巫女の霊団
心霊の世界に携わっていると、所謂『霊感』と呼ばれる感覚が、増大してしまう事がある。 それは心霊サイトを覗いた際に起きる、一時的なものから、
霊感のあるもの同士の接触により、引き起こされるという現象も存在する。
これは私の友人である美鈴さん(仮名)の身に起こった、そんな一例の報告である。
ある日の事。
私の携帯に彼女から短いメールが届いたのだ。それは次の様な文面であった。
『私、自分が怖い』
彼女は元来、霊感を備えていた為、即座に『霊感の増大』を察知する事が出来た。
『自分が怖い』と言う、その文面の意図する所は、
『自分の力が怖い』という意味が込められていると感じたからであった。
きっと何か起こっているに違いない。
それが何を意味するのかを知る為に、私は彼女に写真を送る様に伝えたのだった。
写真を通じて、彼女の今の状態を確認したかったのだ。
それが何故かは解らないのだが、私は彼女の写真を視るだけで、
現在、どの様な霊が彼女に干渉しているのかを、的確に把握出来てしまうからであった・・・。
しかしながら彼女は、これ以降。
まるで、はぐらかす様に写真を送る事を拒んでしまったのだ。
いつもなら、何も無くとも写真を送ってくる彼女が・・・である。
彼女の身に何かが起こっている事は確かだと確信したのだった。
そして、おそらく『霊視』される事を恐れていると。
また、彼女が自分自身で、それらを解決しようとしている事も感じられた。
『私、今の顔が凄く怖いから送れないよ』
・・・そう返信をしてきた事により、ある不安が私の胸をよぎったのだった。
実は以前に非常に恐ろしい一件があり、彼女とは全く無関係な話のだが、
プロの霊能者でさえ『始めてのケース』と言わしめた、その一件は、
『何らかの恐るべきものの憑依により、人の姿すら変貌させてしまうという現実』
西洋で言えば『悪魔憑き』に匹敵するという現実が存在するという事。
それは、私たちなどでは到底、手に負えないと言う事を思い知らされる程のものであった・・・。
まさか、そんな事になっているのでは無いだろうかと、
心配した私は、ともかく写真を要求したのだった。
しかし、徐々にではあったがようやく彼女は、重い口を開き始めた。
どうも彼女は霊を頻繁に目撃するという状況になってしまった様で、
更には夢で見た人物と、実際に翌日に偶然出会うという現象が多発したり、
偶然に出会った方が身につけていた念珠を購入した神社を言い当ててしまうなど、
霊能力が増大してしまっていたのだった。
更には、人の心の中にある感情が流れ込んでくるという『読心的な能力』までも・・・。
彼女は、その新たに芽生えた能力を他人の為に使いたいと言い出したのだが、
正直、そんな思いに至り、霊障に見舞われた方等を知っている私の意見としては、
そういう思想を持つのは危険だから、やめておいた方が良いというものであった。
また、優れた霊視能力を持つ私の友人の水城さん(仮名)に相談を持ちかけた所、
彼女の件に関しては、私と同意見で、心霊と言う世界にこれ以上、関るのは危険だと判断。
この時点で、水城さんの元にいた『豪族の霊』からも、
『自己犠牲の考えは捨てろ』と伝えてきたとの事だったので、
決して、その方向には考えない様にとの注意を促がしたのでした・・・。
・・・そんな中、美鈴さんより『ある異変』についての連絡が来たのだった。
『腐臭と吐き気がする』
私は、そのメールに気付くのが遅かった為、この時点では既に、
後手にまわってしまっており、対応が遅れてしまったのだ。
翌日に届いた美鈴さんからのメールには、以下の様に記されていた。
『夕べからの腐臭と吐き気の意味が解りました。
私の大好きだったおばあちゃんが、昨日の朝に亡くなっていたんです。
今朝、その知らせがきて、死んだ事に気付いてって事だったんだなって。』
『虫の知らせ』
本人が、そう感じたのならば、そうかもしれない。
私は直感というものが意外と真実を指している事も多いと考えている。
・・・だが、しかし。
もし、それが違っていたらどうなのか?
腐臭と吐き気の原因が別のものであったとしたら・・・?
