告げた。

「九字を切って、光明真言を唱えてください」

 九字切りとは、邪気を祓う護身の術であり、今回は簡略化した刀印…握りこぶしから、人差指
と中指を揃えて立て、「臨兵闘者皆陣列在前」の声と共に、左から右、上から下へと交互に切っ
ていく方法を伝えた。


 また光明真言とは、密教の呪文である。二十三の梵字から成り、最後の休止符「ウン」を加え
て二十四の梵字を連ねると言うものである。その全文は「おん あぼきゃ べいろしゃのう ま
かぼだら まに はんどま じんばら はらばりたや うん」である。

 それに加えて、蛇憑き等を祓うと効果があると言われている術で、冷水を三度浴びると言う方
法や、雑魚の様な霊を祓い、生霊を憑きにくくする効果があると言われる日本酒風呂…浴槽の湯
に、清酒をお猪口一杯程度加える術を奨めておいた。

 彼女は、帰宅するとすぐに全ての術を施すと、そのまま気付かないうちに眠りについてしまっ
たのだと言う…。その後、目が覚めた彼女は、幾分か身体が軽くなったらしく、この一件はひと
まず片付いたのであった…。


…しかし元来、憑依体質である彼女にとっては、いつまた今回の様な霊現象に悩まされる事が起
きるかもしれないのではあるのだが…。