愛理さん(仮名)は、霊の姿を視る事は無いのだが、
その存在を感じ、頻繁に声を聴くという体質の持ち主である。
私の霊感体質を知る方から『最近、怖い話ってある?』と訊ねられている時に、
それを耳にした彼女から『霊感もちなんですか?』と私が訊ねられた事から、
実は彼女自身も、そういう体質であると告白をしてきた事からであった。
・・・しかしながら実は、彼女から直接、聞かされる以前から、
何らかの霊的な能力を持っている筈だと感じており、常々気にはなっていたのである。
何故なら、霊感体質の方は、実際に話してみると良く解るのだが、
その会話の中に霊的な事柄が垣間見られるものであり、実際の所。
彼女の瞳は実に不思議な色をしているのだ。
それについては他の方に解る様なものであるのか、
彼女自身も気付いているのかは定かでは無いのだが・・・。
今回のお話は、そんな愛理さん(仮名)から聞かされた、
ご自身の母方のご先祖にまつわる『落ち武者の祟り』の話である・・・。
・・・時は戦国時代にまで遡る。
彼女の母方の先祖は、瀕死の重傷におちいった一人の落ち武者に遭遇したらしい。
彼女のご先祖の介抱も空しく、その落ち武者は亡くなられたのだが、
哀れに思った彼女のご先祖は手厚く、これを供養し『祠』を建てたのだという。
そのお礼のつもりであったのか、大層『その家系』は繁栄していったと言うのだが・・・。
そして代々、その家系の子孫は『山奥』にあるという、その『祠』を奉り続けていたのだが、
子孫の中には『その役目』を果たそうとしなかった者もいたらしい。
そして、そんな者の元の夢枕には、その落ち武者が現れて、
『最近、おろそかになっているのでは無いか・・・』と忠告をしていく様になったのだという。
そして、それに対して恐れをなした子孫は、
再び『その役目』を欠かさない様にしていったのだというのだ・・・。
・・・だが、しかし。
時は流れて明治時代の事であった。
彼女の祖父の代において再び、その供養がおろそかにされてしまったが為に、
落ち武者からの怒りをかってしまったらしい。
彼女の祖父の夢枕に立ったという落ち武者は次の様に告げたのだという・・・。
『あれほど言うたというのに・・・。
もはや、お前たちの家系は根絶やしにしてくれるようぞ・・・』
・・・その後、その言葉の通りに、その家系には男児が生まれる事が無くなり、
唯一の男児であったという息子に至っては、突然『行方不明』になってしまったのだという。
愛理さんの叔父にあたる、その人物は未だ行方不明であり、
もはや生死の確認すらとれない状況になってしまったのだ。
そして、残されたのは結果的に、女性ばかりの家庭であり、
姓を継ぐ者がいなくなったその家系は実質上、そこで絶える事になってしまったのだった・・・。
そして、未だ『その姓』を名乗っている愛理さんの祖母や、
元は『その姓』を名乗っていた彼女の母親は、山奥にあると言う『その祠』に、
たまに出かけていくというのだが、以前、彼女が着いていくと言ってみた所、
今までに経験した事が無い程に、それは酷く叱られたのだと言う。
それは大切な娘を気遣う親心からであったのであろう・・・。
ひとつの家系を断つには、その家の男児のみを狙えば簡単に事は済む。
奉った恩返しにと『守護と繁栄』をもたらした者が、
それを怠ったが為に、災いをもたらすとは何とも皮肉な結果ではあるのだが・・・。