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修学旅行の夜 

この話は、私にとって始めての修学旅行..。
そう、小学校の「修学旅行の夜」に体験した出来事についての話だ。

また、「心霊体験」と呼べるものでは、物心がついて始めての出来事だとも言える。
記念すべきかどうかは別として。

それは、小学校の五年生の頃の話になるのだが、
私は九州の九重(割と心霊体験のスポットとして有名だという事は、
私が大人になってから知る事になるのだが‥)と言う場所にある
修学旅行での宿泊先となった..仮にK荘としておくが、その宿泊施設での体験談だ。

私自身、非常に忘れっぽい性格なので、
修学旅行自体の思い出となる様な記憶は一切、覚えていないのだが、
その夜に起きた不可思議な出来事についての記憶だけは、今でも鮮明に思い出せる。

..最初の異変は、同級生とのふざけあいの中で起こった。
‥午後八時位だったであろうか、ふざけた友人が、
急に電灯を消して手に持った「懐中電灯」で私を照らしたのだ。

..普通ならば懐中電灯で照らした場合、容易に想像がつくであろうが
「黄色っぽい電球の光の中に影が映し出されるだけ」なのであろうが
‥その時は違っていたのだ。

..普通に影が映るだけの筈の‥単なるフスマの中で異変は起こった。

..それは、まるで「スライド」の様だった。
ピンクと青と緑の‥「三枚のスライド」に分かれた私自身の影‥。
「耳だけが異常に尖った私の影」が、そこにはあった。

しかも「その三枚のスライド」に映し出された私の影はフスマの中を、
縦横無尽に入り乱れ、駆け回っていたのだ..。


その場にいた六人ほど全員が目撃し、しばらく唖然としていた‥。
ただ、そこはまだ子供なので面白がり、
「何?今の〜!」 「もう一度やってみて〜!」 みたいなノリで
(最も私自身は、それが他ならぬ自分の影だったと言う事もあり
必死に止めてくれ訴えていたのだが)

そして再び、友人が懐中電灯で私を照らしたのだが、
その時は既に何の変化もおこさず、普通に影が映っただけだったのだが..。
私は念の為、他に「その様な現象を起こす別の光源」が無いのかを確かめる為に一応、
窓の外も確認したのだが、特に光源となりそうなものも存在しなかった。

..そして、その深夜に更なる恐怖体験を私は経験する事となったのだ‥。

消灯時間が過ぎても、なかなか寝付く事の出来なかった私は
(枕が変わると、なかなか寝付けないタチだったのだ)
二人の友人と一緒に雑談を楽しんでいたのだが、
さすがに深夜と呼べる時間帯になったであろう事から(..今は午前二時頃だろうか?)
と気になり、時計を持っていなかった私は、
「時計‥ないかなぁ?」 と部屋を出てみたが、残念な事に期待していた[壁掛け時計]は、
そこには無かった。

そして、ドアを閉めて部屋に戻った私の耳に足音が聞こえてきた。
(‥コツ‥コツ‥コツ‥)
‥それは廊下から聞こえてきた。

その足音を聞いて私は、 「あっ!先生だ!ちょっと時間、聞いてくるねっ!」 と言い、
廊下へ飛び出していった。
ドアを開け「足音の聞こえてきた右側」を見たが誰もいない。

(‥あれっ?)と、不思議に思いながらも 私がそのまま左側を振り向くと、
やはり「先生」がいた。
..いや、正確に言うならば、その後姿で「先生」だと私は思い込んでしまったのだ。

「先生〜!先生〜!」‥と私は大きな声で呼びながら追いかけていったのだが
「先生」は振り向きもせず歩き続けたのだ。

今、思えば滑る様に..。
やっと、私が「先生」に追いついたのは「先生」が丁度、
廊下の角を曲がった瞬間だったのだが‥。

‥私は唖然としてしまった。
「先生」は忽然と姿を消したのだ‥。
追いついたと思った‥その瞬間に。

私の目の前には廊下のテーブルに並べられた金色のヤカンと、
その奥にある厨房..そして厨房では幾人か働いていた。
‥が、「先生」は一瞬で姿を消したのだ。私は瞬時に悟った。

私が「先生」だと思い込んでいたものが‥「霊」と呼ばれる存在である事を。
その途端、恐怖が走り、厨房にいる「大人の人」の所に駆け込もうかと瞬時に思ったのだが、
子供心に「仕事の邪魔になる」‥と考えた私は、
自分の宿泊している部屋へと駆け戻っっていった。

恐怖で顔色の変わっていた私の目にした光景は、
‥何故か、とり憑かれた様にゲラゲラと笑っている友人達の姿だった‥。

私は(‥人が怖い目に遭って来たのに!何、笑ってるんだっ!) と、
なかば、腹立たしい気持ちになったものだ。

‥今、考えると何故、「友人達が笑っていたのか」も不思議‥というよりも
「不自然」な気もする‥。笑う理由が見つからないのだ。
..今となっては、その理由は解らないままなのだが。

実は、この話には「後日談」がある。
修学旅行を無事に?終えて、
友人達と「修学旅行のしおり」を見ながら会話を弾ませていたのだが、
私はある不思議な事に気がついた。
‥と、言うよりも「私しか不思議だとは思わないであろう事」に気がついたのだ。

‥ 実は、その「しおり」にはK荘の見取り図が付いていたのだが‥。

‥無かったのだ!深夜に見た筈の‥「あの厨房」が!
厨房があった筈の場所は「壁になっていた」のだ‥。


あまりに不可解なので友人達に、
「ここ、食堂(※この時点では私は小学生なので厨房という言葉は知らなかったのだ)
が在ったよねぇ?」‥と、何人もの友人に訊ねてみたのだが
「結果は全員、同じ答え」だった‥。

「‥え?そんな所、何処にも無かったよぉ‥?」
そう確かに、そこには何も無かったのだ。

よく思い出せば、確かに朝になり、その場所の前を通った時には何も無かった気がする。
そもそも、そんな時間帯に調理などする筈もないのだ。

‥もしも、あの時に「自分の部屋」で無く、「厨房」へ向かって逃げ出していたら、
私は今頃、どうなっていたのだろう? 「神隠し」となってしまっていたのだろうか?
それとも「霊界」とやらに連れて行かれてしまっていたのだろうか?

‥今でも、それは分からない。
そんな私も今では三児の父親だが、
小学生となった子供の「旅行先」が何所になるのかが心配になる事がある。

..これは余談だが、
私が先日テレビの特集番組を観ていた時の事。
やはり具体的な場所は報道されていなかったのだが、
まるで「神隠し」にあったかの様に消息をたった男性がいて、
その方が最後に訪れた場所が..「九重のとある宿泊施設」であり、
ぼやけさせた「その施設」の外観が、私の記憶にある場所と酷似していたのだ。

..もしも、あの時に「厨房」へと向かっていたならば..私も報道されていたのかもしれない。
恐怖!夜伽話〜本当にあった実録怪談集〜


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