迎える白狐。
このお話は水城さん(仮名)が友人の島崎さん(仮名)から寄せられたという、
心霊的な相談から始まる『一連の事件』の顛末である。
・・・それは数年前の事。島崎さんは転勤で故郷から遠く離れた町に越してきました。
会社が紹介したアパートに入り、新しい暮らしを始め、その数か月後。
帰宅してドアに振れると、何故か既に玄関が開いていたのでした。
・・・そう。彼女の玄関の鍵が何者かによって壊されていたのです。
怖くなった島崎さんは隣りに住む大家さんに警察へ通報してもらったのですが、
幸いにも盗られたものはありませんでした。
そして新しく二重に鍵をつけてから数日後。
今度は突然に配管からの水漏れが起こったのだそうです。
大家さんが、すぐに業者を呼んでくれ、たいした被害も無かったのですが、
奇妙な事に、他の部屋には異常は無く、彼女の部屋だけに水が漏れていたのです。
その後も、小さな怪我や災難が続いたらしく、
島崎さんは元来、霊などを全く信じようとしない人だったのですが、
おそらく、自分なりに「何か感じるもの」があったのでしょう。
「前に住んでいた人に何かあったのか?」
「近くで死んだ人はいないか?」
そういう事を調べるまでに至ったのですが、
特にこれといった出来事は無かったとの事でした。
途方に暮れた島崎さんは、水城さんの元に電話をしたそうです。
「思い過ごしだといいんだけど、あまりにも立て続けだから心配で・・・
一度、家に来て、霊視してくれないかな・・・?」
・・・そして、その電話から数日後。
水城さんは彼女の家を尋ねたのだそうです。
これといって嫌な感じは受けなかったのですが、
水城さんは、深夜に何か起きる場合も想定したらしく、
島崎さんの自宅に一晩、泊めてもらう事にしたのでした。
しかし、何も異常も起きないまま一晩が過ぎ、
そして、翌朝になり、二人で朝食を食べていた時の事・・・。
ふと水城さんは戸棚の空間が気になりました。
それは、実際にはその場には存在しない「ある物」だったのです。
彼女は探りを入れる様に、島崎さんに尋ねました。
「あそこに何か置く予定だったんじゃない?」
水城さんが何気なく指差した、その先を見て、
島崎さんは大層、驚いていたそうです。
そう、水城さんの眼に映った物とは・・・。
文庫本を数冊ならべた空間の開いた場所にハッキリと視えた白い狐の置物だったのです。
それを彼女に尋ねた所、以前に島崎さんが気に入って、
とある稲荷神社で購入し大事にしていた置物だったらしいのですが、
急な転勤になった際に、その置物を忘れてしまい、
うっかり実家に置いて来てしまったということでした。
そして、その白い狐の小さな置物は、
『私からの守護が届かない』・・・という様なメッセージが、
水城さんの頭の中に響いて来たのでした。
「大事にしていたのなら、実家から持って来て飾れば?気分転換になるかも?」
そういう風に、水城さんは彼女に告げ、二人で近場の稲荷神社にお参りしたのだそうです。
そして翌日には、島崎さんは帰省し、白狐の置物を大事に持ち帰り、
それを戸棚に飾る事にしたのでした。
・・・そして、その夜の事。
不思議な出来事が島崎さんの身に起こったそうなのです。
彼女が帰宅して扉を開いたら、
『白い綺麗な狐』が玄関マットの上に寝ていたのです。
その『白狐』は彼女に女性の声で、
「おかえりなさい、私も同居するからよろしくね」
そう告げると、そのまま姿を消したそうです・・・。
随分と興奮した様子で水城さんに電話をかけて来た彼女はその日から、
『霊の存在を感じるようになった』と言っていたそうです。
・・・そしてそれ以来。
島崎さんを悩ませていた災難はピタリとやんだのだという事でした・・・。