「降霊術」
〜先祖からのメッセージ〜

これは私の友人である和恵さん(仮名)の経験した
彼女の実の両親が行ったという
「降霊」に関する体験談である。

降霊術と呼ばれるものは通常、
「自分の身体に霊を憑依させたり、
または他人の身体に霊を降ろす事により、亡くなった方の言葉を語らせる」

・・というものである。

それは彼女のまだ幼い息子である巧くん(仮名)が風邪をひいてしまったらしく、
彼女の住まいの近くにある「個人病院」に通院していたのだが、それが長期化してしまい、
「レントゲン検査」をしてみる事になった・・という出来事から、この話は始まる。

その結果、右肺の部分が白く写っており、「肺炎」だと診断された巧くんは、
それからすぐに「市立病院」に入院することになったらしい。

・・ところが、その「市立病院」では、
「右肺に腫瘍があるのだが、
良性のものなのか悪性のものなのかという事までは判断できず、現時点では
「病名が断定出来ない」のだが、最低一ヶ月の入院は必要だと診断されたらしい。

彼女は現在、仕事をしている為に「長期の付添い」は難しいと判断したらしく、
実家の母に電話で連絡をしたのだった。

その際の彼女の母親からの返事は、
「巧は大丈夫だから、しっかりしなさい」
と言うアッサリとしたものであったらしい。

・・巧くんの入院から数日が経過し、血管造影剤を使ったCTや、MRI検査の結果、
恐るべき事に巧くんの病気は、
「子供が発症する中でも約六十五万分の一にあたる難病」であることが判明したのだった。

・・そして医師から伝えられた言葉は
「当院での手術も考えましたが、手術は挑戦するものでは無いので、
 経験が豊富な小児外科の先生を紹介しますから」
・・というものであったらしい。
 そして巧君の状態が落ち着いた時点で、国立病院で切除手術をすることになったのだという。

その市立病院では、巧くんの症例は「とても珍しいもの」であったらしく、
回診の時には小児科医をはじめとして、外科医、放射線科医と、
連日何人もの医師が診察に来たのだという。

和恵さんも心配のあまり実家の方には巧くんが入院して以来、
毎日のように電話していたのだが、彼女の母親はいつも
「大丈夫よ」と言うばかりであったらしい。

そして入院から一週間が過ぎた頃、痺れを切らした彼女は、
「いつになったら来てくれるの?」
・・と、実家の母に尋ねたりもしていたのだが、
「お父さんの仕事が忙しいから、今はまだ行けないけど、巧は大丈夫だよ」
・・と言うばかりの母に、付添いと不安な日々に疲れていた彼女は、
とうとう頭にきたらしく、その日以来、実家には電話しなくなったのだという。

そして入院してから二週間が経過しようとしていた頃、
状態の落ち着いた巧くんは、その私立病院を退院した。
紹介されていた国立病院は、緊急手術以外は、まず予約を取った後に
紹介状を持って行くという手続きを踏まなければならず、
彼女は巧くんを連れ、「一旦、自宅に帰る」ことになったらしい。

彼女のご主人は元々出張が多い仕事らしく、あいにく巧くんの退院の日も不在であり、
彼女は、その市立病院から巧くんを連れてタクシーで帰るつもりだったのだが、
その日、福岡にある彼女の実家の両親が車で迎えに来てくれていたのだという。
先日の電話以来、連絡をとっていなかったので、何故「退院の日」を知りえたのかは、
この時点では彼女事態、理解していなかったらしいのだが・・。

さて、ここまでの話は、単なる病気の経過記録なのだが、
この後、彼女は信じられない様な経験をする事となった。

少なくとも彼女の人生の中では・・。

巧くんの退院から二日後、仕事の都合で和恵さんの父は福岡の実家へ帰ることになった。
・・その日の事であった。
彼女の母親が、
「お父さんが帰る前に話がある」
・・と言い出したらしいのだ。

彼女の両親は自分達の前に和恵さんを座らせると、
父が突然、「お経のようなもの」を唱え出したのだという。

・・すると徐々に、母親の様子が変わり
「私は、お前の祖父の光太郎(仮名)だ」
・・と言い出したというのだ。

当然、彼女は驚きを隠せなかったらしい。
母親の急変には勿論の事、彼女の母親方の祖父である光太郎さんは、
彼女が小学生の頃に既に亡くなっているのだ。

・・しかも実の母親が「光太郎だ」・・と突然に言いはじめるのである。

彼女の母親(・・に憑依した光太郎さんという事になるのだが)は、
更に語り続けたのだという。

「・・お前にどうしても伝えたいことがあって、言いに来た。
 巧は、私たち先祖が守るから、心配するな」

・・と。

彼女曰く、
「私には霊感がないし、普通ならなら信じられないんだけど・・」
・・との事であったが、何故か「その時だけ」は不思議なことに、
「自然と受け入れられていた」らしい。

更に母親の口を借りた祖父は語った。
「死ぬということは、先祖が迎えに行くということだ。
 まだ寿命ではない巧をわしらは、迎えに行くつもりはない。
 百合子さん(仮名)も守っていると言っていた」
・・と。

百合子さんとは、三年前に亡くなっていた父方の祖母にあたる方の名前であるらしい。

「ただ、旦那さんの家の先祖の事はわからないから、一度お参りに行きなさい。
 そして、迎えに来ないように、お願いしなさい。
 言いたいことはそれだけだ。・・巧は大丈夫だから」

・・と言い、再び父がお経の様なものを唱え、彼女の母親は元に戻ったのだという。

そして、何事もなかったかのように、和恵さんの父は福岡へと帰って行ったらしい・・。

彼女の父母は、元々霊感があったらしく、特に母親に至っては霊が憑きやすい体質・・
俗に言う「憑依体質」であり、
月に何度も「御祓い」を受けに行っていた事は彼女も知っていたらしいのだが、
それすらも霊感のない彼女には本来ならば「理解しがたいもの」であったのだという。

・・が、彼女の母親の話によると、彼女の父は最近、
福岡にあるという「某寺院」に通い、修行をした結果、
「母親に先祖の霊を降ろして話を聞くことや自分で御祓いができる様になった」
のだという。

・・そして巧くんが入院した日から毎日、祖父が出て来ては病状を説明していたり、
退院の日を教えていたというのだ。

更には、病院で「原因がわからない」と言っている時点においても、
「自分達は分かっていたから安心していた」
・・と話してくれたのだという。
だったら始めからそう言ってあげれば良いものを・・。
とはいえ、「じゃあ、安心だね」ともならないであろうが?

そして、その週末に出張から戻った「ご主人」と共に、祖父の言葉通り、
「ご主人の家のお墓参り」に行って来たらしい。

その二週間後。
紹介された国立病院にて六時間半に渡る手術は無事に成功し、
巧くんは元気を取り戻したのだという・・。

確かに色々な面で興味深い話である。
「守っているから」・・というからには「それなりの力を持った守護霊
(もしくはそれに近い存在)である事が伺える。
更に父親方の霊と母親方の霊が「何処かの世界で会話をしている」事も興味深い。
また、ご主人のお墓参りに行くべきだという適切な指示さえも出されているのだ。
色々な面で「怖い」というよりも、むしろ「非常に興味深い」話であった。

恐怖!夜伽話〜本当にあった実録怪談集〜


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