水妖 みずあやかし
今回のお話は美奈さん(仮名)が、まだ高校生であった頃のお話であり、夢の中で、水の妖怪との接触を経て、一時期【霊感体質】となってしまったという、不思議な体験談である。
・・・その一連の怪異はある夜に、奇妙な夢を見た事から始まった。
夢の中で彼女は、人工的な池と石造りの建物の間にいたのだと言う。
彼女はそこで女の人の声を聞いたのであった。
・・・ただ、女性だとは分かるのだが、それが人か否かまでは分からなかったらしい。
そして、その女の人は彼女に次の様に告げたのだと言う。
「カシャボとガラッパが戦争をしました・・・」
あまり聞きなれない名称ではあるが、どちらも河童の様な感じの水の妖怪の名前である。
彼女が言う池の中を覗いてみると、確かに水面が紅く染まっていたのだと言う。
その女の人は彼女に、丑寅の方向にある川に、お菓子とお札を入れる様にと促がされたのであ
った。・・・何でも、そうしなければ供養、もしくは鎮める事が出来ないのだと言う。
彼女は言われるがままに、その川へお菓子とお札を入れた所で目が覚めたらしい。
目が覚めた彼女は夢の通りに、家から丑寅の方角の川を探しに行ったのだと言う。
その手に、お菓子とお札の入ったお守りを持って・・・。
・・・何故だか、そうしなくてはならない気がしたらしい。
すると小川があったので、彼女はお菓子とお守りを流して拍手を打ったのである。
それから暫くの間、彼女は【目に見えぬものの気配】を感じるようになったのだと言う。
それは突発的に「ああ、いるな」と感じる様なものであり、その状態の時に、瞳を閉じると、そこにいるモノの姿が視える事もあったらしい。
その中でも、一番印象に残っているのは可愛いフリルのついた服を着た、小さい女の子であっ
たと言う。それをきっかけに彼女は、その女の子や、他のものと会話をする様になっていったと
言うのである。
・・・しかし、会話といっても口には出す様なものでは無く、念じることによっての会話に近いも
のであったと言う。例えば「君は憑いて来たのか?」と心に念じるとすると、返事が「はい」な
ら、寒気がぞくりとして、「いいえ」ならば、更に別の問いかけをしていたらしい。
・・・例えば次の様な感じである。
美奈さん 「君は憑いて来たのか?」
女の子 「ぞくり)
美奈さん 「家族は?」
女の子 (返答なし)
美奈さん 「分からないのか?」
女の子 「ぞくり)
美奈さん 「今から経をよんでやる。そしたらいくか?」
女の子 「ぞくり)
そんな感じの会話方法であり、ちなみにその女の子は般若心経を読み上げてあげると、何処か
に消えていったのだと言う。
そんな彼女が一番困ると感じたのは、相手が【悪いもの】の場合だったと言う。
・・・ある日、祖母宅に居ると、某宗教団体の幹部と言う方が来ていたらしい。
しかし、その瞬間から、彼女は頭痛と息苦しさを覚えて倒れこんでしまったのだと言う。
所謂、霊的なものによる障害・・・霊障によるものである。
その【悪いもの】は、その幹部が去った後も、祖母宅に居座り続けたらしく、彼女は思わず口
走ったのであった。
「・・・あの野郎、とんでもないものを連れてきやがったな」
その悪いものが、とてつもなく悪いものである事だけは分かっていたらしいのだが、それ以上
は会話できなかったらしいのだ。
仕方なく彼女は「去れ!」と心で念じ続けながら、何度も「臨兵闘者皆陣列在前」と唱えながら、九字を切り、歯をカチカチ鳴らすという陰陽道式の退魔法を続けたのだと言う。
・・・そして奮闘する事、二時間ばかりして「悪いもの」は、ようやく去っていったらしい。
ちなみに彼女のこの霊的な能力は、半年程で消えてしまったのだと言う・・・。