手
生えてくる左手。

仮面ライダーフリークス&恐怖!夜伽話
 今回のお話は美穂さん(仮名)が体験したという、奇怪な心霊体験談である。

・・・それは彼女が結婚して、新しい土地に住む事になって間もない頃の事であったと言う。

 ご主人のいびきが五月蠅く、また家の前が線路だという事もあり、そういう騒音に囲まれた環
境に馴染めずにいた彼女は、なかなか夜に寝付けずにいたらしい。

 そんな事もあってか、翌日の昼間に不意に彼女は睡魔に襲われ、うとうととしていた。
 徐々に重くなって行く目蓋を少し開いた・・・その視線の先に。

 彼女の目の前に・・・「それ」はあった。

 彼女が横になっていた、すぐ隣の本棚から・・・何と手首が生えてきていたのである。

「・・・・何?」

 未だ寝ぼけている頭の中で、何が起こっているのかを考えてみた。

・・・だが、結論は「片手が目の前にある」と言う事実だけであった。

 それは左手で・・・ごつごつとした逞しさを感じる男の人の手であったと言う。
 その左手は、徐々に彼女に近づいて・・・触ろうとしていたらしいのだ。


・・・しかし、そんな状況であるにも関らず、彼女には全く恐怖心は無かったのだと言う。

(え?・・・何?・・・何故、私が触られなくちゃならないの?)

 彼女にとっては、恐怖よりも寧ろ、その状況が不思議でならないという感情の方が強かったの
だと言う。

 しかし、彼女がぼんやりと、そんな事を考えている間にも、本棚から生えてきた左手は、段々
と彼女に向かって伸びてきたのである。


・・・だが、その左手を良く見ると・・・。


 その時に彼女が着ていた服と全く同じ服を着ていたのであった。
 ピンクの縞模様の長袖の服を纏った、ごつごつとした逞しい男の手・・・。


「・・・ぷっ!」

 彼女は余りに不釣合いな、その服装に思わず、ふきだしてしまったのだった。
 そして、それと同時に【しまった・・・気付かれた】と言わんばかりに、その左手は消えてしま
ったのだと言う・・・。

・・・彼女曰く、それは住んでいる地域の閉鎖的な土地柄の問題・・・もしくは、その家に嫁としてや
ってきた彼女の【品定め的】なものであったのかもしれないとの事であった。

 そして、後になって思えば、決していやらしく身体を触ろうとしたという様な感じは無く、そ
れは寧ろ、頭を撫でる様な感じに近いものだったのだと言う。

「・・・一応・・・歓迎されていたの・・・かな?」

 尚、この出来事に関しては後日、遠隔霊視を行なえる方による見解があったらしく、その話に
よれば、「美穂さんが、どんな方かと興味を持った土地のもの」という事であったらしく、特別
に害などは無いものであるとの事であった。

・・・そして、それは実に不思議な体験だったとして、彼女の記憶に残っていると言う。