墓場の上の百貨店。
霊的な感受性の強い方ならば、立ち入るだけで異質さを感じる空間という場所が存在する。
それは所謂「心霊スポット」と呼ばれている場所だけでは無く、多くの人々が集まる様な、
日常的な空間であっても、それは存在しているものだ。
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今回のお話は私が、霊的な感覚に優れた友人の愛理さん(仮名)と行動を共にしていた一日の
出来事であるのだが、今回はあえて愛理さんの視点を基軸に進めさせて頂く事にした。
何故ならば、今回の一件に関しては、私より感受性の強い彼女の視点から語って頂いた方が
より【心霊的な面】において、より深く語る事が出来ると判断したからである。
ちなみに私は今回のお話の中では、氷川さん(仮名)と表記されている。
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その日の私は、午後から急に体調を崩してしまい、正直な所、かなり仕事が辛かったのです。
しかし、その日は仕事帰りに、新しいブレスレットを作成する為の天然石を調達しに行く予定にしていたので、かなり無理をしながらも、何とか仕事を終わらせたのでした。
ようやく仕事を終えて、駅に向かって歩いていた際に、私の携帯に一本のメールが届いている事に気が付きました。
「今日は体調悪かったでしょ・・・?水晶を買いに行くんなら一緒に行きましょうか?」
それは、今日の仕事中の私の様子に気付いた【霊的な感覚】を持つ友人。
氷川さんからのメールでした。
・・・しかし、私は即座に一人で行くと返信したのでした。
その理由は・・・実は、私がいつも石を調達しに行く店は【某・有名百貨店】の中にある店舗のひとつなのですが、その【建物自体】が、かなり悪い物件であり、霊的な感覚を持った方が行くには、危険が伴う場所であったからだったからなのです・・・。
その巨大な百貨店の屋上には稲荷が奉られており、墓地を更地にした上に建てられた場所に
存在し、また様々な【心霊体験談】があるという場所でもあったからでした。
その事実は、最近知り合った霊感の強い地元の方から伺って知ったのですが、実は以前から
その百貨店の中に入ると、視界の微弱な歪みを生じたり、霊的な頭痛や腹痛を引き起こしたり、何とも表現しがたい様な【不快感や苛立ち】を感じる事も多かったのでした。
もし、私だけしか【その様な異変】を感じないのであったとすれば、風邪をひいた程度にしか
思わなかったのでしょうが、その話を伺った方からは、その百貨店に入ると【立って歩けない】とまで言われていたので、ひょっとすると【霊障を引き起こす場所】かもしれないと考えていたのです。
・・・さほど霊感の強くない私でもそうなるのだから・・・ましてや霊感の強い氷川さんの事。
もし、その百貨店の中で【波長が合ってしまったらどうなるか】など、目に見えていたので、本当は連れて行きたくなかったのでした。
しかし、その申し出を断るために掛けた電話は、何故か繋がっているにも関らず、氷川さんの声が全く聞こえずに、無言のまま切れてしまう様な不可解な誤動作を起こしてしまい、結局、
断りきれないまま、氷山さんが到着してしまったのでした。
これは後に伺った話なのですが、氷川さんの方でも同様の現象が起きていた様です。
勿論、電波状況が悪かったと言う様な状況では無かったとの事でした。
(まあ、何ともないかもしれないし・・・)
そう思い直した私は結局、氷川さんと一緒に行く事になったのでした。
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その後、氷川さんの車に乗った私は【問題の百貨店】に向かう途中から既に、車内に響く、
ラップ音が時折響いていましたが、氷川さんと出かける時に限っては、大概それを耳にするのでお互いにあえて、何も語らずにいました。
霊感が強い方と一緒にいると、色々と波長が合わせやすくなる様で、そのうち男性の息遣いや助手席の窓を叩く音もしていましたが、気にした所で何も出来る事も無いので、大して気にせずにいたのです。
そして、ようやくその百貨店に辿りついた私達は【危険な場所のひとつ】と噂されていたので
少々、迷いましたが結局、その百貨店の【地下駐車場】へと入っていったのです。
これは後に判明した事なのですが、そうやら私は【行ってはいけない場所】が本能的に解る様
で、その場所を知らず知らずのうちに避けて通っていたのでした。
・・・その百貨店は地上に十二階・地下三階まであるのですが、私が【この百貨店】の中で、
行った事のある場所と言えば、近くの駅から直接つなげられた出入口がある二階と、天然石の
