叫ぶ老婆
〜身動きできない恐怖〜

その晩、中学生になっていた頃の私は居間で祖母と眠っていた。
それまでも幾度か、いわゆる「金縛り」と言う状態は頻繁に経験しており、
その都度、同じ場所で眠る事が気持ち悪いので寝場所は自分の部屋や居間などを
転々と変えていたのだが、その晩の金縛りは、いつもとは様子が異なっていたのだ。

私の経験していた「いつもの金縛り」とは、意識はハッキリとしているのだが、
身体は意思に全く反応せず、声も出せないで、ただ眼球だけが動く‥
つまり、視界だけが自由で他は全く力が入らない状態になのだが、「滅多」には霊の姿を見る事は無かった。

・・余談だが、私は金縛りにあうと「必死」に声を出そうとする。
何故なら声が少しでも出せれば、その瞬間に「金縛りが解ける」からなのだ。

・・ここで話を元に戻そう。その晩の金縛りはまるで「全身の筋肉が絞られる様だった」のだ。 隣に寝ている祖母に助けを求めようとしたが、
腕も動かせず声も出せないので到底、起こす事は無理な状態だった。

そこで私は今になって考えると「全く馬鹿げた思いつき」なのだが
「そういう時は弱気になってはいけないので強気でいなさい・・」
というテレビで見ていた「某・霊能者」の言葉を思い出して、
更に「曲解」してしまい、私は心の中で叫んだのだった。

「ふざけるな!馬鹿野郎!何やってんだテメェ!」
‥次の瞬間、私は後悔と共に選択を誤った事に嫌でも気がつく事となった。

何故なら更に激しく、全身を「絞り上げられた」のだ。
そこで私は慌てて、また心の中で必死に訴えたのだ。

「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」と。
・・すると、少し緩めてくれた様だった..。それでも前の状態に戻っただけなのだが‥。

「ヤバイなぁ‥どうすればいいんだろう‥いつになったら解いてくれるんだろう‥」と、
息苦しい程の「絞り上げられる様な金縛り」の続く中で必死な私に
「更なる恐怖」が襲っってきたのだ。

隣に寝ていた祖母の口から、絞り出す様な叫び声があがったのだ。

「俺は幾百、幾万、幾億の女だ!俺は幾百、幾万、幾億の女だ!」
・・私は更なる恐怖と混乱におちいった。それもそうだろう。
全く、意味不明の言葉なのだから‥。

「ちょっと、俺まだ、つきあった事も無いし!幾百幾万幾億って何!
女なのに俺ってどっち!俺、身体、動かねェし!
このままバァさん起き上がってきて首でも絞められたら俺、死ぬ・・!?」


・・私は、もう完全にパニックにおちいってしまっていた。
‥幸いな事に?その後、程なく金縛りは解けたのだが、
慌てて祖母を起こして事情を説明した(もちろん冷静にでは無かったのだが)私に、
当の祖母は一言。 「‥あら?そうかね?」 の一言を残し、また寝入ってしまったのだった。

私の家系では、いわゆる「霊体験」に遭遇してしまうのは私自身だけである。
・・とは言っても「娘」には遺伝してしまっている感じがするので
「簡易的なお払い」程度は「教育」の一環として教えているが・・。

ともかく「疑われる事は無い」のだが、いまひとつ「理解」してはもらえないのだ。
ただ、命の危険まで感じた金縛りは私にとっては「この時だけ」であった‥。

それも「金縛りで..」という限定ではあるのだが。
恐怖!夜伽話〜本当にあった実録怪談集〜


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