霊道のある工場
今回のお話は、かつての私の同僚であり、かねてより頻繁に霊の姿を目撃するという吉川さ
ん(仮名)が体験したと言う職場で頻繁に起こっている心霊現象のお話である。
かつて私も勤めていた、その工場では、入社時から【霊が出る】と言われていた程に、霊の目
撃談が多く言い伝えられていた。
それは、機械のガラスの中を横切る子供の影や、地下にあるゴミ置き場に現れると言う作業
服姿の男性の霊の話であった・・・。
多くの人々が、入退社していく中には、霊的な感覚に優れた方もいたらしく、その工場には霊
道・・・すなわち霊の通り道が存在していると指摘された事もあったらしい。
吉川さんもまた、霊的な感覚に優れているが為に、様々な霊を目撃している事を以前から聞か
されていたものだ。
・・・それはある日の事。
彼女がライン作業を行う機械に向かって仕事をしていた時の事である。
直感的に何かの気配を感じたらしく、ふと視線を逸らすと、スニーカーを履いた足首から先
だけの姿を目撃したのだと言う。・・・そして、その足首を視てから二〜三日の間、肩にずっしり
と重いものを感じていたらしいのだ。
・・・また、吉川さんが作業をしている場所では時折、黒い影や、この世のものでは無いものが走っ
ていく姿も目撃されていると言う。
そして、寒気すら感じると言う、その場所では複数の霊聴体験も報告されているらしい。
それは珍しいもので直接に、その名前を呼んでくる・・・と言った類のものであると言う。
今回の場合だと「吉川さ〜ん・・・」と言う様に、名指しで呼ぶ声がするらしいのだ。
これが仮に一人だけが体験したものであれば、聞き間違いや、実際に遠くで呼ばれていた可能
性も否定出来ないのだが・・・この場合は複数の方が同じ様な体験をしているのである。
・・・だとすれば、そこに住み着いているか、もしくは【同じもの】が頻繁に、その場所に立ち寄
っていると言う事にはならないであろうか・・・?
今回のお話は以上なのだが、先に陳べた通りに、彼女は私の【元・同僚】である。
当然、私も同じ工場に勤めていた時期があったのだ。
・・・当然、何も起こらなかった訳では無い。私もまた様々な怪異現象を体験していたのである。
高速道路に面した事務所では、時折、強烈な霊気を感じ、誰もいなくなった夜に、椅子に腰掛
ける音が聞こえてくる事もあった。
私ガ作業をしていた場所では、この世のものでは無い作業服姿の男性の姿が目の前を横切った
り、髪の長い女性の首だけが浮かんでいる時もあった。
喫煙室では、同じ作業服を着た男性が、まるで【しゃがみこむ】かの様に、その姿を消した。
男性トイレでは天井から般若心経が降り注ぐ様に聞こえてきた事もあった。
霊堂が通っているという、その工場は、毎年お祓いをして、ところどころにお札も貼ってある
のだが・・・その怪異の納まる気配は一向に無く、現在もまだ続いているのである・・・。