祓串
開かずの間。

仮面ライダーフリークス&恐怖!夜伽話
 今回のお話は恵理さん(仮名)の知人である、みのりさん(仮名)が体験した…俗に言う開か
ずの間に関する実に恐ろしい心霊体験談である…。


 みのりさんがまだ、大学生であった頃は女子寮に入っていたのだと言う…。

 そして、その女子寮には、ひとつのフロアに三つの部屋があり、一部屋に対して、先輩と後輩
の二人で住むと言う様な決まりがあったらしいのだ。

 彼女の暮らしていたフロアのうち一部屋は、彼女と先輩である奈々さん(仮名)が同居してい
たらしい。そして、もう一部屋も同じ様に同じ大学の先輩と後輩が同居していたらしいのだが…
最後の一部屋。そこだけは何故か空き部屋となっており、ドアノブに頑丈な鎖が幾重にも巻きつ
けられ、決してドアが開かない様にしてあったのだと言う…。

 それは、ある日の夜の事であった。

みのりさんは隣の部屋に住んでいる先輩を部屋に呼ぶと、三人で楽しく会話を弾ませていたらし
いのだが…。

…そのうち、妙な事に気がついたのだと言う。

 彼女と同じ部屋に住んでいる先輩の奈々さんだけが、見えない誰かと普通に会話をしている様
な素振りをしている事に気がついたのだと言う…。その様子はまるで、四人で会話をしているか
の様であったらしい…。

 そこで、みのりさんは恐る恐る、奈々さんに訊ねてみたのだと言う。

「先輩…あの…誰と話をしているんですか?」

 すると、奈々さんは笑顔で彼女に答えたらしい。

「いや、この人が彼に今から会わせてあげるって言うから…」

 彼女が視線を向けたそこには、誰もいない筈の空間があった。…みのりさんは不気味さを覚え
ながらも再度、訪ねたらしい。

「え…?この人って…?」

 奈々さんは、何を言ってるのか分からないといった様子で彼女に答えた。

「ほら…この人よ!」

 当然、その空間には…誰もいなかった。…そして流石に、みのりさんの中にも、恐怖心が湧き
上がってきたらしい。

「え…ど…何処に…」

 戸惑う彼女をよそに、奈々さんは、その見えない誰かと話を続けていたのだと言う。

「今すぐに会いたいわぁ〜。お願い!会わせて〜!」

 そんな様子の奈々さんを、その見えない何かから引き戻す様に、現実的な話を始めたのだ。

「せ…先輩!彼とは遠距離恋愛だって言ってましたよね!?今すぐに会える訳が無いじゃないで
すかっ!?」


 すると、奈々さんは彼女に対して次の様に答えたのだ。

「この人が会わせてくれるって言うからぁ…けど…」

 そこまで言うと、急に彼女の声がガラリと変わったと言う。

「…戻さないぞ!!」

 みのりさん達の恐怖は最高潮にまで達していたらしいのだが、その不気味な声を発した直後に
ふと奈々さん自身の声に戻ると、みのりさん達に向って次の様に叫んだらしいのだ。

「私のクローゼットの中に祓串(はらえぐし)が入ってるから、すぐに持って来て!!」

 奈々さんに言われるがままに開けた事の無い、そのクローゼットを開けると、神社などで良く
見かける、それらしきものが入っていたと言う。…そして、すぐに奈々さんに手渡すと同時に、
奈々さんは正気を取り戻したのだと言う…。

 一体、何が起こっていたのかすら分からないみのりさん達に、奈々さんは次の様に語り始めた
のだと言う…。

「私が昔、飼ってた犬が私を助けてくれた…あの時、私じゃなくって、飼ってた愛犬が、この棒
を持ってくる様にと貴女達に頼んだのよ…助かった…」


 そう伝えると、奈々さんは安堵の溜め息をついたのだと言う…。

 祓串とは、祓う対象となる人や物に向かって左・右・左と振って使用し、これによって祓串へ
と穢れが移ると考えられているものである。

 どうして、そんなものを奈々さんが所持していたのかを訊ねる事は出来なかったらしいのだが
彼女は霊感が強い為に、いつも身近に持っているのだろうと、後に一緒にその場に居合わせてい
た先輩と話していたのだと言うが…。

 そんな恐怖すら覚える程の体験をした後、隣の部屋の先輩が、自分の部屋に戻る為、廊下を通
った際の事…ある光景が彼女の目に映ったのであった…。

 それは硬く閉ざされていた筈の、例の空き部屋…。

 頑丈な鎖で幾重にも巻きつけられていた筈のドアノブの鎖が緩み、その開かずの間のドアが開
いていた光景であったと言う…。



 さて、皆さんも既に憶測がついていると思うのだが…おそらくは過去に何かとてつもない程の
霊的な事柄…それこそ万人が認めざるを得ない程の事件が、その部屋で起こってしまったが為、
もう二度と、その部屋に誰も立ち入れない様にと、ドアノブに頑丈な鎖を幾重にも巻きつけたの
では無いであろうか…?

 そして、今すぐに恋人と会わせるが、戻さないと言う言葉…。

 それの意味する所は…きっと、その開かずの間に閉じ込められていた邪悪な霊が、彼女の生命
を奪う事で、霊となった彼女が彼氏と今すぐ会う事は可能にはなる…しかし、そのまま、あの世
へと連れて行く…と言った所ではないであろうか?

 今回のお話は、幾重にも巻かれた鎖の封印を解き、そして…おそらくは生きている人間の生命をも奪ってしまう程の力を持っているであろう邪悪な霊に関する実に恐ろしいお話であった…。