ろくろ首。
ろくろ首
 今回は水城さん(仮名)が職場で体験したという一風、変わった体験談である。

 それは、ある日の昼間の出来事であった。
 職場にいた彼女は仕事の合間に席を立ち、トイレへと向かったのである。

 便器に腰を下ろした彼女の視界に妙な光景が映ったのである。
 何故か、自分の太腿が異常な程に、下に見えたのだと言う。

「・・・あれ?変だな?」

 直に頭がふらふらとし始めた彼女は、頭が天上近くに触れる感触がしたらしい。
 そして、彼女は思った。

(・・・あっ!これって・・・ろくろ首じゃない?)

 そんな状況を、ただ楽しんでいた彼女ではあったのだが、何せまだ仕事中なので、流石に楽し
んでいるばかりではいられない。

「下に参ります・・・下に参ります」

 彼女が心の中で、そう念じる事で宙に伸びていた彼女の首は、無事に身体に戻り、再び仕事場へと向かったのだという・・・。

・・・さて、ここからは【ろくろ首】に関する余談である。

 妖怪として認識されているろくろ首には、二通り存在する。
首だけが異様に伸びるものと、完全にはなれてしまうもので、いずれも普段は通常の人間と見分
けがつかないとされている。

 その名前の由来は、首が異様に伸びる所から、ろくろを回して、陶器を作る際に粘土が伸びる
様に、首が伸びる事からであると言う。

 霊的な解釈からすると、魂が肉体から抜けたものであるとする接もあり、魂が身体を離れて、首の形を形作っているものだと言われている。

 今回の水城さんの体験は、そういう視点で見ると実に興味深いものであるかもしれない。

 今回の水城さんの話は一種の幽体離脱現象であり、身体とつながったままの幽体が、あたかも
首が伸びているかのごとく視えたのかもしれないし、また完全に分離している場合は、そのまま
幽体が首の形を作っていたのかもしれない。

 古来より、妖怪とされてきた【ろくろ首】の中には、今回のお話の様に、一種の幽体離脱現象
を視る事の出来た昔の方が【妖怪】だと思ったものもあったかもしれない・・・と。

・・・少なくとも、私はそう思うのである。