連鎖する事故。
私も中古車を購入する際には、元のオーナーの事や死亡事故などと言った、
車や自分自身に何か悪い影響を及ぼすものなどが無いだろうかと気になる一人である。
・・・例えば、それが新車であった場合だとしても、
この世のものでは無い何かを、運悪く拾ってきてしまう場合や、
たまたま乗り合わせるといった場合もあるとは思うのだが、
出来れば、そういったものが「最初からは関っていない車」を選びたいものでは無いだろうか?
今回のお話は、奥間さん(仮名)が、まだ学生であった頃・・・。
初めて車を購入した際の話であり、それが「どの様な経緯」で、
「その様な車」と化していたのかは不明なままなのだが、
三年程度の短い所有期間でありながら異常に思える程、頻繁に事故を起こしていたという、
とある中古車にまつわる不可解なお話である・・・。
彼女の住む沖縄では電車などは走っておらず、交通手段と言えば専ら車であるらしいのだ。
奥間さんは折角、お金と時間をかけて免許がとれたのだから、
ペーパードライバーにはなりたくないと、とりあえず中古車を探す事にしたのだと言う。
道の両側に多くの中古車が並んでいる「中古車街」を歩きながら、
様々な車種を物色していたのだが、どうも彼女が考えていた予算からは、
大幅にオーバーしているものばかりであったらしい。
そうこうしている中で、とある中古車屋さんから人の良さそうな中年男性が顔を出し、
色々と話をしてみる事になったのであった・・・。
最初は税金や燃費などを考え、軽自動車を探していたらしいのだが、
彼女の選んだ「その車」は1000ccで自動車税もそれほど高くは無かったらしく、
また燃費についても軽自動車とあまり変わらず、軽自動車より大きくて広いと言う事もあり、
特に車種にこだわりも持っていなかった彼女は、軽い気持ちでこの車に決めたのだと言う。
そうして届いた「その車」に乗ってみると、
軽自動車の様に小回りが利いて運転しやすい上に、燃費もよく、
「良い買い物したなぁ」と、その当時の彼女は思っていたらしいのである。
そしてローンで購入した、その車の支払いの為に彼女はアルバイトを始めたのであった。
そこは、彼女の家から車で一時間近くかかっていたのだが、その頃は運転が楽しくて、
アルバイト先の職場も良い雰囲気であったおかげで、全く苦にはならなかったのだと言う。
・・・そしてそれから一ヶ月ほど経ったある夏の日。アルバイトの帰り道の事であった。
その頃、まだ学生であった彼女が学校から帰宅する時に最初の事故は起こったのだ。
家まであと少しと言う場所、坂道を下りカーブに差し掛かる道で、
思いのほかスピードが出てしまったらしく、そのまま対向車線に突っ込んでしまい、
対向車と正面衝突をしてしまったのだと言う・・・。
幸いにも怪我をした人もおらず、車の破損のみで済んだらしく、
相手の方にも、お詫びして修理代をお渡しして許して頂いたらしい。
そして、その事故を起こして以来、安全には気を付けて運転をした筈だったのだが・・・。
・・・その、翌年のある夏の日。
突然の雨により、路面の状態が悪くなっていたのであろう。
ブレーキが間に合わず、またも軽い接触事故を起こしてしまったのであった。
幸いな事に今回も双方、怪我もなくきちんとお詫びして許して頂いたらしいのだ。
奥間さんは当時の事を振り返って、次の様に語っている。
「ここまでは自己責任と思う。
これまでのことは運転技術の未熟さゆえの事故だと思うのですが・・・。
私の車の後に・・・お婆さんが乗っていると言われたのは、この頃でしょうか・・・。
直接私が聞いたのではなくて、私の姉の知人が言っていたらしいのですが」
そして、更にその接触事故は続いて行くのであった。
ここまでの中では、彼女自身の過失とも思われる事故ではあるが、
既に「2度の接触事故」を起こしている事も踏まえて、次を読み進めてみて頂きたい。
たった一台の車が、巻き起こすと言う点については、
異常とも思える程の接触事故の多さだとは思えないであろうか・・・?
そして、ここから先は「この車」に関った方々が、
事故に巻き込まれると言う展開に移行していくのである・・・。
・・・まずは所有者である奥間さん自身である。
姉の子供たちを保育園にお迎えに行った時の事である。
信号待ちで止まっていた際に、後ろから軽く衝突されてしまったのである。
どうも近くに事故車が止まっていて気をとられてしまっていたとの理由であったらしい。
幸いな事に、その時も怪我人は出なかったのだと言うのだが・・・。
そして、次の事故は彼女の車を借りて、車で仕事に行った彼女の父親が、
この事故の連鎖の渦に巻き込まれる事になったのであった・・・。
そうして起こった父親の事故。
その状況と言えば、何故か前回と全く同じ様な状況であった。
またも、信号待ちの停車時に後ろから衝突されてしまったらしいのだ。
そして今回もまたその理由は、何かに気を取られての脇見運転であったのだと言う。
更に事故の連鎖は続く。
今度は奥間さんが登校する際に新たなる事故は起こった。
信号のない道路で、細い路地から大きな道路へと合流する為に停車していた際の事であった。 またも同じく、後ろから衝突されてしまったらしいのだ。
そして、その理由とは、相手の方が車に乗せていた犬が、
何故かいきなり吠え始めた事に、気を取られてしまったとの事らしいのだ・・・。
この、後半の「巻き込まれた三件」については、
不可解な一致点がある事に、お気づきの方もおられるだろう。
・・・そう。その全てが追突であり、何かに気を取られて・・・と言う理由である。
そして全般について言える事と言えば、
幸いな事に怪我人は誰もいなかったという点が唯一の救いなのでは無いだろうか・・・?
