戦犯の叫び。
かつての戦争もその終わりを告げた。
その施設はやがて閉鎖され、取り壊され・・・そして時は流れた。
・・・とある街。
何処にでもあるショッピングセンターの屋上庭園。
そこは、幾つもの目撃例があるという、俗に言う心霊スポットと呼ばれている場所であった。
しかし反面、そのショッピングセンターは、劇場や展示場等なども完備されており、
土日ともなれば沢山の人が賑わうという、そんな普通の場所でもあったらしい。
そこで開催されていた「とあるイベント」に参加していた水城さんは、
イベントを楽しんだ後に複数の友人たちと飲みに行こうとしていたのである。
それはまだ、初夏の頃であったのだが、その日は特に暑かったらしく、
彼女達は、その屋上で冷たいお茶を飲みながら涼んでいたのだと言う。
そんな中。彼女の耳に届いた声・・・。
それは、激しい男性の悲鳴・・・そして、悲壮感を漂わせる啜り泣きの声等であったらしい。
それは強いビル風に混じって聴こえてきたらしいのだが、
間違いなく人の声であったのだと言う。・・・無論、この世のものでは無いのだろう。
彼女は、何度も首を傾げながら、声のする方向へと耳を傾けたのだと言う。
その声から彼女が感じたものと言えば、怖いと言う感情すら通り過ぎたもの・・・。
むしろ、胸を掻き毟られるような辛さや苦しさを秘めていたらしい。
そんな彼女の不審な様子に気付いたらしく、友人の一人である緑川さん(仮名)が、
「どうしたの・・・?」と声をかけてきたのだと言う。
それに対して水城さんは平静を装いながら、「何でもないよ」と返事を返したらしい。
しかしその後、「下のフロアで買うものがあるから」と、他の友人達に告げると、
緑川さんは、なかば強引に彼女の手を取り、引っ張っていったのだと言う・・・。
その頃の水城さんは、その霊的な能力のコントロールが出来ずにいたらしい。
何か不思議なものが視えたとしても、そのままに。
聞こえたとしても、そのままに。
そんな状態であったのだと言う。
そんな彼女を連れ出した、緑川さんも実はまた、霊感の強い人であったらしい。
緑川さんは彼女を、下のフロアのベンチに座らせると次の様に告げたのだと言う。
「この場所に何があるか・・・何が出るかは知ってるよね?
決して好奇心から耳を傾けたりしちゃ駄目だよ?・・・解った?」
水城さんは、彼女の忠告に素直に従う事にしたらしい。
緑川さんはそのフロアにある薬局で、目薬を買うと、
水城さんを連れて皆の下へと戻ったのだと言う。
「風が強くて目が痛かったから、目薬を買いにいった」と誤魔化しながら・・・。
その華やかなショッピングセンターの場所には、かつて戦犯を処刑した刑務所があったのだ。
そんな人々で賑わう屋上庭園には・・・今も慰霊碑が、ひっそりと立っているのだと言う。