未来視
未来予知。
それは未だ起こっていない未来の出来事を、
予め知る事が出来るという能力の一般的な呼び名である。
かねてより未来視なんて、それが良い事でも悪い事でも、
当らない方が安心すると私は伝えて来た。
それは未来を変える事は、そうそう出来るものでは無いという、
ひとつの証明の様なものだからである。
私は近未来視というものには、ほとんど縁が無いのだが、
幼い日に視た映像が成長する段階で、的中するという現象は度々、経験している。
だからこそ思うのだ。
未来視など当らない方が安心するものだ・・・と。
今回の話は、その未来視を夢の中で見てしまうというお話。・・・予知夢の話である。
美鈴さん(仮名)は、数日の間、何かに脅えていた。
それは他でもない『自分自身』に対しての恐怖であったのだと言う。
彼女には元来、未来視の能力などは備わってはいなかったのだが、
どうやら、そういう力が芽生え始めてしまったらしいとの事であった。
その始まりは、夢の中で出逢った人物と、
翌日に偶然に出逢うという形で始まったのだという・・・。
それが「複数回、続く事」によって、
今までに経験した事の無い状況に彼女は困惑していたのだった・・・。
・・・そして、未来視など当らない方が安心するという言葉の意味を、
彼女はようやく、理解したのだそうだ。
しかし、それもしばらくすると慣れてきたのであろう。
彼女の中には、最早『未来視の出来る自分』に対しての恐怖心は無くなっていった様だ。
そして、ある日の事。私のもとに以下の様な報告が送られてきたのだ。
『私ね。一ヵ月前に、こんな夢を見たの。
お父さんが老人ホームに入所した夜に、そこが火事になってたって言う夢・・・。
それは、杉が生い茂る山の中で、お父さんは無事に助け出されたの。
・・・でも、そんな夢を見たから気になって、
老人ホームの方に、もし入所中に火事なんかが起きた際の救助方法を、
くどい位に、しつこく聞いていたのよね・・・。
それで、今日が入所する日だったんだけど、その老人ホームの近くで火事が起きたんだよ。
・・・それも 杉の木に囲まれた家だったんだよね。』
率直に言ってしまえば、それは完全な予知夢とは言えないかもしれない。
何故ならば、それは老人ホームでは無く、その近辺の家であるのだから。
しかしながら、奇妙な一致点も、かなり存在する事も、また間違いないのである。
それは、入所した日であるという点。
また、その付近で火事が起きたという点。
その場所が杉に囲まれているという点・・・である。
それが完全に一致していないにしても、
これだけの共通点が存在するという事柄から、私には未来視に他ならないと感じられるのだ。
逆に言えば、これだけの共通点を持つ夢を、
ただ単に普通の夢だと受け止める事が出来るものであろうか・・・?
実際に私の元には様々な報告が送られて来ており、
中には自分では理解不能な事柄も含まれる場合もあるという事もあるのだが、
自分が経験していないから、それは間違いだ・・・という考え方自体が、
私にとっては、高慢にさえ思えるのだ。
いかに不思議な力を持っている様に見えても、それは完全では・・・無い。
何を真実と受け止めるのかは、その話を聞いた当人が判断するべきものであり、
それが例え、どんな不可思議に見える能力であったとしても、
所詮は不確定な要素の多い『人間の感覚』から生み出される産物に他ならないのだから・・・。