この話は私の友人である和恵さんの「母方の祖母」にあたる梅(仮名)さんの経験談となる。

梅さんの息子である猛さんは長年勤めていた会社が倒産してしまい、
現在は職業訓練校に通っているらしい。
この不況の中、「五十代」にもなると再就職するにも難しい時代だ。

梅さんは現在、その息子さんと同居しており、現在は猛さんによる収入は無いらしく、
その家計は、梅の年金と猛の妹(梅にとっては末娘にあたる)
の仕送りによって成り立っているらしい。

また、猛は現在「独身」の身であるにも関らず、家事すら満足に出来ないらしく、
梅さんは「娘たちは皆嫁いでいるのに(この中に和恵さんの母が含まれるのだが)
もし、自分が死ぬ様な事にでもなったら、武は一人で生活できるのだろうか」
・・と、八十歳を過ぎている高齢の梅は、次第に深く悩むようになっていたらしい。
しかも最近では武が梅に金をせびる様になっていたらしいのだ。

・・そんな中、和恵さんの両親が梅さんの家に訪れ、
仏壇に手を合わせていた時に、それは起こったらしい。

和恵さんの両親は元々霊感があり、特に彼女の父は修行により、
「降霊」や「除霊」が出来る・・所謂、「霊能者」であるのだが、

「光太郎じいちゃん(仮名)が梅ばあちゃんに言いたいことがあるらしい」
・・と言い出したのだ。
「光太郎じいちゃん」とは、十数年前に亡くなっている梅の夫の名である。


・・そして、霊媒(死者の言葉を伝える為に意図的に身体を預ける者)として、
和恵さんの母の口を通じ「光太郎さん」が語り始めたのだという。

「梅・・お前が最近悩んでいる武のことだが、あの子の寿命はそんなに長くない。
 お前のほうが長生きする。
 ・・だから、悩まないで、その日が来るまで優しく接してあげなさい。
 もし、あの子が死んでしまった時、お前は、
 金ならあげるから、出て来て欲しいと思う様になるぞ。
 よそに借金するよりいいのだから、あるときはあげなさい」

・・と語ったのだという。

梅は、前述の通り八十歳を越える高齢の為、きっと「その日」は・・
息子の「人生の終焉の日」は、そんなに遠くない事なのであろう事は容易に想像出来た。

・・梅は、手を合わせ、涙を流しながら、その話を聞いていたらしい。

その後、梅の家から自宅へと戻る車の中で、和恵さんの母はずっと泣いていたという。
なにしろ彼女にとっては、武は自分の実の弟なのでもあるのだ。

「じいちゃんの言葉とはいえ、自分の口を通じ、
 年老いた自分の母になんて酷いことを告げたのだろう・・
 子供が親より先に死ぬ事ほど辛いことはないのに・・」

・・と。

この時ばかりは、父の光太郎を・・。
・・そしてまた、自分の持つ「霊感」さえも怨んだのだと彼女の母は語っていたという。

しかし、梅さん自身は
「聞いた時は驚いたし、悲しかったけど、不思議と悩みは消えた」
・・と言うのだった。

和恵さん自身も現在「母親」であるのだが、この話を聞いた際、
かつて自分の息子さんが重い病に罹っていた時に、
やはり「降霊」により祖父から伝えられた
「人が死ぬときは、先祖が迎えに行く」
・・と語っていた事を思い出していたのだという・・。

「光太郎さんは徳を積んでいた為に、守護霊としての地位が高く、特別な能力があるらしい」
・・と彼女の母は語っていたというが・・。

かつて、和恵さんの息子である巧くん(仮名)が難病に侵され、
医師が病状を特定出来ずにいた際も、光太郎さんが毎日教えてくれていたらしいのだが、
霊感が無い彼女には、理解出来ない話だから言わないでいようと思っていたのだという。

しかし、巧くんの退院の際、迎えに来ていた両親の元へ
「光太郎さんが出て来て話したから、思い切って全て打ち明ける事にしたそうだ。


・・確かに私は彼女とは古い友人なのだが、こういう話は最近になって聞いたものであるし、
「霊感」などとは無縁な感があった。
私自身も実は「この手」の話題を彼女にはした事すら無かった位なのである。
おそらく、この「夜伽話」を通じて、始めて知ったのでは無いだろうか?

ここで彼女より「この件についてどう思うか」との質問があったのだが、
通常の考えからすれば「金をせびる」から・・または、「借金を抱えているから」・・と、
安易に肩代わりする事は止めておいた方が良いだろう。
・・そういう人間は更に借金を繰り返してしまう傾向が強いからだ。
たとえ、それが「親子」であろうとも・・である。
しかし、「よそで借りるよりは・・」という言葉通りに、
「高利でも借金をする傾向」もあるという事も、また事実ではある。

・・しかも現時点では「死亡宣告」までされているのであれば、
「優しくしてあげなさい」との言葉も、
「その日が訪れた際に後悔を残さない」という点では仕方が無い事なのかもしれない。
きっと彼女の祖母も「お別れの日も近いのだから・・」との想いから、
心の負担が軽くなったのでは無いだろうか?

・・少なくとも私は、そう思うのだ。

死亡宣告


仮面ライダーフリークス&恐怖!夜伽話