ある店舗が存在する八階。どうしても必要な書籍がある場合のみに立寄る大きな本屋が存在する
九階のみでした。
その他の階には一切立ち入ったことはなく、移動もエスカレーターは使用せずに、全て最奥に
あるエレベータを使用し、最短距離にて移動していたので、実際は、他の階には何があるのかも
把握していない状態だったのです。
・・・勿論、その【地下駐車場】に立ち入るのもこれが初めてのことでした。
その閉塞感のある【トンネル】を連想させるような通路に、私は知らず知らずの内に、緊張を
隠せなかった様で、運転をしていた氷川さんからも、凄く嫌そうだと指摘された程でした。
そして、駐車場に車を止め、エレベーターホールに向かった私は・・・困惑してしまいました。
何故ならば、そのエレベーターは、いつも私が使用しているフロア最奥のエレベーターでは
無く、正面玄関側に設置されたエレベータだったからです。
一瞬、どうしようかと迷いましたが、私の我儘に付き合わせる訳にもいかないと思い、結局
そのエレベーターに乗る事にしたのでした。
氷川さんと私の共通点として【霊的なものを感じた際には無言になる】という事があります。
そしてまた、そのエレベーター内にいる間はお互いに【始終無言の状態】だったのです。
その中では私も色々と【霊による波長を探ったり、声を拾ったり】していたのでした。
私は元来、【そういった者の声】を聞くタイプだったので、大した事は無かったのですが、
氷川さんの【右腕や脚】などが反応していないかとヒヤヒヤしていました。
何故なら、彼は自分の意識より先に【身体が反応してしまう部類】の方なんです。
私も筋力には自信がありますから、男性にしては小柄な氷川さんなら、余裕で抱えて逃げる事
も出来るのですが、流石に氷川さんも公衆の面前では、恥ずかしいだろうなどと考えているうち
に、八階に到着したのです。
一方の氷川さんは、エレベーターのドアが開く度に、その階の様子を伺っていた様で、降りる
と同時に、エレベーター内から感じた事を私に伝えてきたのでした。
「・・・どうも階によって、強さが違うみたいね?
って言うか、このエレベーターの中もマズイんじゃない?」
私が同意して、いつもはこのエレベーターは使用していない事を告げると・・・叱られました。
「だからさぁ・・・そういう事は早く言いなさいって言ってるだろ。君はいつもそうだ・・・」
・・・そんな話をしながらも、目的地である天然石を販売している店舗に到着しました。
そして、石を選んでいたのですが、私は石を見てる間は、大抵、かなり集中しているもので、
その間は一種のトランス状態に陥ったかの様に、なかば意識が飛んでいるんです。
そして普段なら在り得ない事なのですが、石を買い終わった後に、ふと気がつくと氷川さんの
姿を見失ってしまっていました。
一体、どの方向にいるのかすら解らない状態になっていたんです。
いつもなら探そうと思えば、その人の気配も追えるのに、何故か探れずに一瞬焦りました。
・・・その後、すぐに氷川さんが見つかったから良かったんですけどね。
その後、階下に下りる段階になって、エスカレーターを使おうという話になったんです。
それは【各階の様子を探ってみたい】との氷川さんの意向からでした。
勿論、途中からはまたお互いに【始終無言】の状態になったのです。
一応、地下駐車場へと向かう【いつも使用しているエレベータホール】の前で、他に見たい所
が無かったのかを尋ねると、氷川さんは次の様に答えました。
「そうねぇ・・・。三階と四階ってのは・・・どう?」
いや、わざわざ「その階」を指定してくるとは・・・と思った私は次の様に答えました。
「・・・殺す気ですか?」
実は、その指定された階って私が一番、避けて通る階だったのです。
勿論、行けば無事にはすまないだろう事は目に見えて解ってました。
氷川さんは探求心の強い方なので、どの程度のものなのかを視てみたかった様なのですが、
やはり身の危険を感じ取っていた様で、すぐに言葉を取り消してくれました。
「いや・・・やっぱり・・・無理だ。止めておこう」
そしてまた、地下の駐車場の二階へ停めてあった車へ戻り、乗りこもうとした際の事でした。
天井を見つめながら、氷川さんがぼそりと言いました
「ここって確か・・・元は墓場なんだよね?」
以前に伝えていた事だったので、何故【今更確認してくるのか】を不審に思ったのですが、
氷川さんの事ですから、その時に何かを察知していたのかもしれないと思ってはいました。
そして、これは後に聞いた話だったのですが、元々が墓地であったと言う事を、その時は、
すっかりと忘れてしまっていたとの事でした。
地下二階については、噂に反して【大した事は無い】と不信を抱きながら、天井を視ると、
墓地が視えたらしく、それで思い出し、問題の原因は【地下一階】だと感じていたそうです。
