集まってくる霊たち。
今回のお話は夏美さん(仮名)が体験した、浮遊霊や地縛霊が次々と自宅に訪れた際の、恐怖の一夜の体験談であり、また同時に私が、その状況の一部始終をリアルタイムで伝えられていた際のお話である…。
それは、ある晩の事…。
その出来事は、彼女の部屋の中から響いてきた、ひとつの唸り声から始まった。
まるでサラウンドを響かせているかの如く、彼女の耳元で、男とも女とも言えない声が耳に纏わりついてきたのであった…。
「…ああ〜…ううう〜…ぎぃやぁ〜!う〜う〜…あ〜…うぅ〜」
最初は怖いと言うよりも、むしろその声のあまりの煩さに嫌気がさしていた程度だったらしいのだが…。
次第に、そんな声が、続々と増えていったのだと言う。
「…白い花が見つからないわっ!あなたが盗ったの!」
彼女は既に、その日シャワーを浴びた後だったのだが、恐怖心を覚え始めたらしく、脂汗をかいた彼女は、再度シャワーを浴びに行ったのであった。
しかし、シャワーを浴びて部屋に戻った彼女は、もう正常ではいられなかったのだ…。
彼女は思わず叫んでいた。
「いや〜!ちょっと誰か助けてよッ!まだまだ来てる。鳥肌が立つわッ!どうしよう…。」
彼女が悲鳴を上げたのも無理はない。…何故なら、その部屋にいた霊たちは、その数を増し、口々に様々な事を訴え始めていたのだから…。
「…私を見つけて!右腕が見つからないの」
「…ねぇねぇ。僕と遊ぼうよ!ねぇ、遊んでよ!何で遊んでくれないの!」
「…お話しようよ…。つれないねぇ…こっちにおいでよ…楽しいからさぁ…」
彼女の恐怖心は限界に達し、壊れそうだと訴えていた。…そして私の元に深夜にも関わらず電話がかかってきたのであった…。
この霊たちを引き取ってもらえませんか…と。
幸いにも、私は霊感低迷期であり、電話口からも何の声も聞こえず、またこちらに来たとしても視えるとは思っていなかったので、軽く「いいよ」と返事をしたのだが、その霊たちが電波に乗ってやってくる事は結局は無かったのだが…。
聴く所によると、彼女は「悪霊退散」と叫びながら、部屋中に粗塩や日本酒を撒いていたのだと言う。
…しかし、その最中にも、その霊たちは、まるで呼び寄せられるかの様に増殖していったのだと言う…。
「…俺の首は何処へ行った…?」
私は彼女に、その霊たちの中で視えるものはいるのかを訊ねてみた。
その返事は次の様なものであった…。
「遊ぼうよと執拗に誘う子供の霊が最も強く感じるの、橙色か…赤く光ってるよ…。ずっとしつこくて…」
しかし、私には、その場をどうする術も持ちあわせてはいなかったのだ…。
お香を焚いて、日本酒を供える程度のアドバイスしかする事は出来ずに、そのまま電話を切る事になった…。
…そして、夜も明けて、私の元に一本のメールが入った。
「おはようございます。昨夜は纏わりついてきた地縛霊に泣かされたわ…では、有難うです。すっかり悪霊退散させるのに成功しました」
…と。