おにいちゃん。
既にこの世の者では無くなってしまった身近な人が、自分を見守ってくれていたら・・・と。
皆さんは、そんな事を思ったことが無いであろうか?
今回のお話は奥間さん(仮名)のお姉さんにあたる、あゆみさん(仮名)が、
まだ中学生であった頃に体験したという、そんな不思議なお話である。
あゆみさんは、三人兄妹のうちの長女にあたるのだが、
兄であり長男の蒔人さん(仮名)とは当時、酷く仲が悪かったらしく、
ほぼ毎日の様に喧嘩をしていたのだと言う。
しかし喧嘩とは言っても、いつもならば、それは口喧嘩程度に留まっていたらしいのだが、
その日はそれだけでは収まらず、感情の高ぶった二人の喧嘩は段々とエスカレートしてしまい、ついには殴り合いにまで発展してしまったらしく、そんな状況を目の当たりにした両親から、
二人は酷く叱られる羽目となったらしい。
・・・その後、自室に戻った、あゆみさんは寝ようと思い、部屋の明かりを消して、
布団に潜り込んだのだが、どうにも感情の高ぶりを鎮める事が出来なかったらしく、
その日は深夜になっても、なかなか寝付けずにいたのだと言う。
深夜遅くまで起きている事を両親に知られると、また叱られるかもしれないと考えた彼女は、こっそり枕元に蝋燭を灯すと、その炎を見つめながら「ある事」を考えていた。
「もし、あのお兄ちゃんがいたら、どんな感じだったのかな・・・」
彼女の母親に聴かされていた話であったのだが、実は現在の兄の上にも、もう一人、
お兄さんがいた筈であったのだと言う。
・・・それは、彼女が産まれるよりも、ずっと前の事。
生まれて直に、儚くも逝ってしまったと言う、顔も知らないお兄さん。
彼女は揺らめく蝋燭の炎をぼんやりと眺めながら、そんな事を考えていたのであった。
・・・そんな中、彼女の目に白い光が浮かんでくる様になったのであった。
彼女はずっと蝋燭の炎を見続けていたので、残像でも残ったのかと思ったらしいのだが、
その白い光は、靄の様なものから、徐々にその姿を変化させて行き、それはまるで、
人の姿の様なものに変化していったのだと言うのだ。
彼女も最初は少しだけ恐怖を覚えたのだが、それが人の形になってくる頃には何故か、
徐々に優しく、安らかな気持ちになっていったらしいのである・・・。
そして、すっかり気持ちが落ち着いた彼女は蝋燭を消すと、ようやく眠りにつく事が、
出来たのだと言う。
彼女はそれが幼くして亡くなった、もう一人の「おにいちゃん」が、自分の事を心配して、
そういう形で現れてくれたのでは無いだろうかと思えたとの事であった・・・。
確かに、蝋燭の炎を見つめると言う瞑想法も存在する。
それが時に霊的な感覚を高める方法としても用いられる事もあると聴く。
しかし、仮にそれが何であったのだとしても。
それを追求する必要性など、無い様に思えるのである。
何故なら、あゆみさん自身にとって、それが「おにいちゃん」だと思う事により、
彼女の心に平穏が訪れた事に違いは無いのだから・・・。