奇形。
今回のお話は、かつて樹花さん(仮名)が体験したという、なかば魔物化してしまった霊に関
する恐るべき体験談である。
それは、当時の彼氏と同棲していた時の事であった…。
彼女は妊娠してしまい、色々とあって、なかなか病院へ足を運べずにいたらしいのだが丁度、
五ケ月目に入った頃に、妊娠を確認したのだと言う…。
しかし、二回目の検診の際に、癌検診に引っかかったらしく、今度は大きな病院で検査をする
事になったらしい。
…その検査をする前日の夜に、彼女は恐怖の体験をする事になったのであった。
夜、ベッドの中で眠りについていると、突然、身体が動かなくなったのである。
そして、彼女の身体の上を、足元から【何か】が這い上がってきたのだと言う…。
見てはいけないと思いながらも、彼女は視線を、その【何か】に移してしまったらしいのだ。
…それは、青白い身体をした得体の知れない小さなもの…。
更に良く視ると、手足が逆についている様な青白い子供の様な姿をしたものであったと言う。
それが、彼女の体の上を、お腹を目がけて這い上がってきたのであった…。
彼女は、お腹の中にいる赤ちゃんに、もしもの事があっては不味いと思い、必死に振りほどこ
うとしたらしいのだが、意に反して身体は全く動けない状態であったのだ。
そして、その得体の知れない子供の手が、お腹の中に入るか入らないかの所で、その者は、に
やっと笑うと、そのまま、お腹の中に手を入れてきたのであった…。
そこで、ようやく悲鳴をあげて、飛び起きることが出来たのだと言う…。
隣に寝ていた彼氏も、その悲鳴に慌てて飛び起きたらしいのだが、何が何だか解らず、ただた
だ、恐怖心と、お腹の中の赤ちゃんに何かあったのではないかと言う思いだけだったらしい。
…そして、翌日の検査の日に、とんでもない事実が発覚したのだと言う。
それは、お腹の中の赤ちゃんが【奇形】かもしれないと言う事であった。何らかの理由で、赤
ちゃんの、お腹の皮がうまく形成されずに、内臓が飛び出していると言う残酷なものであったの
だ。
更に、子供医療センターに行って、詳しく調べてみないと解らないが、程度によっては、産ま
れても直ぐに死んでしまう程のものであったと言う…。
…そして、その結果は、最悪の答えであったらしい。
しかし、まだ五ケ月と言う事もあり、散々悩み抜いたのだが、結局、彼女は中絶の道を選んだ
との事であった…。
ちなみに、この霊現象が起こる前に、彼女には二度の中絶経験があると言う。
そして、あの青白い子供に関しては、未だに何かの知らせであったのか、悪いものであったの
かは解らないままであるらしいのだ…。
ただ、その時の恐怖心は今でも忘れられず、あの者の不敵な笑みは何だったのかと、今でも時
折考えるのだと言う…。
そして、また彼女はこの後にも、二度の流産を経験しているらしいのだ…。
…さて、聴く所によると、彼女は今まで幾度かの中絶や流産を繰り返しているものの、水子供養
は一切、行っていなかったのだと言う。
彼女の元に現れた異様な姿の青白い子供が現れるまでにも、二度の中絶を行っている事とな
る。
…とすれば、その青白い子供は、ひょっとしたら、以前に中絶した子供達の変化した霊なのかも
しれないし、そうでは無いのかもしれない。
しかし、この世に産まれて来なかっただけで、その子供達は、れっきとした彼女の子供であり
彼女がその母親である事には違いは無く、その子供達の魂は母親を求め、また供養を求めている
のかもしれない…。
もしも、自分達が中絶と言う形で、その生命を奪われているにも関わらず、子供を産もうとし
たならば、何故に、その子だけ産まれる事が許されるのか…と、妬ましく思う事もあるのでは無
いだろうか?
今回のお話を聴いた私は、ふと、そんな事を考えてしまうのである…。