霊動体験
〜前世よりの恋心〜
「輪廻転生」‥という言葉をご存知だろうか?
人は死んでも、また別の時代に生まれ変わり、
また生まれる時には前世での記憶を失っているらしい。
まれに、その記憶を持ったまま生まれてきたと言う事例もある様だが‥。
さて、今回の体験談は「生まれ変わり」の要素を持った、
除霊時の霊動についての体験談になる。
もともと霊感体質だった葛西さん(仮名)は、交際していた女性と別れた後に、
突然、ある日から今まで感じた事が無いほどの強い霊の気配を感じる様になったのだという。
それは腕が痺れ始め、仕事にも差し支えが出てくるほどだったらしいのだ。
彼の元に「その存在」を感じさせるものとは、所謂「生霊の類」に近かったのだと言う。
その別れの原因は彼女の浮気未遂であったのだが彼女の想いは、
まだ彼の元から離れずにいたのであろうと見当はつけていたらしいのだ。
しかし生霊の類は「生きている人間の念」である。
当人が納得しない限り、通常は外す事が困難だとされているのである。
その頃、そう言った知識も持たなかった彼は、
何となく、身の危険を感じ始め、友人の典子さんに相談したのであった。
・・・そこで「某・宗教団体」に連れて行かれたのだという。
しかし、そこで彼が体験したものは予想を遥かに上回るものであったのだった・・・。
そこでは、まず相談内容や家系についての質問をうけ、
手を洗い、口を濯いだ後に祝詞や作法を終えた後、
「館長」と呼ばれる中年女性が現れて、
合掌して正座したまま、目を閉じる様に促されたらしい。
そして何やら祝詞の様なものを唱えた後、質問を始めたのだという。
「あなたは、この方の知っている方ですか?」
「あなたは、この方の先祖の方ですか?」
‥などと質問は続き、この辺りまでは特に何事も起きなかったらしい。
・・だが、次の質問あたりから様子が異なってきたのだと言う・・・。
「あなたは、この方の前世に関係のある方ですか?」
‥合掌した手が少しずつ揺れるも、更に質問が続くいたのである。
「あなたは、この方に前世で殺されたのですか?」
「‥違う」
そう自分の中で誰かが訴えていたと言う。
「あなたは、この方の前世を憎んでいたのですか?」
‥首が左右に振れる。
そこに自分の意識は確かにあったらしいのだが、
「自分とは違うもの」の感情が直接流れ込んできたらしいのだ。
更に質問は続く、
「‥ひどい事をされた?」
‥首が更に振れ、既に「この時点」ではありのままの感情が伝わってきていたのだと言う。
「‥そんな事はある筈が無い・・むしろ大切に‥とても大切にされていたんだ‥」
彼の薄い意識の中で、彼女の想いが強く伝わってきたのであった。
「‥家族の方?‥奥さん?」
その質問の時点で彼が動きが止まったのだと言う。
そう、それは核心をつかれた様に・・・。
「この人の事が好きだったの‥?」
・・・そこには頷く彼がいたのだ。
「‥でも、奥さんじゃない‥」
それは心の中で拒絶しているかの様であったのだと言う。
「知られたくない・・・」
それは自分の存在を知られたくないと言う意味であると理解できたらしい。
館長は、しばし考えこんだ後、次の質問をした。
「‥この人には奥さんがいたの?」
‥頷いたのだと言う。
そして彼の眼に涙が溢れてきたらしいのだ。
切なくて、愛しくて、そして悲しい想いが伝わり、
その流れる涙は、既に彼女のものであったのだろう。
「‥でも好きだった‥?」
‥彼の中の彼女は頷いたのであった。
「・・もう知られてしまった・・後は素直に答えよう‥」
彼の中の彼女は、この時点で観念した様であったのだと言う。
彼女の意識や、微かな記憶は既に彼の中にあったのだ。
そしてその見せられた記憶の中とは・・・。
彼は前世では「そんなに上級では無い武士」であり、
彼女は赤い着物が良く似合う美しい娘だった‥。
そんな風景が脳裏に浮かんだのだという。
「‥とても、とても大切にしてくれた‥」
そんな彼女の気持ちだけは、とても強く感じられたらしい。
・・・更に質問は続けられた。
「この人に捨てられたの‥?」
その首が大きく、左右に振れていたのであった。
「‥この人と別れたの?好きだったのに?」
彼女は頷いたのであった・・・。
そして原因を掴んだらしい館長は次の様に告げたのであった。
「じゃあ、このまま元に戻しますね」
彼自身は何故に除霊もしないままにするのかと驚いたらしいのだが、
彼の中の彼女の意識は違う事を叫んでいたのだと言う。
「‥もっと、このままでいたい!
