神社の境内にて


 これは私の親友である美弥子さん(仮名)がまだ小学生の頃の話だそうだ。

 彼女の祖父はいわゆる「霊能者」だったらしいのだが、その当時「稲荷信仰」をしていたらし
い。

 その「稲荷神社」は彼女の小学校の帰り道と自宅の間にあり、その境内を抜ければ自宅への近
道なのだが、どうにも怖くて、普段は決して通らなかったのだという..。

 しかし、ある日の事。どうしても急がなければならない用が出来てしまい、やむを得ず「稲荷
神社の境内」を通る事にしたらしい。

 その時、彼女は境内にて「白い着物の男性」を見かけたのだという。
「..神主さんかなぁ?」..と、最初は気にも留めなかったらしい。
 なにしろ彼女は急いで帰らなければならなかったのだ。

 そこで境内を駆け抜け、自宅へ急いだのだという..。

 だが、妙な気配を感じ、走りながら後ろを振り向くと何故か「先程の神主らしき人物が恐ろしい形相をして追いかけて来た」のだという..。

 その「あまりの恐ろしさ」に慌てた彼女は、必死に自宅まで走って逃げていったらしい。

 幸いにも無事、帰宅出来た彼女の身には「それ以上の事」は起きなかったらしい。
・・・結局、その人物が何者だったのかは「不明のまま」なのだが、彼女が思うに、あれは「お稲
荷さん」だったのではないだろうか..と語っている。

 もちろん根拠の無い話で、そんな事は無いとは思うのだが、実際に経験した者の直感として感
じられたものであれば、あながち間違いとは言い切れないのでは無いだろうか?

・・・夕暮時から深夜にかけて「神社」には、そういった「魔物の刻」が存在するらしい。

ちなみに「その祖父」は戦死してしまい、彼女の親の代で「稲荷信仰」は途絶えてしまったらしいのだが・・・。

・・・また、稲荷信仰は「現世利益」に効き目があり、大事にしているうちは良くしてくれるらしいのだが、一旦「怠って」しまうと祟る事もあるのだと聞いた事がある。

 狐には即効性があるが、ひとたび奉る事を辞めてしまうと、途端に祟りをなし、時には命に関る事もあるとも言われているのもまた確かなのである・・・。
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