たまたま偶然に、そのタイミングで亡くなられたのかもしれない。
もしもだが・・・『亡くなられた事が原因で腐臭がした』のでは無く、
その逆であったとしたならば・・・?
『腐臭の原因となったものが、亡くなられた事に関係していたのかもしれない』
そんな最悪の状況をも、私は危惧していたのだった・・・。
・・・だが、ここで思いがけない事が起こったのだ。
彼女からのメールには、この様に書かれていた。
『小さな竜巻が起こったんだけど、その時にふと女の人の顔が浮かんだのよ。
白いトレーナーを着た人。髪はクルクルした感じ。』
・・・私は、この連絡に奇妙な一致を感じていた。
それは同じく霊感の強い友人である水城さん(仮名)が、私にかつて伝えた言葉。
彼女の元にいるという豪族の霊が語った半月前の言葉であった。
『彼は今後、必要に応じて美鈴さんにも伝えていく様です。
竜巻のような風のイメージなので、
そういった現象が周囲で起きたら、彼だと思って下さい。』
実は、その後に美鈴さんの下には、その豪族の霊団に属するという「巫女の集団」が、
訪れる事になると、私は事前に聞いていたのだ。
だが、この時点で私は、この事をまだ彼女には伝えていなかったのだ。
私自身、美鈴さんの視たと言う女性は、
この巫女の集団の一人なのではないかと思ったのだが、
古代の霊が、わざわざ現代風の装いで現れるなどと言う事自体が、
既に理解の範疇を超えていた。
・・・ただ、その奇妙な一致に違和感を感じるのも確かだったのだ。
そして、彼女の守護にまわったとされる巫女の霊が姿を見せたとするならば。
腐臭の原因となっている『霊的な何か』を祓っている可能性があると。
ならば、今まで送って来れなかった自分の写真を、
既に送ってこられる状況になっているのでは・・と。
そういう風に私は推測し再度、美鈴さんに、
『写真を送る様に指示』をするつもりだったのだが・・・。
既に答えは出ていたのだ。
彼女から写真が送られてきており、何の霊の存在も感じさせず、
今まで送られてきた複数枚の写真の中では一番と言っていい程に、
実に健康的で状態の良い彼女の姿がそこにはあったのだ。
『今まで、霊視されるのが怖くて、状態が良くなったから送ってきただろ?』
そういう私の言葉に、彼女は見透かされた気がしたのだろう。
『全てお見通しなんだね。流石だね』
そんな返事と共に、今まで写真を送ってこなかった理由を話してくれたのだ。
実は私に写真を送る事で、私が霊障に見舞われるのではないかという心配から、
送らずにいたとの事だった。
・・・そして、改めて水城さんに訊ねてみたのだ。
古代の霊が現代の姿をして現れるという事があるのだろうか?・・・と。
私自身、そういう経験はした事が無いからであった。
確かに霊視能力のある方が、同じ場所で、同じ霊を視たとしても、
その姿が異なって視えるという現象も報告されてはいるのだが・・・。
・・・そして、後日。水城さんより、この様な連絡を頂いた。
『明け方にだれか来てたみたいだけど、具合が悪くて何を伝えてるのかわからなかった。
今朝になって頭の中に、キジみたいな鳥とお供え物をした祭壇と銅鉾が並べてあって、
巫女が祈祷しているようなイメージが浮かんで来た。
これを数日前から、美鈴さんに向けて行っているみたいで、
守護部分でのサポートをかなり固めていると思います。
豪族の霊団の方は動きが掴めません。
美鈴さんに対して、注意を呼び掛けてる。
あえて視えることを意識しないほうがいい。入り込んでくるのは人だけではないからね』
忠告と共に、美鈴さんに対する『巫女の霊団の関与』を感じさせずには、
いられない様な内容であり、また、美鈴さんも素直に『その忠告』に従っている様だ。
実は美鈴さんは私を仲介する事で、幾度か彼女から忠告や指導を受けているのだが、
私には、言葉の意味が解らず、本人にしか解らないのかと、そのまま伝えた所、
当たってるし、鋭いと言われた事もあるのだ・・・。
・・・そして、また後日。
豪族の霊団の動きについての報告があったのだが、
それについては詳しく語ることがはばかられるのだ。
何故なら、それは『豪族の霊団』の軍事機密とでも言うべき話であるのだから・・・。