写りこんだ女性
今回のお話は美穂さん(仮名)が、まだ中学生の頃に行った修学旅行での心霊体験談である。
行動を共にする為に、クラスの中で幾つかの班に分かれる事になっていたのだが、幸いな事に
仲の良い友人同士でグループになれた美穂さんは、その修学旅行を、とても楽しみにしていたの
だと言う。
そのメンバーの中で、所謂【霊の存在】を感じる事が出来るのは、美穂さん自身と、更に優れ
た霊能力を持っているという光さん(仮名)の二人だけであったらしい。
修学旅行にはスキーに行く事になっており、駅に集合した後に、新幹線に乗って、最後はバス
で目的地であるスキー場へと向かう事になっていた。
その最初の集合場所である【駅】から、今回のお話は始まるのであった・・・。
・・・【その女性】は駅にいた。それは、この世のものでは無い女性であった。
しかし、ただ居るだけの霊なんて、世の中には幾らでも存在しているものである。
彼女は少々良くない波動は感じていたものの、特に気にしない様にしていたと言う。
その女性と目が合ったと言う以外は・・・。
そして、隣で話していた光さんが、自分と同じ方向を見ていたこと以外は・・・。
やがて出発の時間になり、彼女たちは新幹線に乗り込んだ。
楽しい修学旅行の始まりである。
各々持参したインスタントカメラで、旅の模様を撮って楽しんでいた。
お菓子を食べてる所や、トランプをしている所。
おどけた顔や、ポーズを決めた顔など、いっぱい写真を撮った。
結構な移動時間を経て、ようやく彼女たちはスキー場のホテルに着いた。
部屋の記念写真や、外の雪景色。そして夜になると、お決まりの枕投げなど、これまた沢山の
写真を撮った。
ホテルの部屋の中に、ちょっと影を感じた気もしたが、楽しさの方が勝っていた事もあり、特
に、それ以上の害も無かったので、その影の様なものも、気にしない様にしていたらしい。
楽しい時間は、あっという間に過ぎて、帰りの新幹線の中では、みんな疲れて寝てしまったの
で、それ以上、写真を撮る事は無かったのだと言う。
もっとも、フィルム自体も既に全て、使い切ってしまっていたらしいのだが。
・・・そして楽しい修学旅行は終わったのであった。
それから数日後の事であった。
各々、修学旅行で撮った写真を現像し、学校に持ち寄ったのである。
「見せて見せて〜!」
「あ〜、新幹線の中だね〜!・・・あははっ!純子ちゃんの顔〜あはは・・・・・!!!!!!」
・・・その一枚の写真を視た時、瞬時に光さんと目が合ったのだと言う。
あの集合場所の【駅にいた女性】が、新幹線の窓に逆さにぶら下がって写り込んでいたのであ
った。
新幹線は走っているのだ。・・・当然、普通の人間では有り得ない。
その存在に気がついてはいたものの、他の霊を感じる事の無い子を怖がらせたくないと言う思
いから、彼女も光さんも、あえて口には出さなかったのだと言う。
そしてまた写真をめくると、バスの車内で写した写真が出てきた。
今度はバスの窓に・・・写り込んでいる。
そのバスの高さを考えると、通常の人間ならば、かなり背の高い人でも、頭がすれすれに写る
かどうかといった所に上半身が丸ごと、はっきりと写っていたのである。
位置で言うなら、バスに並んで浮かんでいる状態で無ければ、ありえない場所である。
・・・更に写真をめくると、今度はホテルの部屋の写真が出てきた。
そして、今度は部屋に浮かんでいた。
はっきりと・・・そして黒く【それ】は写りこんでいた。どう視ても良い感じでは・・・無い。
そんな風に写真をめくる度に、彼女と光さんは徐々に口数が少なくなり・・・ついには黙り込ん
でしまったらしい。
・・・しかし、他の子を怖がらせる訳にはいかない。
幸いな事に、写り込んでいるものの、視えない人にまで霊障がある程の力は無い様子。
光さんは相変わらず黙り込んでいたらしいのだが、彼女は努めて明るく振舞った。
「これと、これと〜この写真を焼き増ししてね〜」
そんな風に写した子に対してお願いをしたらしい。
そしてまた、光さんも彼女が選んだものと同じ写真を焼き増しして貰っていたと言う。
(多分・・・ひとりで抱え込んで除霊するつもりなんだろうな・・・)
彼女の思考は解ってはいたものの、除霊などする力のない彼女には、「(除霊と)同じ時間に
念を送るから・・・」としか言えなかったらしい。
私程度の念が一体、何の役に立つと言うのかろう・・・と。自分の中途半端な霊能力に少々、悔
しさを覚えながら・・・。
ここで、この投稿を頂いた美穂さんより、このお話を読まれている方に、良く覚えていて欲し
い事があると言う。
それは、生きている人間の念は、あなたが思うよりも、ずっと強いのだという事であった。
恨んだり、嫉んだりする念よりも、救いたい、守りたいという念の方が、ずっとずっと強いの
だと言う事である。
・・・そして後に、修学旅行の写真について光さんに訊ねると、次の様な答えが返ってきたのだと
言う。
「実は旅行中ずっと、あの女の人がついてきてたんだけど・・・美穂ちゃんが気付かない様に、美
穂ちゃんの能力にバリアをしてたんだよ」
・・・その優しさに感謝した彼女だったが、同時に何の力にもなれない自分が悔しかったらしく、
光さんには「ありがとう・・・ごめんね」としか言えなかったらしい。
・・・そして、光さん曰く。
どうやら、最初に駅で見かけた、目が合った女性の霊は、賑やかな修学旅行が羨ましくて、つ
いてきてしまった様であると言う。・・・そして、そのまま一緒に帰ってくると、駅で離れていっ
たの事であったらしい。
あの女性の霊は旅をすることに、思い入れや執着でもあったのだろうか・・・?
光さんは、多くを語らずにいたので、彼女には「いた」事と「写り込んだ」事以外は、未だに
何も解らないままであると言う。
・・・そして、女性の霊が移りこんだという【その写真】は、今も彼女の実家にあるのだと言う。