今回のお話は奥間さん(仮名)が、まだ中学生であった頃・・・。
その当時からの友人である美里さん(仮名)から聴かされたという、
ありふれていながらも、何処か心温まる様な心霊体験談である。
ある日、美里さんの祖母の体調が悪くなったとの知らせを受けて、
家族全員揃って、彼女の田舎へと見舞いに行く事になったのだと言う。
美里さんの父親は残念な事に仕事の都合上、予定していた日には行けなくなったらしく、
祖母へのお見舞いがてら美里さん達は、そのまま田舎の家に泊まる予定にしたのだと言う。
そして彼女と共に田舎へと行く事になっていた妹たちの支度まで整え、
夕方には仕事を終えて帰ってくる母親の帰宅を待っていたのだと言う・・・。
そして支度を終えた彼女もまた、髪を梳かして出かける準備をしていた時の事であった。
・・・美里ちゃん。
自宅の外から彼女を呼ぶ声が聴こえてきたのだと言う。
彼女は母親が、いつもより早く仕事を終えて、
帰ってきたものと思ったらしく、その視線を屋外に向けたのであった。
・・・しかし、思いがけない人物が彼女の目に飛び込んできたのであった。
それは何と・・・体調を崩していた筈の祖母の姿であったのだと言う。
その祖母が何故かそこにいて、彼女に背を向ける様にして立っていたらしいのだ。
そして彼女に向かって、その祖母は次の様に話しかけてきたのだと言う。
「・・・美里ちゃん。夕日が奇麗だよ・・・。お婆ちゃんと一緒に見ようよ・・・」
彼女は驚きながらも祖母の体調が回復し、遊びにきたのだと思ったらしく、
彼女自身も心の底から心配をしていたので、その姿を見て安心を覚えたのだと言う。
そして、祖母が来ている事を妹たちにも知らせるべく声をかけたのであった。
「ねぇ、お婆ちゃんが来てるよー!」
そんな風に声をかけて振り返ってみると既にそこに祖母の姿は無かったのだと言う・・・。
「・・・あれ?今までいたのに・・・?お婆ちゃん何処へ行ったんだろう?」
それから、しばらくして彼女の母親が帰宅してきたのだと言う。
・・・しかし、そこで彼女は思いもよらない話を母親から聞かされたのであった。
実は母親の職場に祖母が他界したとの連絡が入ったのだと言うのである。
もし、それが本当なら・・・。
先程、話しかけてきた祖母は一体何であったと言うのだろうか?
そんな釈然としない想いを抱きながら、彼女は祖母の家へと電話をしたのであった。
そして彼女が聞かされた内容によると・・・。
彼女が祖母と逢っていた時刻に、既に祖母は他界していたとの事であったのだ・・・。
美里さんは、祖母が他界する前に。
自分の下へ「最後の挨拶」に来てくれたのだと思ったのだそうだ。
・・・確かにこういう類の話は、良く耳にするかもしれない。
しかし、何となく心温まる話であるとは思えないであろうか・・・?
「あの世へと旅立つ前に・・・その魂だけが愛する者の元へ逢いに行く」
・・・彼女の祖母が旅立つ前に願った事。
それは愛おしい孫娘と共に、奇麗な夕日を眺める事だったのであろうか・・・。