‥もっと、このままでいたい!・・せっかく話が出来たのに!」
その彼女は思い、抵抗・・・もしくは懇願する様に。
彼の合掌した手は激しさを増し、上下に動き始めたという。
しかし、そのまま術を解かれ、彼は元に戻ったのであった・・・。
・・・そして館長は、彼に次の様に告げたのだと言う。
どうも一連の原因は、前世での愛人が引き起こしていた様だと。
現世で結婚し、奥さんと仲良くしている所を見ると嫉妬をしていたらしく、
その為に、仲良くしていると邪魔をいれる事もあったらしい。
そして自分の魂を鍛えないと、もしここで祓ったとしても、
また何かが憑いてしまうかもしれない可能性があると言われたのだという。
そして、またここへと来る様に言われたらしいのだが‥。
彼は帰り道、典子さんに今の想いを語ったのだと言う。
彼女の心が伝わってきたが故に。
彼はある想いを抱いたのであった・・・。
「離れなくていいと思った。・・・連れていきたければ、連れていけばいい。
・・・ただ、俺の事を本当に想うなら、護って欲しい。
そんなに時間が経っても、死んで霊になっても、
忘れられなくて憑いてしまうほど好きなら、そのままで居させてあげたい。
その気持ちが伝わって来たから‥このままでいい。
そんな恋って・・・生きてる俺たちでも出来ないと思わない?」
・・心配した典子さんは、館長に相談したところ、とても心配し、
すぐに連れて来る様に言われたらしいのだが、彼の決意は変わらなかったらしい。
そして彼は二度とそこへと趣く事は無かったのだと言う・・・。
彼の感じた「その女性」の印象・・・。
それは、前述した交際相手の前世の霊でもあったのだと言う。
そして彼は実に3ヶ月もの月日を要して、現世での元・恋人と話し合い、
もう二度と交わることの無い恋愛感情を双方が感じるまでに至り・・・。
ようやく「彼女の存在」・・・。
生きている彼女も、前世の彼女の存在も感じられる事が無くなったのであった・・・。
前世での彼女の霊については、果たして成仏できたのか、
また彼の奥深くに入っていったのかは定かでは無いらしいのだが・・・。
・・・さて、ここからは私個人の見解になる。
今回、彼は前世の霊については受け入れる事を選んでしまったのだが、
本来ならば、決してしてはならない選択だと思えるのだ。
それでは成仏も出来ないまま、現世に留まってもおかしくなかったと思われるのである。
本来ならば、それは彼にとって危険な事であり、
受け入れるのでは無く、納得させて上げてあげるべきだったのでは無いだろうか?
・・・前世の霊が姿を現す場合。
その多くは無念な想いを抱えたまま死を迎えてしまったものが多いのだと聴いた事がある。
その霊の抱えていた痛みを取り除くことで成仏へと導くらしいのだが・・・。
しかし、それはきっと・・・彼の想いに応えるかの様に。
彼女は自ら成仏する事を選んだのかもしれない・・・。
・・・少なくとも私は、それを願わずにはいられないのである。