流石に奥間さんも、この車には、
何か霊的なものが関与しているのでは無いかと思い始めたのであろう。
その後、彼女の友人が一日だけ車を貸して欲しいと言ってきたらしいのだが・・・。
もし・・・この車に乗った事が原因となり、事故にでも巻き込まれる様な事が起こると、
逆に迷惑をかけてしまうかもしれないと考えた彼女は、
「これまでの事情」を説明して断ろうとしたのであったと言う・・・。
しかし実は、その友人も「霊感」と呼ばれるものを持っているらしく、
その親戚には「ユタ」と呼ばれる民間の巫女がいるのだと言う事であった・・・。
そして、彼女の友人は一度、「その車」を視てみた後に、
「その車」を借りる事にするかどうかを決めるという事になったのであった・・・。
・・・ここで一旦、沖縄における「ユタ」と呼ばれる存在について語らせて頂く事にする。
ユタとは、沖縄や先島諸島などの琉球諸島や奄美諸島等に古くから存在すると言う、
民間の巫女や祈祷師の様な霊能者的な存在であり、運勢の吉凶などの占い的な事をはじめ、
行事ごとの日取りを決めたり、死者の口寄せから霊的な相談にまで応じると言う存在である。
その呼び名は多岐に渡り、「ムヌシリ」・・・物知りとも呼ばれ、
宮古諸島においては「カンカカリャ(神がかり)」と言う呼ばれ方をはじめ、
「ムンスイ(物知り)」、「カンヌプトゥ(神の人)」などと呼ばれる事もあると言う。
しかしながら、幾度も弾圧を受けてきたという歴史もあり、
ユタと言う名称自体が、蔑称的な意味合いを含んでいると考えられる事も多い為に、
その代わりの名称として「カミンチュ」・・・神人と言う呼ばれ方をするらしい。
・・・さて、ここで話を戻す事としよう。
結局、霊感があると言うその彼女の友人は、特に何も感じるものが無かったらしく、
その車を貸したらしいのだが、とりあえずは何事もなく無事に帰ってきたらしいのだ。
・・・しかし、その友人のお母さんに忠告された事があったのだと言う。
「もし、何か気になるのなら、車にマースを置いておきなさい」
マースとは沖縄の粗塩の事であり、シママースとも呼ばれている。
平釜で結晶させたり、薪を焚き煮詰めたり、または火を加えずに天日干しにしたりと、
製法にこだわった天然塩の事で、所謂「粗塩」であり、
沖縄では「魔よけ」として、よく使われているらしい。
そして奥間さんはその後の一年、何事もなく乗り続け、その車を廃車にしたのだと言う。
・・・そして、彼女の話は次の様に締めくくられていた。
「関係あるのかないのかは、今ではもう解りませんが・・・。
私が最初に事故に遭った場所と、最後に事故に巻き込まれた場所は、
進行方向は違いますが、同じ場所だったんですよ。
その場所は見通しが悪くて、頻繁に事故が起こっていた様です。
最近、久しぶりに通ってみると、新しい道とつながっていたりと、
以前とはかなり印象が違っていましたけどね・・・。」
ここからは、私個人の見解であり、あくまでも推測になるのだが・・・。
この車には確かに何か「この世ならざるもの」が関与していたのかもしれない。
・・・それが、どういったものであったのかは知る由も無いのだが。
そして、本文から見て取れる様に少なくとも。
二名の霊感を持っているとされる方が、所謂「霊視」を行っているのである。
・・・一人は姉の友人。そして、もう一人は奥間さんの友人である。
しかしながら、前者は「お婆さんの姿」を、
目撃しているのに対し、後者は「何も感じられない」と言う結果が出ているのだ。
これには二通りの見解が存在する。
一つ目は、前者の方が視たと言う「お婆さん」が、
たまたま「乗り合わせていただけ」であったが故に、
時間も場所も異なる後者の方の時点では既に離れていたという可能性。
そして、もう一つ挙げられるとすれば「波長の違い」なのでは無いかと思われるのだ。
例えば、同じ場所で同じものを視ても「違う印象」を持つ事もあるものだ。
これは霊感を持つ者の性質によるものであり、
一方が視えていたとしても、もう一人は感じられない状況や、
気配のみしか感じられないと言った状況を作り出す事があるのである。
しかし、今回のケースで、まず重要視しなければならない点と言えば・・・。
「マース」を置く事により、この不可解な一連の事故の連鎖は、
止まっていると言う事実なのでは無いだろうかと。
・・・少なくとも、それで奥間さんが救われた事に変わりは無いのだから。