灰色の何か。
今回のお話は、ある朝に私自身の身に降りかかった恐怖体験談である…。
この頃、私は昼からの勤務になるショートタイムのアルバイトをしていた。
朝の六時半頃に目覚め、軽い食事をとると、まだ時間があるので二度寝をしたのだが…。
突如、私の身体が動かなくなって目を覚ましてしまったのである。
俗に言う「金縛り」である。
…しかし、それだけでは無かった。
私の身体の上に何者かが乗っており、その掌で私の胸元を跡が残るのでは無いかと思う程に、グイグイと絞めつけてくるのであった…。
その体長は胸元から太腿あたりまであったので、約二尺程度であったであろうと予測される。
心の中で九字を切ったりしたものの、そんな些細な抵抗では効かず、逆に締め上げる力が強くなっていくのを感じていた…。
もう朝方だと言う事で、とりあえず誰か友人が起きているだろうと、渾身の力を振り絞り、その不自由な手を、ゆっくりと伸ばして、何とか携帯を操作しようとしたのだが…残念な事に携帯は誤作動を起こしてしまい、いつもの半分程度の画面の大きさでテレビを映し出したり、電源を切ったかの様に画面が真っ暗になったりと、まるで使い物にならなかったのである…。
…次に私は、私自身に乗っているものの姿を視ようと試みたのだが、思う様に首がまわらず、目視する事は叶わなかった…。
しかしながら頭の中で、それがどういったものであったのかの映像は組み立てられていた…。
それは灰色の人間の様な形をした何か…人間とも、妖怪ともつかない、のっぺらぼうの胎児の姿を思わせる様な何かであったのだ…。
かなりの時間を、そんな状態のまま過ごしたのだが、突如、鳴り響いた携帯の音と共に、全ては終わった…。
それは目覚ましとしてセットしておいた時間…午前十時であった。
長い恐怖から解放された私は、もう落ち着いており、次の様な事を考えていた。
もう少し眠って、また金縛りにあったとしたら…。
私は会社の無断遅刻の原因を「金縛りにあっていた」などと言う馬鹿げた報告をしなければならないのか…という事であった。
幸いにも、再び金縛りに遭う事は無かったのだが…。