その後、車に乗り込んだ私達が、その駐車場の出口へ向かう途中の出来事でした。
それは丁度、地下一階にあたる場所で・・・私は【とても嫌な声】を拾ってしまったんです。
それは私の耳もとで、低く低く唸るような男の声で・・・たった一言・・・。
【死ね】
私は思わず叫びました。
「うわっ!酷い!」
その相手が、生きているにしても、死んでいるにしても、死ねなどと言われて不快にならない
方なんていないと思うんです。
鳥肌が立つと同時に、脚の感覚も痺れて力が入らなくなっていました。
「何!?どうした!?」
突然、叫んだ私の声に驚いた氷川さんが訊ねてきたので、困惑する中、その事を伝えました。
しかし、その場は笑い飛ばして終了となりました。・・・私はですけどね。
その後、二人でいつも行く店に立寄り、軽く何か食べようという事になって、いつもの駐車場に車を停めてから、その店に向かったのです。
しかし何故か、その店の近くに行くに連れて、私と氷川さんの足取りは重くなって行き・・・。
ついには二人とも立ち止まってしまいました。
(何で、こんな事になってるんだろう)
いつもならば、明るく活気のある筈の店の近くには、何故か【どんよりとした嫌な空気】が
立ちこめており、私は何故か、それ以上足を進めることが出来なくなってしまったのです。
普段、この場でこのような事があったことは無く、【勘違い」だと言われれば否定も出来ないのですが、とにかく気持ち悪くて、凄く立ち入る事が嫌だったのです。
氷川さんも、どうも同じ印象を受けた様で、私達はあっさりと引き返しました。
仕方なく私達は【とあるスーパー】内に存在するアイスクリーム屋で一息付く事にしました。
二人で行ける場所って限られてますからね・・・。色々なものに反応しやすくなりますから。
とりあえず注文を終えると、アイスクリームが出来上がるまでの間、近くにある椅子に座って
待つ事にしたのです。
・・・しかし、数分と経たない間に私の身に【また異変】が起こり始めました。
何かが、椅子に座る私の右腕を引っ張っているのです。
私は咄嗟に右腕に力をこめ引っ張られない様にしたのですが、【目に見えない何者か】が、
ずっと私の腕を引っ張り続けるのでした。
更には、アイスクリーム屋のカウンターの天井付近からも、女性らしい籠もった様な声が、
聴こえて来たのです・・・。
私の腕を引っ張っているものと、その声は【別の存在の仕業】だと思った私は、その声と、
引っ張られている右腕に意識を集中したのでした。
意識をそちらに傾ければ何かが解る気がしたのです。
(腕は・・・子供っぽいなぁ・・・男の子か女の子かは解らないけど・・・。
声は・・・一人じゃないや・・・複数・・・?溜まってるなぁ・・・)
・・・と、ここまで拾い上げた時、いきなり【バチンッ】という音が耳に響いてきて、一気に現実に引き戻されました。
何となくぼんやりした視界の中で、目の前に座る氷川さんが私の顔の前で、手をかざしているのが見えました。
「・・・それ以上、視るのは止めといた方がいいんじゃない?悪いモノ視てるでしょ・・・?」
・・・私が何かを視ていると察知した氷川さんは、逆にじっと私の眼を視ていたらしいのです。
氷川さんによると、急に黙りこんだ私をの眼を視ていた所、その色が【明るい琥珀色】に、
変わり始めて、霊視をしている状態に入った事に感づいたらしいのですが、その色が急激に、
明るさを増して、もはや【琥珀】とすら、呼べなくなる程にまで変化していったらしいのです。
そして更に視続けていると、目の下に徐々に隈まで出始めたらしく、危険だと思った彼は、
指を鳴らして霊視を中断させる事で、呼び戻してくれたらしいのです。
・・・多分、呼び戻してもらえなければ本当にまずかったと思います。
しかし、氷川さんと外出すると本当に【こういう事】が絶えません。
・・・因みに【死ね】の声の方は、氷川さんの車に憑いていったそうです。
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・・・そう。その声は彼女を送り届けた後に、私の車に憑いて来ていたのであった。
(何だ?この声・・・・?)
耳を澄ました私の耳に届く、その小さな声とは、以下の様なものであった。
「死ね・・死ね・・死ね・・死ね・・死ね・・死ね・・」
これが彼女の言っていた声か・・・と思った私は正直、恐怖心から鳥肌がたったのだが・・・。
彼女の言う通りに、不愉快さが込み上げて来たのである。
カーコンポを止め、車内の音を良く聴こえる状態にした上で【その相手】に対して、怒鳴り
つけたのである。
「言いたい事があるんならハッキリ言え!この雑魚がッッ!」
・・・そして、それ以降。その声はピタリと止んだのであった。
※ 挑発するのは、危険ですから止めましょう。