仮面ライダーフリークス&恐怖!夜伽話
        赤子の泣き声。


 病院は数々の患者が怪我や病気を治す場所であると共に、
数多くの人間が、その生命に終わりを告げる場所でもある。
・・・故に、そこでは心霊体験というものも珍しくは無いと言われている。

 今回のお話は、そんな病院で起こった不思議な現象のお話である。

 私の父が突然に倒れ、入院していた病院から深夜に電話がかかってきたのであった。

・・・容体が急変したとの事であった。

 血圧が急激に下がり、検査をしてみた所、
胸腹部大動脈破裂を引き起こしていた事が判明したのである。

 既に危険な状態と化していた父は急遽、
設備の整った病院へと移され、緊急手術を行う事になったのだ。

 それは破裂した部位のみならず、
肝臓や腸に至るまでの血管を全て人工血管に置き換えなければならず、
日本でも数件しか行われていないと言われる難手術で、
危険率は実に50%を越えると言われていたのである。

 その手術は実に十数時間にも及んだのだが、
残念ながら、途中で引き返すしか方法が無くなってしまったのだった・・・。

 そして、その晩は手術を行った病院へ泊まる様に、医師より促がされたのだが、
私がそこにいた所で何も出来ないという思いや、
連日で仕事を休むという事も出来ない状況から、
帰宅するという選択をした私は、その旨を看護師に伝えたのであった。

「・・・少々お待ちください」

 看護師は、私にそう告げると再び集中治療室にいる医師の下へと向かったのだ。
 そして、その返答を待っていた時の事である。

・・・それは手術室の横。2階にある集中治療室の前での出来事であった。

 その隣にはエレベーターが3台並んで設置されており、
その閉ざされた赤い扉の向こうから、赤子の鳴き声が大きく響いてきたのであった。

「おぎゃあああ・・・おぎゃあああ・・・・おぎゃあああ・・・・」

 エレベーターで赤ん坊が運ばれてきたのかと思った私は、そのドアに目を向けた。
・・・しかし、一向にドアが開く様子が無い。

 不審に思った私は、そのエレベーターに近づき、そのランプに視線を移したのだが・・・。
 その深夜のエレベーターは全て下の階に・・・1階に停まっているままであったのだ。
 そして、そこからは全くと言っていいほど、人の気配を感じる事は無かったのである・・・。

 だが、その泣き止まぬ赤子の声は間違いなく、
エレベーターのドアの向こうから、私の耳に届いているのである。
 それはまるで、何も存在しない空間から聴こえてくる様であった・・・。

「おぎゃあああ・・・おぎゃあああ・・・・おぎゃあああ・・・・」

 それは、響き渡るほどの大きな声で泣き続けているのであった。

 しかし元来、そういう事柄の全てを、安易に心霊現象だと受け取らない私は、
まずは、エレベーター横にある案内板に目を向けたのであった。

 しかし、同じ階にある病室は遥か遠くに存在し、到底声の届く範囲では無い。
 エレベーターの奥にあるものと言えば・・・手術室のみであったのだ。

 そして、その病院には・・・産婦人科自体も存在してはいなかったのである。

 その声は看護師が再び私の前に現れた頃には、いつの間にか消え去っていたのであった・・・。
・・・それが一体、何であったのかは、謎のままなのではあるのだが。